「アンの愛情」モンゴメリ
「赤毛のアン」ことアン・シャーリーは「女の子の永遠の憧れ」らしい。(新潮文庫の100冊のアオリ文句より)
確かにあの「パフスリーブが着たいのよ!」とか「黒髪って素敵」などと独自の夢見がちな感性を発揮するアンの少女時代は、なんかきらきらしている気がした。
しかし、シリーズ3作目の「アンの愛情」を読んだ感想は「最低の女だよ、アン!」である。
次から次へと男を振りまくる成長したアンは、まさに「小悪魔」!
そんなくせに「私はオールドミスになるつもりよ」とか言っているのよ~!なんじゃそりゃ~!
まずはじめに、立て続けに2人にプロポーズされるアン。
それをさっくり断り、全然ロマンチックじゃない!と怒ったり、こんな滑稽なことはないわ!とか大笑いしたりするのだ。
た……タカビーな女だ。しかも、全然自覚がないところが恐ろしい。
その後、本命中の本命、幼なじみのギルバートにプロポーズされる。
それを「友達としては、とてもあなたに好意をもっているわ。でも、あなたを愛していないことよ、ギルバート」と、ざっくり断るのだ。(村岡花子訳はスバラシイです)
しかも、それをとがめた友人に「愛してもいない人との結婚を拒絶することがバカだというの?」なんて言い返したりしている。
なんだよ、アン!
ギルバートは子どもの時に、アンとケンカして、石版を頭にたたきつけられた時から、ずっとそばにいたじゃないか!(確か、アンの髪を「ニンジン」とからかったのが、アンの逆鱗に触れた)
しかも、お金はないが頭がイイぞ!将来性は二重丸だ!(ちなみに医者になります)
周りも公認の仲だったのに、気を持たせるようなことして……!
無意識の小悪魔って恐ろしいわ。
しかし、アンの小悪魔ぶりはとどまるところを知らない。
ギルバートと決別してすぐに、カッコイイ青年つき合い出すのだ。
その出会いがスゴイ。
突然の大雨に、傘がお猪口になってひえ~と傘にしがみついていたアンに向かって「失礼ですが ぼくの傘にお入りになりませんか?」と登場するのだ!
今時、ちゃおでも掲載されないよ!そんな古典的出会い!いや、今時じゃないけど。
顔良し、大金持ち、性格も良し(ややキザ)の3拍子そろった美しの王子(プリンスチャーミング)。
アンはふら~とその男に恋しちゃうのだ。
し……尻軽じゃないか!アン!ギルバートを振ったばかりなのに!
そんな彼と2年もつきあい、大学の卒業とともに当然のようにプロポーズされ……
「おお、あたし、あなたと結婚できないわ できないわ できないわ」
「だって それだけにあなたを好きでないんですもの」
とプリンスチャーミングを振っちゃうのだ!。
どこまで小悪魔なんだ!あんたは!気の毒だよ、相手の青年……。
男をどれだけもてあそんだら気が済むのよ~!
さらに、さらにである。
卒業後、故郷に帰って、ギルバートが病気になっていることを聞き、突然「あたしはギルバートのものであり、ギルバートはあたしのものなのだ」と疑問の余地もなく悟ってしまうのだ。
あんた、2年前にこっぴどくギルバートを振ったじゃないか~!
どないなっとんねん!女心と秋の空か!そうなのか!
ラストは「アンは今フリーよ」とアンの友達に教えてもらったギルバートが(病気は治った)アンにもう一度プロポーズして、めでたしめでたし。
……めでたくないわい!
アンの「わたし、けっこうもてたのよ。でも、最後には真実の恋人に巡り会えたけどね」という話じゃないか!
ちなみに、もう一人どっかの農夫にもプロポーズされているので、アンは延べ6回も申し込まれているのよ……。
なんだそりゃ。カナダには女性人口が少ないのか?
少女時代は赤毛でちっとも美人じゃない女の子だったくせに、いつの間にかすごく綺麗な女性、という風になってるし。
娘になれば、みんな綺麗になるってことですか?
ちなみに、私は中学時代の同級生にたまたま会ったときに「全く変わってないからすぐ分かった」と言われるくらい、変化無いけどね。
くそう……なぜ、アンばかりいい男が寄ってくるんだ!?
そうさ、はっきり言って、私がこの本を読んでの感想は「何でアンばかりもてる!?」これにつきるのさ。
……ひがみさ。ああ、そうさ。
ギルバート、カッコイイいい人なのよね……。アンに酷い目にあわされても誠実でさ。
どうしたら、アンみたいになれるのかしらねえ……。並みいる求婚者を次々振ればいいのか!?しかし、まず求婚者がそんなにざくざく現れないんだが……。
そういう意味では、やっぱりアンは「女の子の永遠の憧れ」なのかもしれん……。