睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「あのこにもらった音楽」勝田文

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 先日までの私のピアノ課題曲はブラームスのワルツ(変イ長調)だった。(今はチャイコフスキー)  

曲は基本的には自分で選ぶ。  

この曲を選択した理由は「あの子にもらった音楽」の中で、蔵之介が主人公梅子にいつも弾いていた曲が、ブラームスの子守歌だったからだ。  

……ブラームスの子守歌じゃなくて、ワルツを選択しているあたり、間違っているではないか。バカめ……。自分のことだけど。  

でも、今使っている楽譜に子守歌が無かったんだもの。とりあえずの妥協点。    

私がブラームスを好きになったのは、この作品がきっかけである。  

 

将来を嘱望され、ショパンコンクール本選にまで残った蔵之介は、本選前日ライバルに道路に突き飛ばされ右手を負傷。その後、ピアニストとしての道をたたれてしまう。  

失意の蔵之介は、妹のように育っていた梅子の「くらのすけ うめこねらんねーの ねー ピアノひいて」という言葉に「俺がブラームスを弾くと このこはどこだって眠ってしまう そうかブラームスか じゃー俺はこれからブラームス弾こう ヨハネスだ」とブラームスの子守歌を弾くのだった。  

……なんか、そう書くと、すっごくコテコテドラマチックな少女漫画!と言う感じだ。  

主人公の梅子はドイツ人とのハーフで、父が母をおいて本国へ帰ってしまい、母はその後すぐに亡くなっているし。(孤児なのだ)  

おお、ドラマチック!怒濤!  

でも、実際の雰囲気は全然違う……。今、自分でもこのあらすじ書いて「こんな劇的なストーリーだったんだ……」とちょっと驚いたよ。  

のほほんとした雰囲気のぬるま湯のようなあったかい作品なのさ。ぬくぬく。蔵之介はタラシの駄目男だし。(そこがイイ)  

レトロなほっこりあったかい中に、ピアノの叙情性がうまーくとけ込んでいて、とにかく私はこの作品が大好きなのだ!   

中村大三郎の「ピアノ」という絵があるけど、あれをちょっと思い出したり。あれ、少女の絵だけどね。(京都市美術館所蔵)  

ピアノを弾く男性っていいよな~。私は昔からこのシュチエ-ションに弱い。  

見目麗しい男性がグランドピアノを弾いてるって、どう?どう?いいわ~。ぐふふ。  その絵を想像するだけで、もう満腹です。  

ベートーベンのソナタとか弾いていただければなお良し!熱情とかね。  

古今東西、少女マンガにはこの手のヒーローがごろごろしているので、やっぱり、みんなこのシュチエーションが好きなのね。古くは「変奏曲」最近(?)では「キス」とか「のだめ~」とか。  

蔵之介の場合、別に見目麗しい訳ではない。でも、普段駄目なくせに、ピアノの前に座るとうってかわって優しいブラームスを奏でる。  

それも良し!素敵です!

たまに黒縁眼鏡をかけて弾いてるのがさらに良し!能ある鷹は爪を隠す。  

私が蔵之介がピアノ弾いているところをみたら、完全にフォーリンラブだね。そして、適当に遊ばれちゃうのかしら……?(タラシだから)いやん。  

この作中に出てきて、弾いてみたいな、と思っている曲がもう一つある。  

ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」だ。蔵之介の少年時代のエピソードに登場。 (「のだめ~」でも出てきますね。私はオーケストラバージョンよりもピアノバージョンの方が好き)  

でも、弾く腕が、全然上達しないのよねえ。  

そのうちチャレンジしようとは思っているけど、いつになることやら。  

その前に、ブラームスの子守歌だなあ。これが当初予定であることを忘れてはいけないわ!頑張ろう。