睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「ざ・ちぇんじ!」氷室冴子

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 私が多感な女子高校生だった頃。  

友人の一人が、何の前触れもなく、突然、私をじっと見つめて言った。  

「藤原(仮名 私のこと)って、平安時代だったらすごい美人だよね~」  

「えっ?そ、そうかしら?」  

言われたその時は、なんだか褒められているような気がして、ちょっと嬉しかったのだが、よく考えたら、ものすごく失礼なことを言われたような気がする……。  

平安時代の美人って……。  

平安時代の美人の条件は、「引き目 かぎ鼻 下ぶくれ」と言われている。さらに、痩せているよりは小太りの方が美人とされたらしい。(裕福に見えるから)  

現代の日本人の感覚の美人とは180度逆じゃん……。  

確かに私は下ぶくれまん丸顔で、目はほそーいのっぺり日本人顔さ。  

ああ、そうさ!平安美人顔さ!  

友人には悪気は無かったと思われるが、それだけに、ショックだった。まだ、夢も希望もある女子高生だったので……。  

でも、いい加減年を取った現在では、平安時代の美人でもいいかな~?と開き直っている。  

小野小町って、きっと私みたいな顔だったんだわ。くふふ。と思うだけでも楽しい。  

世が世なら、私も浮き名を流しまくって、和泉式部みたいになったかもな~。  

あらざらむ この世のほかの思い出に いまひとたびの 逢うこともがな  (もうすぐ死んじゃうので、思い出にもう一回逢いたいの)なんてね。  

そして、氷室冴子の「ざ・ちぇんじ」に出てくる、絶世の美人姉弟の綺羅姉弟もきっと私みたいな顔だったに違いない。  

 

「ざ・ちぇんじ」は「とりかえばや物語」を元にした平安時代が舞台の小説である。  

主人公は二人。  

女房たちにもてまくり(そして、男だと信じている同僚の公達にもせまられたり)、天皇の覚えもめでたく出世頭の綺羅中将(ただし女性)と絶世の美女として、公達たちのあこがれの的の綺羅姫(ただし男性)が繰り広げる珍騒動だ。  

この二人、母親は違う姉弟だが、そっくりの顔で、とにかくどちらも美形、という設定である。  

でも、所詮は平安時代  

間違いなく、小太り!下ぶくれ!引き目!かぎ鼻!  

氷室さんと名コンビの山内直美さんがマンガ化しているが、あの絵で想像してはいけない。  

平安時代の美人なのである。あんなに可愛いわけはない!  

この私の様な顔に違いないのだ。うふふ。  

でも、だからと言って、絵巻物みたいな絵(つまり私のような顔)で描かれたマンガは嫌だけどさ……。  

実は、私は小学生のころから、平安文学が好きだった。  

今でも、源氏物語の人物相関図がかけるくらい。(「あさきゆめみし」ではまった訳ではありません。読んだのはかなり最近)  

うーん、別に意識していたわけじゃないけれど、何か、近いモノを無意識に感じ取っていたのかな~?  

もしかすると、私の前世は平安時代の美人女房か何かで、かつての栄光を懐かしんで、平安モノに手を出していたのかも。  

どうですか?江原さん!    

 

蛇足ながら、氷室冴子の平安モノといえば、「なんて素敵にジャパネスク!」をはずせない。  

これも山内直美さんがマンガ化しているが(人妻編、再開してくれて嬉しいです!)主人公瑠璃姫は美人ではない、という設定なので、あのかわいらしい山内さんの絵で正解な気がする。  

美人で才女の設定の藤宮さまがきっと、本当は私のような顔をしていたに違いない。

くふふ。藤宮さまか~♪  

最後に、一言付け加えておきます。  

原作の「とりかえばや物語」と内容は全然異なっております。念のため。