「広辞苑」新村出編
岩波書店。普通版7875円。机上版12600円。
あれは確か、中学3年生の冬だった。
たまたまその年、私の誕生日に温泉に出かけた。父が永年勤続か何かで旅行券をもらったので。
旅館に着いて、温泉につかり、夕食もいただいて一息ついたところに父が切り出した。
「誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
なにやら包み紙に覆われた厳ついものをどーんと渡される。
お……重い。一体これは……!?
不審に思いつつ、がさがさと包みをほどくと出てきたモノは
広辞苑第四版……!!(当時、出たばかり。あ、年がバレますね)
わざわざ温泉までこんな重いモノ持ってきてもらって悪いけど、
欲しくないよ、お父さん……!!(正直な気持ち)
「ありがとう……」と言いつつも、きっと私の顔は引きつっていたに違いない。
中学生だった当時、お洋服とか他に欲しいものがいっぱいあったのだ……。または、当時は(今も?)少女マンガに夢中だったため、マンガ購入に充てられる図書券とかが欲しかったの!
それなのに、あまり縁のない広辞苑……!
すでに我が家には2冊あるのに広辞苑……! お父さん!自分が欲しかっただけなんじゃないのか!?
私の父には悪い癖があり、「おお!この本はいい本だ!」と思うと、読まないくせに買ってしまうのだ。蒐集癖とも言えるかも。
最近はその癖もおさまって来たが、若い頃の父はすさまじい。
「国史大事典」「大漢和辞典」「日本通史」とか、一般家庭にあるものか!?という本がごろごろしている。(多分、上記の本をそろえるのに50万円近くかかると思います)
さらに、何をするにも本から入ろうとする傾向があり、「腰が痛いのよ……」と言っていた母の誕生日に「腰痛体操」の本を送り、激怒されていた……。(母は現金主義)
お母さん、気持ちは分からなくもないけど、わざわざア●ゾンで取り寄せた本らしいですよ……。
しかし、私も年をとって、この父親の悪癖と同じ事をするようになってきてしまった。 うっかり「●●市史」買ってしまいました。図版とか立派で良い本だったの!でも、全然読んでない!
親子って、所詮、同じ事をするのよ。遺伝ってオソロシイね……。
昨年の父親への誕生日プレゼントは「字統」をあげました。正直言うと、私が欲しかったの。
しかし、頭に来ることに、父親はたいして喜ばなかった……。何故だ!?
あなたがかつてやったことそのままなのに!
でも、私はめげない!
なんと、広辞苑の第六版が来年1月に出るという!
父の誕生日は5月!
お父さん!お返ししようではありませんか!広辞苑を!
中学生の私に買ってくれるくらいなんだから、新版、欲しいに決まってるわよね!
私も欲しい!かつて、広辞苑を「いらない」と思った私は、すでにもういない。
だって「メタボ」とか「イケメン」とか載ってるらしいよ!すごい!その項目、読みたいわ!
うちの広辞苑、合計で4冊になるけどね……。
あの場所をとる分厚い本が4冊か……。うーん……。