睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「後宮小説」酒見賢一

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 新潮文庫500円  

北京オリンピックの開会式はよかったな~。  

こう、東洋の美意識を「どうだ!」と見せつける感じがして。  

中でも、私の目を引いたのが、中国美人。アジアンビューティー!  

マスゲームの美しさとか球にひっついて踊っていた演出とかじゃなく、そこなのか、私……。  

だけど、中国の美人って本当に綺麗なんだもん。すらっと背が高くて、姿勢が良くて。何より、きりっとひっつめた髪型が好き。←マニアか、私!?  

そんな美人が惜しげもなく、ざっくざく。  

いや~さすがに、10億の人材を抱える国だな~。  

世界の人口の1/5が中国人。5人いたらそのうち1人は中国人。そりゃー、各種目のメダル総なめにして当然だな。  

開会式の中国美人が集まって、きらびやかに踊る様を眺めるのは、なんだか、時の皇帝になったみたいな気分だった。 後宮に集めた美女に揃いの衣装で舞わせるのさ。  ひゃー。  

「天晴れ!よきにはからえ!朕は満足じゃ!」    

中国の後宮を舞台にした小説と言えば「後宮小説」。  

ただし、この小説の舞台「素乾国」はなんちゃって中国であって、中国ではない。  

作中で大まじめに(?)うんちくを傾けているので、かなりの部分が史実に基づいているのか?と思ってしまうが、多分、ほとんどがホラ。才能あるなあ、酒見賢一。  

腹上死であった」というものすごい書き出しで始まるこの話は、新皇帝のために作られる後宮へ、主人公、銀河が志願するところから始まる。  

各地から集められた個性あふれる美女達(何となく、そうじゃない人もいる感じだが)が、後宮に入るための学校「女大学」で勉強する。  

これがまあ、そんな勉強まじめにするなよ、というアホらしい下ネタ勉強だったりする訳なのだが(後宮なので)、大まじめに記述してあるので、なんとなく学問っぽい。

ルームメイト達とわいわい勉強に励む様は、私の大好きな女子寮モノと言えなくもないかも。下ネタの勉強しているんだけどね……。    

酒見氏はこの本の中で、歴代の皇帝がどんだけの規模の後宮を持っていたか、というホラうんちくを傾けている。  

それがもう、「あんたもう、やめなはれ」と言いたくなるような大規模。  

冒頭で亡くなった腹宗は正妃1人、后妃2人、夫人4人、嬪貧8人、しょう婦16人、美人16人、才人16人、宝林32人、御女32人、采女32人の159人の婦人とその他女官をあわせて約550人からなる後宮があったそうです。ちなみに、これは歴代の皇帝に比べると「やや少なめ」らしい。  

腹宗から6代前の衒宗(多分、例の有名な皇帝から名前を取っているのでしょうなあ)は記録上で2千人だが、実際には6万人の女性からなる後宮を持っていたそうです。

どんだけ~!!こぢんまりした「市」レベルじゃないか!  

そのため、「民庶男子尽ク寡ト為リ、恰モ宮セラルルガ如シ。臣下、百姓ノ枯レ果テンコトヲ怕ル」なんていう状況になっちゃったらしいです。  

酒見氏はもっともらしく「不経済の極と言えよう」なんて言っちゃっいる。  

うーん、さすが中国!(ホラだけど)  

そんな不経済が許されちゃうとはな~。大規模だ。  

北京オリンピックの開会式のマスゲーム隊は西暦にあやかって、各場面「2008人」で構成されていたことが多かったみたいだが、その大人数も中国の大規模さから考えると、なんてことない人数なんだろうなあ。  

私、見ながら「こんだけ動員されていたら、みんな親戚に1人や2人、動員された人いそうだよね!」と言っていたのだが……。そうでもない?    

かつて、私の心の師匠、西原理恵子氏が「中国の人口を考えるときはお金で考えるとわかりやすい」と言っていたことを思い出したわ。  

10億円持っている人にとっての2008円は、なんでもないよな……。托鉢の坊さんに差し出す喜捨よりも少ない感じ?痛くもかゆくもない。  

うーん、やっぱり、中国すごいなあ。  

そんでもって、中国には規模で負けちゃうけれど、頑張れ日本!  

私は毎日、オリンピックに夢中なのだ。  

ちなみに「後宮小説」は「雲のように風のように」のタイトルでアニメ化されました。  このアニメを見て、すぐさま原作本を買ってしまった……。  

内容とテイストはかなり違ってますが、アニメもオススメです。