太田金山〜山頂で鍋〜
昨年の秋から、私には1つの夢があった。
荒船山に登った時に目にした風景。強烈に憧れた。
それは、山頂で鍋!である。もちろん寒いシーズンに!
それも、シングルバーナーで野菜を煮込むだけ、といった簡単なものではない。
私が昨年荒船山の艫岩付近で見かけたものは、卓上ガスコンロに家庭科の授業で使ったような金色の鍋で白菜を大量にぐつぐつ煮込み、それをみんなでつつく本格的な鍋だ。
これを是非やりたい!
しかし、これを実現するためのハードルは結構高い。
まず、広い山頂。できればベンチのような平らなものがある場所が好ましい。
次に、コンロと鍋と食材を背負っていくので、簡単に登れる低山であること。また、寒い時期でも雪の無い低山であること。
(荒船山で鍋をしていた若者3人組は猛者だと思う。よくコンロと鍋を抱えて登ったなあ。さすが若者!)
この条件に合う山として、真っ先に浮かんだ場所はG県東部にある太田金山である。
太田金山はわずか236mという低山であるが、平野がひろがるG県東部では、ぽこんと際立つ山様で、ふもとのお寺大光院(呑龍さま)とともに、「ふるさとの山」として地元民に親しまれている。この地域を象徴する山なのだ。
また、戦国時代には金山城が建築されていて、当時の遺構が残っており、城好きにもたまらない場所だ。
ついでに、山頂に立つ新田神社の御祭神は鎌倉幕府攻撃で有名な新田義貞である。(地元民もみんな勘違いしているが、金山城は新田義貞の城ではない。城主としては由良成繁が一番有名か?)
私は高校生の頃、歴史好きの先輩(当時は「歴女」なんて言葉は存在しなかった)に「金山城大手道を攻略しよう!」と言葉巧みに誘われて、道無き道(藪)を登った記憶がある…。先輩、お元気ですか?
年末の忘年会という名前の飲み会で「金山で鍋がしたい!」との熱い思いを語ったところ、友人のでんさんが「行こう!私、カセットコンロあるから!」と激しく同意してくれたので、善は急げと、さっそく実行に移した。
当日の集合は10:00。
だが、のっけから私が集合時間を10:30と勘違いしたり、でんさんが忘れ物で途中引き返しがあったりして、顔を合わせたのは11:00。
登山を始める時間とは思えない遅さ…。低山だからとなめまくっている。
しかし、私は鍋と食材などをザックに詰め込んでいるので、北アルプスに行くのか!?と思えるような大荷物。(ちょっと誇張)ちなみにザックの容量は40Lだ。
「登山、久しぶり~」とご機嫌なでんさんは、小さいザックを背負っているため、カセットコンロの箱が見えている。ファスナーが閉まらなかったそうだ。箱から出せばよかったんじゃないかな…?
11:10 大光院駐車場からようやく出発。
西山ハイキングコースという、おそらく一番メインのコースを選択した。
まずは大光院の裏手の道を登っていく。最初は調子よくずんずん登っていたのだが、けっこうな斜度に途中から動悸息切れが激しくなる。
「でんさん、ペースが速いようです!私は救●が必要な感じです!!」
「私も、救●!!久しぶりだから、ペース配分間違えた!」
明らかにペースダウンして、よろよろと急坂を登り切る。低山だからって急な坂が無いわけじゃ無い、という当たり前の事実を身をもって知る…。
15分程度で急坂を登り切った後は、なだらかな道を行く。
途中、案内板もたくさんあり、休憩できる四阿もいくつか設置されていた。すれ違う人たちも多く、やはり地元民に親しまれている山だなあ、という実感が湧く。
「ところで、案内板にちょいちょい現れる「モータープール」って何かな…?」とでんさんが疑問を発する。
「駐車場だと思います。多分…」
私は宮本輝氏の「流転の海」シリーズを愛読しているので知っていたが、確かにあまり聞かない単語だ。(ちなみに「流転の海」シリーズでは、一時期、主人公松坂熊吾がモータープールの管理人をしている)
後で調べてみたところ、主に関西地方で使うらしい。
…G県、関東なのに…。
考古学的には、G県は東海地方との密接な関わりが指摘されているらしいけど…関係ないか。
謎な言葉のチョイスだ、G県東部。
木の階段を再び息を切らして登り切ると、噂のモータープールに到着。だいたい11:40。
ちょっとした見晴台もあり、市街地が一望できる。
本当に軽いハイキングなら、ここまで車で来て、山頂まで徒歩というコースもあり。このコースなら、頑張ればヒールのある靴でもOKだ。
ここからは登山と言うより、史跡めぐりといった感じ。
金山城の遺構がいくつか復元されているので、中世山城を探検する様な気持ちでゆっくり歩く。
私が先輩に連れられて大手道を登った時は、こんな復元建物全然無かったけどな~。ただの山道だったと記憶しているが…時代は変わるものだ。
早馬が「伝令!伝令!」と言って、駆けてきそうな雰囲気がちょっと楽しい。
12:00少し過ぎたくらいに山頂に到着。
ちょうどお昼に到着できたので、集合が遅れたのは結果的には良かったのかもしれない。
かつては名物だった藤棚の残骸を眺めたり、新田神社にお参りして御朱印をゲットしたり(書き置きあり。賽銭箱にお金を投入する形式)で山頂を30分ほどうろうろして楽しむ。
天気が良い日はスカイツリーとか富士山とか見えるのだろうが、この日は天気がイマイチだったため、全く見えず。まあ、いい。今日の目的は景色ではない。
山頂では、最大の目的である鍋の準備に取りかかる。
神社脇の石のベンチにカセットコンロを設置して、鍋にスープをどぼどぼ投入。続いて自宅で切ってきた白菜ほか、具材を次々投入だ。
今回は、ひんしゅく覚悟でキムチ鍋とした。(「もと」を持参した)
こでは、後ほど語るが、私の深い配慮による選択なのだ。まわりにものすごくキムチの匂いが漂ってしまったが…。
広い空の下、ということで勘弁していただきたい。
ほどよく煮詰まったところで、二人で取り分ける。
「でんさん!おたま忘れました!」
「仕方あるまい。スプーンですくおう」
ふは~っ!おいしい!!
この日はそんなに寒い日ではなかったが、暖かい汁物は体の隅々まで染みる!
そして、やっぱり鍋は白菜だね。どんどん食が進む。トマトも意外とイケる!
具をある程度食べ尽くした後、締めに伝家の宝刀「辛ラーメン」を投入だ!
昔、大学のゼミで韓国に行った際に、地元の学生にキムチ鍋をごちそうして貰ったことがあるのだが、その時、締めがインスタントラーメンだったのだ。めっちゃおいしくて、ゼミ生みんなで感動したのだった。
あの味よ、もう一度!
キムチ鍋といえば、締めラーメン。
ついでに、締めラーメンにすれば、鍋の残り汁も飲みやすいかな~という思惑もあった。最後の一滴まできちんとおいしくいただくのだ。山のルール。
はたして、キムチラーメン、おいしかったわ~!
山で食べるラーメンはなぜにこんなにおいしいのだろう?
今まで山のラーメンを否定する人には、ただの一人も出会ったことが無い。
幸せである。満腹である。
夢だった山頂鍋をたっぷり堪能した。楽しい。
山頂で鍋に相当の時間を費やし、13:30下山開始。
途中、見晴台で景色を楽しんだりして、のんびり下る。(でんさんが「ハンカチ落とした!」と言って、探しに戻るアクシデントあり。結局、上着の袖の中にあった…。どうやったら、そんなところに格納できるのだろか…?)
帰りは金龍寺を経由するルートを選択。お寺の裏に由良氏の供養塔?もあるので、ちょっと楽しい。
14:45頃、大光院駐車場着。
すごくゆっくり楽しんだ割に、早い時間に下りてこられた。低山の醍醐味だな。
でんさんは、久しぶりの山が楽しかったそうで「来年の夏は那須岳行って、三斗小屋温泉に行きたい!」と言っていた。もちろん、ワタクシ、お供します!
昨年来の夢が叶い、私も感無量である。
山で鍋!楽しかった。
本当はビールがあれば、なお良かった…!!
<コースタイム>
11:00大光院駐車場…11:40モータープール…12:10山頂(鍋1時間超)…13:30下山開始…14:00モータープール…14:45大光院駐車場