睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「ロシアにおけるニタリノフの便座について」椎名誠

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 新潮文庫 420円  

数年前の事である。  

友人と3人で上海に旅行に行ったことがある。

事前に、旅に際しての不安はあまりなかったが、若干のひっかかりはトイレのことであった。  

中国はトイレがすごいらしい!という噂をちらほら聞いていたからだ。(主に森永あいさんのマンガとかで……)  

穴だけとか、その穴からあふれ出さんばかりになっている、とか……(何が?と聞いてはいけない)   

だが、実際に行ってみると、空港、ホテル、レストランなどのトイレはかなり綺麗だったし、それ以外の場所のトイレもそこそこだった。(鍵壊れていたり、中国人は扉開けっ放しで用を足していたりしたが……)  

何だ、意外と平気じゃん。さすが上海、都会だな~。  

が、しかしである。  

パンダを見るんだ~♪と立ち寄った上海動物園で、私は迫り来る「膀胱破裂戦隊」(by るみたん)と戦っていた。  

動物園に行く前のバス(路線バスなのに、何故か車内テレビで音楽番組が流れていた……観光バス?)で既にもうトイレに行きたいな~と思っていた。でも、車内ではいけない、と我慢をしてたのだ。  

動物園にトイレは絶対にある。そこまでの辛抱よ、私。  

動物園にはいるとすぐさまトイレに直行。    

トイレの入り口には番人(おばちゃん)が構えており、通行銭1元(じゃなくてもいいんだろうけど、そのくらいが適当であろう)を渡して紙をもらって入るシステム。  

その紙がまた、えらいこと小さい。日本で言うポケットティッシュの半分くらいだ。これじゃ、小さい方でも足りないよ!  

でもまあ、このおばちゃんが小銭をもらって、トイレを清潔に保っているのであろう、と広い心で紙をもらって、トイレ内に駆け込む私。正直、かなり限界に近かったので、とにかく用を足せればなんでもOK状態。  

が、眼前に広がった光景に、私は言葉を亡くした。  

扉、あらへんがな~!!  

そこには個室の扉というものがなく、壁に垂直に申し訳程度に仕切りがあるだけ。  

足下には溝が一直線に切ってあり、その1mほど下を水がちょろちょろと流れている。  どうやらここにまたがって用を足すらしい。  

溝は全ての個室(一応、そう表記します)共通で一直線に切られているため、前の人の流した排泄物が、後ろの個室にいれば丸見えだ。  

見るのも見られるのも嫌だよ~!!  

というか、扉がないんだよ~!!開けっぴろげ。  

ここで用を足すのは、「秘すれば花」の日本で育った私にはものすごく高いハードルだよう!!  

紙を握りしめて、ふるふると震える私。  

が、今、このトイレのお客が私一人ならば、ささっとやってしまえばいいのだ!  

周囲に目を走らせる私をあざ笑うかの様に、仕切りの向こうから、何やら「うーん」とうなっている声が聞こえる。ひょっとして大きい方ですか?なんで、ここで……?動物園なのに。  

迫り来る「膀胱破裂戦隊」と戦う私。このチャンスを逃したら、今後、どこで扉のあるトイレに出会えるか分からない!  

……しました。ええ、しましたとも。  

「私は中国人。外見じゃ、全然わからない」と自分に言い聞かせて……。  

そう言い聞かせてしまえば、何て事はなかったわ。欺瞞でも、それでいいのだ!  

 

しかし、椎名誠「ロシアにおけるニタリノフの便座について」を読んでいると、そんな中国はロシアに比べると、大清潔国なんだそうだ。  

ロシアのトイレの汚さは筆舌に尽くしがたく、まわりにいろいろな形状で散乱しているらしい。(何が?と聞いてはいけない)  

「どうして、便器の蠱惑的な穴の上でできないのだ!?」ともっともな疑問を抱く椎名氏。でも、その疑問に答えはない……。  

そして、ホテルのトイレには便座がないらしい。  

「何で無いのだ?」という疑問にも答えは無いのだった……。  

確かに、中国のトイレはまわりに散乱してないし、ちゃんと水で流しているあたり、かなり清潔。臭いもそんなに気にならなかった。  

ちなみに、椎名氏による中国のトイレは壁に向かってお尻を向けて用を足すタイプが多いとのこと。そこには仕切りすらなく、みんなで並んで用を足すらしい。  

その人々の様子は「インドの路傍哲人たちの瞑想の顔と実によく似ている」と椎名氏は言う。  

うーん、なんかその風景はちょっと楽しそうだ。  

朝、公園で太極拳をしている人たちの姿に通じる感じだな~と思うのは、私だけだろうか?  

私もあせった気持ちじゃなく、ゆったりとした気持ちで瞑想にふけりつつで用を足すべきだったかな~?  

せっかく、中国に行ったのに。残念なことをした!  

次に中国に行くときには是非!  

が、この本を読んで「ロシアには行けないな……」とも思ってしまった。そこまでは私には無理だ!