睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「巴里の憂鬱」シャルル・ボードレール

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先日、職場で思いがけない落とし物(?)が発見された。  

私の職場はとある公園内に設置されており、地元の人たちの散歩コースとして親しまれている。  

その公園内に、一応、フランスのノルマンディー地方ブルゴーニュ地方であるとの説もあり)のこじゃれた民家風の建物がある。緑に映えて、けっこうステキだ。

(ステキなんだけどね……管理上、問題が多々あるんですが、ここではあえて触れません)  

朝、その建物を開けようと警備員さんが行ったところ、扉の取っ手になにやら筒のようなモノが……。  

不審に思って取り上げると、サランラップの筒(!?)を緑で染めたモノ(おそらく手作り)  

しかも、中になにやら巻物のようなものが入っている!  

中をあらためてみると、長さ1m程度の和紙3枚。  

それが緑でムラがあるように染められており、手書きの詩が書かれている。  

なんじゃ、こりゃー~!(松田勇作風でお願いします)  

よくよく見てみると、タイトルが「巴里の憂鬱」とされており、余白に「Charles Bandelaire」と書かれている。  

どうやら、ボードレールの詩みたい。  

なんで、こんなものが置かれて居るんだろう……?  

朝、散歩していて、気分が高揚して、書いてみたんですかね……。で、ひっそりと置いてみたと……。  

芸術家、いや、戦前の文学少女みたいだなあ。実際、そうだったのかも。(文字から察するに、年配の女性のようなので)  

それなので、ボードレール全集を父から借りて、読んでみた。  

なるほど、確かに書かれているのはボードレールの「巴里の憂鬱」だ。  

しかし、翻訳者が違うせいなのが、部分部分、若干違う。私が読んだのは秋山晴夫訳だが、もしかすると、三好達治訳なのかなあ?それとも、福永武彦?  

全体的に、巻物(?)の方がなにやら漢字の使い方などが古めかしく、ロマンチック全開、という感じだ。古き良き、そして懐かしき大正ロマン。  

「ああ……」という感嘆詞が「嗚呼……」になってたりね。  

「菓子」にわざわざ「トー」とルビがふってあったり。  

夢見がちな乙女時代に、愛読した翻訳なのかしら?それとも、もしかすると、自分で訳したのかしら?  

 

ボードレールの「パリの憂鬱」は、彼の死後出版された散文詩である。中に50の小編が収録されている。  

都会の生活の倦怠感、憂鬱な感じが、綴られている。  

私はけっこう好きだ。  

一番始めの「異邦人」の最後の文「私が好きなのは、あの雲だ……流れる雲だ……」というところが好き。  

じめっとした雰囲気が、一気にぱあっと晴れる感じがする。    

 

その後、他の職員にも巻物(?)を見せてみた。  

みな「わーすごいね。何だろうね、これは。捧げられちゃったのかしら?」とか「オマージュ?オマージュなのかしら?」とか「書いているうちに紙が足りなくなったのね。後の方が行間キツキツだもの(←これを聞いて、私は坂本龍馬の手紙みたいだなあ、と思いました)」などと、興味津々。わいわい騒いでいた。  

で、私が「これ、●●課で保管して下さいよ」と言ったら「えっ、それはちょっと……。藤原さん(私のこと)保管してよ」と、さくっと返されてしまった……。  

行き場がなく、仕方がないので、未だ、私の机の横に保管されている。  

どうしたらいいんだ……。拾得物として、警察に届けるべきなのか? 

それ、私が作りました、という人がいたら、是非、名乗り出て下さい。  

一緒にボードレールについて語るくらいはしますので……。