睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

宝登山〜春近し〜

冬の低山歩きの総決算として、長瀞宝登山に行ってきた。

実は昨年、モ●ベルのイベントの抽選で、宝登山ロープウェイの無料券が当たったのだ。

有効期限は無いみたいだけど、早めに使った方がいいだろう。どうせなら、宝登山の代名詞である蠟梅が咲いている時期に行こう、と2月中旬に設定した。

催玉県(仮)北部はほぼG県である。長瀞も北部なので、ほぼG県と言って間違いないであろう。距離的にも我が家から車で1時間半弱くらいで到着する。近い。

…催玉県(仮)民は「ほぼG県」であることに、どのような感情を抱いているのか知らないが、ホンモノのG県に住まう我々は催玉県(仮)北部を快く受け入れる用意がある!

学校の校歌に赤城山を歌う地域として、共に手を携えて世間の荒波に立ち向かって行こうではないか!

(長瀞秩父だから、校歌に赤城は出てこないな…)

 

近いので、当日朝は8時出発。今回の同行は山の相棒ノムさんだ。

ただ宝登山に登るだけではつまらないので、長瀞アルプスから宝登山山頂を目指すルートを歩くことにする。

「…そのルートだと、ロープウェイ使わないのでは…?」とノムさんが気づく。

「…うむ。下りだけ使うってのはどうかな?券は往復券だけどね…。贅沢をしてみようよ」

とりあえず、行きは自分の足で歩く。

この山はロープウェイを使うと、ほぼ登らない、歩かないで山頂に到着できてしまう。

普段、ロープウェイは大好きなのだが、この山ではさすがにパスしてみた。

 

9:30過ぎに秩父鉄道長瀞駅に到着。

がらーんとした駐車場に車を駐める。料金は1日300円。安い。

駐車場のおじさんは私たちの服装を見て「神社だけなら、もっと安くするんだけど、山の人は長いから300円ね」と告げた。…ディスカウントできるくらい、閑古鳥が鳴いているのか、冬の長瀞駅前!

夏場はライン下りやら何やらで、かなりの賑わいぶりなのだろうが、寒い冬に来る人は少ないのか…。こたつ船でライン下り実施しているみたいだけど。

 

何かもの悲しい気持ちで駅へ向かう。

すると、意外や意外、駅前はたくさんの人であふれており観光協会の人(?)が次々訪れるハイカー達を宝登山へと案内している。

そうか!大都会の人は車じゃなくて、電車で来るのか!

ほぼG県といえど、さすが催玉県(仮)。大都会に近いので、訪れる人も多いらしい。

 

観光協会の人(?)が田舎から訪れた私たちにも「宝登山ですか?」と優しく声を掛けてくれた。

ありがとうございます!

でも、私たちはここから一駅だけ電車に乗り、そこから宝登山を目指すので、今、案内はいらないのだ。

田舎者への優しさに対する感謝を胸に駅の改札をくぐる。

当然、自動改札なんてものはない。秩父鉄道はどローカル線。Suicaも使えないのだ。

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長瀞駅ホーム

10:00 野上駅到着。

ここも人で大賑わい。私たちと同じく長瀞アルプス経由で宝登山を目指す人はたくさんいるらしい。

しかし、こちらの駅は観光協会の人(?)はおらず、自らの力で目指す登山口までのルートを歩くことになる。

正直、人がたくさんいてくれてよかった…!

野上駅から登山口までは徒歩およそ20分程度だが、住宅地(いや、田舎道といった方が正しいか?)の一般道路を歩いて行くので、先を行く人々がいなかったら迷っていた可能性が高い。

長瀞駅前で地図貰ったけど、私もノムさん地図は苦手だ。…登山する上で大切な能力が私たちには欠けている…。

何事にも先達はあらまほしき事なり(by吉田兼好)」とつぶやきながら、迷うこと無く長瀞アルプス登山口である万福時に到着した。9:20。ありがとう、先達!

 

長瀞アルプスは、穏やかな樹林帯の道がほとんどで、眺望はあまりない。冬なので、木々の合間から少し景色が望める。

「アルプス」いうよりは里山という雰囲気だ。

道を行く人も多く、なんとなく、先日登った太田金山を思い出した。ただ、太田金山は地元民がほぼすべてなのに対し、長瀞アルプスは大都会民が大勢を占めている点が大きく異なる。うーむ、さすが催玉(仮)。

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里山の雰囲気

 「神まわり分岐」「天狗山分岐」「氷池分岐」をてくてくと超える。

四角友里「山登り12ヶ月」によると、この氷池から秩父名物天然氷が切り出されるそうだ。冬に切り出しておいた氷で、夏にかき氷を食べる。贅沢の極みである。

清少納言枕草子で、甘蔓をかけた削り氷は上品なもの、なんて言っていたらしい。平安の昔は、本当に限られた一部の人だけが食べることができた超高級品だっただろう。それが庶民でも田舎者でも食べられる現代って、すごい時代だなあ。

氷池を見てみたい気持ちになったが、そこはぐっと堪え、引き続き長瀞アルプスコースを行く。長瀞アルプスの「神まわりコース」だと、氷池をとおるらしいので、今度来るときは、そのルートにしてみたい。

 

11:25小鳥峠

名前が可愛いので「ぴよちゃん峠」と呼んで、手を鳥の形にして写真を撮る。

私は鳥が好き。

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手を鳥の形…?

11:40 毒キノコ看板前

長瀞駅で地図貰った地図に、しっかりと書かれている「毒キノコ看板前」という地名(?地名というか、スポット名?)

…他に言い方、無かったのかな…?

「毒キノコ看板って何!?」とキノコ好きなノムさん若干興奮気味。

宝登山頂、もうすぐ、と毒キノコが教えてくれる看板じゃない?ベニテングダケとか!ク●ボーかも!」と私もかなり期待大。

実際に見てみると「毒キノコに注意!」という看板だった。

タマゴダケの絵とか書いてあるけど、「やたらにとって食べないことが最も安全といえます」というあたりまえの結論に至る、いたってまじめな看板だ。

なんか、学校の先生にこんこんと諭されているような文章で、どうも、身が縮むような気持ちになる…。

地名(スポット名?)になるようなキャッチーなインパクトのあるものを想像していたので、この生真面目さに少し拍子抜けした気分になる。

そりゃ、そうだよね…。何に期待していたのだろうか、私たちは。

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毒キノコ看板。

 毒キノコ看板を過ぎると、最後の仕上げ(?)の木の階段地獄が待っていた。

地図には「山頂まで約200段の階段」と書いてある。ここまでアップダウンのあまりない穏やかな道だったが、ついに登りが現れた。

ラスボス、という言葉が私の頭をよぎる。

「階段、キライ!」と涙ながらにノムさんに訴えてみるが「私も嫌いだけど、仕方がないじゃないか」と返されるのみ。淡々と登るしかあるまい。

段になっているべき土が流れてしまっていて、丸太が飛び出しているだけの階段で「丸太、かえって邪魔やねん!」と、私はついつい不満を口に出してしまう。いかん、いかん。楽しく登らなくては。

ノムさんは私の後ろから「ママ~ う~うぅぅ~」となぜか、ボヘミアンラプソディを歌っている、というか呻いている。やはり、進退窮まった時に助けを求めるのはママなのだろうか…。

 

12:10山頂着。497.1m

かなり広く、ベンチなども設置されているが、人が多く、お昼を食べる場所を確保するのもちょっと大変だった。

思い思いにくつろぐ皆さんに混じって、今回も私はカレーメシの良い匂いを周囲にまき散らした。最高においしいから!ソーリー、ごめんあそばせ。

ノムさんからレモンケーキのチョココーティング、といった感じのおやつを分けてもらい、甘いものの補給も万全だ。

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山頂から。秩父名物武甲山

天気が良かったので、山頂からは秩父のシンボル、ピラミッド山武甲山や、百名山両神山が望めた。

いずれは、どちらも山も登るつもりだ。しばし、待ってて!

食後は、宝登山神社奥宮へお参り。13:15。

ここの狛犬三峯神社と同じく、である。この地方はそういう信仰の地らしい。

隣の売店ではたき火があり、焼きミカンを売っている。

焼きミカン、とても、おいしいそう!しかし、さきほどご飯をじっかり食べてしまったので、今回は買わずなかった。甘さが増すんだろうな、きっと。

たき火、いいな~。

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焼きミカンと熱燗。うひょ。

奥宮の先は、今回の目玉である臘梅園。ちょうど見頃。

黄色い花弁に日の光が透けてほんのり輝き、あたりは甘い香りが漂っている。

春が近い。

ついでに福寿草も梅も咲いている。

春って、華やかな季節だな。こんなに一気に花が咲き乱れる景色になれば、そりゃあ、浮かれるってもんだ。

ロープウェイ組も加わり、春の花見の賑わいだ。

みんな、春の訪れを感じているのか、どこか足取りが軽く、笑い声のさざめきが賑やかだ。

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臘梅

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白梅

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福寿草

賑わいにつられて、うらうら歩いていると、すぐにロープウェイの駅に到着。

ノムさんロープウェイ乗る?

「…いや、歩こうか

なんだか、春の気配に心が浮き立っていたせいか、長瀞アルプスが割と穏やかだったせいなのか、気力体力共に余裕があったので、歩いて下山を選択してしまった。

つまり、せっかく貰ったロープウェイ無料券は全く使わず…。

モ●ベルさんに言いたい。

モ●ベルのイベントには、登山が好きな人が行くのであって、宝登山の場合は登山が好きな人はロープウェイは使わない…。

どうしよう、この無料券。一応、次の機会があると信じて、持っておこう。でも、次の機会も足で登っちゃう気がする…。
 

宝登山の登山道は綺麗に砂利で整備された道で、急坂にならないよう勾配に沿って、うねうね曲がって作られており、多分とても歩きやすい。でも、単調なので、ちょっと飽きる気もする。

途中、藪の中を一気に下る獣道のようなショートカットルートがつけられていたので、(おそらく登山者が勝手につけたと思われる)ついつい、ショートカットルートに入ってしまった。そっちの方が楽しかったので…。スミマセン。

 

14:30 麓の宝登山神社着。

下りはショートカットルートを使ったせいか、多分、30分ちょいくらいで下りられてしまった。

今回、長瀞アルプス登り、宝登山下りルートを選んだのは正解だった。

逆コースだと、宝登山の登りが単調で地味にずっと登るだけのルートで、あまり変化が無く面白みに欠けたような気がする。

長瀞アルプスコースは、楽しい山歩きからスタートして、宝登山を楽しんだ後、一気に下ってフィニッシュという、いい配分になっていると思う。

御朱印も2カ所貰えたし、春の花も堪能できて、楽しい一日であった。

 

余談だが、宝登山神社から駅までは土産物屋さんなどが多く並んでいる。

「豚みそ丼」や「こんにゃく」が名物らしい。

…名物が完全にG県なんだけど…

「やっぱり、催玉県(仮)北部はG県で間違いないね」

ノムさんと二人、確かな確信を持って、催玉県(仮)を後にした。

G県はいつでも、催玉県(仮)北部を歓迎する!

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冬だけど、天然氷いただきました!おいしゅうございました!

<コースタイム>

9:45長瀞駅…10:00野上駅…10:20万福寺…11:10氷池分岐…11:25小鳥峠…11:45毒キノコ看板…12:10山頂(お昼50時間)…13:15宝登山神社奥宮…13:45臘梅園…14:30宝登山神社