那須岳〜温泉横をぐるり満喫〜
紅葉の山といえば、G県民にとっては妙義山であるが、関東に範囲を広げれば、なんと言っても那須岳であろう。
山一面が真っ赤に染まった写真を見れば「行くしかないやろ」と思わせる圧倒的な美しさを誇る。
私は数年前に軽い気持ちで紅葉トップシーズンの3連休に那須岳に向かい、大渋滞に度肝を抜かれた覚えがある。
世の中の人は、こんなにも紅葉を眺めたいものなのか!?しかも、登山もしないのに!!
どうも、登山開始以前の情緒不足な私が出てきてしまい、遅遅として動かない車内から悪態をついてしまった。
景色を見るためだけに高いところ(スカイツリーとか)に登る人の気が知れない、とか言っていたのだ。情緒不足の頃の私は。
今はすっかり心を改めて、山に登る度に「眺望!眺望!」と晴れを祈願している。
過去の経験から、紅葉シーズンの那須岳には二度と行かない、と決めていたのだが、山の相棒ノムさんから「紅葉シーズンより少し前の今なら多分大丈夫」と魅力的なお誘いを受けて「そうかぁ」と二度目の那須岳行きを決定した。
10月初旬で紅葉はもう一息のはず。そして、出発時間も前回より早めに設定。
どうだろう、那須岳!!
果たして、今回は渋滞はほぼ無しで大丸駐車場に到着できた。時間は8:00少し前だ。
渋滞はしていないのだが、大丸駐車場の正規の駐車スペースは満車である。ぐるぐるまわって隙間を探してみたが、無いものはは無い。今回もしぶしぶ路駐を選択する。すみません。
でも、この感じだと、あと1時間早く到着すれば、空きスペースはありそうだ。
次に来るときは(また、紅葉シーズン?)あと1時間早く家を出ることにしよう。…真夜中3時とかになるけど…。こうやって、登山者はどんどん早く家を出るようになるものなのだろうなあ。
大丸駐車場で身支度を調え、ロープウェイ乗り場(山麓駅)までの登りをえっちらおっちら歩く。地味に辛い。
ロープウエイ乗り場で少し待つ。
すると、何やらストロベリー県の職員(?)がやってきて、登山者調査(?)とやらのために、ビーコンを付けて登って欲しいとの依頼をされる。(並んでいる人、みんなに渡していた)
もちろん快諾。
しかし、ビーコンとはなんぞや?
「遭難した時に位置がわかるものじゃないのかしら?」
「なんか電波を発信してるもの?「沈●の艦隊」で潜水艦が打っていたレーダー?(後から、それは「ピンガー」であったことに気づく。古いマンガですみません)」
「…ベーコンは、燻製…」
「いや、ベーコンはフランシス…」
私もノムさんも、そのあたりの知識は薄い。程度の低い大喜利をおずおずと言い合うネタにしかならなかった。
結局、よくわからないが、小型の万歩計のようなものを装着して、ロープウェイに乗り込む。
今回は、窓際をゲットできたので、そこそこの天気のちょっとだけ早い紅葉を眺めながらの幸先の良いスタートである。
8:45 山頂駅到着。
ここから茶臼岳へザレ場をざくざく登る。途中からはガレ。
周りは人で賑わっている。やはり、紅葉ベストシーズンでなくとも、この時期は人出が多いようだ。
多くの人がわいわい登っていく。やはり、ファミリー登山の方も多い。
前回の記憶では、ファミリーの学齢前の小さな子どもやその祖父母とかも登っていたので「山頂までは楽に登れた」と思っていた。
人間の記憶とはなんと曖昧なものなのか。
「けっこう、傾斜キツいじゃないかーー」
「おかしい。前回よりも急になったんじゃないのか!?」
前回も一緒に登ったノムさんも、私と同じ感想である。
なんだろう。前回は、大渋滞のことが強烈な印象すぎて、登山そのものの印象が薄くなってしまっていたのかもしれない。
火山らしい周囲に樹木の無い荒涼とした風景の中を、息を切らして登る。
天気はまずまずなので、眺望良好だ。ヤッホー。
9:45 茶臼岳、登頂。1915m。
前回は茶臼岳頂上でだいだいお昼くらいだったと記憶しているので、今回はかなり早い。
イイね。行けるね、今回は。
少し休憩して、お鉢周りを経て、峠の茶屋方面へ下る。
すると、だんだん風が強くなってきた。私の帽子が飛ばされそうになるくらい。
「あごひもある帽子で良かった!この帽子、今回新調したのよ!」
そう。今まで愛用していた帽子(紺色)を、石けんでごしごし洗ったら、まだらに色落ちしてしまい、ノムさんに「石けんはダメだよ!エ●ールとか使わないと!」とご指摘を受けていたのだ。
「最近、よく行く、○井スポーツで買った!」
「ほー、最近は○井スポーツなの?」
「うん。……あのさ、某芸人のネタで「生まれ変わったらポイントカード作ります」っていうのがあるんだけどさ…心に刺さるよね」
「……早く、作りなよ。ポイントカード」
という、大変どうでも良い会話をしつつ、噴火口周りを歩く。
○井スポーツのポイントカード、やっぱり作ろうかなあ…。
10:40 峠の茶屋
一応、今回の予定は、ここから三斗小屋温泉方面に下り、ぐるっとまわって、朝日岳方面から峠の茶屋に戻り、そのまま下山するルートであった。
三斗小屋温泉方面への道を眺めると、遙かに下ったところに、温泉宿のものと思われる屋根が見える。
「…めっちゃ下ったところだね」
「一応、地図を確認してみよう」
相当下に見える屋根にびびり、地図を開いてみると、三斗小屋温泉から隠居倉までのルートのコースタイムに異変を発見する。
「下り40分、登り80分って書いてあるよ、ノムさん!」
「倍、さらに倍!(byクイズ●ービー)急登じゃないか!予定のルートだと、そこは登りだよね!まずいよ!」
「逆のルートをとろう。回避だ、回避。あぶなかったー」
「あぶなかったねー」
急遽、朝日岳登頂後、熊味曽根で三斗小屋温泉に下るルートに変更する。
多分、この選択は正解だった…と思う。
前回も朝日岳には登っているが、その時は登山者の人数はかなり少なかった。
ファミリー登山の方は、茶臼岳だけ登って下山するからであろうと思っていたのだが、今回はかなりの人数が朝日岳を登っていた。ファミリー登山の方も沢山いる。
前回は、単に時間が遅かったから人がいないだけだった、ということに今更気づく…。
ファミリー登山といっても、両親は山好きで、子どもも小さい頃から(下手したら歩けるようになる前から背負われて)山に行っているエリート達なのだろうから、きっと朝日岳くらいお茶の子さいさいなのである。
11:45 朝日岳 1896m
天気はくもりであるが、所謂高曇りのため、眺望はまずます。紅葉はもう一息といったところ。
ちょうど時間がいいので、朝日岳から少し下ったところの鞍部でお昼ご飯にする。
沢山の登山者が同じようにお昼にしていたが、みんな、なるべく風を避ける場所に陣取っている。
この時点で、かなり風が強く、寒かったのだ。
歩いている時は大丈夫だが、止まっていると寒い。
風速1mごとに体感温度が1℃下がるとか言われているようだが、多分、それは本当だ。この時、気温が何度だったのかはよくわからないが、気分的には3℃~5℃くらいだ。(大げさ?)
暖かい物で内側から暖めよう、とそそくさとバーナーを取り出し、お湯を沸かす。
しかし、私が今回持って行った山フライパン(深型)は口が広いせいか、あたためるそばから冷めていっているようで、なかなか沸騰しないのだ。
途中、気がついて蓋をしたらすぐに沸騰した。すごいな、蓋。
実は山フライパンは蓋が別売りで、買うべきか買わざるべきか、それが問題だ、とかなり迷ったのだが、買って正解だった。よくやった、私。
さて、沸いたお湯で作った今回のお昼ご飯はコーンスープパスタである。
簡単にできそうだし、おいしいのではないか、と思いつき、ネットで検索してみたらレシピもあったので、今回挑戦してみることにしたのだ。
作り方はとにかく簡単。
沸いたお湯でパスタをゆで、そこにツナ缶とコーンスープの素(粉末)を入れるだけ。
以上。
この料理なら、パスタゆで汁問題もまったく心配なし。
肝心のお味もGOODである。ツナ缶がいい仕事をしていて、コーン風味のカルボナーラという仕上がりだ。非常においしい。
これはいい。これからの山ご飯メニューにちょいちょい登場してもらうことにする。
暖かいものを食べたのだが、やっぱり寒い。
歩いていれば暖かくなるので、ご飯終了後、すぐに歩き出すことにする。12:50。
熊見曽根までは三本鎗岳に縦走する人たちがそこそこいたが、分岐を三斗小屋温泉方面に曲がると、ほぼ無人である。
真横には茶臼岳と朝日岳がどーんと姿を見せており、非常に見晴らしがいいご機嫌な道だ。
「こんないい道に人が全然いないなんて、もったいないね」
「私たちで独占だよ。穴場かな、この道は」
一気にテンションがあがり、るんるんで歩く。写真も撮り放題。風もやんできて、ますます楽しくなってくる。
しかも、途中から、紅葉も非常に良い感じに色づいている。この道はアタリだ。
13:40 隠居倉
ここから、峠の茶屋で「下り40分 登り80分」にびびった急坂を下る。
そして、この急坂を下りている時にようやく思い出す。私とノムさんは下りが苦手だったことを。今ごろ…。
「登りも辛いけど、下りも辛いよ」
毎回、どんどこ下る人を尊敬のまなざしで見つめているのに、どうして、肝心な時に忘れるのか。
だからと言って、登りが得意なわけではない。すぐに息切れがしちゃう体力に自信の無いおばちゃんだ。
なので、この坂を登るよりは下る方がよかったと思う。峠の茶屋の選択は間違いではなかった。
慎重にゆっくり下る。自分のペースでいけばいいのである。のたり。
14:40 三斗小屋温泉(やっぱり、下りのコースタイムをかなり超過)
私の中の泊ってみたい温泉ランキングの最上位にある温泉である。
残念ながら、今回は日帰りのため、横目で見るだけ。
ここへ向かう道ですれ違った人(追い抜かれた人)に「温泉泊まりですか」と聞かれて「いえ、帰ります」と答えたら、結構驚かれた。
そりゃそうだ。こんな時間にこんな場所にいる日帰り登山者なんて私たちくらいだろう。
今年は特別に日帰り入浴も可らしいので、あわよくば、などと思っていたが、当然、この時間ではそれは無理であった。
毎度のことながら、どうして下山が遅くなってしまうのか。別に地図を見ていないわけでもないのに。
道道の反省会で(毎回恒例)ノムさんが多分正解の答えを言ってくれた。
「だって、せっかく山にきたら、満喫したいじゃない。時間いっぱい」
エウリカー!そう。そうなのよ。山時間が楽しいから、なるべく長く滞在したいのよ。
愛あればこそ。(byべるバラ(宝塚歌劇団))それが理由だったのだ。
でも、基本は3時までに下山。もう、何度書き留めたかわからないが、再度心のノートに書き留める。
三斗小屋温泉で少し休憩後、峠の茶屋に向かい進路を取る。
行きに峠の茶屋のものすごく下の方に三斗小屋温泉の屋根が見えていたことが、不安感をあおる。
あれだけの高さを登るということか。地図のコースタイムの登りと下りの差はそれほどでもないが、視覚で見たあの感じは、結構、登ると覚悟した方がいい。
時間も押しているので、ちょっと早めに歩く。
15:20 延命水(わき水。冷たくておいしい)
16:10 峠の茶屋
ようやくここまで戻ってきた。
延命水から先は結構登ったが、覚悟を決めていたので、意外と大丈夫であった。
強いて言えば、最後の峠の茶屋の標識が見えてからのザレ場の登りが一番キツかったかもしれない。見えているのに、近づけない…。気持ちが焦るのだ。
さて、たどり着いた、峠の茶屋。もちろん、人影はない。(が、茶臼岳からこちらに向かっている人はいた。強者)
「いやー、毎度だけど、今回は予想外に時間押しちゃってるね」
「暗くなっちゃうかもしれないけど、ヘッドランプ持ってきた?」(もちろん持ってる)
とりあえず、峠の茶屋に戻ってこれた安心感から、再び饒舌になる私たち。
確か、前回の記憶では、ここから駐車場への小一時間の道はそれほど大変ではなかったはずだ。
「おかしい。もっと楽な道だったと思ったけど」
「意外に、ちゃんと山道だね」
私とノムさんの二人ともが同じ記憶を持っているのに、どうして現実は違っているのだろう。
峠の茶屋からの下山道は、記憶よりもしっかりとした山道であった。砂利敷きで平らな道みたいなイメージだったけど。
やっぱり、前回は渋滞の記憶が鮮明すぎたから、登山の記憶が薄いのだろう。辛かったのは渋滞。後は、渋滞に比べれば全然辛くない、と記憶してしまっているのかもしれない。記憶って曖昧。
ぶつぶつ言いながらも下り続け、峠の茶屋駐車場着。無事、下山完了。だいたい17:00。まだ周囲は明るい。
ここで待ち構えていたストロベリー県の職員に、朝預かっていたビーコンを返却する。
登山中、ほとんど忘れていたが、そうだ、預かっていたんだった。
多分、登山者がどこを何時に通過したか、とかがわかるのだろう。
「おいおい、こいつらどこ行くんだよ、とか思われるんじゃないかな」
「そうね。あと、早く帰れよ、とかも思うかもね」
あまり調査には役に立たなかったような気もするが、那須岳観光に是非、活かして欲しい。
なんとか日の明るいうちに下山できて「よかったー」と思っていたのだが、実は、この後、大丸駐車場への道のりが待っているのだった。
結構、辛かった…。(疲労困憊)
大丸駐車場に到着したのは17:30頃であった。お疲れ様でした。
次はもうちょっと早く下山するぞ。本当に。
<コースタイム>
8:00大丸駐車場…9:00ロープウェイ山頂駅…9:45茶臼岳…10:40峠の茶屋…11:45朝日岳…12:00(お昼休憩50分)…13:00熊味曽根…13:40隠居倉…14:40三斗小屋温泉…15:20延命水…16:10峠の茶屋…17:00峠の茶屋駐車場…17:30大丸駐車場
余談ですが、この記事の文章を三斗小屋温泉のあたりまで書いたあと、一回全部消えました。(自分の操作ミス)
心が折れる音がしました。
前回の那須岳。3年前でした。
ビーコンの調査。ニュースになっていた。…ストロベリー県の調査ではなかったらしい。
金峰山〜のぼってくだって〜
ぶどうの季節がやってきた。
この時期に行く山はぶどうの産地、山梨方面と決めている。
登山を楽しんで、産地のぴちぴちシャインマスカットをお土産にするのだ。ついでにワインも買っちゃうのだ。うふふ、楽しみ。
今年は日本百名山のひとつでもある金峰山に決定。最寄りの高速のインターチェンジは勝沼である。最適である。
金峰山を登るルートはいくつかあるらしいが、最も初心者向きという大弛ルートでいく。
9:00 大弛峠からの長い山道を抜けて登山口に到着。森の中の道を歩き出す。
今年は先日の「にゅう」くらいしか山に行っていないので、体力の衰えがちょっと心配である。
しかし、金峰山は登山口と頂上の標高差はわずか234mらしい。
わりと楽に登れる山なのかもとちょっと期待してみるが、愛読書「入門山」の「大小の登り下りを繰り返して登山者泣かせではあるものの」と書かれているのが少し気になる。
多分、そんな簡単な山ではない。
森の道はそこそこの登り道でで地味に辛い。
今回も同行のノムさんと「おばちゃん、すぐに息切れしちゃうよ」と泣き言を言いながらゆっくり登る。
しかし、そんな私たちを励ますように、かわいいきのこがあちこちに姿を見せている。
前日、雨が降ったのか、森全体がしっとりしていて、とにかくきのこ祭り。ここにも、そこにも、あそこにも、きのこだらけである。
「しまった!き●この山のピンクバージョン(ストロベリー味?)車に置いてきたよ。こんなにきのこの山だとわかっていたら持ってきたのに!」と悔しがるノムさん。
「ピンクきのこ…毒!?食べても大丈夫なの?」
「明●製菓という巨匠が毒はないといっているのだ。大丈夫に決まっている」
毎度のアホな会話を繰り広げる。
これからは、行動食として常にき●この山を持って行くようにしよう。毎度のことながら、心のノートに書き留める。いつ、きのこ祭りにあってもいいように。
きのこに夢中になりながら、登りの道をどんどん歩く。
好みのきのこを発見するたびに、写真を撮ったり「これは、ナイスな色味だねー。褐色が健康的だね」「博士、お気に召しましたか!?」などと、引き続きアホな会話を展開しているので、あまり登りのつらさは感じない。(時間はかかるけど)
アホでよかった…。
9:50 朝日峠
10:45 朝日岳(2579m)
晴れれば多分、絶景ポイントなのであろうが、この日は全体的にガスっていて「何も見えねえ…」という状態であった。
「白いね…」「白いねえ」と二人で、何を見るとも無く、ガスを眺めてつぶやく。
ぴかぴかの晴れ、という登山って、なかなか出来ないものなんだなあ。
登山を始めたばかりの頃は、かなり晴れていた様な気がするが、あれは所謂ビギナーズラックだったのだろうか。
山の神様は、「最初は勝たせておいて、レートを上げて大金を掛けるようになったころにすっかり巻き上げてやるのが夢中にさせるコツですよ」とギャンブルにのめり込ませる悪い人と同じ手法を使っているのだろうか…。スミマセン、罰当たりな。
登っている時は天気のことを考えていて気づかなかったのが、この地点の標高が2579mであるということを心にとめておくべきであった。
登山口の標高はだいだい2300m。
朝日岳は2579m。そして、目指す金峰山の頂上は2599mである。
ほぼ変わらん。
そして、ここから先のルートを眺めると「ひょー」と思わず叫んでしまうような、激下りになっている。
「せっかく登ったのに、どうしてまた下るのさ。もったいないじゃないか」
「下った分、また登るってことだよね。これか、登山者泣かせは!」
「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか…」
まさかの激下りをしぶしぶ下りる。もったいないなあ。
11:30 鉄山(2531m)
朝日岳からの下りを登り返したところ。森の中で、看板があるだけである。
登って下ってまた登る…。
それが人生。ケセラセラ。
12:00 サイの河原
森の中を歩いていると「そろそろ森林限界だな」とわかるようになってきた。
だんだん、木の高さが低くなって、ハイマツなどが中心の植生に変わってくるからだ。
「来るね。好きな四字熟語は「森林限界」」
ついに森を抜けた先は一気に視界の開けたガレの世界。
ここに来て、ガスはかなり晴れ、周りの山が姿を現す。
「ひゃっほー。瑞牆山が見えるね」
「来年の9月は瑞牆山かな」
一気にテンションがあがり、雲間の瑞牆山を写真に収めるべく奮闘する。しかし、カメラを構えて待っているときに限って、ガスが流れてきて良い姿を写真に収めることができない。
「もうちょっと、もうちょっと頼みます」
「瑞牆姐さん、恥ずかしがり屋!」
さて、ここで私たちは大きな間違いをおかした。
「頂上はどこかな」
「あの、岩の上じゃないかな」
「岩登るだけなら、荷物はデポして行こう」
と最近覚えた山用語(デポ)をうれしがって使い、荷物を下ろして頂上を目指して岩を登る。
頂上、ここじゃなかった。
もっと先に道が続いている。
「まあ、いずれにしろ近いだろうから、このまま行ってみようか」
とやや不信感を抱きながら、ルートを進む。
12:20 山頂
サイの河原から15分くらいかかってる…。結構、距離あった。
地図を見ろ、私たち。
何で、あのとき、ここが頂上、と思い込んでしまったのか。
あやうく、本堂(?)にお参り出来なかった仁和寺にある法師になるところだった。あぶない、あぶない。
頂上からは、金峰山名物(?)五丈岩がどーんと見える。
そうだよ。事前にガイドブックとかで調べた時に「五丈岩が頂上にはあるけれど、素人は登っちゃいけない」と書いてあったよ。
なんで、五丈岩のことをすっかり忘れて、頂上を間違えるようなことをしでかしたのだろうか…。
多分、この日はちょっと寝不足でお疲れ気味だったので「ここが頂上だったらいいな」という強い願望から、「頂上ついたぜ、ひゃっはー」と思い込んでしまったのだろう。
反省。
事前にちゃんと地図とルートを確認する。そして、前の日は早く寝る。
これも心のノートに書き留める。心のノート、だんだんいっぱいになってきたなー。
五丈岩の前ではお昼ご飯を食べている方が沢山いた。
私たちも朝から山歩きをしてお腹が減っている。でも、荷物をうっかりデポして来てしまったので、今、食べるものを持っていない…。
「ノムさん。チョコあげる」
「サンキュー。これで、今は耐えよう」
この日も五丈岩を登っている人がいたが、もちろん素人の私たちはガイドブックの指示に忠実にしたがい「すごいなー」と眺めるだけにしておいた。
これ、頑張れば登ることはできるかもしれないけど、下りられなくなってにゃーにゃー助けを求める猫になっちゃうパターンかもしれない。
君子危うきに近寄らずだ。
13:00 荷物をデポした場所に戻り、ようやくお昼ご飯。お腹減ったー。
この日のご飯は、カレーメシ。
とある動画でカレーメシをフライパンで煮て(?)チーズをトッピングする、という最強の山ごはんを紹介していたので真似してみた。
これは、うーまーいー!!(byミスター味っ●)
しかも、ものすごくお手軽。
いや、よく考えたら、通常どおり、カレーメシのカップにお湯注いでチーズをのっけたものとほぼ変わらないのだが(しかも、その方がフライパンを洗う手間が省ける)煮込んだ分(?)美味しさが増し増しのような気がするのだ。
ちなみにこの料理(?)の変則技で、カップヌードル飯でチャーハンも作れるらしい。そのうちやってみようっと。
13:30 昼食を終え、帰路へ。
午前中と比べ、格段に天気が良くなってきたので、眺望まずまず。
名残惜しく、あちこちの写真を撮って、ピストンで帰路へ。
帰路と言っても単純な下りでは無い。また、「大小の登り下り」ルート…。
実際には、登山口との標高差234mの2倍以上は登っているだろう。数字にだまされちゃいけない。
今、PEAKSのネット記事をみたが「高低差が小さく、誰でも天空の稜線を歩ける」とか書いてある。間違いではない。でも、「大小の登り下りを繰り返して登山者泣かせ」の道だからねーと、一言コメントを付けたい気持ちだ。
14:50 朝日岳
行きに「ひょー」と言った激下りを、激登りした。ちょっと(かなり?)息切れ。
たどりついた朝日岳で後ろを振り返ると、行きとは全く違う、最高の眺望。
ありがとう、午後晴れてくれて、と天気の神様に心の中で手を合わせる。
金峰山の頂上(多分)を眺めて「あそこから自分の足で歩いてきたんだな」と思うと、感慨もひとしおである。私もけっこうやるもんだ。
しかし、この時点でほぼ15:00である。
まわりに登山者の方は何人かいたが、多分、私たちより遙かに下りのスピードが速い皆さんだ。
「ノムさん、毎度のことだけが、何時くらいに車に戻れると思う?」
「…多分、4時には…」
そう。せめて4時くらいには登山口に帰り着きたい。
登山の基本。15時までには下山するようにしましょう。というフレーズを毎度思い出すのだが、あまり実践できていない。
ここからの森の道は、きのこの写真も控えめにして、せっせと登山口を目指して歩く。(でも遅い)
16:15 登山口着
なんとか目標の少し遅れくらいで到着。
空は綺麗な青空。今ごろ、くっきり晴れるのかい、と思わないでもないけれど、まずますの眺望が見られたので満足である。
今日も無事に下山できてよかったなー。
登り下りにぎゃーぎゃー文句を言ったが、変化があって飽きの来ない楽しい山だ。
天空の稜線も楽しめるし、かなりお気に入りである。五丈岩さんもイイ。
ぶどうの時期は毎年やってくる。
ぶどうとセットに何回も登る山になりそうな気がする。いや、別の時期に登るのもいいなあ。
<コースタイム>
9:00大弛峠…9:45朝日峠…10:45朝日岳…11:30鉄山…12:00サイの河原…12:20金峰山…12:30五丈岩…13:00サイの河原(昼食30分)…14:50朝日岳…16:15大弛峠
「俺たちの頂」塀内夏子
少し前になるが、某バラエティ番組で某芸人さんが人工的に作った氷の壁登攀にチャレンジしていた。
最初に取り付いた場所からほぼ動かないまま、数十分、遠吠えのように叫ぶだけでそのまま終了。
カメラマンさんがものすごく努力して、まあまあ登った風な画角で撮ろうとしてくれていたようだが、その努力もむなしく、視聴者の目にも、おそらく3m程度(もっと下かも)しか登れていなかったことは明白であった。
伝説的な大スベリ。私はそれをげらげら笑いながら観ていた。
その後、復刻した「おれたちの頂」を読んだ。
まじめで優等生の佐野邦彦とやんちゃな南波恭介が互いを無二のパートナーとして、クライミングを極めていくマンガだ。登山マンガの金字塔だという。1990年刊行。
今も昔もバディ物はイイ。熱い。戦いと友情は少年マンガの永遠のテーマである。
この作品中に、谷川岳烏帽子岩奥壁の大氷柱を登るシーンが出てくる。約200mの氷の柱を二人は密かに誰よりも早く登攀する。
すごい。マンガだけどすごい。
某芸人は多分3mも登れなかったのに。
あの無様な(?)アイスクライミングもどきを観ていたので、こんなことができちゃう2人ってすごすぎる、と感動も倍返しである。(流行にのってみたくて使ってみたけれど、使い方を間違った気がする…)
並外れた体力と技術とセンスがアイスクライミングには必要なのだ。きっと。
「普段、運動は通勤時に歩くくらいですかね」という人や「体力つけるためにジムに通ってます」という人も「筋肉は裏切りません!」という人でも、いきなり大氷柱を登るなんて無理なのである。
日頃から、クライミングの訓練をしている人じゃないと、登り切れないどころか、一歩も踏み出せない世界なのだ。
某芸人さんも「VS●」の「ク●フクライム」にたくさん出演させてもらっていれば、もうちょっと登れたかもしれないけど…。
まてよ。思い返してみると、あの番組の「ク●フクライム」を観ていると、スポーツが得意な芸能人の方は、割とぐいぐい登れている。
単に、某芸人がクライミングセンスが皆無でどんくさいだけのような気もしてきた…。彼のアイスクライミング(?)を標準として考えてはいけないのかもしれない。
まあ、そうだとしても、邦彦と恭介のコンビのクライミングセンスと二人の信頼感が無双であることは間違いないのだ。
作者である塀内夏子氏は、高校時代にワンダーフォーゲル部に所属していたそうで、クライミングシーンは細部にわたってかなりリアリティのある描写になっていると思う。
大氷柱を登る際の説明で 「ハーケンがきかないため 埋め込みボルトを使用する」とか書かれていると、私はクライミング知識がほぼゼロなので「細かいことはよくわからないけど、なんか本格的!」と妙に気持ちが高ぶる。
「ユマール」「スカイフック」なんて道具が出てきたりすると「何の用途かまったくわからないけど、クライミングの道具なのかー」と素直に感心する。
多分、かなりしっかり下調べをして書かれているマンガなのだろう。
でもその反面、物語展開は「それはドラマチックすぎやしないか!?」と思ってしまうほど、波瀾万丈である。リアリティは遠いが、その怒濤の展開にページをめくる手は止まらない。
次から次へと困難が降りかかり、山に登る度に命の危険にさらされる2人。
こんなに毎回死にそうになっていたら、邦彦君の母じゃないけど「山はやめてよね」と言わずにはいられない。たまには、予定どおり登って帰ってきてー。
しかも極めつきに、2人きりのアルパインスタイルで登ったローツェ南壁では、とんでもない結果となってしまう。(直接は書かないが、以下の文でネタバレ)
「そんなバカなー。健康診断受けたなら、結果見てからヒマラヤ行きなさいよ!」と読書中に叫ぶ私。
学生の頃、同級生の男子に「少女マンガって、なんで登場人物が死ぬの?」と聞かれて「戦いまくっている少年マンガを読んでる人に言われたくないわ。「タッチ」とかも登場人物が死んじゃうじゃないか」と激論(?)を交わしたことを思い出した。
そういえば、少女マンガの登山マンガ「こちら愛、応答せよ」(上原きみこ作)も、確か主人公の兄が山で亡くなっていた。
死の危険と隣り合わせの戦いに挑み制覇する、というドラマチックな展開がマンガに合うのだろう。映画にしてもきっとイイ。(撮影は大変すぎるだろうけれど)
でも、やっぱり、ちょっと死にすぎているような気もする。
作中では、谷川岳一の倉沢での登山者の滑落死シーンやチョゴリ(K2)での雪崩による隊員四名の死亡なども描かれる。
私のように、読んだ作品に影響されやすいタイプは「登山=壁登り=死の危険」というイメージになってしまって、「怖くて山なんて行けない」と思ってしまうのではないだろうか。
現に「こちら愛、応答せよ」を読んだ当時の私は、確かそんなことを思っていた。
今、一般ルートの登山を楽しんでいる私としては、なんとか「壁登りじゃない、道を上って頂上に行く一般ルート登山もありますよ。ザイルとか使わないですよ」と横から言ってあげたい気持ちだ。緩い登山もあるから、山をキライになったり、敬遠したりしないで欲しいのだ。
かなり長いこと、山がキライだった自分がこんなことを言う日がくるなんて、当時はまったく思わなかった。感慨深いものがある。
もっとも、人の感じ方はいろいろで、このマンガを読んで「クライミング、やってみたい。いつかヒマラヤの山を片っ端から登るぞ」と思う人もいるのかもしれない。いや、むしろ、こっちの感想の方が大半なのかも。
このマンガを読んでクライミングを始めた人はかなり多いのではないかと思ったりもする。
しかし、今のところ、「俺たちの頂」を読み終わった私は「クライミングはちょっとハードルが高すぎる」と思っている。多分、手は出さない。
邦彦くんが優しく基礎から教えてくれたら、ひゃっほーと舞い上がって、トライしてみる気持ちになるかもしれないが、今の私がアイスクライミングをやってみたら、某芸人さん以下で、1mも登れない可能性が高い。
壁に取り付くことすら出来ないんじゃないかと思う。
おばちゃんの体の重さを甘く見てはいけない。
とりあえず、いつかくるかもしれない日に備えて、筋トレとかを始めてみようかな、などとは思っている。
まずは、な●やまき●にくんの動画を見てみることにしたい。
千里の道も一歩から!
ついでに、上原きみこ作品も。
手乗り富士山(やまつみ)をつくる。
ステイホーム期間中に、おうち遊びをしようと思い、「やまつみ」を買った。
しかし、買ったはいいが、全く手をつけていないことを最近思い出した。時間はあったはずなのに、生来の怠惰な性格のせいで、だらだら過ごしてしまっていたのだ。
いっぱい時間はあったはずなのになー。何していたんだろうか、私は。さっぱり思い出せないので、多分時間泥棒に盗まれてしまったのだろう。(byモモ)
このまま放置したら、絶対作らない気がする。思い出したが吉日。
ようやく、重い腰を上げて「やまつみ」制作に取り組むことにした。
「やまつみ」とは紙で作る山の立体模型キットである。やまつみ工房さんの商品。
等高線ごとの形にカットされている紙を根気よくひたすら貼り続け、山の形を作っていく。
必要なものは根気とピンセット!とのことである。
ちなみに、1/50,000シリーズの場合は、20mごとに1枚の紙を積み上げていくとのことだ。今回私が作った手乗り富士山は1/150,000なので、1枚で60m上がる感じらしい。
小学生の頃、まともに長方形が書けないくらい(角を直角に書くのが苦手で…)不器用だった私がこんな緻密な作業を続けることができるのか!?
説明書を読みながらものすごく不安になるが、今はなんとか平行四辺形も書けるくらいに成長した。きっとできる、と自分に言い聞かせる。
とりあえず、最初が肝心と、慎重に一番下のシートを木の台座に貼る。
富士山の頂上が真ん中の穴の部分になるように張らなければならないのであろうが、中心に貼れたかどうかわからない。でも、一度貼ってしまったものはもうはがせない。
このまま突き進むしかあるまい。
やまつみのスバラシイところは、位置決め用の棒があるところだ。
1枚1枚のシートに空いている穴にこの棒を通して貼っていけば、どんなに不器用な人でもちゃんと定められた位置にシートを貼ることができる。
昔、(今でも?)、紙を自分で標高線通りに切って、模型を制作し夏休みの課題として提出した小学生が沢山いたそうだが、その小学生達もこの位置決め棒システムを採用していたのだろうか。小学生の頃の集中力は半端じゃないから、きっと無くてもきっちり仕上がったのだろうけど。
集中力も衰えた元来不器用な私は、この棒無しでは絶対に無理である。
10枚貼ったあたりから、裾野が見えてきて、俄然楽しくなってくる。
だんだん富士山が出来てくる。
棒のおかげで、ちゃんとした位置に貼れているようだ。
「ふーじは にーっぽんいちの やまー」と、ついつい唱歌を口ずさんでしまう。
しかし、作業中のBGMは、なか●まきんにくんのYOU TUBE動画「ザ・きんにくTV」である。友達が勧めてくれたから…。パワー!
位置決め用の棒の位置を変えながら、20枚、30枚、40枚と黙々と貼り続ける。
多分、五合目くらいから、明らかに富士山の傾斜がきつくなってくるのがわかる。
「この傾斜を登ったんだなー。楽しかったなー」と富士登山を思い出したりして楽しい。この模型のサイズでいうと、人間はどのくらいなのか。芥子粒以下であることは間違いない。
棒が一本になると、回転できるので、ガイドで書かれている線に合わせて貼っていくことになるのだが、不器用な自分はその通り貼れた自信がない。
ちなみに私が使っているピンセットは、おなじみのダ●ソー商品(110円)であるため、あまり細かくて繊細な作業には適さないようだ。ちゃんとしたピンセットを買うべきだったか…。
私が心の友として頼りにしまくっていた、位置決め用棒は62枚目から姿を消す。
ここからは己の指先の感覚(?)のみで正しい位置に貼っていかなければならない。
しかも、なんと、No.68からは火口部分を抜いて貼っていくことを求められている。
そんでもって、ラストパーツであるNo.73…!!
肉眼で確認できる大きさなのか、その大きさ!?米粒以下、芥子粒以下だよ!!
多分、ここが剣が峰なのだろう。一番高い場所の3776m。
剣が峰を外すわけにはいかない。日本一の高所なのだ。
No.72ですら、実はちゃんと貼れなかったのだが、一応、貫徹の精神でもって、No.73をピンセットでつまもうと試みる。
…つまめたような気がする。
おそるおそるピンセットを所定の位置に置く。先っちょにくっついていると思われる剣が峰を指先で押さえるようにして、ピンセットを引き抜く。
…どっかに消えたよ、剣が峰。
指についていたカスがきっとそうだ、と思い、再度トライしてみたが、どっちが接着面なのかよくわからないし、固定しようとしても、位置がさだまらない。そもそも、これが本当にNo.73のパーツなのかも自信がない。
諦めた。
完成した私の手乗り富士山には剣が峰が無い。…悔しい…。
所要時間、概ね一時間半。完成した。
剣が峰は無いが、結構、良い感じに出来たのでは無いだろうか。
富士山って本当に綺麗な形だ。地面をにゅうっとつまんで持ち上げたみたい。
国土地理院の日本の主な山岳の3D地図と見比べて、同じ形に出来てるなあ、と感無量である。
また、このあたりが、富士吉田ルート、このあたりが御殿場ルートなんていうこともわかる。楽しい。
立体地図(日本の主な山岳) ←国土地理院のページ
来年は富士山登れるといいなあ。
出来上がった、手乗り富士山を眺めながら、しばらくは妄想登山で過ごすしか無い。
そして、意外や意外、私でもわりと簡単に出来たので、他の山も作ってみたくなっている。
やまつみは様々な山の商品を展開しているのだ。(ちなみに手乗り富士山はミニサイズだが、主流は1/50,000なので、かなり大きいと思われる)
G県民として、赤城山にトライしてみるべきか…!!
いや、大好きな谷川岳にするべきか。はたまた浅間山にするべきか。思い切って全部か。
人生は悩みに溢れている。
にゅう〜きのこの森〜
ようやく梅雨が明けた。
今年の梅雨は本当に長かった。じっとこらえていただけに、喜びもひとしおだ。
これでようやく、夏空の登山が出来るぞ、とガッツポーズを決める。
梅雨明けと同時にやって来た猛暑もあまり苦にならない。高い山に行けばいいだけのことである。
今回の行き先はにゅう、である。
お手軽に行ける北八ヶ岳の山として、私の行きたい山リストの割と上位にランクインしていた。
なにしろ、名前が可愛い。ひらがなの山は珍しいのではないか。(漢字だと「乳」だそうだ。いきなり可愛くなくなる…)
今回こそは、青空に連なる八ヶ岳の山々の絶景を拝ませていだだこうではないか。ヤッホー。
今回も同行のノムさんは「山と天気と暮らす」(山の天気予報サイト)をじっくり検討して、晴れそうな日をチョイス。
お互いに気合い十分である。
しかしながら、検討を重ねて選んだはずの当日、一言で言い表すとすれば「くもり」の空模様。
おかしい…。数日前まで並んでいた晴れマークはなんだったのだ?
「女心と秋の空」を改めて「女心と山の天気」に変えた方がいいのではないか。ころころ変わって、私の心をもてあそぶ悪いヤツだな、山の天気。
信頼の「山と天気と暮らす」には登山指数Bが並んでいる。どうやら、くもりに加えて、風が強いらしい。午後3時以降は少し良いらしいが、さすがにその時間に頂上に立っているようでは、ものすごく遅いな、と私でも感じる時間だ。
うむ。まあいい。
雨が降らないだけで良しとする。
北八ヶ岳の森の時間が長いルートなので、晴天じゃなくてもそんなに影響はない。
8:00 スタート地点である白駒池駐車場発。
「白駒の池」の大きな看板を通過すると、すぐに緑けぶる森が広がっている。
シラビソの木から光が差し、こんもりと生い茂ったコケが黄緑にきらきらと光っている。
のっけから綺麗な森である。
足下は幅の広い木道で歩きやすい。白駒池までは一般の観光客も沢山訪れるので、がっつり整備されている。
ほどなく白駒池分岐に到着し、池に沿って青苔荘方面に進路を取る。
池に沿っている道のはずだが、あまり池は見えず…。時折、水面が姿を現す程度。
8:30 池周遊コースを終了し、いよいよ、にゅうに向けた登山コースに入る。
「こーけーのー むぅすぅー まぁぁでー」とノムさんが歩きながら口ずさんでいる。
ついつい日本国国歌が頭に浮かぶほど、コケだらけのコケの森である。
前日に少し雨が降ったのか、しっとり湿っていて、緑がつやつやしている。
「はりつめたー ゆみーのー」
私もお返しに米●さん(も●●け姫)を歌ってみる。
「黙れ、小僧!」と即座に●輪様(モ●の君)で返すノムさん。
この森を歩く人の十中八九は、も●●け姫を思い出すだろう。ジ●リって偉大だなあ。
余談だが、私は「も●●け姫」を映画館で見たが、たまたま隣の劇場が「ジ●ラシックパーク」を上演中であった。「も●●け姫」でこだまがころころ鳴る、静かなシーンに、隣から漏れ聞こえる「ギャオーン」という恐竜の雄叫び(?)。気になって仕方がなかった…。
コケむす森を足取り軽く歩いて行くと、あちこちに大好きなキノコを発見する。
コケとキノコはベストフレンド(?)
どちらも私の心をとらえて離さない。
「キノコはイイね」とノムさんと夢中で写真を撮りまくる。
すると突然、自分の失敗に気づいた。
「しまった!「き●この山」をおやつに持ってくるべきだった!」
「それは…!!大失敗だね!」
どうして、この重要な事項に気づかなかったのか。自分の準備不足が悔やまれる。北八ヶ岳の森にはキノコにたくさん出会えることは知っていたのに…。
この森で「き●この山」を食べたら、さらに倍!(byクイズ●ービー)の美味しさだったであろうに…。
次に北八ヶ岳に来るときは、かならず「き●この山」持参、と心のノートに書き留める。
9:00 コケとキノコに癒やされながら、るんるん登っていくと、白樺尾根との分岐に出る。
分岐の看板をみて、首を捻る私とノムさん。
「ニュー中山」
…この先には何があるのだ?田舎のアパートか、パチンコ屋か!?
「あ。ニューは「にゅう」か…」
気づくのに、けっこう時間がかかった。
「にゅう」と「中山」はこちら方面、との標識であった。
「にゅう」→かわいい
「乳」→なんか、変な名前
「ニュー」→昭和感。レトロ。
同じ響きでも、書き方によってかなり印象が異なる。改めて日本語の奥深さに気づかされた。ううむ、にゅう、奥が深い。
ニュー中山方面に進路を取り、再び森の中を登っていく。
だんだんと周りの木の丈が低くなり頂上の近さを感じる。
「そろそろかな」「いや、油断は禁物だ。頂上かと思ったら、もう一山、というのは登山あるあるだよ!」
しかし、あまりフェイント無く、森を抜け、ダイレクトな空が見えると、その先に岩が積み重なった頂上があった。
森を抜けると、本当にすぐ。
10:00 登頂 2352m
森の中ではそれほど登山者と出会わなかったが、頂上ではそこそこの人がやって来ていた。
何故か皆「ニュー」「ニュー」と口にしながら、頂上にやってくる。
この不思議な語感が、登頂の興奮と相まって、ついつい発声したくなってしまうのだろうか。もちろん、私とノムさんも「ニュー」「ニュー」を連発した。
ついでに、頂上の三角点の横の杭には「ニュウ」と書かれていた。新たな表記方法…。多彩である。
ちなみに、天気は真っ白地獄、何も見えねえ、というほどではないが、基本は白い世界であった。天気予報、さすがである。
私たちにしては早い時間に登頂してしまったので、今回は色気を出して、帰りは大回りコースを取り、黒百合ヒュッテまで足を伸ばすことにする。
黒百合ヒュッテは八ヶ岳の数ある山小屋の中でも、一番行ってみたいと思っていた山小屋だ。何しろ、黒百合のマークがかわいい。マフィンが食べられたりと女性人気が非常に高いらしい。
にゅうの山頂を下り、中山方面へ。
ほとんど人と遭遇しない。さっき、山頂で出会った人たちは、こちらのコースをとらず、みんなピストンで帰るのだろうか。もったいない。
歩いていると、風がどんどん強くなり、時々「おおぅ」と体を持って行かれそうになる。「山と天気と暮らす」の予報どおりの強風。本当に、最近の天気予報の精度は目を見張るものがある。すごい。
11:30 中山峠
11:40 黒百合ヒュッテ
時間がちょうど良いので、黒百合ヒュッテでお昼ご飯をいただくことにする。
ラーメン(王道のサッポロ一番)なども持って行っていたのだが、あこがれの黒百合ヒュッテである。ごはんも食べちゃうのだ。
山の中でビーフシチューが食べられる。なんて贅沢なのかしら。
食後にお湯を沸かしてコーヒーで一服していると、だんだんと空に晴れ間が見えてきた。感動の青い空である。
午後から晴れるって、またしても天気予報ドンピシャ。
あまりにも的中率が高いので、ちょっと恐ろしく感じるほどだ。気象予報士の勉強してみたいな。
気象予報士の資格を取れば、きっと自分で登る山の天気予報が出せる。魅力的だ。
いや、自分でやらなくても、信頼の「山と天気と暮らす」があれば大丈夫か…。
12:30 満腹のお腹をさすりながら、黒百合ヒュッテ発。にゅう分岐までは来た道を戻る。
「カレーでお腹が満たされている」とは、今回のノムさんの名言。ノムさんは常に名言を世に送り出してくれる。
スバラシイ友人を持って幸せである。
12:45 にゅう分岐
13:10 中山 2496m
ひとつのピークなのだが、周りを木に囲まれており、特になんと言うこともない場所である。
やっぱり、山の頂上は眺望が開けていないと何となく寂しい。
それでも、にゅうの頂上より100m以上高い場所なのだ。そんなに登った気はしなかったのだが、結構登ったらしい。
13:30 中山展望台
ここは打って変わって、眺望最高。
信頼のおける天気予報どおり、ほぼ晴れ。
やっぱり、景色がいいと、気分もいい。
「今回は、なんか余裕がある登山だね」
「何だか、余裕がある登山なんて、私たちらしくないねー」
展望台では、休憩している人たちも何人かいて、毎度「おかしい、周囲に人がいなくなってしまった。みんな帰っちゃったのかしら」とつぶやいている私たちだが、今回は他の登山者さん並の時間に帰れそう、という自信が湧いてきた。
今日の私たちは、いつもの私たちとは違う。ふふふ。
地図によると、ここから次のポイントとなる高見石小屋までは40分とのことである。
そこから駐車場までが約35分、と持参した地図には書かれている。
3時くらいには帰れそうである。余裕がある。
展望台から先は、高見石小屋へ向けた激下りルートに突入する。
私たちは下りが苦手である。
さらに、湿った岩にコケが生えていたりして、滑りやすいので、いつもより慎重に足の置き場を探しつつ下る。
もちろん、後続者にはどんどん抜かれる。(これはいつものことだが)
下りが早い人って、本当に早い。すごいなー。足の置き場に迷いなく、どんどんどんどん進んでいく。滑って転んだりしないのだろうか。
そして、膝の軟骨はすり減っていないのだろうか。グルコサミン飲んでるのかな。
私たちは慎重にゆっくりくだったが、二人とも1,2回転倒した。なんだろう、バランスが悪いのだろうか。それとも、重いお尻が悪いのか?
「おかしい、そんなに登った覚えがないのに、何でこんなに下るのだ?」
「ミステリー!山のミステリー!」
時々生えているキノコに癒やされたりしながら、高見石小屋を目指す。
15:00 高見石小屋着
コースタイム40分って、本当なのか?倍以上(1.5時間)かかった私たちって…。
事実は事実として受け止めて、今後、下りのコースタイムは、さらに倍!(byクイズ●ービー)で計算するようにしよう。
中山展望台で「余裕!」と高らかに笑っていた時の計算では、もう、駐車場に着いているはずだったのに…。
おかしい。
さて、高見石小屋のすぐ脇には高見石がある。
岩が積み重なっていて、その頂上は景色抜群らしい。
予定よりも相当遅くなっているのだが、なぜかまだ余裕を感じていて「せっかくだから登ろう」と高見石にチャレンジする。
結構、怖い。
ルートを示す「○」が岩に書かれているが「ここからその○までどうやって行くのさ!?」と聞かずにはいられない。誰も答えてくれないのだが…。
なんとか登り切った高見石からの眺めは最高。この時間には完全な晴れになっている。
「今日一番の絶景!登ってよかった高見石!」
ちなみに、登りよりも下りの方が怖かった…。
「三点支持!三点支持だよ」とのノムさんのアドバイスに「三点目がお尻になってるけど大丈夫!?」と尻餅をつきながら叫び返し、近くにいたお兄さんに笑われた…。
お尻は安定感がある。
15:45 高見石小屋発。再び激下り。
白駒荘までのコースタイムは25分って書いてあるけれど…45分後の16:30に到着した。
やっぱり、倍か…。
白駒荘まで下りてくると、まわりは登山スタイルではない、一般の観光客の方ばかり。
通常の山ならもう誰もいない時間だが、観光客の方がいるので、最後の下山者かも、という焦りがなく、のんびり池を眺めたりして過ごす。
一日、満喫出来て楽しかったなー。
結局、白駒池駐車場に到着したのは17:00であった。
遅い…。
中山展望台のあたりで余裕があるなんて、どうして思ってしまったのか。
全然、余裕じゃなかった。
でも、ちゃんと暗くなる前に下山できているので良しとしよう。
次こそは余裕のある登山!毎回思っているけれど、余裕のある登山!
<コースタイム>
8:00白駒池駐車場…8:30分岐(にゅう方面)…9:00白樺尾根との分岐…10:00にゅう頂上…11:30中山峠…11:40黒百合ヒュッテ(昼食50分)…13:20中山展望台…15:00高見石小屋…15:30高見石…16:30白駒山荘…17:00白駒池駐車場
尾瀬ヶ原~雨ニモマケズ~
梅雨が明けたら山歩きを再開しようと思っていた。
しかし、待てど暮らせど、毎日空はどんよりと厚い雲が覆っている。天気予報によると、梅雨明けは7月いっぱいは無理そうらしい。
もう、こうなったら仕方あるまい。
雨だろうが、もういい。
待ちきれないので、とりあえず、行く。
時期的に尾瀬のアイドル、ニッコウキスゲが咲いている。この時期を逃すわけにはいかないのだ。
昨年は大江湿原のニッコウキスゲが見たくて、福島側の沼山峠から尾瀬沼方面へ行ったが、今年はG県側の鳩待峠からのスタンダードコースで行く。
東電小屋の手前あたりにニッコウキスゲが咲いているらしいので、それが楽しみだ。
それにしても、何度かニッコウキスゲの時期に尾瀬に行っているが、いつも雨に降られている。7月下旬はやはり例年梅雨が明けていないものなのかもしれない。
今回も「どうせカッパ着るから防寒のジャケットとか持ってこなかったよ」「私もジャケットない。でもゲイターはしっかり持ってきたよー」と同行のノムさんと語り合う。もう、雨は覚悟の上だ。
戸倉の駐車場でバスに乗り、なんだかんだで鳩待峠発は9:00頃。
人はまばらである。外出控えに加えてこの天候では当然か。多分、山小屋予約しちゃったしね、という人がほとんどなのだろう。私たちは、雨ニモマケズ日帰りで来ちゃったのだが…。
駐車場でバスを待つ間に、上下カッパ+ザックカバーを装着する。(ノムさんはゲイターも装着)
私は割と面倒がって、下のカッパ(ズボン)をはかないことが多いが、今回はもう完全装備である。だって、今日は完全に雨だから。
覚悟を決めれば、私もやるのである。
鳩待峠から山ノ鼻ビジターセンターまでは森の中である。それなので、木が天然の傘になって雨をあまり感じることなく、快適に進むことができる。
「木はありがたいねえ」
「雨だと緑が濃くていいねえ」
久しぶりの山歩きに、私とノムさんの機嫌は上々だ。
途中、「うぉぅ!巨大ナメちゃん遭遇!!」とノムさんが叫ぶ。
ノムさんの行く木道の上に、枯れた笹の葉のような薄茶色の細長いモノが横たわっている。
なんと、よく見ると巨大なナメちゃん(ナメクジさん)である。
その大きさ、およそ15cmくらい。普段、植木鉢の底とかにひっついているナメちゃんの数倍はある巨大さである。
「ここまで大きいと全然気持ち悪くないねー」
「擬態がうますぎて、誰かに踏まれちゃうよ。早く非難して」
「がんばれナメちゃん、もう少しで木道の端だぞ」
ノムさんと2人で応援するが、ナメちゃんはマイペースでゆっくり進むだけ。
「Good Luck!ナメちゃん。今日は人は少ない。幸運を祈るぜ」
超スローペースのナメちゃんにつきあいきれず、その場を後にした。
山歩き、楽しい。とても楽しい。
10:00 山ノ鼻ビジターセンター到着。
雨は小降りになっていた。まったく降っていないわけではないが「この程度なら、降っていないと私は判断するね」と堂堂と言い切れる程度の小雨だ。
ここから、尾瀬ヶ原を歩き出すと、前方に燧ヶ岳、後方に至仏山がそびえ立つ、最高のロケーションになる。
雨なので、そのあたりの景色は全く期待していなかったのだが、ほとんどやんでいる状態の小雨なので、山がそこそこ姿を見せている。
そして、周りには小さな花があちこちで咲き、湿原を黄色に染めている。
「キンコウカさん、かわいい!」
「アヤメ平じゃなくても、けっこう咲いているんだ!」
やっぱり尾瀬はキレイだ。
もやで薄ぼんやりとした湿原が、キンコウカの黄色でキラキラしている。
この時期にはビッグに生長しまくった水芭蕉や、下界より遙かに巨大な紫のアザミなどが木道のすぐ脇に顔を出している。
さっきのナメちゃんといい、尾瀬はすべてが通常よりビッグな世界なのかもしれない。やはり下界とは違う、異境感がある。
「尾瀬を舞台にした映画とかみたいねえ」
「登山映画がいっぱいあるんだから、尾瀬があってもいいよね。恋愛モノだね」
「都会から逃げてきた歩荷さんが主人公とか?」
「若手のイケメン俳優よね。岡田将●とかどうかな」
「イイね!彼は影があるね!」
尾瀬は平らなので、どんどん歩きながらアホ話がとても弾む。
ちなみに、この日は「ガラスの仮面」の一番好きな舞台についても語り合った。(私とノムさん2人の意見としては、「吸血鬼カーミラ」が高評価。乙部のりえについても語り合った)
10:50 牛首分岐
ここからメイン(?)の道を分かれて、ヨッピ吊橋、東電小屋方面に向かう。
この日は、そもそも人は少なめだったが、ここからのルートはさらに人が少なくなる。
尾瀬の木道は行きと帰りの人用に2本併設されていて、通常は1本を前後に並んで歩くのだが、今日は人がほとんどいないので、ノムさんと並んで、アホ話をしながら歩ける。
「ニッコウキスゲ、ほとんど咲いていないね」
「本当にレアキスゲだね。たまに、1本とか咲いているだけ」
などと話しながら歩いて行くと、突然、ニッコウキスゲの乱舞が目に飛び込んで来た。
「これはすごい!一面キスゲちゃん!」
ニッコウキスゲで周りが黄色の波である。
「ここだったか、キスゲちゃんの群生地!」
「極楽のようだねえ」
G県民に染みついている「上毛かるた」の「せ」は「仙境尾瀬沼 花の原」だ。
仙人がいる。ここは霞を食べる仙人の住む場所だ。
写真を撮りまくっていると、このあたりだけ、柵(電柵?)で囲まれていることに気づく。わかりやすく、柵の向こうはニッコウキスゲがほとんど咲いていない。
尾瀬の関係者の皆さんは口を揃えて「日光から来る鹿がニッコウキスゲを食べちゃうから、ものすごく減ってしまった。鹿害をどうするかが、大問題だ」と言っていたが、なるほど、確かに鹿が入れないようにした場所はニッコウキスゲが咲き乱れるようだ。
ニッコウキスゲに惑わされながら木道をどんどん進むと、柵で囲われたゾーンは終了し、ぱたっとニッコウキスゲは姿を消す。
うーん、鹿さんたち。容赦なく食べ過ぎだ。
12:00 ヨッピ吊橋を過ぎ、東電小屋に到着。
当初の予定では、ここでお昼ごはんにしようと思っていた。
しかし、この時点で小雨だった雨がかなりの本降りに。この雨の中、屋根のない場所でご飯を食べるのは辛い。
東電小屋でご飯が食べられないだろうか、と濡れ鼠の状態で、そっと中をのぞき込んだが(怪しい…)、中では食事ができる様子ではなかった。(宿泊のみのよう)
「屋根の下に入りたいよう」と指をくわえて、暖かそうな小屋内に入れる隙が無いかと目をこらすが、そこには日帰り客の場所はない。
「ノムさん、ここはあきらめよう。食事ができる小屋があると思われる見晴まで行こうじゃないか」
「そうしよう。暖かいモノが食べたいよう」
おやつのチョコレートを食べて空腹を紛らわせ、そそくさと東電小屋を後にする。
お腹空いた…。
12:45 見晴着。
さすが見晴。小屋が沢山あり、食事が出来る小屋もちらほら見える。
しかも、この時点で雨はかなり小降りに。
このくらいの雨なら外でご飯でもいいかな、と思っていたところ、弥四郎小屋の軒下に椅子があったので、そこを利用させてもらいお昼ご飯にする。
今回の私のお昼ご飯はホットケーキであった。
袋をもみもみして種を作って焼くだけ、という例の画期的商品だ。一度やってみたかった。
しかしながら、私は重大なミスを犯した。
肝心要の「油」を忘れたのだ。
結論から言おう。大失敗した。
油をしかないで焼くと、当然のことだが、張り付いてはがれない。そして、どんどん焦げていく。
ひっくり返せないまま、片面だけ焦げ付く…。
味は悪くなかったけど。(負け惜しみ)
次回、油を持参して、再度挑戦することを誓う。給食で良く出たマーガリンの個パックとかがあるとベストだろう。
ちょっと悲しい。
お昼をゆっくり食べて、14:00に見晴発。
相変わらず人は少ない。ちらほらやってくる人たちはみんな山小屋泊(またはテント)なのだろう。
「本当に毎回思うけど、どうしていつも周りに人がいなくなっちゃうのかな?」
「2時くらいには山を下りてないといけない、と言われているらしいけどねえ」
「最終バスの時間はおさえてるから大丈夫だよ。間に合わなかったことないもんね」
妙な自信が私たちにはある。
雨はほとんど上がり、木道をちょろちょろ歩くセキレイ(?)一家をのほほんと追いかけながら、鳩待峠を目指す。
14:40 竜宮(小屋は開いていない)
15:15 牛首
ここでようやく「あとどのくらいかかるか時間をみておく?」と地図を広げる。
そして、ようやく自分たちが置かれた状況に気づくことになる。
「ノムさん…。ここから山ノ鼻までが40分。山ノ鼻から鳩待までが一時間半らしい」
「バスの最終は17:20だ。あれ?間に合わないのでは…?」
「鳩待へのラストスパートは登りだ…。ちょっと危険かもしれない…」
また最後の人になっちゃったかもしれない。それも、バスに間に合わない人に。
でも、何故か「大丈夫、間に合うよ。いつも間に合うもん」とこの期に及んで強気の私たち。
16:00 山ノ鼻
いつもなら、ここで休憩を入れるところだが、さすがに危機感があるので、そのまま通過し、鳩待を目指す。
少々ペースを上げているのと、雨が止んで気温が上がってきたせいなのか、だんだん暑くなってくる。
しかも、随所に階段などが登場し、登りのキツさから、額から汗が次々と流れる。
「キツいけど、脂肪が燃焼している気がする」
「今日、痩せたかな」
「痩せたに決まってるじゃないか」
ポジティブだ。ポジティブに考えると、なにもかもが楽しい。
鳩待峠への道は、あちこちに「鳩待峠 ●●●m」との標識があり(10m単位で刻んでくる)ある程度、時間が読める。
残り1kmくらいになった段階で「これは行ける。余裕や」とわかり、それまで無言で黙々と歩いていた私たちも再びおしゃべりを始める。
「やっぱり、間に合うじゃないか。やれば出来る子だ!」
「間に合わない人が出ないように、地図のコースタイムはサバよんでるね、多分」
最後の石段登りを「他の山に比べれば、こんなのナンボのもんじゃい!」と気合いで登り切り鳩待峠着。16:45であった。
30分近く余裕を持って到着できた。
「やったー。なんだかんだで余裕があるじゃないの」
花豆ソフトクリームを食べる余裕まであった。花豆ソフト、美味。
久しぶりの山歩きで、とにかく楽しい1日だった。朝から晩まで満喫出来て最高。
尾瀬なので、雨でも無問題。結局1日降ったり止んだりだったが、人が少なくて、かえって良かったかも。
これから徐々に登山に行こうと思っているが、テント泊とかもいいよなー、などと新たな野望をノムさんと語りあっている。
尾瀬でテン泊もいい。
今年中に尾瀬にはもう一度くらいは行きたい。何度行っても楽しい場所だ、尾瀬は。
<コースタイム>
8:30戸倉第一駐車場…9:00鳩待峠…10:00山ノ鼻ビジターセンター…10:50牛首…12:00東電小屋…12:45見晴(食事1'15)…14:00見晴発…14:40竜宮…15:15牛首…16:00山ノ鼻ビジターセンター16:45鳩待峠
旅館のビニール巾着~山の持ち物 その1~
そろそろ山に行きたい、とは思っているが、季節は梅雨ど真ん中である。
去年は立山で雨風にさらされていたな、なんて懐かしく思い出すが、今年は梅雨明けまでもう少し様子見をしている。
とりあえず、今は山の持ち物でも見直してみようと思い立ち、うきうきと雑誌を見たりしていたところ、ふと、ものすごく欲しいと思っていたものがあったことを思い出した。
温泉旅館のビニール巾着である。
私は山に行くとき、荷物の小分け袋として、このビニール巾着を愛用しているのだ。
私にとってのスタッフサックだ。
柔らかくて丈夫。ビニールなので、もちろん水気にも強い。しかも、ビニール特有のがさがさ音は少なく、Tシャツとかを入れて、ぎゅーっと押しつければそのまま抵抗なく小さく収まる。
色も豊富なので、白は着替え、赤は防寒用の上着、黄色は行動食、などと見た目で中身がわかるようにできたりもする。
スバラシイ。見た目とかさえ気にしなければ、パーフェクトと言ってもいいのではないか?正にパッキングのためにあるような袋である。
私は普段、パッキングは得意だ、とうそぶいているが、それはこのビニール巾着があるからこそなのだ。
しかしである。
ここ最近、温泉旅館でこのビニール巾着を見かけなくなってしまったのだ。
一時期はどこの温泉旅館に泊っても、浴衣の横にそっと奥ゆかしく、このビニール巾着とタオルと歯ブラシはセットで添えられていた。
温泉のお供として、主にタオルを収納するために添えられたビニール巾着は、長いこと日本の温泉旅館の定番であった。私は、どうして、どこでも同じ袋なんだろう、とまで思っていた。
それなのに、ここ最近は主に手提げ式の袋に主役を取って変わられてしまったのだ。
温泉旅館に行くたびに、今回はどうだろう、と期待して乱れ箱(浴衣を入れておく箱)を見るが、去年くらいから全くビニール巾着には出会えていない。
無くしてわかる、そのありがたみ。
確かに、お風呂に行くときにタオル他を入れて歩くには、手提げタイプの方が便利だ…。逆になんで、長いことその事実に気づかすに、巾着タイプを提供し続けた来たのだ、日本の温泉旅館よ。
温泉旅館の客としてはわかる、もしくはありがたい改革なのだが、私にとっては改悪以外の何者でもない。
愛用のビニール巾着の入手経路を絶たれるという、緊急事態。
今はまだいい。過去にためたビニール巾着があるので、それが使える。
しかし、写真を見てもわかるように、何回も使い込んでいるので、結構くたびれてきているのだ。そのうち、穴があいたり、端っこが破れてきたりするものも出てくるだろう。
そうしたら、頑張って欲しい気持ちはあるが、現役を退いて貰うしかない。それなのに、その穴を埋める若手が全くいないのだ。
これはゆゆしき事態である。
どうにかして、ビニール巾着の若手を入手しなければならない。
多分、パッケージプラザとかの店には売っている。
ついでに、先日メルカリで検索してみたところ、結構売られている。(意外と買う人はいるらしい)
その気になれば、簡単に入手は可能である。
でも、どうしても、以前は無料で入手していたのにー、という気持ちが邪魔をして、購入する気持ちになれないのだ。現に今は足りているし。
さらに、どうせお金出すなら、ちゃんとしたスタッフサック買えばいいんじゃないの?という声も、頭のどこかから聞こえてくる。
ううむ。気づいた時に行動(購入)した方がいいような気もするし、これを期に、新しい道(立派なスタッフサック)を歩き出した方がいいような気もするし…。
迷う。とても迷っている。
とりあえず、まだビニール巾着を提供してくれている温泉旅館はきっとあると信じて、旅館で探し続けたいと思う。
ちなみに、友人に何度かこのビニール巾着のハイスペックさを力説してみたが、共感してくれる人はいなかった…。
見た目がイマイチなところが良くないのだろうか?スーパーの袋的なチープさが良くないのだろうか…?
お洒落でない。これは間違いない。でも、ものすごく出来るヤツなのだ。
最後に、こんな私だが、下山後のお風呂セットは購入したスタッフサックを使っている。(コールマン製品)
見た目以上にぎゅっと沢山のものが入って、丈夫で便利だ。さすがに高性能である。
このスタッフサックの中に、着替えを入れたビニール巾着をさらに入れる。これが私の定番だ。
ここでも、ビニール巾着は無くてはならない存在だ。
私、ビニール巾着に頼り切ってる…。
やっぱり、買い足しておくべきなのかも。
ついでに 一応付け加えるが、温泉旅館のビニール巾着以外に、無印良品のたためる巾着袋も実は愛用している。
オマケ
温泉セットに入れている手ぬぐい。
ぐんまちゃんは素直だから、G県民の胸に秘めた思いをストレートに声に出せるのだ。
G県の中村染物工場の商品。見つけた瞬間、即買い。