睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

大野山~某アイドル聖地(?)で富士山を~

冬は空気が澄んでいるので、景色がよく見える季節だ。

この季節を逃さず、富士山が綺麗に見える低山を登りたい、という気持ちで手頃な山を探していたところ、「大野山」という名前に目がとまった。

確か、山の相棒ノムさんは、某アイドルの中ではリーダーである大●氏が一番好きだと言っていた。

さらにルート図を見ていたところ「嵐橋」「嵐集落」などという文字が目に飛び込んで来た。

これは…!!某アイドルの聖地なのではないか!?

あわててノムさんに連絡したところ、「行くしかないじゃないか!」と即答される。間髪を入れずとはこのことだ。髪の毛一本の隙間も無いほど早かった。

多分、某アイドルのファンで、且つ登山が趣味の方には、(僅少…?)ものすごく有名な山に違いない。いい山を見つけた!これが噂に聞く、聖地巡礼だ。←ちょっと違う?

 

大野山は丹沢山に属している。

丹沢山系はガイドブックなどでは「アクセスが良い」などと書かれていることが多いが、それはあくまで大都会(東京)からのアクセスであって、北関東からは大都会を経由していく場所なので、かなり遠い。

そのため、塔ノ岳とか大山とかが人気があることは知っていたが、丹沢はずっとノーマークだった。

しかし、グーグル先生に聞いてみたところ、圏央道を使えば意外とG県東部からは時間がかからず、だいたい2時間で到着するらしいのだ。

2時間なら尾瀬(県内)に行くより近いではないか!

ごめんなさい、登山ガイドブック!今まで「所詮、大都会中心なんだよね。ブ●ータス、おまえもか、って感じだよ。けっ」とけなしていたが、北関東からもアクセスけっこういいみたい。

これからは、丹沢も守備範囲だ。ありがとう、某アイドル。私の守備範囲を広げてくれて!

 

意外と近いことが判明したので、午前6:00にG県東部を出発。ゆっくりめの出発でも大丈夫だ。

飛んで県の高速を走っていると、目の前に雪をかぶった山がどーんと現れる。

「あ、富士山だね」とノムさんが言ったが「えっ、富士山がこんな大きいわけ無いじゃん。浅間だよ」と返す私。

いや待て私。G県で見る浅間よりも遙かに大きいぞ!ここは飛んで県だ。浅間の訳が無い。

ということは富士山かーー!!

こんなに富士山が大きく見えるとは!飛んで県民、うらやましい。

私はG県民が染みついているので、富士山っぽい山は浅間山、とすぐに判断してしまうが、ホンモノの富士山であった。

都会の街の上に富士山が鎮座する風景は、かなりの違和感だ。

さらに、登山口に近づくと、雪の全く無い山の合間から、真っ白な富士山がぬぅっと顔を出している。

なんか、ダイダラボッチがある。大入道が山から顔を出している感じだ。

子どもの頃に読んだ「ぐりとぐらのかいすいよく」で海に現れる「うみぼうず」も何となく思い出した。おおきい人だった、確か。

このあたりに住んでいる人は、この風景の中で生活しているので、違和感なんて感じないんだろうな。

それどころか、故郷を離れて暮らしていた人が、ぬぅっと顔を出す富士山を見ると「帰ってきた」と感じたりするのだろう。「ふるさとの山」が富士山なんてうらやましい。

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富士山がぬぅ。

8:30過ぎに山北駅に到着。

事前に調べておいた「さくらの湯」の駐車場に車を置かせて貰う。

ここから電車で一駅隣の谷峨駅に向かい、大野山経由で山北駅に戻ってくる周遊コースだ。

だいたい9:00  山北駅から電車に乗って驚く。

車内にはこれから登山するぞ、という気合いに満ちた格好の人々が大勢いたからだ。

大野山って、結構メジャーな山だったのか!

私は今回偶然見つけただけで、まったく知らなかったので、地元の人がハイキングで登る山だと思っていた。

違ったみたい。

私がど田舎北関東民なだけで、大都会民には知られた山だったらしい。丹沢はノーマークだったから、知らなかったんさねー。(G県方言)

しかし、まわりの登山スタイルの大都会民(推定)を見ていると、どうも女性比率が高い気がする。

これはやはり…。某アイドルの聖地なのではないか?

ノムさん、やはり某アイドルファンには知れ渡っている山なのではないかい?」

「うむ。もしや、嵐集落に住まう人々なのかもしれん

「その集落、ファンが住む集落なの!?

くだらないことを言っていると、電車はすぐに谷峨駅に到着。

無人駅であったが、駅前はこれから大野山に登るであろう人たちで混雑していた。

 

駅から大野山を目指して舗装路を歩くと、すぐに吊り橋が現れる。

その名も「嵐橋」

だから何だ、ということはないが、何かトキメキを感じる。

多分、彼らがデビューするずっと前から、この名前でここにあったのだろう。まさか、今、私たちにきゃーきゃー喜ばれることになるとは思ってなかっただろうなあ…。

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吊り橋なので10人まで。

嵐橋を渡り、舗装された山道をてくてく登っていくと、嵐集落があり、その脇の細い道からが舗装されていない山道になる。

普通の山間の小さな集落であった。もちろんファンが住まう集落では無い。

百人一首に「嵐吹く 三室の山の紅葉場は 竜田の川の 錦なりけり」という歌があるが、このあたりも紅葉がきっと綺麗なのだろう。

いや、名前からすると、本来は風の強い地域なのかもしれない。

同じく百人一首に「吹くからに 秋の草木のしおるれば むべ山風を 嵐というらん」という歌もある。(ちなみにこの歌は「ふ」の一字決まり)

この日は風のない、穏やかな登山日和であったが。

 

道はひたすら地味な上り坂だが、ずっとダイダラボッチ富士山がはっきりと見えている。

 

歩き続け、だんだんと高度があがると、富士山の裾野が見えてくる。

「裾野は長し 富士山!赤城みたいだね!

G県民が染みついている私は、日本一の山に対して大変失礼な発言をする。

単独峰の綺麗な裾野が見えてくると、富士山のダイダラボッチ感が薄れてきて、「キレイだよー。ほんと最高だよー」とカメラマンのような発言をして、写真を撮りまくった。

カメラの腕がまるでナッシングの私でも、絵はがきのような写真が撮れる。

しかし、人間の目ほど、高性能のレンズは無い。

「どうして、この目で見た大迫力の感動が、写真にするとこぢんまりとなっちゃうの!?」

それを表現できるのがプロなのか…。

プロが撮ると、実物よりも良いことが多々あるものなあ…。それで、温泉宿を決めるときに何度だまされたか…。

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裾野は長し 富士山

スカイツリーと同じ634m付近を通過してほどなく、11:00ころ、休憩所に到着。

ここからは山頂に向けて回り込んでいく道になるが、「さあ、富士山を見てくださいよ!」と言わんばかりの富士山ロードである。

ずっと、最高の見晴らしだ。

大野山という私を滅して、ひたすら富士山を立てるという、どこか太鼓持ち、いや、ジャ●ーズジュ●アのような山である。

大スターの先輩を立てる。いい山だ。

 

さらにである。

富士山に夢中になっていて、しばらく気づかなかったが、斜め反対方向(南側)に目を向けると、なんと、海も見えるのである。相模湾?)

う、海だーー!!

海なし県民の習性として、海を見つけたら、必ず声を出して周囲に知らせる。

「すごいね、大野山!富士山も海も見えるなんて!一度で二度おいしい!二兎追う者が二兎とも得るだよ!」

ノムさんと私は大興奮である。

実力ある。大野山。さすがである。

 

休憩所から、富士山を共にてくてく歩く。

頂上に着きそうで着かない。

「もー、焦らし上手だなあ」

なんて言っていても、歩いていれば、頂上には着く。

11:15 大野山頂上到着。723m。

子羊のチェーンソーアートがお出迎えをしてくれた。この山はチェーンソーアートも一つの見所らしい。登山道のあちこちにある。

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頂上からも富士山ばっちり

頂上は広い草地になっていて、ベンチ等もいくつかあり、シートを広げた家族連れや10人弱のグループなどの食事で賑わっていた。

電車の中では女性率高い、と思っていたが、別にそういうわけではなかったようだ…。おかしい、あの女性グループ達はどこへ行ってしまったのだ?

実はこの山はすぐ近く(一本木分岐)まで車で上ってこられるのだ。

ほんの少しだけ歩いて、富士山を見ながらランチ、などという贅沢ピクニックも可能な山である。家族連れはそのパターンかもしれない。

 

私たちもここで昼食休憩。

今回の私は基本に立ち返ってチ●ンラーメンにしてみた。くぼみに卵を落とすことも忘れない。

今回、このために卵ケース(2個タイプ)を新たに投入した。

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チ●ンラーメンと一緒に撮ればよかった…

ラーメンをすすりながら、東側に目を向けると、三保ダムが見えた。

この山の底力は本当にすごい。

富士山も、海も、ダムも見えるのだ。

空は文句のつけようもない青空。

雨でも楽しいとか、苦労して登るとより頂上の達成感があるとか、もちろんそれは間違いじゃないけれど、やっぱり、天気が良いときの登山が最高だ。
ここのところ、ノムさんとの登山は天気が今一つだったので、久しぶりの快晴に感無量である。お互いに無言でうなずき、感動を伝え合う。グッジョブ、大野山。

 

12:30 ゆっくりめのお昼休憩を終え、下山開始。

下山ルートではもう富士山は見えない。さよなら富士山。また会う日まで。

駐車場のある一本木分岐の先の牧場を過ぎると、放牧地(電柵あり)脇の階段をひたすら下る。本当にひたすら…。

途中、登りの人とすれ違ったが「これはキツい…」と息を切らせていた。確かに、この階段上りはキツい。

ずっと登ってきて、疲れた体にむち打つトドメの長階段…。キツすぎる。しかも、日当たり良好だ。夏場はさらにキツいだろう。

こっちのルートから登る選択をしなくてよかった。次来ることがあっても、今回と同じルートにしよう。

長い階段を過ぎると、樹林帯の中の山道をひたすら下る。ずっとずっと下りである。

登りだったら、この道もけっこうキツいだろうなあ…。

 

13:30頃 山道を終了し、舗装路に出る。

案内看板によると、ここから駅まで約50分とのこと。結構長い。

炭焼き小屋や廃校になった小学校を通り、集落内の車も通れないような細くて急な坂道をどんどん下ると、大きな車道に到着。

そこからは通常の道路を駅までひたすら歩く。

駅の手前は単線の線路に桜並木、という春には鉄っちゃん垂涎の光景が見られそうな道であった。

案内看板とチェーンソーアートがあちこちに設置してあるので、地図が苦手(控えめな表現)な私たちでも迷わず到着できる。

長めの街歩きはけっこう辛いかな、と思っていたが、割と楽しく歩けた。知らない街を歩くと、当たり前のことなのだが「ここで普通に生活している人がいるんだな」と実感する。

山間の集落で暮らしている子どもは足腰強くなるだろうな。箱根駅伝の5区を走る人たちは、こういうところ出身なのかもしれない。

 

14:30 スタート地点である山北駅に到着。  

700m程度の山なので、楽ちんな低山、だと思っていたが、ずっと地味な登りなので結構疲れた…。

スタート地点が低いから、標高差は結構あるのだ。(約600m)

筑波山登った時に学んだはずだったのに…。すぐに忘れる鳥頭。

 でも、ずっと快晴で、楽しい山登りであった。富士山最高。

そして、今年は某アイドル、ひとまずのラストイヤー。

多分、沢山のファンがこの山を登るのではないだろうか。どうなのかしら?ファンの間の知名度は?結局聖地なのかはよくわからなかった…。

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下山途中に見つけた梅。もうすぐ春。

<コースタイム>

8:30山北駅…9:00谷峨駅…9:15嵐橋…10:50 634m地点…11:00休憩所…11:15山頂…(お昼休憩)…12:30下山開始…13:30炭焼き小屋…14:30山北駅