睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

尾瀬沼~チーズフォンデュで満喫しすぎ~

8月上旬に尾瀬沼に行ってきた。

G県民の私にとって、尾瀬の玄関口と言えば、鳩待峠。そこから、尾瀬ヶ原を一周するのが近年の定番コースだった。

しかし、今回は久しぶりに尾瀬沼方面にトライしてみた。何でも、今年はニッコウキスゲが7月の終盤が最盛期らしく、ということは、8月上旬でも大江湿原には咲いているに違いない、と期待しての決定だ。

登山口は福島県側の沼山峠初めてだ。Googleさんに道を聞いてみたところ、G県東部からは4時間以上かかると言っている…。

めっちゃ遠い…。

ちなみに鳩待峠なら、2時間半くらいだ。

鳩待峠と沼山峠の間は歩いて行ける距離(ただし、1日以上かかるが…)なのに、車では簡単に行き来できない。なんだか不思議な気もするが、山にに囲まれているのだから、それが当たり前なのだ。富士山の山梨側と静岡側の登山口だって、相当離れている。

 

4:30 登山口まで遠いことを承知の上で、だいたい日の出と共に出発。朝日がまぶしい。

今回も山の相棒、ノムさんに同行していただく。ノムさん尾瀬沼に行くのは5年ぶりくらいかもしれない。いや、もっとか?

あの時は、鳩待峠から入り、尾瀬ヶ原尾瀬沼を抜けて、大清水に出る、という大縦断コースを日帰りで敢行した。

とにかく疲れて、最後の方は無言だった。この私たちがしゃべる気力を無くしてしまったのだ。通常、1泊2日のコースだからねえ…。

思い返せば、当時は、本当に何もわかっていなかったので、無茶をしまくりだった。

大清水に着いたはいいけど、バスがすでに終わっていて、自力でタクシーを呼んで、なんとか帰った。大失敗。

失敗を重ねて、人は成長していく生き物なのだ、きっと。

 

那須で高速を下り、そこからはひたすら下道を2時間ごんごん走る。

9:30 ようやく、駐車場の御池に到着。途中、サービスエリアやコンビニに寄ったりしていた時間もあるが、5時間かかった。

やっぱり、遠い。本来は泊が必要だったかもしれないと、ちょっと思う。

私とノムさんのコンビは、成長したつもりになっているだけで、案外、昔とかわらない無茶をずっとしているのかもしれない。成長したと勘違いしているあたり、昔よりもタチが悪いではないか…。

 

バスに乗り、沼山峠を目指す。

しっかりと最終バスの時間17:10を心に刻み込む。毎回、このチェックだけは怠らない。これが、ぺーぺー時代からの成長の証だろうか。

 

10:00 沼山峠着

登山口を入ると、最初は樹林帯の登り。尾瀬なので、きっちり木道が整備されていて、歩きやすい。階段激登り箇所もあるが、段差が少なく、揃っているので、それほどキツくは無い。でも、ぜーぜー息は切らしてしまうが…。

しばらく登ると、今度は下りとなる。

どうせ下るなら、登らなくてもいいじゃんね…。なんてことを毎回思うあたり、進歩のカケラもない私…。

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安心の木道

 歩いていると、毎度登場するアブがぶんぶんと、まわりを回り出す。もう、慣れているので、アブくらいでで動揺したりはしない。うっとうしいけど。

特にノムさんは妙に好かれているので(体温高い?)、腐れ縁の友達のような感覚になっているようだ。

あぶさん、やっぱり来るのか。もー、来なくていいって言ってるのに」

ノムさんを歓迎しての、よろこびの舞だよ!久しぶりだねって!」

そんなにわたしが好きなの?あぶさん。しょうがないなー」

ノムさんツンデレ

 

1時間ほど、あぶさんと共に樹林帯を歩くと、ニッコウキスゲの群生地で有名な大江湿原へ出る。

ニッコウキスゲは私たちが行く前の週末くらいが最盛期だったようなので、まだ咲いているだろう、と期待していた。

道の両脇の樹木が無くなり、一気に視界が広がった先には、背の高い草の揺れる湿原が黄色に染まる光景が…ということは全く無く、ニッコウキスゲはあまり咲いていなかった…。

1週間でみんな咲ききってしまうのか。シーズンが短い花なのね。だからこそ、一気に咲いて、黄色い絨毯になるのだろう。短期集中型。

ちょっとがっかり。しかし、肩を落として歩いて行くと、両脇にだんだんと黄色の花が増えてきた。

おや、まだそこそこ咲いているのかしら?

沼に近づくにつれて、ニッコウキスゲの花数は増えていき、黄色の絨毯とまではいかないが、かなり見応えのある景色に。

そのほか、コオニユリやコバギボウシ、ワレモコウなども咲いていて、百花繚乱だ。

「ひゃっぽう。極楽のようだねえ」

一気にテンションのあがる私たち。

私は従来「花よりも、観葉植物が好き」などとスカしたことを言うタイプだが、やっぱり花が咲いていると、楽しくなってしまうのだ。

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ニッコウキスゲ。最盛期は、一面真っ黄色になるそうな。

11:30 尾瀬沼のほとりの長蔵小屋着。

さて、今回はニッコウキスゲだけを目当てに来たのでは無い。

もう1つのミッションとして「山ごはんの充実」を掲げてきたのだ。

尾瀬なら、あちこちにベンチはあるし、何回か来ていてコースタイムも読みやすいので、一歩進んで、話題の「山ごはん」のレベルを上げることにしたのだ。

当初はノムさんの「ホットサンドが食べたい」との希望があったのだが、「ホットサンドメーカー重いよね…」という状況を前にして、折衷案(?)でチーズフォンデュで手を打つことにした。

これなら、家で具を切って持って行くだけ。後は、チーズフォンデュの素(?)を暖めるだけ。とても簡単!

あれ?あまり料理らしいことをしていないな…。チーズを暖めるだけと、お湯湧かしてラーメンにそそぐだけと、たいして違わない気もする。

「山ごはん」として、一歩前進したのかどうか、若干疑義はあるといえばあるが、かんたん、おいしいで最高の選択だったと思う。

ちなみにノムさん提供のミニトマトが、意外においしくて感動した。オクラも美味。

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あらかじめアルミホイルを巻いておくのがポイント。

長蔵小屋前ベンチで、舌鼓を打つ時間は至福の時間。

のんびりご飯を食べ、お腹がふくれたところで、活動を再開する。

この時点で時間は12:30過ぎ。

「とりあえず尾瀬沼を一周しようか」と、念のため地図を取り出し、コースタイムを確認する。

「ううむ。だいたい2時間半くらいかかる計算だけど、どうかな?そこから、沼山峠までの時間を考えると、割とギリギリの時間だけど

…多分、大丈夫。行ってみよう」

「そうだよね、大丈夫だよね。沼まわりたいもんね」

私とノムさんのコンビは、いつも最終バスやらロープウェイの時間に迫られて行動しているが、一向に改まらないのは、二人とも能天気な性格だからだろう。類は友を呼ぶのだ。

数年前の、大清水でのバスもう無い事件が一瞬頭をよぎったが、コースタイムから考えても大丈夫だろうと強気の判断をする。

大丈夫だ。最終バスの時間はきちんと抑えている。

 

尾瀬沼ヒュッテの望遠鏡で燧ヶ岳の頂上に立つ人々を眺めたりして、尾瀬沼一周に出発したのは12:45くらい。

尾瀬沼山荘手前で、沼の対岸の燧ヶ岳の撮影会をしているあたりから、空には黒い雲がだんだんと立ちこめてきた。

「やばい。これは降るね

撮影している燧ヶ岳の上の方にも雨雲が迫っている。

夏だから、午後になると雨が降る確立が高いことは承知してはいたのだが、今回はなんとなく大丈夫なような気がしていたのだ。

「どうにか保ってくれないかな」と空を見上げて祈るが、今回は頼みの綱(?)である晴れ守を持ってこなかった。(かわりに雷除け御守を持っていた)

だめかもしれない…。

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対岸の燧ヶ岳。雨雲接近!

13:15 尾瀬沼山荘に着いたあたりから、ぽつぽつと雨粒が落ちてきた。

まだ、たいしたことはないが、今後の状況に少し不安を覚える。が、どんどん進む。

この先の道は木道の整備不良箇所が多く、また、木道がない通常の道もかなり多い。行き交う人の姿もほとんどない。

「おかしいねー。また、人が全然いなくなっちゃったよ

「みんな、もう帰っちゃったのかなー」

「この会話、毎回してるよね

失敗から学ぶはずなのだが、私たちは全然学んでいないようだ。

「余裕のある行程」か…。

 

沼岸をしばらく歩いていると、急にざざーっという激しい音と共に、ついに、樹木の屋根ではカバーしきれないほどの強い雨脚になった。

これはもう、観念して、カッパとザックカバーを装着する。

前回、立山に行った時に新調したカッパは2回の山行で2回登板することになった。100%の稼働率だ。これは縁起が良いのか、悪いのか…。

 

雨が降りしきる中、スピードを緩めず歩いていると、雨宿りをしている方に出会う。

彼は今日は宿泊組なのだろう。私たちも、出来るものなら、少し雨宿りをして、小雨になったあたりで再スタートしたいところだが、何しろ、最終バスの時間という大きな制約がある。

ノムさん。最終バスがあるから、私たちは雨でも歩き続けなくちゃいけないよね」

との私の言葉に、ノムさんは力強い台詞を返してくれた。

「大丈夫。間に合わなかったら、泊ればいい

おお!ノムさんは常にスバラシイ名言で私を導いてくれるなあ。さすがだ、友よ。

「そうだよね。間に合わなければ、泊ればいいんだ」

尾瀬の山小屋は完全予約制だが…)

一気に気持ちが楽になり、雨の中、楽しく沼まわりを歩く。

それにしても、尾瀬沼南岸コースは木道がボロボロである。いっそのこと、無しでもいいのではないだろうか。

 

14:40 沼尻到着。雨だったが、だいたい予定通りの到着。これなら、なんとか最終バスに間に合いそう。雨もほぼ上がった。

休憩所(売店有り)で、尾瀬沼を眺めて写真を撮ったりしていると、売店のお兄さんに「今日はどこ泊るの?」と声を掛けられる。

「今日、帰ります!」と私が言い切ると、「帰るの!?最終バスの時間はわかってるの!!」と非常に驚かれる。

「沼山峠17:10です!」と答えると、少し安心したようで「大清水って言われたら、どうしようかと思ったよ。沼山峠でも、結構、ギリギリだよ。急いだ方がいいよ」とアドバイスをいただく。

やっぱり、ギリギリだったか…。そして、数年前、大清水でバスもうない事件を私たちは経験しているのだよ…。そんなことは、今、ここで口にはできないが…。

ノムさんと二人、苦笑を交わし、早々に沼尻を後にした。

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沼尻から。本当はもう少しゆっくり休憩したかった…

沼尻から大江湿原まではだいたい1時間くらい。

急に気持ちが焦ってきて、やや早めに歩く。途中、人にはほとんど会わず。

尾瀬沼山荘あたりから、全然、人に会わない。天下の尾瀬だというのに。

「お兄さんは急げって言ってたけど、多分、間に合うと思うんだけどねえ」

「しかし、不安になるくらい、誰にも会わないねえ…

出会うのはカエルばかり(雨が降ったので、たくさん出てきた)の道を、黙々と歩く。

 

15:40 大江湿原到着。

私は、ここを15:30に通過すれば大丈夫だ、と計算していたので、大分安心する。

さきほどまで、無人の道を歩いていたのに、ここに来たら、急にたくさんの人が現れた。よく見ると、皆、ザックを背負っていない軽装である。本日、宿泊組が散歩しているのか…。

大江湿原を沼山峠方面に進むにつれ、人影はどんどん減っていき、前を行くお兄さん1人になってしまった。

ノムさん、あの第一村人だけが、友みたいだよ」

「でも、私たちの他にも帰る人がいるというのは心強いねえ

時間が読める場所に来ているので、私たちの会話も再び余裕が出てきた。

 

16:40 沼山峠到着。30分も余裕を持って到着できた。

「なんだ。やっぱり大丈夫だったじゃん」

「しかも、かなりの余裕だよ」

全く反省のない私たち。

売店で買ったコーラを飲みながら、最終バスの到着を待つ。

周りを見回すと、大江湿原から一緒だった第一村人さんの他7名がバスを待っている。

最終バス乗車は私とノムさんを含めて9名だった。

…ラスト10人に入ってしまった…。

これは、本当に最後に残った人たちだ。

次回はもうちょっと余裕のある行程にしなければいけないと思う。人間は学べる生き物であるはずだ、多分。

ついでに、駐車場から那須までの2時間の下道が、夜だと街灯も無く、ご飯を食べる場所も無いので、やっぱり、泊付きの方がいいかもしれない、と強く思った。

那須までずっと腹ぺこ。早く帰れば、多分、ご飯にはありつけたのだろうなあ…。

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こちらはミズバショウ。夏になると巨大化する。

<コースタイム>

9:30御池…10:00沼山峠…11:00大江湿原…11:30長蔵小屋(昼食1時間)…13:15尾瀬沼山荘…14:40沼尻…15:40大江湿原…16:40沼山峠…17:40御池