睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「人間椅子」江戸川乱歩

光文社文庫で全集が出ています。1巻に収録。1,050円。他社からも沢山出てます。  

とある美術館の展示に彫像付椅子というものがあった。パプアニューギニアのものらしい。  

どどーんとでっかい。大迫力。おそらく2m以上はあるかと思われる。                              こちらです→f:id:suishian:20170729141705j:plain

   

で、これのどこに座るんだ!?  

椅子というからには、どこかに座るものなんだよね?  

不審に思い、この彫像付き椅子をよく眺めてみると、彫像(以後、この彫像を「パプりん」と呼びます)が腰掛けて手をついている部分の裏側に若干の余地を発見! 

ここに座るのかしら?  

半ケツになっちゃう感じだけれども……。  

でも、ここ以外無いよなあ……。   

仮にここに座るとして、座り心地はいかがなもんだろう……?  

背後にパプりんがどばーんと控えているこの状況……。お尻とお尻がごっつんこしちゃうわん。なんか嫌。  

それに、座る部分がかなり高いので、普通に座ると足が浮いちゃうはず。でも、半ケツを支えるくらいしか場所がないから、浮かせるとバランスを保つのが非常に困難だと思われる。  

パプりんは日本人よりは相当大きいので、良い感じに中腰だけどね……。  

他に考えられることとしては、パプりんに背を向けて座るのではなく、同じ方向を向いて座る、というパターンもあるか。  

つまり、パプりんを背後から抱きしめる感じだ。  

「パプりん……おれじゃダメか……?」という少女漫画定番の名シーンの再現。うは。

「のだめ~」で千秋先輩が実家に帰ったのだめを発見して思わず抱きしめちゃった、例のあれだ。  

(ちなみに「星の瞳のシルエット」では司くんが件のセリフを吐いていたと思います)

あ、でも足をパプりんの両手の間から出す感じだと、抱きしめるというよりはおんぶかしら?  

それでも「真山……好き……」という「ハチクロ」の名シーンが再現できるではないか!  

パプりん、ブラボー!  

なんか、パプりんがすっごくかわいく見えてきたよ!  

しまった。ちょっと違う方向に行ってしまった。  

この椅子を見て私が即座に思い出したのは、江戸川乱歩の「人間椅子」なのだ。  

だって、彫像、明らかに人間っぽいし。いや、人間という枠を超えている気はするけれども。  

それに、座った人間にしっとりと寄り添う感じが、さらに「人間椅子」っぽい感じがするの。座り心地は悪そうだけれど。    

確か、人間椅子の方は、ものすごくいい座り心地なんだよな~。で、愛用しちゃうのよね。中に人間(今風に言えばストーカー)が入っているとも知らずに……。  

怖いよう。ねちこく不気味な感じ。  

知られずに椅子として好きな人に愛用されるのが快感、ってものすごく変態っぽいなあ。  

「ああ、僕はあなたの手袋になりたい。そうすればあなたに触れられる」と言ったのは、ロミオだけど……。ロミオも変。  

その点、パプりんははっきりきっぱり外側に出ているので、そういう怖さはない。よかったわ。  

パプりんの様相に別の意味の怖さはあるけどさ……。座るのに、けっこう勇気がいるかも。  

私はちょっと座ってみたかったが「触っちゃダメ」との表示があったので、座らなかったよ。残念。  

ちなみに、その後、学芸員さんの意見を聞いたところ「実用ではないでしょうね。何個も作られていくうちに、椅子機能はどんどん退化していって、胸像部分のみが重要になっていったと思われます」とのことです。  

ま、そうよね。普通に考えると座れないもんな。  

パプりんの収蔵元の国立民族学博物館のHPはこちら。  

データベースで「パプアニューギニア 椅子」などど検索すると、パプりんの詳しいデータがわかります。