「かわいい京都御朱印ブック」西村由美子
私は数年前から御朱印収集も趣味にしている。
集め始めたきっかけを話し出すと長くなるのだが、簡単に言うと、NHK大河ドラマ「平清盛」にはまったからだ。
何かというと低視聴率大河ドラマとしてあげられる作品だが、私は大好きだった!なんで人気がでなかったのか、未だにわからない。
美しすぎる待賢門院璋子(壇れい)と西行(藤木直人)のなんとも言えないすれ違いとか、悪左府と呼ばれた藤原頼長(山本耕史)やら、「平家にあらずんは人にあらず」の平時忠(森田剛)やらの怪演とか、平重盛(窪田正孝)の白い直衣が半端なく似合う様子とか、今でも語り出したら止まらないくらいだ。
(北条政子(杏)も建春門院滋子(鳴海凛子)も崇徳上皇(井浦新)も良かった!源頼朝(岡田将生)も他にも…!!言い足りないので、ここらでやめておくが)
当時、あふれる思いを抑えきれず、京都の六波羅蜜寺(平清盛像がある。ついでに空也上人像もある)に出かけたところ、けっこうな人数が御朱印を貰うために並んでいる列を見かけ「ここで御朱印を貰わないなんて、大河ドラマファンの名が廃る!」と、勢いに任せて自然と列に並んでしまったのだ。
六波羅蜜寺ではものすごい熱量で御朱印を貰ったが、平清盛への愛に対する熱量であったため、その後、御朱印収集はたまに貰う程度で、落ち着いていた。
しかし、数年度の平成27年。
友人マーサ(御朱印集めの先輩)に「御朱印帳もかわいいのがたくさんあるよね」と言われて、「確かに…」と深く頷いた。
「でも、マーサ。私、ちょこちょこ御朱印貰ってるけど、全然1冊が埋まる感じがしないよ。次の御朱印帳のことは考えられない状態だよ」
「そう。私もそう。だから、ここらで一発、本場に乗り込むのはどうかね」
私の言葉に、マーサは深く頷き、重々しく告げた。
「京都で御朱印を貰いまくるのはどうかな」
「京都…!!大本場!!」
かつて何かの本で「京都には全部で寺社がいくつあるのか正確な数字はわからない」と書いてあった記憶がある。(本当かな?)そのくらい、寺と神社にあふれる街、京都。
しかも、意外と街が小さくコンパクトにおさまっているので、移動時間が少なく、あちこち何カ所も回れるのだ。ビバ、観光都市!
話はすぐにまとまり、行きの新幹線の中で互いに行きたい寺社のセレクトを発表する。
すると、二人のカバンの中から同じ本が出てきた。
それが「かわいい京都御朱印ブック」である。
友達だから、好み似てるもんね…。想定しておくべき事態だった、と後悔したが後の祭り。
二人で同じガイドブックを買うという非効率極まりない状態になったが、事前に同じ本を見ているので、ルート設定はサクサク進んだ。
「この八咫烏シリーズは行っときたいね」
「私もそう思ってたー」
「この字カッコいいね」
「私もそう思ってたー」
「京都御朱印ブック」には私たちの好みにドンピシャな御朱印が沢山掲載されていて、私とマーサの欲望を駆り立てる。
御朱印って、本来は納経して、仏との結縁の印に頂くものらしい…。
現在、私とマーサには煩悩を呼び覚ますものになっているような気がする。いいのか、それで。いいのだ、それで。
2泊3日の行程で、京都の有名どころの社寺はほとんど行かず、「京都御朱印ブック」に掲載されている割とマイナーな寺社ばかりを巡りまくる。目的はそれのみなのだ。
結果、いただいた御朱印の数、22個。頑張った。
おかげで、初めて六波羅蜜寺で購入した御朱印帳がすべて埋まった。
さすが大本場、京都。狭い街にぎちぎちに寺社が詰まっている。
「嬉しすぎる…。こんなバラエティに富んだ御朱印を集められたのも「京都御朱印ブック」のおかげだよ」
「やっぱり、先達はあらまほしきものだねえ。ありがたや」
二人で「京都御朱印ブック」に感謝する。
ちなみに、マーサは御朱印をいただくマナーとして、おつりの無いように大量の百円玉を持参していたが、すでにそれは1日目で使い果たしていた。
ついでに、お賽銭も「御朱印で納付するから…ね」と途中から相場がガタンと落ちていた。(私は最初からお賽銭の最低相場(?)である)
この時頂いた「京都御朱印ブック」掲載の御朱印をいくつか載せてみる。
動物シリーズ
女子なので、動物のハンコが押されると「かわいー」と嬉しくなる。とりあえず、何でも感動は「かわいー」で表現するのだ。
熊野神社と言えば、八咫烏。サッカーファンにはおなじみの足が3本のカラスだ。
本宮は和歌山であるが、京都には分社(?)が3つもあり、いずれも八咫烏印を採用している。
これは二人で「絶対に3つ揃えよう」と、完全に意見が一致したものだ。
新熊野神社は能面の印もあり、こちらも良い感じ。
●八坂庚申堂(金剛寺)
ちょっとわかりづらいが、「見ざる 言わざる 聞かざる」の三猿の印である。
毛玉っぽくて、ジ●リ映画に出てきそうな感じがかわいい。
余談だが、私は庚申講が好きである。
その人が眠っている間に、三尸の虫が悪行を閻魔大王に言いつけに行く日だから、一晩中寝ずに飲み食いす、という「えっ、そんな屁理屈…。単に一晩中飲み明かしたいだけなんじゃ…」と思ってしまうところが、大変好ましいと思っている。
●千本ゑんま堂
閻魔大王様というのはとても珍しいと、コレクター魂を揺さぶられ、絶対に行こう、とこちらも二人の意見が完全に一致した。
ちなみに、こちらのご本尊は大王様の像で、ろうそくに照らされる厳ついお顔の前に、欲にまみれた我が身をさらすと、完全にびびってしまい「すみません。すみません」とおもわず謝ってしまった。
やっぱり三尸の虫の報告を阻むために、庚申の日は徹夜した方がいいのだろうか。真剣に悩む。
余談だが、閻魔大王といえば、京都では六道珍皇寺も有名である。
小野篁が夜な夜な冥界に下りたという井戸がこのお寺にある。
期間限定(?)で紺地に金文字の「閻魔大王」の御朱印も頂けるのだが、この時は「小野篁」の御朱印を頂いてしまった。今から思えば「閻魔大王」を頂いておくのだった…。
つづいて植物シリーズ
平野神社は京都では桜の神社で有名である。でも、桜しかないので、観光客にはあまり知られていないと思う。
実は、北野天満宮は「京都御朱印ブック」に掲載されていなかった。
行った時期が梅の時期だったので、ルートの途中にあったこともあり「御朱印目的じゃないところも行ってみようよ」と、たまたま寄ってみたのだ。
すると、はからずも梅の御朱印。
北野神社の桜と北野天満宮の梅が並び、私はひとりで大喜び。(マーサはそれほど喜んでいなかった)
この見開き、華やかでいいな~。
北野天満宮の飛梅伝説が、私は結構好きである。ついでに梅酒も好きである。
山城国一之宮。
下鴨神社は緑で押してくれるので、鮮やかでキレイ。
ちなみに、前にブログのどこかにも書いたと思うが、私は源氏物語の中で「葵の上」が最も好きである。ついでに徳川家もキライでは無い。
「やっぱり、上賀茂神社。ちょっと遠いけど、ここは外すわけにはいかない」と、またしても私とマーサの意見は完全に一致した。某国の首相と大統領のように。(byサンドウィッチマン伊達ちゃん←わかりづらいネタですみません。どうしても書きたくなってしまった)
この時、上賀茂神社で購入した「雷除け御守」は私の登山のお供になっている。天下の上賀茂神社の御守だ。今のところ、雷に遭遇したことはないので、きっとこの御守のおかげであろう。
上賀茂神社の正式名称は「賀茂別雷神社」という、ということを、この時初めて知った。
この旅のあと、私とマーサの御朱印熱は一気に上昇し、あちこち巡り歩くことになる。
京都御朱印巡りがとても楽しかったのだ。
そして、現在、「御朱印帳が埋まらない」などと言っていたことを遠い目で思い出すくらいに、かなりの冊数を重ねている。
しかし、冊数だけならば、あちこち巡ったような気がしているが、行ってみたい寺社は尽きない。
京都も、この時に22カ所も巡ったが、断腸の思いで断念した寺社が沢山あるのだ。いくらコンパクト京都と行っても、限界はある。
最後に、今後、「京都御朱印ブック」に掲載されていて、是非行きたいと思っている寺社を2つあげたい。
その1 廬山寺
廬山寺創建の元三大師は鬼に化けて疫病神を追い払ったとされる伝説があり、鬼の朱印(角大師)を押して頂けるらしいのだ。
私は厄除けのお札に書かれている角大師の図柄がとても好きなので、是非とも頂きに行きたいと思っている。
その2 晴明神社
ここには実は、何度か行っている。
が、その際に「納経印」と書かれていたので「私、お経書いてきてないよ」と、そのまま帰った苦い思い出がある。
あの頃は、御朱印を集め始めたばかりだったので、何故かびくびくしていたのだ。
ちなみに、桔梗が咲く時期限定の「桔梗守り」もステキだ。
秋頃には、是非ともまた行きたいと思っているのだが、どうだろう…??
その際には、鞍馬山の木の根道を通って貴船神社まで歩く、義経ごっこをする予定である。ちなみに、大河ドラマ「平清盛」では、義経は神木隆之介だった!