睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

金峰山〜のぼってくだって〜

ぶどうの季節がやってきた。

この時期に行く山はぶどうの産地、山梨方面と決めている。

登山を楽しんで、産地のぴちぴちシャインマスカットをお土産にするのだ。ついでにワインも買っちゃうのだ。うふふ、楽しみ。

今年は日本百名山のひとつでもある金峰山に決定。最寄りの高速のインターチェンジ勝沼である。最適である。

金峰山を登るルートはいくつかあるらしいが、最も初心者向きという大弛ルートでいく。

 

9:00 大弛峠からの長い山道を抜けて登山口に到着。森の中の道を歩き出す。

今年は先日の「にゅう」くらいしか山に行っていないので、体力の衰えがちょっと心配である。

しかし、金峰山は登山口と頂上の標高差はわずか234mらしい。

わりと楽に登れる山なのかもとちょっと期待してみるが、愛読書「入門山」の「大小の登り下りを繰り返して登山者泣かせではあるものの」と書かれているのが少し気になる。

多分、そんな簡単な山ではない

 

森の道はそこそこの登り道でで地味に辛い。

今回も同行のノムさんと「おばちゃん、すぐに息切れしちゃうよ」と泣き言を言いながらゆっくり登る。

しかし、そんな私たちを励ますように、かわいいきのこがあちこちに姿を見せている。

前日、雨が降ったのか、森全体がしっとりしていて、とにかくきのこ祭り。ここにも、そこにも、あそこにも、きのこだらけである。

「しまった!き●この山のピンクバージョン(ストロベリー味?)車に置いてきたよ。こんなにきのこの山だとわかっていたら持ってきたのに!」と悔しがるノムさん

「ピンクきのこ…毒!?食べても大丈夫なの?」

明●製菓という巨匠が毒はないといっているのだ。大丈夫に決まっている」

毎度のアホな会話を繰り広げる。

 これからは、行動食として常にき●この山を持って行くようにしよう。毎度のことながら、心のノートに書き留める。いつ、きのこ祭りにあってもいいように。

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作り物みたいな完璧きのこ

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きのこが密。

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これもきのこ?

きのこに夢中になりながら、登りの道をどんどん歩く。

好みのきのこを発見するたびに、写真を撮ったり「これは、ナイスな色味だねー。褐色が健康的だね」「博士、お気に召しましたか!?」などと、引き続きアホな会話を展開しているので、あまり登りのつらさは感じない。(時間はかかるけど)

アホでよかった…。

 

9:50 朝日峠

10:45 朝日岳(2579m)

晴れれば多分、絶景ポイントなのであろうが、この日は全体的にガスっていて「何も見えねえ…」という状態であった。

「白いね…」「白いねえ」と二人で、何を見るとも無く、ガスを眺めてつぶやく。

ぴかぴかの晴れ、という登山って、なかなか出来ないものなんだなあ。

登山を始めたばかりの頃は、かなり晴れていた様な気がするが、あれは所謂ビギナーズラックだったのだろうか。

山の神様は、「最初は勝たせておいて、レートを上げて大金を掛けるようになったころにすっかり巻き上げてやるのが夢中にさせるコツですよ」とギャンブルにのめり込ませる悪い人と同じ手法を使っているのだろうか…。スミマセン、罰当たりな。

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ガスってる…

 

登っている時は天気のことを考えていて気づかなかったのが、この地点の標高が2579mであるということを心にとめておくべきであった。

登山口の標高はだいだい2300m。

朝日岳2579m。そして、目指す金峰山の頂上は2599mである。

ほぼ変わらん。

そして、ここから先のルートを眺めると「ひょー」と思わず叫んでしまうような、激下りになっている。 

「せっかく登ったのに、どうしてまた下るのさ。もったいないじゃないか

「下った分、また登るってことだよね。これか、登山者泣かせは!

「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか…

まさかの激下りをしぶしぶ下りる。もったいないなあ。

 

11:30 鉄山(2531m)

朝日岳からの下りを登り返したところ。森の中で、看板があるだけである。

登って下ってまた登る…。

それが人生。ケセラセラ

 

12:00 サイの河原

森の中を歩いていると「そろそろ森林限界だな」とわかるようになってきた。

だんだん、木の高さが低くなって、ハイマツなどが中心の植生に変わってくるからだ。

ノムさん、来るよ、森林限界

「来るね。好きな四字熟語は「森林限界

ついに森を抜けた先は一気に視界の開けたガレの世界。

ここに来て、ガスはかなり晴れ、周りの山が姿を現す。

「ひゃっほー。瑞牆山が見えるね」

「来年の9月は瑞牆山かな」

一気にテンションがあがり、雲間の瑞牆山を写真に収めるべく奮闘する。しかし、カメラを構えて待っているときに限って、ガスが流れてきて良い姿を写真に収めることができない。

「もうちょっと、もうちょっと頼みます」

瑞牆姐さん、恥ずかしがり屋!

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雲すれすれに瑞牆山

さて、ここで私たちは大きな間違いをおかした。

「頂上はどこかな」

「あの、岩の上じゃないかな」

「岩登るだけなら、荷物はデポして行こう」

と最近覚えた山用語(デポ)をうれしがって使い、荷物を下ろして頂上を目指して岩を登る。

頂上、ここじゃなかった。

もっと先に道が続いている。

「まあ、いずれにしろ近いだろうから、このまま行ってみようか」

とやや不信感を抱きながら、ルートを進む。

 

12:20 山頂

サイの河原から15分くらいかかってる…。結構、距離あった。

地図を見ろ、私たち。

何で、あのとき、ここが頂上、と思い込んでしまったのか。

あやうく、本堂(?)にお参り出来なかった仁和寺にある法師になるところだった。あぶない、あぶない。

 

頂上からは、金峰山名物(?)五丈岩がどーんと見える。

そうだよ。事前にガイドブックとかで調べた時に「五丈岩が頂上にはあるけれど、素人は登っちゃいけない」と書いてあったよ。

なんで、五丈岩のことをすっかり忘れて、頂上を間違えるようなことをしでかしたのだろうか…。

多分、この日はちょっと寝不足でお疲れ気味だったので「ここが頂上だったらいいな」という強い願望から、「頂上ついたぜ、ひゃっはー」と思い込んでしまったのだろう。

反省。

事前にちゃんと地図とルートを確認する。そして、前の日は早く寝る。

これも心のノートに書き留める。心のノート、だんだんいっぱいになってきたなー。

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五丈岩どーん!

五丈岩の前ではお昼ご飯を食べている方が沢山いた。

私たちも朝から山歩きをしてお腹が減っている。でも、荷物をうっかりデポして来てしまったので、今、食べるものを持っていない…。

ノムさん。チョコあげる」

「サンキュー。これで、今は耐えよう

この日も五丈岩を登っている人がいたが、もちろん素人の私たちはガイドブックの指示に忠実にしたがい「すごいなー」と眺めるだけにしておいた。

これ、頑張れば登ることはできるかもしれないけど、下りられなくなってにゃーにゃー助けを求める猫になっちゃうパターンかもしれない。

君子危うきに近寄らずだ。

 

13:00 荷物をデポした場所に戻り、ようやくお昼ご飯。お腹減ったー。

この日のご飯は、カレーメシ。

とある動画でカレーメシをフライパンで煮て(?)チーズをトッピングする、という最強の山ごはんを紹介していたので真似してみた。

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山フライパン(深型)新規採用しました。

これは、うーまーいー!!(byミスター味っ●)

しかも、ものすごくお手軽。

いや、よく考えたら、通常どおり、カレーメシのカップにお湯注いでチーズをのっけたものとほぼ変わらないのだが(しかも、その方がフライパンを洗う手間が省ける)煮込んだ分(?)美味しさが増し増しのような気がするのだ。

ちなみにこの料理(?)の変則技で、カップヌードル飯でチャーハンも作れるらしい。そのうちやってみようっと。

 

13:30 昼食を終え、帰路へ。

午前中と比べ、格段に天気が良くなってきたので、眺望まずまず。

名残惜しく、あちこちの写真を撮って、ピストンで帰路へ。

帰路と言っても単純な下りでは無い。また、「大小の登り下り」ルート…。

実際には、登山口との標高差234mの2倍以上は登っているだろう。数字にだまされちゃいけない。

今、PEAKSのネット記事をみたが「高低差が小さく、誰でも天空の稜線を歩ける」とか書いてある。間違いではない。でも、「大小の登り下りを繰り返して登山者泣かせ」の道だからねーと、一言コメントを付けたい気持ちだ。

 

14:50 朝日岳

行きに「ひょー」と言った激下りを、激登りした。ちょっと(かなり?)息切れ。

たどりついた朝日岳で後ろを振り返ると、行きとは全く違う、最高の眺望。

ありがとう、午後晴れてくれて、と天気の神様に心の中で手を合わせる。

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眺望良好!

金峰山の頂上(多分)を眺めて「あそこから自分の足で歩いてきたんだな」と思うと、感慨もひとしおである。私もけっこうやるもんだ。

 

しかし、この時点でほぼ15:00である。

まわりに登山者の方は何人かいたが、多分、私たちより遙かに下りのスピードが速い皆さんだ。

ノムさん、毎度のことだけが、何時くらいに車に戻れると思う?

…多分、4時には…
そう。せめて4時くらいには登山口に帰り着きたい。

登山の基本。15時までには下山するようにしましょう。というフレーズを毎度思い出すのだが、あまり実践できていない。

ここからの森の道は、きのこの写真も控えめにして、せっせと登山口を目指して歩く。(でも遅い)

 

16:15 登山口着

なんとか目標の少し遅れくらいで到着。

空は綺麗な青空。今ごろ、くっきり晴れるのかい、と思わないでもないけれど、まずますの眺望が見られたので満足である。

今日も無事に下山できてよかったなー。

登り下りにぎゃーぎゃー文句を言ったが、変化があって飽きの来ない楽しい山だ。

天空の稜線も楽しめるし、かなりお気に入りである。五丈岩さんもイイ。

ぶどうの時期は毎年やってくる。

ぶどうとセットに何回も登る山になりそうな気がする。いや、別の時期に登るのもいいなあ。

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いくつか発見。「山」です。はい。

<コースタイム>

9:00大弛峠…9:45朝日峠…10:45朝日岳…11:30鉄山…12:00サイの河原…12:20金峰山…12:30五丈岩…13:00サイの河原(昼食30分)…14:50朝日岳…16:15大弛峠