睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「こころ」 夏目漱石

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教科書で読まなければ面白いかもしれない作品も、教科書で読むとつまらない」と、評判の悪い、国語の教科書だが、学生の頃、私は好きだった。  

数学とか理科の「学ぶこと」が書かれているのとは違って、「読み物」がたくさん載っているから。良いとこ取りだし。  

評論やら詩やらもあったけれど、やはり小説のたぐいが好きで、授業中、その授業で取り上げていない小説を読みふけっていたものである。教科書を読んでいるので、先生も注意しなかろう、という子どもらしからぬ打算もあったような気がするけど……。  

小学校の頃は「ファーブル昆虫記」「あの坂を登れば」「スイミー」「注文の多い料理店」とか。  

中高生の頃は「山月記」「私の個人主義」(これも夏目漱石ですなあ……)「檸檬」「蜜柑」(これを読んで以来、芥川にはまりました)「しろばんば」なんかが好きだった。古典なら「徒然草」「大鏡」「平家物語」(木曽義仲巴御前のところ)。テストに出た「堤中納言物語」の「虫愛ずる姫君」の段も面白かった。  

 

夏目漱石の「こころ」も高校生のころ、教科書で出会った。

もちろん、あの長い話が全部入っているわけはなく、先生の親友が自殺するところまでだったと思うが、読んで衝撃を受けてしまった。  

授業そっちのけで読みふける私。  

夏目漱石すごい!  

さすが文豪!  

でも、文豪のくせに、ナイーブというか、ロマンチストというか、純粋な感じがして、さらに好感度アップ!    

この当時の私は(今もだけど)とことんまで悩む、という話が好きだった。  

友人を裏切ってしまった上に、その裏切り故に自殺されてしまったという事実を、ずっと背負い続けている先生。  

その先生の孤独に惹かれていく主人公の「私」。  

先生と親友「K」の間の友情と確執。先生と「私」の間のどこかミステリアスな師弟愛。  

先生を挟んだ3人の男の純な「情」がてんこ盛りである。  

もーおなかいっぱい!  

こんな濃い話を教科書に載せていいのか!?  

最近の教科書には夏目漱石が載っていないものが増えている、と聞いたが、それはこのねっとりとからみつく濃さのせいなんじゃ……。  

ある意味、教育上よくないかもしれないわ!  

だって、どろどろだよ。昼メロ級。(しかも男同士の)←重要ポイント。    

なーんて思ったりもするが、若いときにこの作品は読んでおいた方がいいと思う。  

自分が先生の立場だったらどうするのか?  

ということを、真剣に考えてみるのもいいんじゃないかしら?  

だから、時代遅れなんて言わないで、今後も是非、教科書に載り続けているといいな、と思う。  

今回は割とまともに、本の感想を書いてみました。  

「こころ」のストーリーを知らないと、分からない内容になってしまったかしら?