睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

木曽駒ケ岳〜ロープウェイ一番乗り〜

今年の夏も、私とキキちゃんの雨女コンビは山へ向かった。行き先は中央アルプス木曽駒ケ岳千畳敷カールのお花畑で有名な山だ。

雨女の呪いにかかりっぱなしの私たちなので、梅雨が完全に明けていて、夏本番になっているであろう8月中旬に日程を設定してみた。なんとか抗って、晴れを勝ちとりたい。

そんな私たちをあざ笑うかのごとく、南の海上台風発生…!!

1週間前の週間天気予報では、雨マークがちらついている。

また…また、雨にたたられるのか。

涙を堪えながら、毎日、天気予報をチェックし続けると、天気予報から雨マークが消えた。台風は南の海上で着々と北上しているようだが、その動きは遅く、どうやら私たちの登山後に日本列島にやってくるらしい。

ハレルヤ!天気の神様に感謝を捧げる。ちょっと、宗教がごっちゃになっているけど。

いくら私たちが雨女だといっても、毎回雨が降るという訳では無いのだ。

 

前日、関西在住のキキちゃんとは駒ヶ根駅で待ち合わせ。

本来は涼しい土地なのだろうが、この日の駒ヶ根市は暑かった。多分、35度近かったみたい。

遅めのお昼ご飯として、名物ソースカツ丼を汗だくになりながら食す。

店にはエアコンがなかった。普段はそれで大丈夫なのだろうが、この日はさすがにちょっと暑かった。

下界は暑いけれど、山の上に行けば、間違いなく涼しい風が吹いている。それを思えば、なんということはない。

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ソースカツ丼。駅近くのおそば屋さんでいただきました。

周辺を観光した後、本日の宿にチェックイン。

木曽駒登山者が多く宿泊するらしく、到着後にお茶を振る舞ってくれた宿のお姉さんが、にやりとしながら「明日、木曽駒に行くのなら、耳寄り情報があるの」と耳打ちをしてきた。

宿泊者だけが乗れる、特別便のバスが4:50に出るの。それには、菅の台の駐車場からの人は乗れないから、ロープウェイの始発に乗れるわよ」

セリフだけだと、銀河鉄道に鉄郎を誘うメーテルみたいで怪しい。しかも、話の内容がイマイチよくわからない。宿泊者だけが乗れる特別便って何?

お姉さんはその情報だけをささやき、私たちの元を去ってしまった。ちょっと待って。もうちょっと情報を!

 

当初、私は6時か7時くらいに宿を出て、菅の台の駐車場に車をおいて、木曽駒に向かおうと思っていた。木曽駒頂上までのコースタイムを考えると、それで、十分間に合う計算だ。

それなので、「別に謎の特別便に乗らないて、もうちょっと遅い時間の通常のバスに乗ればいいんじゃない?」とキキちゃんに提案してみた。

しかし、キキちゃんは「いや、特別便があるなら、絶対それに乗った方がいい」と強く主張する。

なんでも、キキちゃんの事前情報によると、木曽駒ヶ岳はものすごく人気があるので、ロープウェイは1~2時間待つのが当たり前なのだという。だから、他の人に先んじてロープウェイに乗れるチャンスがあるのなら、絶対にそれを逃してはいけないのだ、と。

「1時間とか待つなんて絶対嫌やもん」としめくくる。

えー、そうなの?そんなに混むの?

疑義を口にしようとして、ふと、何年か前、紅葉の時期の那須岳エライ目にあったことを思い出し、口をつぐむ。あの時は、ロープウェイは混んでいなかったけど、とにかく駐車場探しの大渋滞で、本当に懲りたのだった。

人気の山はそういうこともあるのかもしれない。

今回は、宿のお姉さんとキキちゃんの意見に従うことにする。

 

朝、4:30宿を出発し、バス停に向かう。

宿の怪しいお姉さんは4時過ぎれば明るくなってると言っていたが、周りはまだ暗い。日の出はまだらしい。

宿近くのバス停にはすでに10人くらいの人が並んでおり、時間通りにやってきたバスに乗り込むと、すでにかなりの登山者が乗車している。なるほど、確かにものすごく混む山のようだ。

しかも、次々と停車するバス停で乗り込んでくる人が補助席にまで座り、満席状態になると、その後のバス停で待つ人々には「次のバスに乗ってください」とスルーしていく。路線バスなのに!

確かにこの状態では、始発に乗る選択は正しかったかも。

ちなみに、謎の特別便とは、通常の始発より早い時間の臨時便で、マイカー登山者の駐車場である「菅の台」を通らないルートの路線バスであったようだ。菅の台の始発より早いため、ロープウェイに先んじて乗れる、ということなのだ。

 

おかげで、5:20頃、ロープウェイの始発駅の「しらび平」に到着。

本当に最初のバスだったようで、まだ列には誰も並んでいなかった。謎の特別便の客達が、我先にと列を作る。みんな、早朝からやる気に満ちている。

私たちもいそいそと列に並び、ロープウェイの発車を待つことにする。

しばし待つと、5:30にロープウェイ運転開始。(これも臨時便で、通常より早い)

もちろん、私たちはこの始発にに乗車できる。ロープウェイは満員だ。(他のバスが到着している)

登山者はとにかく朝が早いと言うが、それは本当なんだな、と今頃実感し、私のいつもの出発時間は、相当なのんびりスタイルだった、と1人静かに反省する。だから、いつもバスやらロープウェイやらの最終時間に追われてひやひやしているのか…。

 

5:45 ロープウェイ千畳敷駅に到着。

すっきり晴れていて、目の前には宝剣岳の山頂がくっきりと青空に突き出している。

最高の景色だ。わくわくする。

登山口に向けて、しばらく道を下ると、そこが、あの千畳敷カールだ。氷河が作った美しいカーブ。ついに来た。 

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千畳敷カールのお花畑。

カールの中を気持ちよく歩いていると、周りには高山植物が咲き乱れている。お花畑のベストシーズンだ。

早朝のせいで人も少なく、最高に楽しい。一気にテンションも上昇する。

頭に浮かぶ歌は、やはりあの歌だ。

くちぶっえは なっぜ~ 遠くまで聞こえるの♪

空のどこかからぶら下がる、異様に長いブランコをこぐ●イジが頭をちらついて離れない。

教えて~おじいさん~♪

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ミヤマキンポウゲ

 クルマユリチシマギキョウなど、花に見とれながら歩いて行くと、あっという間に急登の登山が始まる。

急登ではあるが、道は整備されているので登りやすい。

後ろを振り返ると、ロープウェイの駅の赤い屋根がどんどん小さく見えるようになる。人間の脚力はたいしたものだ。一歩一歩のろのろ登っているようでも、着実に進んでいるのだ。「ウサギとかめ」の寓話が身に染みる。

 

7:00 三畳敷カールを登り終え、乗越浄土到着。

剣岳が目の前にどーんと姿を現す。そちらに向かう登山者も多い。

ついでに登ってしまいたい衝動に駆られるが、かなりの鎖場だと聞いているので、見逃すことにする。

キキちゃんも慎重派なので「私は絶対無理。宝剣先輩は初心者が登ったらダメな山やで」とキッパリ。

ちなみに、ここでキキちゃんの事前情報はほぼ、鈴木ともこ著作の「山登りはじめました」であることが判明。

私も読んでいるので、確かに宝剣岳は途中で諦めたと書いてあったことような気がする。しかし、混雑状況とかの話は全然覚えていなかった。

私の頭は、すぐに内容を忘れてしまうニワトリ頭だ。読んだ本の内容を片っ端から忘れていく。こんなに内容を忘れる頭で、読書を趣味にするのは間違っているのではないか…。

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乗越浄土から宝剣岳

7:30 中岳着。2925m

岩の隙間から、目指す先の木曽駒への道を眺める。

一度下ってから、鞍部を経てもう一度登り返すルートになっているようだ。また登るのに、一度下る悲しさよ…。

 

8:00 鞍部の頂上山荘

8:20 木曽駒ヶ岳山頂到着。2956m

絶景だ。

雨女コンビだけど、今回の登山は最高の天気。

近くの御嶽山がよく見る。独立峰で目立っている。

現在はまた登れるようになったし、手作りのシフォンケーキが食べられる山小屋もあるらしいので、いつかは登ってみたい。でも、やっぱり、まだちょっと怖い…。

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御嶽山。くっきり独立峰。(本当は中岳で撮りました)

頂上の神社にお参りして、しばし休憩。

いつもの私の登山スタイルだと、頂上で食べるのは昼食なのだが、今回は朝食のおにぎりを食べる。

この時間は、朝だ。

こんな早い時間から頂上に立ってしまうなんて、なんだかすごく贅沢な気持ちがする。

一日の始まりの時間帯に、すでにひとつ大きな仕事をやり遂げているのだ。

なんとなく、えっへん、と胸を張りたい気分だ。

朝から私は、絶景の青空の中にいる。すごい一日だ。

 

8:45頃、頂上を出発し、帰路に着く。

途中、頂上山荘にて、クレープ(アイス)を食べる。まだ、頂上を出たばかりだが、何しろ、時間に余裕があるので、もう休憩なのだ。のんびりしまくり。

確かに、時間に余裕があるっていいなあ。

 

10:00 乗越浄土

ここから、千畳敷カールを下っていく。

たくさんの登りの方と挨拶をしながらすれ違う。

いつもの私だったら、この時間は、登り組のメンバーだったはずだ。登りながら「この時間に下ってくる人って、何時から登ってくるんだろう」と思っていたが、今日、身をもって知った。日の出前の4:50からだよ…。(正確には、歩き出したのは5:30くらいだが)

 

千畳敷カールを下り、登山者ではない散策の観光客の皆さんに混じって、お花畑をしばし楽しむ。登山終了も間近だ。

ああ、下山後にはいつものアレが飲みたいなあ、と思ったら、自然と歌を口ずさんでいた。

コーラ コーラ コォラー♪

途端に前を行く、キキちゃんが振り返る。

「そのメロディーは、クイズ●ービーの直前の、●ート製薬!

「何故か、自然と口ずさんでしまっていた!?私の脳に刻み込まれているらしい…。なんてオソロシイCMなんだ…」

そして、即座に回答するキキちゃん、グッジョブ!

 

アホな話をしながら歩いていると、到着はあっという間。

10:45 ロープウェイ千畳敷駅に到着。登山終了。

私は、希望通り、コーラにありついた。ぷはーっ炭酸、染みる。

登山にはカップ●ードルとコーラがベストマッチだ。無くてはならない。

登山混雑時の自動販売機は、コーラが売り切れていることもよくあるが、今回は下山時間が早いので、ちゃんと購入できた。これも、早朝登山の利点だろう。

でも、あまり冷えていなかった…。私たちを抜いていった方が、冷えたコーラを軒並み購入してしまったのだろか。まだまだ、ということか。

 

ちなみに、キキちゃんは「早く乗らないと、ロープウェイが大混雑する。今、どのくらい、待ってるのかな」と、コーラを飲む私をおいて、すぐに確認に行った。

キキちゃんの視察によると、待っている人は、ロープウェイ1台に乗りきれるくらいの人数だったそうな。

実際、私たちは、ほぼ待ち無しで乗れた。

多分、下りが混雑するのは午後なのだろう。ちなみに、私たちが到着した11時くらいのしらび平では、千畳敷行きが混雑しているようで、整理券が発行されていた。

 

しらび平からのバスにもすぐに乗れ、今回の木曽駒の乗り物系はほぼすべて混雑知らずだった。

宿のお姉さん情報と、キキちゃんの主張に感謝するほかない。ありがとう。私一人だったら、もっと遅い時間から登り初めて、かなりロープウェイを待ったと思う。

情報収集って大事だ。

スムーズで楽しい登山に大満足。3000m近い中央アルプスに、午前中で日帰り登山できるなんて、嘘のようだ。ロープウェイ、ありがとう。

キキちゃんも「今回の登山は天気も時間もよくて、すごく楽しかった」と満足そうに言っていた。

本当に。

余裕があるって、スバラシイ。

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女王様。コマクサも咲いていた。

 

<コースタイム>

4:50バス停…5:20しらび平…5:30ロープウェイ…5:40千畳敷駅…7:00乗越浄土…7:30中岳…8:20木曽駒ヶ岳(休憩30分)…9:15頂上山荘(おやつ)…10:00乗越浄土…10:45千畳敷