赤城山~すでに真夏~
5月下旬、私はまた赤城山(黒檜山)の登山口に立っていた。
12月にも登ったが、あの時は冬で、とても寒かった。今はとても暑い…。5月とは思えない暑さだ。下界は軽く30度を超えた真夏日である。
季節はあっという間にめぐるものだなあ、と感慨深い。
それにしても、5月で真夏日はめぐり過ぎでは無いか!?天気予報では「体が暑さに慣れていないので、熱中症に注意してください」と言っていた。
熱中症。
もう、その単語を耳にするとは…。でも、本当に気をつけよう、と普段はあまり買わないア●エリアスを購入した。対策は万全だ(?)
今回は、赤城山の最高峰、黒檜山から駒ヶ岳への縦走ルートを選択した。
今回同行のノムさんとは数年前、登山若葉マーク時代に、同じルートで登った。
お互いに「次の日の筋肉痛はハンパなかったねえ…」「がむしゃらだったからねえ…」と、過去を振り返って苦笑い。足ぱんぱんだったなあ…
今回は、そのときの教訓を胸に、マイペースで楽しい登山を目指すことを誓う。
それにしても、この時期の赤城山は登山者であふれかえっている。驚くべきことだが、大沼湖畔の駐車場(広い)が満車!私、何度も赤城山に来ているけれど、この駐車場が満車だったの、初めて。
急に赤城山の魅力にみんなが気づきだしたのだろうか?いや、もともと大人気だったけれど、私たちが、たまたま空いている日に行っていたのか…?
真相はよくわからないが、何にせよ、ふるさとの山に活気があるのはいいことだ。ちょっと嬉しい。
大洞駐車場が満車だったので、その近くに車を駐め(駐車場は周辺にたくさんある)、黒檜山登山口まで車道を歩く。途中、赤城神社を通過。
大沼にお行儀良く並んでいるスワンボートがかわいい。暑いけれど、良い天気でよかった。やっぱり、気象神社で晴祈願した御利益かもしれない。
10:00 登山口に到着。
やや、ゆっくり目のスタート時間だが、これから一緒に登山を始める人たちがたくさんいた。心強い。一緒に頑張って登りましょう、と心の中で熱く挨拶をする。
黒檜は赤城山の最高峰である。
そして、他の峰に比べて、一番がっつり登る山である。
最初からまあまあな登りだが、猫岩を過ぎたあたりから、樹林帯の中、岩がゴロゴロした、かなり急な道となる。
忘れていたわけじゃないが、改めて「そうだ、黒檜って、結構キツい登りだった」ということを思い出す。ノムさんも「冬の不摂生が…」と消極的にキツさを訴えている。
真夏並の気温も手伝い、登りはじめから汗がにじむ。いや、にじむどころではない。
おそらく、ザックを下ろせば、Tシャツがキレイに汗で染まっているだろう。夏山の風物詩…?でも、本当はまだ5月だ。夏ではないはずなのだ。
こまめに休憩を取って、水分補給。
すると、必然的に後ろから登ってくる登山者の皆さんは「こんにちはー」と声を掛けつつ、私たちを抜いていく。
その後、休憩を終えて歩き出すと、先ほど私たちを抜いていった方達が休憩を取っているので、やっぱり必然的に「こんにちはー」と声を掛けつつ抜いていくことになる。
このラリーは何度も続く。みな、思い思いの場所で、こまめに休憩を取っているので、そうなっちゃうのだ。
抜きつ抜かれつのデットヒート(?)を何回も繰り返すと、だんだん「こんにちはー」と声を掛けるのが、なんとなく恥ずかしくなってくるのは何故だろうか?
「あ、どうもー(また会いましたね)」という感じの挨拶から、アルカイックな笑顔+会釈へとだんだん挨拶レベルが下がっていってしまう。まあ、いいよね、お互い様だし。
ちなみに、この時、胸におおきなゾウがプリントされたTシャツを着ていた方に颯爽と抜かれたので、ついうっかり、「マ●ートさん、早いなあ…」と声に出してつぶやいてしまった。
なんとなく親近感が湧いて、勝手にニックネーム。いつもなら、心の中だけなのだが、暑さのせいか、この時は声にまで出してしまった。思いついたことをすぐに口に出してしまうのは年をとった証拠か…。
追加情報。
私の発言を聞いたノムさんは「私もマ●ートさん!」と胸を張ったので、「私はモ●ベルさん!」と主張を返してみた。
2人とも、山レベルが上がっているので、かつての若葉マークの頃のように、ユ●クロの綿Tシャツからは卒業している。成長を実感できた瞬間だ。感慨深い。
暑さとそれに伴う疲労感に苦しめられながら、なんとか急登を登り切る。登り切ってしまえば、頂上までは、つかの間の穏やかな道だ。
「この頂上にいたる平らな道は、心が躍るね~」
「早く着かないか、わくわくするね」
とラストスパートを心穏やかに歩く。
「決めた!この道を私はビクトリーロードと名付けるよ!」
達成者が勝利の余韻に浸って歩く道、という感じだ。音楽を流すなら、ロッキーのテーマソングのイントロ。
私の目には、そこにはない赤いカーペットが見えている。
…テンションが上がっていると、しょーも無いことを、ものすごく楽しいことのように言ってしまう癖が私にはあるような気がする。
一緒にいたノムさんもテンションがあがっているからいいか…。
11:40 ビクトリーロードを通って、ついに頂上到着。
看板で写真撮影だけして、すぐに看板に書かれている「絶景スポット2分」へ向かう。
12月に登ったばかりなので、お昼ご飯休憩の場所は、絶景スポットの方が適していることは勉強済みだ。
今日は天気が良いので、絶景スポット、本当に最高に絶景!
まだ雪が残っている上信越国境の山並みが周りを取り囲んでいる。圧巻の美しさだ。
私たちだけではなく、周りの登山者のみなさんも「おおー」と自然と歓声が口をついてしまう。
まわりの皆さんが口々に山の名前を言い、指さしているので、私たちにも、どれがどの山なのかだいたいわかる。
「次はあの山に登りたいなー」などと、多分、みんな考えていることは似たようなものだろう。
12:30 お昼ご飯を食べて、次なる駒ヶ岳に向けて絶景スポットを後にする。
10分位で御黒檜大神の祠に到着。お参りはきちんとさせていただく。
日本には頂上に祠などがない山は無いのではないか。昔の修験者は宗教家であるというよりは登山家だったと言ってもいいんじゃないかなー、と思ったりもする。
かつて、このルートを私はスニーカーで登ったが、昔の日本人は草鞋で登ったのだ。岩にぶつけたら、直で痛かっただろうに、すごいものだなあ。
駒ヶ岳へのルートは概ね階段での下りである。ずっとずっと階段…。
途中、息を切らして階段を登っていく登山者の方とすれ違う。階段、辛そう…。
でも、12月に登った時、それほど辛く感じなかったので、実際に登ってみれば、なんてことはないのかもしれない。
ひたすら階段を下りまくると、大だるみに到着。13:25
ここから、駒ヶ岳に向けての登りが始まる。下ってまた登る…。
また登るなら、下らなくていいじゃん!という気持ちになるが、そういうわけにはいかない。
ばっち来い、駒ヶ岳!という気持ちで気合いを入れて、坂を登る。黒檜への登りに比べたらかわいいものだ。
13:45 駒ヶ岳、到着。
駒ヶ岳山頂はそれほど広いわけでは無く、たまたま団体の皆さんが先着でいたので、しばし待つ。山は譲り合いだ。
山頂からは見晴らしも良く、小沼がキレイ。黒檜の絶景スポットとは反対側(関東平野)が見渡せるので、ちょうど良い。
このあたりでは、ミツバツツジ(多分)がちらほら咲いていて、ピンクの花が鮮やか。
実はちょっと期待していた、赤城山目物(?)のヤマツツジは全然咲いていなかった。(時期が早かったらしい)
この日はヘンテコに真夏日で暑いけれど、季節はあくまでツツジも咲いていない春なのだ。体感的に納得しづらいが…。
駒ヶ岳を過ぎれば、後は本当に下るだけ。
時折現れる鉄の階段をカンカンと靴音を鳴らして下界へと下っていく。鉄の手すりを持っていると、「日陰だと冷たくて気持ちいい」ということに、今更ながら気づく。日光ってやっぱりすごい。
途中で、就学前の十数人の子どもたちを引率したグループとすれ違う。子ども会とかかな?
子ども達は元気いっぱいだ。中には走っている子もいる。さすが、体力の塊だ。
「今日は本当に暑いですね」と、挨拶を交わす。
引率の方は、結構辛そうであった…。やはり大人の方が早めにバテる…。
このあたりで、暑さと疲労とで、足が自分が思っているよりも上がっていない現象が発生し、時々躓きそうになる。
ずっと下っているせいか、膝もなんとなくガクガク。
所謂、「膝が笑う」という状態だ。下りが続くとやっぱり辛い。
ふいに、そういえば「山笑う」は春の季語らしいけれど、どんな感じなんだろう?という疑問が浮かぶ。
多分、今の、真夏と言っても過言ではない状況の山とは違うだろうな。語感がさわやかだし。
などと、どうでもいいことを考えながら、山道をどんどん下りていくと、車の走る音が大きく聞こえるようになり、あっという間に登山口到着。
14:45 本日の行程終了
ほぼ真夏だったので、汗だくだ。
汗でびちょびちょになりながら、コーラをぐいっと飲む。達成感が最高に気持ちいい。
夏の山はこれがイイ。
図らずも夏山の前哨戦のようになってしまったが、夏に向けて、いいスタートを切れた感じだ。
今年もいろんな山に行けるといいなあ。
<コースタイム>
9:30駐車場…10:00黒檜登山口…11:40山頂…11:45絶景ポイント(お昼休憩45分)…12:40御黒檜大神…13:25大だるみ…13:45駒ヶ岳…14:45駒ヶ岳登山口