睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「あやうしズッコケ探検隊」那須正幹

山を歩いているときに、ユリが咲いていると、私は何となく安心する。

何故か。

それはユリ根は食べられるからだ。

これで、いざという時(山で遭難した時?)も、最悪食料は確保できる。

スーパーでユリ根が売られているのを見るときも、茶碗蒸しの中にユリ根を見つけたときも「ユリ根は食べられる!」とほっこりと安心するのだ。

妙なところにだけ、強い防衛本能を発揮する私は、非常事態に役に立つものを発見すると「大丈夫だ!」と力強く自分に言い聞かせてしまうのだ。子どもの頃に「備えよ常に」がモットーのガール●カウトに入っていたからなのだろうか。

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安心のコオニユリ尾瀬は大丈夫!

 

ユリ根が食べられる、ということは、小学生の頃に読んだ「あやうしズッコケ探検隊」で学んだ。

ズッコケ3人組シリーズは、ハチベエハカセ、モーちゃんの小学生3人組が様々な活躍をする児童書だ。宝探しをしたり、事件を解決したり、学校新聞を作ったり。

私が小学生の頃は大ベストセラーシリーズで、どこの本屋さんでも平積みで売られていた。当時、私も大好きで、シリーズ全作ではないが、かなりの冊数を本棚に並べていた。

今回、久しぶりに開いてみたら、表示カバー折り返しにある既刊シリーズ一覧のそれぞれのタイトル横に、鉛筆で「○」「△」「×」が書かれていた。おそらく、「○」は持っている本、「△」は図書館で借りて読んだ本、「×」はまだ読んでいない本、であろう。

小学生当時から、変にマメな私。コレクター魂から、シリーズ全作読破を目論んでいたのであろう。(多分、達成した)

ちなみに、現在の私は、家にある本のデータベースを作っている。シリーズものはデータベースで全巻所持しているかは常に確認出来る状態だ。三つ子の魂百までとはよく言ったものだと思う。

 

「あやうしズッコケ探検隊」は、3人組が無人島に漂流する、という内容で、シリーズ中の私のナンバー1作品。

無人島漂流モノは私が好きな小説のジャンルだ。

たいした道具も無い中で、どうやって食料や日常生活で必要なものを確保していくのか。知識と知恵を総動員しての無人島生活。

少年たちが(残念ながら少女がいることはあまりない)、工夫を凝らし、協力し合って、無人島での生活を送っていく様子に、「私だったらこうするな」と物語に参加している気持ちで読み進めていく。

火起こしで漂流した仲間が困っていたら、すぐに「メガネで光を集めて着火させるんだ」と提案するのにな、とか。…こういう話にはメガネキャラが必ずいると決まっているのだ。

 

さて、「あやうしズッコケ探検隊」である。

3人が流れ着いた島では、すぐに川が発見され、水問題はクリア。釣り道具も持っていたので、魚釣りにより食料問題もだいだいクリア。(ついでにサザエもゲット)

しかし、3人の中で一番博識(?)なハカセは言う。「人間はつねに食物のバランスを考えなくてはならない。動物性タンパク質ばかりでなく植物性のビタミンだとか炭水化物をとらなくては栄養がかたよってしまう」

小学生とは思えない、さすがハカセとのあだ名を持つ少年の発言だ。

そこで、食べられる植物を探したところ、八百屋の息子のハチベエが「おまえ知らないのか。ユリの根っこって、たべられるんだぜ」とユリ根を発見するのである。

これは私にとっての朗報であった。

だって、遭難する時に釣り竿を持っている確率は低いので(そもそも釣り竿を所持していない)魚ゲットは私にとってはかなり高いハードルだったのだ。さらに、サザエは貝類が苦手な私にとっては、できれば避けたい食材だ。いざという時にはもちろんたべる覚悟はあるけれども…。

そんな中でユリ根は、掘ればいいのである。私でも簡単に獲得できそうだ。

しかも、ゆでて食べると、ジャガイモとクワイを一緒にしたようなお味だという。調理法も簡単だ。

これだ!これなら、私でも無人島でしばらく生活ができそうだ!

小学生当時の私はここでしっかり「ユリ根=非常食」の知識による、いざというときへの安心を手にして満足したのである。

 

しかし、今回久しぶりに再読してみたところ、大きな心配がむくむくと芽生える事態が発生していたことに気づいた。

3人の無人島サバイバル生活は実質1週間なのだが、そのわずか1週間の間に、ユリ根を掘り尽くしているのである!

正確には、群生していた1カ所を掘り尽くし、別の場所へユリを掘りに行かなくてはならなくなったのだ。

「この島の海岸には、オニユリの群落があちこちに点在していたから、たちまちこまることはなかったけれど」と作中では書かれているが、たちまちは困らなくても、将来的には困るではないか!

しかも、1カ所を掘り尽くしてしまったら、その場所では翌年は花が咲かず、長期間の漂流生活には耐えきれない。

考えの浅い小学生3人組め!どうして、半分くらいでやめておく分別を持たないのか。

たかだか3人の小学生の胃袋を満たすだけでも、すぐに掘り尽くされてしまうユリ根…。

これは、漂流時の食料の決定打としては、いささか不安が残る。短期間向けなのか。

作中ではまったく問題になっていない部分で頭を抱える私。

ズッコケ3人組は1週間程度で漂流生活を終了しているが、私が漂流するときには1週間程度で助けられる保証はどこにもないのである。

これはいけない。ユリを見て「非常食確保。安心」と思っていたが、本当は全く安心ではなかったのだ。

ユリ根以外の漂流時の食料の知識を得なくてはならない。

長いこと、ユリ根で安心、と思っていたものが崩れてしまい、今、非常に切羽詰まった気持ちになっている。

この気持ちを落ち着けるためには、すぐさま本棚をあさり、無人島漂流モノの小説を再読して、ユリ根に変わる食料の知識を探さねばならない。

幸い、私は無人島漂流モノ小説を何冊か所持している。この中に決定打があることを切に願う!! 

あやうしズッコケ探険隊 (1980年) (こども文学館)

あやうしズッコケ探険隊 (1980年) (こども文学館)

 

 ポプラ社文庫版もあります。

 

その後、某芸人さんの無人島サバイバルロケを見たところ、ユリ根がめっちゃ登場していた!

サバイバルの師匠が教えたもの。ユリ根、ドングリ、ツワブキ

やっぱり、私の無人島生き残り方法に間違いは無かった。ユリ根でイイのだ。

しかし、ロケで作った食材はほぼ最悪のお味だったらしい…。

某芸人さんが「おげぇぇ…」と吐き出している姿に爆笑しながら、ユリ根、やっぱダメかも…とちょっと複雑な気持ちにもなった。