百均メスティンの実力〜山の持ち物 その2〜
山へ行きたしと思へども 山はあまりにも遠し(気持ち的に)
我がG県の詩人、朔太郎は新しい背広できままな旅に出ることにしたらしいが、私は新しい山の道具できままなご飯を作ってみることにする。
新しい山の道具とは、話題の百均メスティンである。
私は今までメスティンを持っていなかった。
山でご飯を作る時はコッヘルか山フライパンを使っていて、十分満足していたからだ。特に山フライパンはパスタを茹でる時もギョーザを焼く時にもバッチリ対応できて、君さえいれば他には何もいらない、とありふれたJポップの歌詞のようなことを思っていた。(サイズが大きいのが難点)
しかし、世間のキャンプブームに後押しされて、百均各店がキャンプ道具を大量発売。
100円のものなんて、とはじめは侮っていたが、これがどうして、なかなかの品揃えである。
何より値段が手頃すぎるので、ま、使わなくても買っとけばいいか、とついつい購入してしまうのだ。
百均メスティン(百均だけど500円。商標に偽りあり)も、ついつい購入してはみたものの、未だ使ったことがなく、その実力は未知数である。
先日のキャンプでジェイ氏が使っていたので、ご飯を炊く手順はわかっているつもりだ。
この機会に一度試してみようではないか。これで、ええやん、と思えば、今後山道具のスタメンになるかもしれない。
まず、お米(目分量で0.7合くらい)を研いで、水に浸しておく。
その間、私はしっかり入浴。
今回は自宅で行ったので、普通にボールを使ったが、山に行くなら、ナルゲンボトルやジップ●ックなどに、水に入れた状態で持って行くといいらしい。
風呂上がりに、しっかり水を吸ったお米を百均メスティンに移す。通常のメスティンより小さいサイズなので、この量でちょうど良い感じだ。
白米でも良いのだが、今回は私のレモンサワー夜会(毎週金曜日に開催。一人で…)のおつまみにしたかったので、缶詰の焼き鳥とベビーチーズを一緒に炊き込むことにする。
二品ともつまみの王道である。多分、おいしくなるに違いない。
これをポケットストーブ(こちらもついついホームセンターで購入)にセットして、固形燃料の火で炊いていく。
ポケットストーブはガスバーナーよりも小型で軽いので、これでいろいろ事足りるなら、山に持って行くのもいいかもしれない。
室内で火を付けることにかなり抵抗はあったが、旅館の料理には定番で出てくるではないか、と自分に言い聞かせ、床に直置きで点火する。(板は敷いた)
ちなみに、この季節だが窓は全開にした。換気扇がない部屋なので。
固形燃料のオレンジの火が勢いよく百均メスティンの底に当たる様子を見つめながら、私は髪をドライヤーで乾かすことにする。ドライヤーの熱で窓全開の部屋でも暖かい。これは一石二鳥だ(?)
髪がしっかり乾いても、固形燃料の火は消える様子はない。
百均メスティンからは期待を高めるように、白い湯気と良い匂いが漂ってきている。多分、良い感じに炊けているに違いない。
わくわくしながら、百均メスティンを見つめ続けるが、火はずっと燃え続けているので、待ちきれず、レモンサワーをお先に頂くことにする。
酔っ払った状態で炊きあがったご飯を扱うと、何か粗相をするかもしれないので、ゆっくりペースでちびちび飲むことにする。
ご飯を食べていない空腹にアルコールが染みる。ゆっくりペースだけど、酔いが手足にまわり、火がついているものをうっかり倒したりして、火事になってしまったらどうしよう。
変なところだけ心配性なので、火がついている百均メスティンのそばには寄らないようにし、遠くからしっかり監視しながら、一人レモンサワーをちびちびやる。
そんなに心配なら、火が消えてから飲み始めればいいのに、と今は思うのだが、その時はもう待ちきれなかったのだ。猫まっしぐらのモ●プチ(今はちゅ~●かもしれない)みたいな感じだ。
火を付けてから、約30分。ようやく火が消えた。
中がどうなっているのかわからないが、多分、おいしく炊きあがったはずだ。
ここから、タオル(私は手ぬぐいを使った)にくるんで蒸らしに入る。
「はじめちょろちょろ 中パッパッ 赤子泣いてもふたとるな」は昔から言われているお米の炊き方である。
別に蓋をとったらおいしく炊けないわけではないことは知っているが、自分の中に「蓋を取らずにしっかり蒸らした方がおいしくなる」という刷り込みがあって、今回も蓋を取らずに、ひたすらじっと蒸らし終わるのを待つ。もちろん、その間、レモンサワーは進んでいる。
約15分の蒸らし時間を経て、ついに蓋をとる瞬間がやってきた。
どきどきする。多分、おいしくできていると思うが、ものすごく水状態だったらどうしよう、との不安もよぎる。そういえば、水加減は目分量のテキトーだった…。
祈るような気持ちで蓋を取る。
これは…!!
とても美味しそうに炊けている、と思う。
水加減は適当だったにもかかわらず、とても良い感じの炊きあがりだ。ふっくら、良いあんばい。
具を混ぜると、焼き鳥のたれがご飯に染みていて、うっすら茶色の混ぜご飯に出来上がっている。
お味も見た目どおり、美味しい。
これはイケる。
レモンサワーにもばっちり合う。この時点で1本目は飲み終わったので、自然と2本目のプルタブをプシュッといってしまった。
おいしいよー、と心の中で叫びながら、ご飯を黙々と食べる。
これを山で食べたら、多分もっと感動的に美味しいだろう。
だけど、結論から言って、私は百均メスティンを山へは持って行かないと思う。持って行ったとしても、ご飯は炊かない。
なぜならば、時間がかかるのだ。
最初のお米に水を吸わせる時間は省略できるとしても、火を付けてから消えるまで30分。蒸らしに15分。都合、食べるまでに45分もかかるのだ。
そんなに待ってられないよー。
待っている間に、一山登れちゃうよー(これは嘘)
日帰り登山だと、やはりバーナーでさっとお湯を沸かして煮込むラーメンとかが「うまい、安い、はやい」(by吉●屋)で最適である。
山ごはんの本もいろいろ出たりしているが、山でご飯を食べている人の7割くらい(私の主観)がラーメンを食べているのは、そういうことなんだと思う。ちなみに、残りの2割はおにぎり(またはパン)で、1割がパスタ他である。
百均メスティンはおいしくご飯が炊ける事がわかったので、テント泊の時とか、やっぱりキャンプの時とかに活躍してもらうことにする。
一人分のご飯を炊くにはちょうどいい量である。あと、目玉焼き(卵2個のホンモノの目玉焼き)を作るにもぴったりな大きさのような気がする。
目玉焼きは今後のレモンサワー夜会で作ってみようかと思う。
もしかすると、百均メスティンは、テント泊とかキャンプの時よりもレモンサワー夜会での活動がメインになってしまうのかもしれない。それもいいか。
オマケで、私の山道具(レギュラー)の中に百均商品がいくつかあったので紹介する。
不思議と食事関連のものばかりだった。
二重ステンレスになっていてお湯など冷めにくい。
私はザックにぶら下げて山に行っている。何かの本でシェラカップをぶら下げたザックの写真をみて「カッコいい」と思ったので、真似しているのだ。
取っ手がカラビナになっているので、ちょっとしたヒモ(登山用ザックにはちょっとしたヒモが割とある)に簡単に取り付けられる。
尾瀬の弥四郎小屋前の清水なんかを飲むときに、さっと使えたりして非常に重宝している。
折りたたみ式ナイフは常に持って行っている。
切れ味は悪いが、ちょっとした包装のビニールを切ったりする時などにも活躍する。
でも、本当のメインの使い方は、まな板とセットで、りんごを剥くときだ。
私はりんごが大好きなので、秋の登山時はかなりの頻度で山にりんごを持って行く。実はそのために買ったのだ。
たためると小さくなって、刃も安全なので非常に良い買い物をしたと思っている。
ちなみに、これを磨ぐための砥石も百均で購入した。
まな板はりんご用。
軽くて小さいまな板はむしろ百均でしか売っていないかも。
ザックの内側にあるハイドレーションの水を入れるところにぴったり入る。
ライターは何の気なしに購入したが、これ以上に山に最適な100円ライターはないと思っている。
火口がチャッ●マン式のものは他にもあるが、これは火の大きさを調整するレバー(+と-の間を動かすヤツ)がついているので、使うとき以外は「-」にしておけば、何かの拍子にうっかり火がついてしまうことがないのだ。
購入店以外の百均のライターコーナーで、レバー付きのものを見たことがないので、運がよかったなあ、と思っている。ビギナーズラック?
ちなみに、主な使用用途はバーナーの着火だ。イグナイターはついているが、調子が悪いとつかないので…。
他にもたまに持って行くスキレット(ものすごく重い)や、木の匙(今回作った混ぜご飯を食べるときにも使っている)や、クッキングシート、ファスナー付きビニール袋(ジップ●ックではない)とか、百均商品にはかなりお世話になっている。
多分、これからもずっとお世話になり続けると思う。本当にありがたいお店である。
願わくば、ちょっとごわっとした昔ながらのトイレットペーパーを売って欲しい。
汚れたコッヘルなどを拭く用に持って行くのだが、この場合、お尻に優しいふわふわやわらかペーパーより、ごわごわペーパーの方がしっかり拭けていいのだ。
百均でも勿論トイレットペーパーは売っているが、かなりお尻に優しい感じだ。公共施設のトイレとかにある、あの業務用っぽいものを是非、小売りして欲しいのだ。
わがままなお願いなのは承知している。是非、検討願いたい。
ちなみに、我が家の本来用途のトイレットペーパーはふわふわである。
冬キャンプ入門~薪ストーブでネギを焼く~
今年初のキャンプに行った。
10月くらいから話は出ていたのだが、メンバーの都合やら何やらで、初冬、というかもう冬の12月の頭にようやく行くことが出来たのだ。
メンバーはジェイ氏とでんさんと私の3人。
秋キャンプ予定だった時は、ジェイ氏のリサーチによる景色のいい山近くのキャンプ場を考えていたが、12月の夜は絶対に寒いに違いない、と3人ともが慎重になり、前箸(仮称)市内の都市公園内のキャンプ場に行くことにした。
さすがキャンパーであるジェイ氏のリサーチは完璧である。まさか、こんな街中でキャンプができるところがあるとは思わなかった。ちなみに料金は無料である。(許可は必要)
キャンパー、ジェイ氏によると、このキャンプ場は穴場的な人気で、昨今のキャンプブームに乗り、週末はかなりの賑わいであるらしい。
山近くのキャンプ場よりも、絶対に夜の気温は高いはずだし、無理だと思ったらすぐに離脱できる、冬のキャンプ入門にはぴったりである。いいとこ選んでくれて感謝感激雨アラシである。(今年活動停止する某グループに敬意を表して!お疲れ様!)
近くのスーパーで食材を購入し、キャンプ場に到着した時間は16:00近く。
いつもながら、スタートは遅い。周りにはソロと思われるキャンパー数名とファミリーキャンプと思われる、ものすごく立派なテントが3張ほど既に張られている。
テント張る場所もない、というほど混んでいなかったので、悠々と場所を確保し、それぞれのテントと真ん中にタープを張って、テーブルやら椅子やらを設置する。
3人で黙々と作業を進め、あたりが薄ぼんやり暗くなる5時前にはしっかりセッティングは完了し、タープの下に設置したテーブル周りにどっかりと腰を据えることができた。
我ながら、けっこう手際はいい。
久しぶりに集まった我々は、ごそごそとそれぞれの荷物をあさり、今回持ち寄った道具の自慢大会を開催する。
今回のキャンプ場もそうだが、キャンプの場合、車で道具を運べるので、重くてかさばる道具や今回使わないかもな、という道具もためらわずに持って行けるのだ。私が持って行った40Lのザックはいろいろ詰め込んでパンパンであった。
今回、私は登山には絶対に持って行かない道具を持って行った。
私が持ち込んだ道具。それは「七輪」である。
今年の秋に「サンマが焼きたい!」と一念発起して手に入れた逸品だ。私にとっては「今年買ってよかったもの」ナンバーワンである。
自宅でサンマやらホタテやらを焼きまくって悦に入っていたのだが、これはキャンプでも楽しめるだろう、と重さをいとわず持ち込んだのだ。どやっ!
しかしながら、私の鼻高々はあっという間にへし折られることになる。
なんと、ジェイ氏は堂々の薪ストーブを持ち込んできたのだ。
さすが、本気のキャンパー!ひれ伏すしかない。
七輪で自慢していた己が恥ずかしい。
「つい、買っちゃってさー。時間がある時は家の庭でも火を入れてるんだよね」と、うれしさを堪えきれないニヤニヤ顔で自慢するジェイ氏。
「すごいよージェイ氏ー。うらやましすぎるよー」と素直に声を揃える私とでんさん。
これはもう、感嘆の声をあげるしかない。やったな、ジェイ氏!
薪ストーブはヤカンを置いておけばお湯が沸くし、煮物も焼きモノも対応できるスグレモノだ。
今日のキャンプでは私たちもたっぷり恩恵にあずかることにして、晩ご飯のすき焼きは、このストーブの上でじっくり煮込ませてもらう。
冬の鍋、しかも野外での鍋。おいしいに決まっている。
ついでに、すき焼き用に購入した下仁田ネギをストーブで焼いて食べることにする。
ただシンプルに焼いたネギに、醤油をちょろっとたらしてそのままいただく。
めっちゃおいしい!
一緒に飲んでいたビールにジャストミート。
下仁田ネギ、最高である。
これは、ビールのCMで使えるレベルの食材ではないだろうか。絵力もある(と思う)
冬ならではの料理に「これは出会ったね」と3人で確かめ合いながら舌鼓を打つ。
実は、鍋に入れた余りの1本を焼いたので、それを3人で分け合って(縦に3つに割いた)食べたのだが、もっと1人1本くらい焼いても良かった。
鍋でも勿論最高だが、焼いても良い。
是非、みなさま、お歳暮用にお買い求めいただきたい。G県の自慢の名品である。
念のために言っておくが、下仁田地区以外で作っても「下仁田ネギ」である。たとえG県外で作っても「下仁田ネギ」である。
すき焼きの残り汁に入れておじやにするためのお米は、メスティンで炊く。
炊飯にはダイソー500円メスティンが登場だ。
でんさん購入のミニ焚き火台に私の固形燃料をセッティングし、ジェイ氏のダイソー500円メスティンを使用するという3人の道具の合わせ技で炊飯した。(ちなみに500円メスティンは私もこっそり所有している)
きれいな白飯に炊けたので、おじやにしてしまうのはちょっともったいなかったが、おじやはとてもおいしかった。
お米は日本人の胃袋を満足させる。今度、山でもお米炊いてみよう。
それにしても、やっぱり、キャンプ飯はとっても楽しい。そして、野外加算で何を作って食べても、とにかくおいしい。
今年はキャンプはできないかな、と思っていたのだが、ギリギリ滑り込みで出来て、本当によかった。
さて、この日は天気がよく暖かかったので、それほど寒さに震えることもなかったのだが、夜が更けるにつれ、さすがにぐっと気温が下がり冷え込んできた。
ご飯終了後はそれぞれの本日の寒さ対策について披露し合う。
いくら平地とはいえ、シュラフのみでは寒いと思い(ちなみに私のシュラフは3シーズン用)、みんなプラスワンの毛布を用意していた。でんさんにいたってはシュラフを2つ持ってきていた。
そして、ド定番のカイロと湯たんぽ。
私が用意したカイロは、「めっちゃ熱い」との売り文句にひかれて購入した、その名も「マグマ」である。
ものすごく熱そうである。そして、実際に使ってみたところ、めっちゃ熱い。そして長持ち。翌朝までずっとほかほかであった。すごいぞ、桐●!
これに加えてのダウンなどの防寒着。
この日はこの程度で大丈夫であった。
多分、雪が降るような場所とかではもっと高性能なものが必要なのだろうが、街中キャンプではこれでぬくぬかに眠ることができた。
シュラフの下に毛布を敷いて、さらに中に1枚入れると、そうとう暖かく眠ることができる。まあ、荷物に毛布を2枚もプラスして登山なんか決してできないが…。キャンプならではである。
ついでに、今回登場しなかったが、使用を検討していたものがある。
ハクキンカイロである。
使い捨てじゃないカイロ。形状はZIP●Oとかのライターを大きくした感じ。ベンジンを燃料にしたカイロでものすごく熱いらしい。懐かしのアイテムだ。
ア●ゾンのカートにいれるところまでは行ったけれど、使い捨てでいいか、と購入までは至らなかった。
日常使いもできるので、購入してもいいかなあ、とまだ未練がある。そのうち購入するかもしれない。
ちなみに、ジェイ氏も、今回持っては来なかったが「豆炭アンカ」を古道具屋で購入したそうだ。(若い世代は、名前を聞いてもピンとこないかもしれないが、中に入れた豆炭を燃やすアンカである)
それもいい。
話を聞くと、欲しくなってしまって困る。
翌朝はゆっくり起床。
昨日は出番のなかった私の七輪に炭を入れ、でんさんのホットサンドメーカーで肉まんを焼いて朝食にする。
おいしい、という評判を聞いていたので試してみたのだが、加減がよくわからずに片面真っ黒…。
でも、負け惜しみじゃなく、カリカリしておいしかった。本当だ。
失敗もまた楽しいのだ。
ホットサンドメーカー、重くて山に持って行きたくないので買っていなかったのだが、やっぱりいいなあ。欲しいなあ。
ギョウザとかも焼けて便利らしいし、買っちゃおうかな。低山とか尾瀬とかなら持って行けそうだし。
キャンプは物欲を刺激する。
これはちょっと危険な遊びなのかもしれない。
黒斑山~ありがとう、快晴登山~
とにかく晴れの日に黒斑山に登りたい、と夏くらいからずっと思っていた。
黒斑山は浅間山の第一外輪山。年中噴火している浅間山の一番外側の縁に当たる山だ。
何で読んだのかは忘れたが、黒斑山からは大迫力の浅間山が見られるという。まさに「どーん!」と目の前に迫ってくるらしい。
秋の紅葉シーズンには、浅間山の裾野をカラマツが黄金色に染めあげる景色を眺めることができるとのことで、それは夢のような光景だなあ、と写真を眺めて気持ちを高ぶらせていた。
しかし、他の山で戯れているうちに、紅葉シーズンはあっという間に過ぎ去った。
来年まわしかな、と少し諦めかけていたが、週末の天気予報で「晴れ」一択の日を発見し、急に「いつ行くの?今でしょ!」と黒斑山に行くことを決定した。混じりっけなしのおひさまマークの日は貴重である。
山の相棒、ノムさんも「よっしゃ、行こうじゃないか」とすぐに乗り気になってくれた。なんだかんだで、今年は「快晴」の日に山に行っていないので、私たちは多分「晴れ」に飢えていたのだろう。
我々G県民にとっては浅間山とその外輪山の黒斑山は「G県の山」であるが、登山口はシナノ県にある。県境に位置する山なのだ。
もしかすると、G県民以外は浅間山(と黒斑山)はシナノ県の山、という認識なのではないだろうか、という不安に駆られるが、シナノ県側からの浅間山の姿を眺めて「G県側からの方がキレイだから、やっぱりG県の山だな」と勝手に納得する。
G県平野部から眺める浅間山はほぼ富士山である。綺麗な円錐形のプリン型。私はホンモノの富士山をみて、浅間山と間違えたことがあるくらいだ。
シナノ県は他にも名だたる名峰を沢山持っている大富豪県だから、多分、貴族(?)の余裕でもって、浅間山一つくらい簡単にG県にくれるだろう。(ちなみに、黒斑山、浅間山ともに「ぐんま百名山」である)
8:30 登山口である車坂峠に到着。駐車場はほぼ満車である。どうやら、私たちと同じく晴れに誘われた登山者が沢山登っているらしい。
登山口近くの高峰高原ホテルでトイレを借りてから出発する。
高峯高原ホテルは「天空の絶景宿」を売りにしているようだが、この日の景色は言葉に偽りなしの絶景である。遠く、富士山もしっかり見える。
登山道は「表コース」と「中コース」の2本があり、表コースは景色はいいが、若干距離が長く、中コースは樹林帯のため眺望はないが、距離は短いコースとなっているとのこと。もちろん、「表コース」を選択する。こんな晴れの日に、眺望のない道を選んではいけない。
登山道には雪は無いが、霜柱がざくざくである。特に日陰はみっしりと氷の柱が地面の下にひしめいていて、軽く踏んだくらいではつぶれない。もちろん、しっかりと踏みこんで、ざっくりと倒してやりましたとも。
荷物を梱包するぷちぷちと同様に、霜柱をみたら踏みつぶさないと気が済まない。きっとこの習性は私だけではないはずだ。相棒のノムさんも嬉々として霜柱を踏みつぶしていた。
登山口から車坂山というピークを一つ越え、一度下ったところから、黒斑山に向けて登り返していく。
また、登って下って登るのパターンか…。山登りというものはそういうものなのだろうが、未だに「せっかく登ったのに下るの、もったいない…」と思うのは、私が永遠の初心者だからなのだろう。
登りの傾斜はそこそこであるが、表コースは景色が良く、富士山を右に見ながら登れるのであまり苦にならない。
ところどころ、ナイスビュースポットがあるので、止まって景色を眺めながら休憩し、のんびり登っていく。
やはり、天気が良い日の景色のいい道の登山は最高である。
10:10 槍ヶ鞘
ちらちら見えていた浅間山が一気に目の前にどばーんと登場する。大迫力だ。
「わーお、浅間山、来たよ!」と興奮のあまり大声でノムさんに知らせる。ノムさんも「おおーっ」と慨嘆し、まわりの登山者の皆さんも「あさまー」などと感動を声に出して確認しあっている。
晴れの日にこの山を選んだのは大正解。スバラシイ景色だ。
眼前に広がる浅間山は正に円錐形のプリン型。私がG県平野部で見ている浅間山の形そのままだ。
黒斑山と浅間山の形を、石丸謙二郎著「山は登ってみなけりゃわからない」では「グレープフルーツ絞り器」にたとえているがいるが、正にそんな感じだ。グレープフルーツを搾るところが浅間山で、その周りの搾った汁がたまる部分と同じようにくぼんだ谷が取り囲み、絞り器の縁が外輪山(黒斑山)である。
ここから先は、その縁に沿って浅間山を眺めながらの行程になる。楽しいに決まっている。
よっしゃ、行くぞ、と先への期待で興奮しつつ、この先のトーミの頭への道方面に視線を動かし、その傾斜を目にして「かなりの急登ではないか…」とちょっとびびる。景色はとても良さそうだけれど…。
10:30 トーミの頭
急登を登り切り、トーミの頭到着。見た目ほど大変ではなかった。
ここが一番浅間山がキレイに見える場所だという。トーミは遠見だ。
裾野までばっちりの浅間山全貌が見渡せる。絶景である。
もう紅葉は完全に終わっていたので想像するしかないのだが、この山が黄金色に染まる様はそりゃーキレイだろう。来年は紅葉のシーズンに来たいものである。おそらく、この日とは比べものにならないくらい沢山の人で混雑するのだろうが。
ここの景色ではやるしかない、と両手両足を大きく広げたXポーズで写真を撮ったりして大満足だ。
近くにいた登山者の方は「何回来ても、同じような写真を大量に撮っちゃうのよねー」と言っていたが、確かに私も、似たような浅間全景写真を撮りまくってしまった。
絶景の感動がついついシャッターを押させるのだ。目に焼き付けるだけじゃ足りなくて、「いい景色だ」と思うと、写真を撮らずにはいられない。
10:50 黒斑山 2404m
頂上到着。ここからも浅間がよく見える。というか、ずっと浅間がよく見えるルートである。
ずっと見ているのだが、割と飽きない。歩きながら横を見ると、浅間がどーんとそびえていて「やっぱり、いい景色だー」と再度見とれる。惚れ直すって感じ?
時間に少し余裕があるので、外輪山巡りを続けて、もう一つ先の蛇骨岳まで行くことにする。
蛇骨岳、なんだか迫力のある名前だ。蛇の骨のように見えるから付けられたらしい。蛇の骨…。
ここからのルートを眺めると、景色が最高の楽しい稜線歩きが出来そうで期待が高まる。
青空の元、浅間を右に従えての稜線歩きを期待していたのだが、蛇骨岳へのルートは割と樹林帯であった。
道は狭く、ところどころ霜が溶けたぐちゃぐちゃ道。まあ、これは予想していたので何ということもない。汚れた靴は洗えば良い。
「それほど景色、よくないねー」とノムさんと言いながら歩いていると、途中で脇にそれる道が現れ、何となく進路を取ると、急に視界の開けた浅間絶景ルートが現れた。
「ボーナスステージだ!スーパーマ●オで言うなら、土管を入った先にある、コインをいっぱいとれるところ!」
「1-2の地下とかにあるヤツか!」
ノムさんと私は同級生なので、こういう会話がスムーズなのが非常に助かる。ありがとう、友よ。
ボーナスステージはすぐに終わり、また樹林帯の道に戻る。うたかたの夢のようなルートであった。
11:40 蛇骨岳
眺望最高。また、眼前に浅間がどーん、である。
ちょうど時間がいいので、ここでお昼にする。少し風が出てきていたので、岩陰でインスタントラーメンに半熟卵をトッピングして食す。ウーマです!(byユースケ)
山ごはんはなんだかんだ言って結局はラーメンなのだ。
食事終了後、ここで折り返してピストンで帰路に着くことにする。
この先の仙人岳まで行ってみたいような気持ちもあったが、ご飯を食べて満足したことと、少し風が出てきていたので、今回はここまでとしよう、ということで決した。
次に来る時に仙人岳、さらにその先のJバンドまで行けばいいのである。
蛇骨岳から眺める浅間山には、登山道がくっきりと見える。
浅間山は年中噴火しているイメージであるが、活動が落ち着いている隙間をぬって、是非ともあの道を登り、前掛山まで行ってみたい。
道筋を見ると、ためらいのない完全登りなので少々不安を覚えるけれど…。
12:40 蛇骨岳発
13:05 黒斑山
13:30 トーミの頭
順調だ。
いつもの遅い下山時には、まわりに登山者がいなくなり「私たちが最後かもね…」などど語り合うのが常であったが、今回はなんと、まわりに沢山人がいるのである。
「私たちもやれば出来るじゃないの」
「蛇骨岳で折り返しの選択をしたのが今回の肝だね」
「成長してるよ」
やればできる子なのだ、本当は。(裏返せば「やらないから出来ない子」なのだが…)
13:45 槍ヶ鞘
ここで浅間山とはお別れである。名残惜しいが仕方がない。
下山は行きと同じ「表ルート」をとることにする。青空快晴登山が楽しすぎるので、少しでもいい景色を眺められる方を選択したのだ。
しかし、表ルートに入った途端、周囲の人の姿が消えた。なんだ、ミステリーか!?
「さっきまで人が沢山いたのに、全然いなくなっちゃったよ。なんで?」
「わからん…。もしや、「中ルート」をみんな選択しているのではないか?」
「ええっ!「中ルート」は景色イマイチだよ」
「…下山は早く帰りたいんじゃないかな…」
「…そうかも…」
確証は持てないが、どうやら他の登山者の皆さんは距離が短い「中ルート」を選択したらしい。そうか、そうだよね。早く下りたいよね。
未練がましく「表ルート」の景色をまだ楽しむぞ、という選択をする人は僅少だったようなのだ。
時々、人の声が聞こえたので「おお、人がいたじゃないか」と人影を探してみるが、姿は全く見えなかった。声はすれども姿はみえず。ほんにおまえは●の様な…。(●は自主規制)
方向的に「中コース」がある方から声が聞こえたので、多分、そっちを選択した人達の声だったのだろう。声だけでも聞こえると「まだ人がいる」と安心できる。
しかし、負け惜しみ(?)を言う訳ではないが、「表コース」は午後になっても富士山も八ヶ岳も見えて、やっぱり良い景色だった。
15:00 車坂峠
なんと、この私たちが、登山の基本「15時までに下山」を達成した。
「これが本来の姿なんだね」
「やっぱり、やればできる子よ」
互いに互いを讃え合って、浮かれた良い気分である。
高峯高原ホテルで絶景風呂に入った後、優雅にロビーでヨーグルトを頂く余裕まであった。これが、あるべき登山の時間設定なんだな、と感慨深い。
今後はきっと、この基本をずっと守った登山ができそうな気がする。多分、大丈夫だ。
そして、黒斑山はとにかく浅間山の絶景を楽しめる、とても良い山であった。
また是非来よう、晴天の時に。とノムさんと硬く誓い合った。来年はカラマツの紅葉を見るぞ。
<コースタイム>
8:30車坂峠…10:10槍ヶ鞘…10:30トーミの頭…10:50黒斑山…11:40蛇骨岳(昼食1時間)…12:40蛇骨岳発…13:05黒斑山…13:30トーミの頭…13:45槍ヶ鞘…15:00車坂峠
安達太良山~くろがね小屋泊で温泉満喫~
今年の紅葉登山は安達太良山に行った。しかも、温泉付き山小屋として人気の高いくろがね小屋泊である。
数年前にも安達太良山に行ったが、そのときは時間がなくて、温泉に入れずに小屋を通過しただけだった。
今年は満を持しての小屋泊である。温泉入り放題だ。
温泉は私の大好きな白濁の酸性泉。源泉から最も近い場所のお湯だという。
もう、楽しみ!
温泉付きの山小屋、最高である。
朝9:00 どんよりと雲に覆われた二本松の街を抜け、雲海の上の青空の安達太良山ゴンドラリフトの駐車場に到着。
山道の途中で急にぴかぴかの青空になった。真っ青。
雲を抜けたらその上は青空、という仙人になったような気持ちにさせて貰える天候である。
下界の雲海にテンションが最高潮に上がる。しかし、浮き立つ心と裏腹に私とノムさんには大きな不安があった。
「風は大丈夫だろうか。今日はゴンドラは動いているのか」
実は、数年前に安達太良山に来た時は強風でゴンドラ運休。ショックを胸に、スキー場のゲレンデを登る、という悲しい経験をしたのだ。しかも、ゴンドラ山頂駅まで登った時には運転再開していたというオマケ付き…。
「今回は、絶対にゴンドラに乗る!楽に頂上へ行く!」という強い決意をしてやってきたのだ。私とノムさんはロープウェイ好き。
果たして、ゴンドラは動いていた。
しかし、なんだかよくわからないが長蛇の列である。人だらけ!
「ど、どういうことだ…!この人達は何のためにここにいるのだ!?」
「わからん…。とにかく列があるということは、並ぶ必要があるのでは?」
想定外の事態に狼狽し、とりあえずノムさんは、手近な列に並び、その間私が情報収集に走った。
ドラクエ並に、その辺の人にいろいろ聞いてみたところ、この人々はゴンドラに乗るために列に並んでいる人達であることが判明。よく考えれば、それ以外に考えられないのだが、この時は現実を受け入れたくなくて、頭が理解を拒否していたのであろう。
しかも、集めた情報によると「チケット買うのに1時間」「ゴンドラ乗るのに1時間」かかるという。
あわてて列に並んでいるノムさんの元に報告する。
「何ぃ!?ゴンドラ待っている間に、ゲレンデを行けば登れてしまうではないか!」
「で…でも、二手に分かれて並べば、短縮できるよう。友よ、今回はゴンドラに乗ることを誓ったではないか!」
「そう…そうだね。紅葉シーズンは恐ろしいね…」
本当に…。来る道での大渋滞はなかったが、やはり紅葉名物の山のトップシーズンは、大にぎわいらしい。
紅葉トップシーズンに人混みを避けて登山するのは不可能なのか…。ものすごい険しい山に行けばいいのか。いや、険しいと私たちが登れない。何年経っても初心者マークから抜け出せない私たちなのだ。
それにしても、日本人って、こんなに紅葉に貪欲なんだ。
那須岳で思ったことをさらに再認識する。確かに、結構前に、いつもはガラガラの東福寺(京都)に紅葉の時期に行ったら「動けない…」と思うほどの大混雑だった。
そういえば「源氏物語」にも「紅葉賀」という章があって、紅葉見物の宴で源氏の君と頭中将(この時は中将ではないかもしれないが)が青海波を舞っていた。(耳の前に紙のない扇子みたいな飾りをつけていたという強い印象がある。何のマンガで見たのだろうか?)
平安の昔から、日本人は紅葉が好きなのだ。
登山を始める前の私はとにかく情緒不足で紅葉狩りにほとんど興味がなかったので、その事実に全く思い至らなかった。もののあはれを解さない私…。
9:45 二手に分かれて並んだおかげで、なんとか45分の待ちでゴンドラに乗れた。
予想外に時間がかかったが、お昼頃には山頂に着けそうなのでよしとする。
しかし、ゴンドラを待っている間に青かった空は、雲に覆われ出している。
まあいい。目指す山頂、乳首はくっきりと見えている。そして、紅葉は最高だ。
「あの乳首を目指して進もう!いやん、ちょっとハズカシイ」
「あの乳首は男性だよね!やっぱり、そのものにしか見えないね」
数年前に来た時も同じようなことを言いながら登った気がするが、今回も山頂「乳首」について、二人で語り合いながら歩く。
多分、地元の方達のこんな会話があったに違いない。
「おっ今日もくっきり晴れて、乳首がなっから見えんなー」
「やだ、あんた。あの山には安達太良山っていう名前があんのに、そんな変な名前つけて!」
「だって、おめえ、あの形。どう見ても乳首だんべよ」
「…まあ。そりゃ、そう見えるけど…」
※我がG県の方言でお送りしました。地元じゃないけど。
歩きはじめは安心の木道。徐々に傾斜がある山道になっていく。
道はずっと整備されていてとても歩きやすいのだが、とにかく狭い。人1人幅なので、すれ違いが非常に困難である。
しかも、両脇がシャクナゲとかの低木になっていて、脇によけにくい。がさーっと思い切って、背中側を樹木につっこんでよけるしかない。
前回来た時は、それほど混んでいなかったので、狭い道という印象はなかったが、今回はとにかく多い人出である。
特に、朝一くらいのゴンドラで登り始めた人が帰路につきだす時間帯と思われる11:00過ぎからは、歩いている時間よりもすれ違いの人を待っている時間の方が長いんじゃないか、と思うほどの混雑ぶりだ。
まあ、仕方がない。自分も紅葉につられてやってきた登山客なのだ。気持ちよく譲り合おう。
11:45 混雑の山道を抜けて、山頂到着。ゴンドラを下りてからだいたい2時間なので、まあまあである。
もちろん、山頂は大混雑。乳首登頂も混雑していたので、とりあえず先にご飯を食べることにする。
お昼ご飯(ラ王味噌味)を食べた後、乳首に登り、完全登頂を果たす。(1,700m)
周りの山を360度見渡せる大パノラマ。これから行く予定の沼ノ平への道も見下ろせる。ヤッホーだ。
しかし、残念ながら、朝の晴天は幻だったかのように、空は雲に覆われている。景色が全く見えない真っ白地獄ではないので、まずますとするべきか。磐梯山はなんとか見えた。
12:45 乳首を下山し、沼ノ平方面へ出発する。
実は、前回来た時は、元来た道を少し下ったところにあるルートから下山を開始してしまい、沼ノ平の爆裂火口を見ずに山を下りてしまったのだ。簡単にいうと、道を間違えた。
「今回は、絶対に爆裂火口!」と何故か火口好きのノムさんは熱を込めて主張し、私も激しく同意した。写真で見ると、すごい迫力。これは絶対に見たい。
稜線を20分ほど歩くと、左手に爆裂火口が姿を現す。
おおー!!これはすごい!写真どおりの大迫力だ。
ここは、昔、ここから噴火したのね、と城跡を眺めるようなノスタルジックな気持ちで眺めるような場所ではない。
安達太良山って、活火山なんだ。噴煙をあげて、ここからマグマが吹き出すし、火山弾もバンバン飛ぶのだ。
そういう、現役感のある爆裂火口だ。危険地帯だ。硫黄の臭いに身震いする。
この火口のどこからか、くろがね小屋は温泉をひいているらしい。すごく、臨場感のある(?)いいお湯に違いない。
ノムさんと大興奮して写真を撮りまくる。もちろん、二人ともキメキメポーズである。周りの人の目は全く忘れていた。大丈夫だ。まわりの人も興奮してポーズを決めまくっていたから。
13:30 矢筈の森手前の分岐
日帰り登山ならここから下るところだが、今回は小屋泊で余裕があるので、分岐で曲がらずに鉄山に行ってみることにする。
爆裂火口に沿って、ぐるっと回る感じのルートだ。
爆裂火口に心を奪われた私たちは、出来るものなら一周したいくらいの気持ちだった。できるだけ、ずっと眺めていたいのだ。
鉄山へ向かう道は「馬の背」の名の通り、細く急な道だ。足下は土なので、わりと歩きやすいのが救いである。
沼ノ平までは沢山いた登山者がほとんど姿を消したので、マイペースに楽しく登る。
鉄山頂上に至るルートは急登に見えたが、大きく巻いて頂上に至るので、それほど辛くはなかった。
14:00 鉄山 1,709m(実は安達太良山より9m高い)
上空は白い雲だが、下界が見渡せて、なかなか良い景色。爆裂火口の向こうに磐梯山も見えた。
人がほとんどいないので、写真撮り放題。楽しい。ますます、変なポーズ写真の撮影に励んでしまう。
小屋泊だから、こんな時間にこの場所にいても大丈夫なのだ。「下山時間、ヤバいね」と言っている、いつもの日帰り登山とは違うのだ。ふふふ。嬉しい。
14:30 矢筈の森手前の分岐まで戻り、ここから下り。
当然だが、人はまばらである。
まわりの山の紅葉が非常にきれいな道だ。あちこち立ち止まり、写真を撮りながら下る。
綾錦の絨毯のよう。まばらにいる登山者のカラフルなウエアも紅葉になじんでいる。
15:40 峰ノ辻を経て、くろがね小屋到着。
シュラフを広げて寝る場所を確保したら(今年はシュラフ持参)、すぐに温泉である。
今年は感染症対策で一度に3人までに制限されており、受付で木札を貰って入浴する形式だ。
そんなに広くないので、この措置はありがたい。
私たちが行った時は誰もいなかったので、二人でうはうは笑いながら大胆に入浴する。
白濁の酸性湯最高!疲れた体に染み渡る。
「極楽だねえ、ノムさん」
「山小屋でこんな贅沢を味わっていいのかしら」
「あの沼ノ平からひいてるらしいよ」
「ありがたいねえ」
「本当、ありがたいねえ」
あまりのありがたさに、夕食後(名物カレー)もう一回入ってしまった。
山小屋なのに、2回も入浴できるなんて、幸せ過ぎる。
お風呂後は、小屋にあった「火の鳥 未来編」を読みながら早々と就寝。
所謂「寝落ち」だ。
マサトとムーピーのタマミがどうなるのか気になるのだが、眠さに勝てなかった。うちの本棚にあるはずなので、帰宅したら続きを読まなくては。
6:30 朝食を頂き、荷物を片付けてくろがね小屋出発。
とても居心地のいい山小屋でとてもよかった。何より温泉最高!
また是非とも、泊りたい。
さて、2日目のルートは、昨日の逆を行き、沼ノ平から山頂(乳首)を経て、ゴンドラで駐車場に戻る。つまり、2日かけてのピストンである。
天気も晴れているし、人の少ない朝の山頂に行ってみたかったのだ。
7:30 峰ノ辻
8:00 矢筈の森手前の分岐
この日も朝は雲海であった。しかし、馬の背まで来ると、大分雲は薄くなっていてちょっと残念。
ほとんど人はおらず、景色独り占め。写真撮り放題。
山の朝の空気は透明で、うっすらかかる白いモヤも少し幻想的でいい。
昨日見た景色のはずなのだが、朝見るとちょっと違った印象があり、とても楽しくなる。空間が昼間より広いような気がする。
「朝の景色はいいねえ」
「もっと早いとまた違う印象なのかなあ」
すこしまだらになってきた雲海を眺めながら、二人で感動にひたってしまった。
まだらな雲海を眺める
8:30 再び乳首登頂。
景色を存分に堪能した後、乳首を下りて、コーヒーを湧かして一休み。
イイ。
朝から山頂で暖かいコーヒーを飲む。
浸れるくらいイイ。
「山小屋泊、スバラシイね。優雅だよ」
「本当に優雅だよ。昨日の喧噪が嘘のようだよ」
この山はゴンドラ利用の登山者が大半のようで、山頂にいる人は本当に数えるほどしかいなかった。他の人気の山なら、日の出とともに登り始める人が結構いるような気がする。
9:15 山頂発。
名残惜しいが、登った山は下らなければならない。
昨日通った道を下り始める。
途中、登っている人が現れたので(ゴンドラ始発組?)「ゴンドラは動いていますよね?」と確認の質問をして「動いてますよ」の回答に安心する。ちょっと風が出てきているような気がしたのだ。
これでゴンドラが動いていなかったら、ゲレンデを下りで下りなくてはならない。下りが苦手な私たちとしては、出来れば避けたいところだ。
昨日同様、道を譲り合いながら、てくてく下り、ゴンドラ山頂駅到着。10:45。
せっかくなので、薬師岳から見納めに紅葉を眺める。ここが安達太良山の紅葉ベストポジションらしいのだ。
赤黄緑の入り交じった山がどーんと目の前にある。自然って面白いことをする。
これは確かに苦労しても見に来たい光景だ。
登山を始めてから、私も少しはもののあはれを理解してきているので、紅葉した山を見て、素直に「きれいだな」と思えるようになっている。
来年の紅葉シーズンはどの山に登ろうか。もう、来年のことに思いを馳せて、わくわくしまうのだった。
<コースタイム>
9:00駐車場…9:45ゴンドラリフト…10:00智恵子抄の碑…10:45仙女平分岐…11:45山頂(昼食1時間)…13:15沼ノ平…14:00鉄山…14:50峰ノ辻…15:40くろがね小屋(泊)…6:30くろがね小屋発…7:30峰ノ辻…8:00矢筈の森前分岐…8:30山頂(休憩45分)…9:15山頂発…10:30薬師岳…10:50ゴンドラリフト…11:30駐車場
前回の安達太良山。ゲレンデを登った時のもの。
那須岳〜温泉横をぐるり満喫〜
紅葉の山といえば、G県民にとっては妙義山であるが、関東に範囲を広げれば、なんと言っても那須岳であろう。
山一面が真っ赤に染まった写真を見れば「行くしかないやろ」と思わせる圧倒的な美しさを誇る。
私は数年前に軽い気持ちで紅葉トップシーズンの3連休に那須岳に向かい、大渋滞に度肝を抜かれた覚えがある。
世の中の人は、こんなにも紅葉を眺めたいものなのか!?しかも、登山もしないのに!!
どうも、登山開始以前の情緒不足な私が出てきてしまい、遅遅として動かない車内から悪態をついてしまった。
景色を見るためだけに高いところ(スカイツリーとか)に登る人の気が知れない、とか言っていたのだ。情緒不足の頃の私は。
今はすっかり心を改めて、山に登る度に「眺望!眺望!」と晴れを祈願している。
過去の経験から、紅葉シーズンの那須岳には二度と行かない、と決めていたのだが、山の相棒ノムさんから「紅葉シーズンより少し前の今なら多分大丈夫」と魅力的なお誘いを受けて「そうかぁ」と二度目の那須岳行きを決定した。
10月初旬で紅葉はもう一息のはず。そして、出発時間も前回より早めに設定。
どうだろう、那須岳!!
果たして、今回は渋滞はほぼ無しで大丸駐車場に到着できた。時間は8:00少し前だ。
渋滞はしていないのだが、大丸駐車場の正規の駐車スペースは満車である。ぐるぐるまわって隙間を探してみたが、無いものはは無い。今回もしぶしぶ路駐を選択する。すみません。
でも、この感じだと、あと1時間早く到着すれば、空きスペースはありそうだ。
次に来るときは(また、紅葉シーズン?)あと1時間早く家を出ることにしよう。…真夜中3時とかになるけど…。こうやって、登山者はどんどん早く家を出るようになるものなのだろうなあ。
大丸駐車場で身支度を調え、ロープウェイ乗り場(山麓駅)までの登りをえっちらおっちら歩く。地味に辛い。
ロープウエイ乗り場で少し待つ。
すると、何やらストロベリー県の職員(?)がやってきて、登山者調査(?)とやらのために、ビーコンを付けて登って欲しいとの依頼をされる。(並んでいる人、みんなに渡していた)
もちろん快諾。
しかし、ビーコンとはなんぞや?
「遭難した時に位置がわかるものじゃないのかしら?」
「なんか電波を発信してるもの?「沈●の艦隊」で潜水艦が打っていたレーダー?(後から、それは「ピンガー」であったことに気づく。古いマンガですみません)」
「…ベーコンは、燻製…」
「いや、ベーコンはフランシス…」
私もノムさんも、そのあたりの知識は薄い。程度の低い大喜利をおずおずと言い合うネタにしかならなかった。
結局、よくわからないが、小型の万歩計のようなものを装着して、ロープウェイに乗り込む。
今回は、窓際をゲットできたので、そこそこの天気のちょっとだけ早い紅葉を眺めながらの幸先の良いスタートである。
8:45 山頂駅到着。
ここから茶臼岳へザレ場をざくざく登る。途中からはガレ。
周りは人で賑わっている。やはり、紅葉ベストシーズンでなくとも、この時期は人出が多いようだ。
多くの人がわいわい登っていく。やはり、ファミリー登山の方も多い。
前回の記憶では、ファミリーの学齢前の小さな子どもやその祖父母とかも登っていたので「山頂までは楽に登れた」と思っていた。
人間の記憶とはなんと曖昧なものなのか。
「けっこう、傾斜キツいじゃないかーー」
「おかしい。前回よりも急になったんじゃないのか!?」
前回も一緒に登ったノムさんも、私と同じ感想である。
なんだろう。前回は、大渋滞のことが強烈な印象すぎて、登山そのものの印象が薄くなってしまっていたのかもしれない。
火山らしい周囲に樹木の無い荒涼とした風景の中を、息を切らして登る。
天気はまずまずなので、眺望良好だ。ヤッホー。
9:45 茶臼岳、登頂。1915m。
前回は茶臼岳頂上でだいだいお昼くらいだったと記憶しているので、今回はかなり早い。
イイね。行けるね、今回は。
少し休憩して、お鉢周りを経て、峠の茶屋方面へ下る。
すると、だんだん風が強くなってきた。私の帽子が飛ばされそうになるくらい。
「あごひもある帽子で良かった!この帽子、今回新調したのよ!」
そう。今まで愛用していた帽子(紺色)を、石けんでごしごし洗ったら、まだらに色落ちしてしまい、ノムさんに「石けんはダメだよ!エ●ールとか使わないと!」とご指摘を受けていたのだ。
「最近、よく行く、○井スポーツで買った!」
「ほー、最近は○井スポーツなの?」
「うん。……あのさ、某芸人のネタで「生まれ変わったらポイントカード作ります」っていうのがあるんだけどさ…心に刺さるよね」
「……早く、作りなよ。ポイントカード」
という、大変どうでも良い会話をしつつ、噴火口周りを歩く。
○井スポーツのポイントカード、やっぱり作ろうかなあ…。
10:40 峠の茶屋
一応、今回の予定は、ここから三斗小屋温泉方面に下り、ぐるっとまわって、朝日岳方面から峠の茶屋に戻り、そのまま下山するルートであった。
三斗小屋温泉方面への道を眺めると、遙かに下ったところに、温泉宿のものと思われる屋根が見える。
「…めっちゃ下ったところだね」
「一応、地図を確認してみよう」
相当下に見える屋根にびびり、地図を開いてみると、三斗小屋温泉から隠居倉までのルートのコースタイムに異変を発見する。
「下り40分、登り80分って書いてあるよ、ノムさん!」
「倍、さらに倍!(byクイズ●ービー)急登じゃないか!予定のルートだと、そこは登りだよね!まずいよ!」
「逆のルートをとろう。回避だ、回避。あぶなかったー」
「あぶなかったねー」
急遽、朝日岳登頂後、熊味曽根で三斗小屋温泉に下るルートに変更する。
多分、この選択は正解だった…と思う。
前回も朝日岳には登っているが、その時は登山者の人数はかなり少なかった。
ファミリー登山の方は、茶臼岳だけ登って下山するからであろうと思っていたのだが、今回はかなりの人数が朝日岳を登っていた。ファミリー登山の方も沢山いる。
前回は、単に時間が遅かったから人がいないだけだった、ということに今更気づく…。
ファミリー登山といっても、両親は山好きで、子どもも小さい頃から(下手したら歩けるようになる前から背負われて)山に行っているエリート達なのだろうから、きっと朝日岳くらいお茶の子さいさいなのである。
11:45 朝日岳 1896m
天気はくもりであるが、所謂高曇りのため、眺望はまずます。紅葉はもう一息といったところ。
ちょうど時間がいいので、朝日岳から少し下ったところの鞍部でお昼ご飯にする。
沢山の登山者が同じようにお昼にしていたが、みんな、なるべく風を避ける場所に陣取っている。
この時点で、かなり風が強く、寒かったのだ。
歩いている時は大丈夫だが、止まっていると寒い。
風速1mごとに体感温度が1℃下がるとか言われているようだが、多分、それは本当だ。この時、気温が何度だったのかはよくわからないが、気分的には3℃~5℃くらいだ。(大げさ?)
暖かい物で内側から暖めよう、とそそくさとバーナーを取り出し、お湯を沸かす。
しかし、私が今回持って行った山フライパン(深型)は口が広いせいか、あたためるそばから冷めていっているようで、なかなか沸騰しないのだ。
途中、気がついて蓋をしたらすぐに沸騰した。すごいな、蓋。
実は山フライパンは蓋が別売りで、買うべきか買わざるべきか、それが問題だ、とかなり迷ったのだが、買って正解だった。よくやった、私。
さて、沸いたお湯で作った今回のお昼ご飯はコーンスープパスタである。
簡単にできそうだし、おいしいのではないか、と思いつき、ネットで検索してみたらレシピもあったので、今回挑戦してみることにしたのだ。
作り方はとにかく簡単。
沸いたお湯でパスタをゆで、そこにツナ缶とコーンスープの素(粉末)を入れるだけ。
以上。
この料理なら、パスタゆで汁問題もまったく心配なし。
肝心のお味もGOODである。ツナ缶がいい仕事をしていて、コーン風味のカルボナーラという仕上がりだ。非常においしい。
これはいい。これからの山ご飯メニューにちょいちょい登場してもらうことにする。
暖かいものを食べたのだが、やっぱり寒い。
歩いていれば暖かくなるので、ご飯終了後、すぐに歩き出すことにする。12:50。
熊見曽根までは三本鎗岳に縦走する人たちがそこそこいたが、分岐を三斗小屋温泉方面に曲がると、ほぼ無人である。
真横には茶臼岳と朝日岳がどーんと姿を見せており、非常に見晴らしがいいご機嫌な道だ。
「こんないい道に人が全然いないなんて、もったいないね」
「私たちで独占だよ。穴場かな、この道は」
一気にテンションがあがり、るんるんで歩く。写真も撮り放題。風もやんできて、ますます楽しくなってくる。
しかも、途中から、紅葉も非常に良い感じに色づいている。この道はアタリだ。
13:40 隠居倉
ここから、峠の茶屋で「下り40分 登り80分」にびびった急坂を下る。
そして、この急坂を下りている時にようやく思い出す。私とノムさんは下りが苦手だったことを。今ごろ…。
「登りも辛いけど、下りも辛いよ」
毎回、どんどこ下る人を尊敬のまなざしで見つめているのに、どうして、肝心な時に忘れるのか。
だからと言って、登りが得意なわけではない。すぐに息切れがしちゃう体力に自信の無いおばちゃんだ。
なので、この坂を登るよりは下る方がよかったと思う。峠の茶屋の選択は間違いではなかった。
慎重にゆっくり下る。自分のペースでいけばいいのである。のたり。
14:40 三斗小屋温泉(やっぱり、下りのコースタイムをかなり超過)
私の中の泊ってみたい温泉ランキングの最上位にある温泉である。
残念ながら、今回は日帰りのため、横目で見るだけ。
ここへ向かう道ですれ違った人(追い抜かれた人)に「温泉泊まりですか」と聞かれて「いえ、帰ります」と答えたら、結構驚かれた。
そりゃそうだ。こんな時間にこんな場所にいる日帰り登山者なんて私たちくらいだろう。
今年は特別に日帰り入浴も可らしいので、あわよくば、などと思っていたが、当然、この時間ではそれは無理であった。
毎度のことながら、どうして下山が遅くなってしまうのか。別に地図を見ていないわけでもないのに。
道道の反省会で(毎回恒例)ノムさんが多分正解の答えを言ってくれた。
「だって、せっかく山にきたら、満喫したいじゃない。時間いっぱい」
エウリカー!そう。そうなのよ。山時間が楽しいから、なるべく長く滞在したいのよ。
愛あればこそ。(byべるバラ(宝塚歌劇団))それが理由だったのだ。
でも、基本は3時までに下山。もう、何度書き留めたかわからないが、再度心のノートに書き留める。
三斗小屋温泉で少し休憩後、峠の茶屋に向かい進路を取る。
行きに峠の茶屋のものすごく下の方に三斗小屋温泉の屋根が見えていたことが、不安感をあおる。
あれだけの高さを登るということか。地図のコースタイムの登りと下りの差はそれほどでもないが、視覚で見たあの感じは、結構、登ると覚悟した方がいい。
時間も押しているので、ちょっと早めに歩く。
15:20 延命水(わき水。冷たくておいしい)
16:10 峠の茶屋
ようやくここまで戻ってきた。
延命水から先は結構登ったが、覚悟を決めていたので、意外と大丈夫であった。
強いて言えば、最後の峠の茶屋の標識が見えてからのザレ場の登りが一番キツかったかもしれない。見えているのに、近づけない…。気持ちが焦るのだ。
さて、たどり着いた、峠の茶屋。もちろん、人影はない。(が、茶臼岳からこちらに向かっている人はいた。強者)
「いやー、毎度だけど、今回は予想外に時間押しちゃってるね」
「暗くなっちゃうかもしれないけど、ヘッドランプ持ってきた?」(もちろん持ってる)
とりあえず、峠の茶屋に戻ってこれた安心感から、再び饒舌になる私たち。
確か、前回の記憶では、ここから駐車場への小一時間の道はそれほど大変ではなかったはずだ。
「おかしい。もっと楽な道だったと思ったけど」
「意外に、ちゃんと山道だね」
私とノムさんの二人ともが同じ記憶を持っているのに、どうして現実は違っているのだろう。
峠の茶屋からの下山道は、記憶よりもしっかりとした山道であった。砂利敷きで平らな道みたいなイメージだったけど。
やっぱり、前回は渋滞の記憶が鮮明すぎたから、登山の記憶が薄いのだろう。辛かったのは渋滞。後は、渋滞に比べれば全然辛くない、と記憶してしまっているのかもしれない。記憶って曖昧。
ぶつぶつ言いながらも下り続け、峠の茶屋駐車場着。無事、下山完了。だいたい17:00。まだ周囲は明るい。
ここで待ち構えていたストロベリー県の職員に、朝預かっていたビーコンを返却する。
登山中、ほとんど忘れていたが、そうだ、預かっていたんだった。
多分、登山者がどこを何時に通過したか、とかがわかるのだろう。
「おいおい、こいつらどこ行くんだよ、とか思われるんじゃないかな」
「そうね。あと、早く帰れよ、とかも思うかもね」
あまり調査には役に立たなかったような気もするが、那須岳観光に是非、活かして欲しい。
なんとか日の明るいうちに下山できて「よかったー」と思っていたのだが、実は、この後、大丸駐車場への道のりが待っているのだった。
結構、辛かった…。(疲労困憊)
大丸駐車場に到着したのは17:30頃であった。お疲れ様でした。
次はもうちょっと早く下山するぞ。本当に。
<コースタイム>
8:00大丸駐車場…9:00ロープウェイ山頂駅…9:45茶臼岳…10:40峠の茶屋…11:45朝日岳…12:00(お昼休憩50分)…13:00熊味曽根…13:40隠居倉…14:40三斗小屋温泉…15:20延命水…16:10峠の茶屋…17:00峠の茶屋駐車場…17:30大丸駐車場
余談ですが、この記事の文章を三斗小屋温泉のあたりまで書いたあと、一回全部消えました。(自分の操作ミス)
心が折れる音がしました。
前回の那須岳。3年前でした。
ビーコンの調査。ニュースになっていた。…ストロベリー県の調査ではなかったらしい。
金峰山〜のぼってくだって〜
ぶどうの季節がやってきた。
この時期に行く山はぶどうの産地、山梨方面と決めている。
登山を楽しんで、産地のぴちぴちシャインマスカットをお土産にするのだ。ついでにワインも買っちゃうのだ。うふふ、楽しみ。
今年は日本百名山のひとつでもある金峰山に決定。最寄りの高速のインターチェンジは勝沼である。最適である。
金峰山を登るルートはいくつかあるらしいが、最も初心者向きという大弛ルートでいく。
9:00 大弛峠からの長い山道を抜けて登山口に到着。森の中の道を歩き出す。
今年は先日の「にゅう」くらいしか山に行っていないので、体力の衰えがちょっと心配である。
しかし、金峰山は登山口と頂上の標高差はわずか234mらしい。
わりと楽に登れる山なのかもとちょっと期待してみるが、愛読書「入門山」の「大小の登り下りを繰り返して登山者泣かせではあるものの」と書かれているのが少し気になる。
多分、そんな簡単な山ではない。
森の道はそこそこの登り道でで地味に辛い。
今回も同行のノムさんと「おばちゃん、すぐに息切れしちゃうよ」と泣き言を言いながらゆっくり登る。
しかし、そんな私たちを励ますように、かわいいきのこがあちこちに姿を見せている。
前日、雨が降ったのか、森全体がしっとりしていて、とにかくきのこ祭り。ここにも、そこにも、あそこにも、きのこだらけである。
「しまった!き●この山のピンクバージョン(ストロベリー味?)車に置いてきたよ。こんなにきのこの山だとわかっていたら持ってきたのに!」と悔しがるノムさん。
「ピンクきのこ…毒!?食べても大丈夫なの?」
「明●製菓という巨匠が毒はないといっているのだ。大丈夫に決まっている」
毎度のアホな会話を繰り広げる。
これからは、行動食として常にき●この山を持って行くようにしよう。毎度のことながら、心のノートに書き留める。いつ、きのこ祭りにあってもいいように。
きのこに夢中になりながら、登りの道をどんどん歩く。
好みのきのこを発見するたびに、写真を撮ったり「これは、ナイスな色味だねー。褐色が健康的だね」「博士、お気に召しましたか!?」などと、引き続きアホな会話を展開しているので、あまり登りのつらさは感じない。(時間はかかるけど)
アホでよかった…。
9:50 朝日峠
10:45 朝日岳(2579m)
晴れれば多分、絶景ポイントなのであろうが、この日は全体的にガスっていて「何も見えねえ…」という状態であった。
「白いね…」「白いねえ」と二人で、何を見るとも無く、ガスを眺めてつぶやく。
ぴかぴかの晴れ、という登山って、なかなか出来ないものなんだなあ。
登山を始めたばかりの頃は、かなり晴れていた様な気がするが、あれは所謂ビギナーズラックだったのだろうか。
山の神様は、「最初は勝たせておいて、レートを上げて大金を掛けるようになったころにすっかり巻き上げてやるのが夢中にさせるコツですよ」とギャンブルにのめり込ませる悪い人と同じ手法を使っているのだろうか…。スミマセン、罰当たりな。
登っている時は天気のことを考えていて気づかなかったのが、この地点の標高が2579mであるということを心にとめておくべきであった。
登山口の標高はだいだい2300m。
朝日岳は2579m。そして、目指す金峰山の頂上は2599mである。
ほぼ変わらん。
そして、ここから先のルートを眺めると「ひょー」と思わず叫んでしまうような、激下りになっている。
「せっかく登ったのに、どうしてまた下るのさ。もったいないじゃないか」
「下った分、また登るってことだよね。これか、登山者泣かせは!」
「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか…」
まさかの激下りをしぶしぶ下りる。もったいないなあ。
11:30 鉄山(2531m)
朝日岳からの下りを登り返したところ。森の中で、看板があるだけである。
登って下ってまた登る…。
それが人生。ケセラセラ。
12:00 サイの河原
森の中を歩いていると「そろそろ森林限界だな」とわかるようになってきた。
だんだん、木の高さが低くなって、ハイマツなどが中心の植生に変わってくるからだ。
「来るね。好きな四字熟語は「森林限界」」
ついに森を抜けた先は一気に視界の開けたガレの世界。
ここに来て、ガスはかなり晴れ、周りの山が姿を現す。
「ひゃっほー。瑞牆山が見えるね」
「来年の9月は瑞牆山かな」
一気にテンションがあがり、雲間の瑞牆山を写真に収めるべく奮闘する。しかし、カメラを構えて待っているときに限って、ガスが流れてきて良い姿を写真に収めることができない。
「もうちょっと、もうちょっと頼みます」
「瑞牆姐さん、恥ずかしがり屋!」
さて、ここで私たちは大きな間違いをおかした。
「頂上はどこかな」
「あの、岩の上じゃないかな」
「岩登るだけなら、荷物はデポして行こう」
と最近覚えた山用語(デポ)をうれしがって使い、荷物を下ろして頂上を目指して岩を登る。
頂上、ここじゃなかった。
もっと先に道が続いている。
「まあ、いずれにしろ近いだろうから、このまま行ってみようか」
とやや不信感を抱きながら、ルートを進む。
12:20 山頂
サイの河原から15分くらいかかってる…。結構、距離あった。
地図を見ろ、私たち。
何で、あのとき、ここが頂上、と思い込んでしまったのか。
あやうく、本堂(?)にお参り出来なかった仁和寺にある法師になるところだった。あぶない、あぶない。
頂上からは、金峰山名物(?)五丈岩がどーんと見える。
そうだよ。事前にガイドブックとかで調べた時に「五丈岩が頂上にはあるけれど、素人は登っちゃいけない」と書いてあったよ。
なんで、五丈岩のことをすっかり忘れて、頂上を間違えるようなことをしでかしたのだろうか…。
多分、この日はちょっと寝不足でお疲れ気味だったので「ここが頂上だったらいいな」という強い願望から、「頂上ついたぜ、ひゃっはー」と思い込んでしまったのだろう。
反省。
事前にちゃんと地図とルートを確認する。そして、前の日は早く寝る。
これも心のノートに書き留める。心のノート、だんだんいっぱいになってきたなー。
五丈岩の前ではお昼ご飯を食べている方が沢山いた。
私たちも朝から山歩きをしてお腹が減っている。でも、荷物をうっかりデポして来てしまったので、今、食べるものを持っていない…。
「ノムさん。チョコあげる」
「サンキュー。これで、今は耐えよう」
この日も五丈岩を登っている人がいたが、もちろん素人の私たちはガイドブックの指示に忠実にしたがい「すごいなー」と眺めるだけにしておいた。
これ、頑張れば登ることはできるかもしれないけど、下りられなくなってにゃーにゃー助けを求める猫になっちゃうパターンかもしれない。
君子危うきに近寄らずだ。
13:00 荷物をデポした場所に戻り、ようやくお昼ご飯。お腹減ったー。
この日のご飯は、カレーメシ。
とある動画でカレーメシをフライパンで煮て(?)チーズをトッピングする、という最強の山ごはんを紹介していたので真似してみた。
これは、うーまーいー!!(byミスター味っ●)
しかも、ものすごくお手軽。
いや、よく考えたら、通常どおり、カレーメシのカップにお湯注いでチーズをのっけたものとほぼ変わらないのだが(しかも、その方がフライパンを洗う手間が省ける)煮込んだ分(?)美味しさが増し増しのような気がするのだ。
ちなみにこの料理(?)の変則技で、カップヌードル飯でチャーハンも作れるらしい。そのうちやってみようっと。
13:30 昼食を終え、帰路へ。
午前中と比べ、格段に天気が良くなってきたので、眺望まずまず。
名残惜しく、あちこちの写真を撮って、ピストンで帰路へ。
帰路と言っても単純な下りでは無い。また、「大小の登り下り」ルート…。
実際には、登山口との標高差234mの2倍以上は登っているだろう。数字にだまされちゃいけない。
今、PEAKSのネット記事をみたが「高低差が小さく、誰でも天空の稜線を歩ける」とか書いてある。間違いではない。でも、「大小の登り下りを繰り返して登山者泣かせ」の道だからねーと、一言コメントを付けたい気持ちだ。
14:50 朝日岳
行きに「ひょー」と言った激下りを、激登りした。ちょっと(かなり?)息切れ。
たどりついた朝日岳で後ろを振り返ると、行きとは全く違う、最高の眺望。
ありがとう、午後晴れてくれて、と天気の神様に心の中で手を合わせる。
金峰山の頂上(多分)を眺めて「あそこから自分の足で歩いてきたんだな」と思うと、感慨もひとしおである。私もけっこうやるもんだ。
しかし、この時点でほぼ15:00である。
まわりに登山者の方は何人かいたが、多分、私たちより遙かに下りのスピードが速い皆さんだ。
「ノムさん、毎度のことだけが、何時くらいに車に戻れると思う?」
「…多分、4時には…」
そう。せめて4時くらいには登山口に帰り着きたい。
登山の基本。15時までには下山するようにしましょう。というフレーズを毎度思い出すのだが、あまり実践できていない。
ここからの森の道は、きのこの写真も控えめにして、せっせと登山口を目指して歩く。(でも遅い)
16:15 登山口着
なんとか目標の少し遅れくらいで到着。
空は綺麗な青空。今ごろ、くっきり晴れるのかい、と思わないでもないけれど、まずますの眺望が見られたので満足である。
今日も無事に下山できてよかったなー。
登り下りにぎゃーぎゃー文句を言ったが、変化があって飽きの来ない楽しい山だ。
天空の稜線も楽しめるし、かなりお気に入りである。五丈岩さんもイイ。
ぶどうの時期は毎年やってくる。
ぶどうとセットに何回も登る山になりそうな気がする。いや、別の時期に登るのもいいなあ。
<コースタイム>
9:00大弛峠…9:45朝日峠…10:45朝日岳…11:30鉄山…12:00サイの河原…12:20金峰山…12:30五丈岩…13:00サイの河原(昼食30分)…14:50朝日岳…16:15大弛峠
「俺たちの頂」塀内夏子
少し前になるが、某バラエティ番組で某芸人さんが人工的に作った氷の壁登攀にチャレンジしていた。
最初に取り付いた場所からほぼ動かないまま、数十分、遠吠えのように叫ぶだけでそのまま終了。
カメラマンさんがものすごく努力して、まあまあ登った風な画角で撮ろうとしてくれていたようだが、その努力もむなしく、視聴者の目にも、おそらく3m程度(もっと下かも)しか登れていなかったことは明白であった。
伝説的な大スベリ。私はそれをげらげら笑いながら観ていた。
その後、復刻した「おれたちの頂」を読んだ。
まじめで優等生の佐野邦彦とやんちゃな南波恭介が互いを無二のパートナーとして、クライミングを極めていくマンガだ。登山マンガの金字塔だという。1990年刊行。
今も昔もバディ物はイイ。熱い。戦いと友情は少年マンガの永遠のテーマである。
この作品中に、谷川岳烏帽子岩奥壁の大氷柱を登るシーンが出てくる。約200mの氷の柱を二人は密かに誰よりも早く登攀する。
すごい。マンガだけどすごい。
某芸人は多分3mも登れなかったのに。
あの無様な(?)アイスクライミングもどきを観ていたので、こんなことができちゃう2人ってすごすぎる、と感動も倍返しである。(流行にのってみたくて使ってみたけれど、使い方を間違った気がする…)
並外れた体力と技術とセンスがアイスクライミングには必要なのだ。きっと。
「普段、運動は通勤時に歩くくらいですかね」という人や「体力つけるためにジムに通ってます」という人も「筋肉は裏切りません!」という人でも、いきなり大氷柱を登るなんて無理なのである。
日頃から、クライミングの訓練をしている人じゃないと、登り切れないどころか、一歩も踏み出せない世界なのだ。
某芸人さんも「VS●」の「ク●フクライム」にたくさん出演させてもらっていれば、もうちょっと登れたかもしれないけど…。
まてよ。思い返してみると、あの番組の「ク●フクライム」を観ていると、スポーツが得意な芸能人の方は、割とぐいぐい登れている。
単に、某芸人がクライミングセンスが皆無でどんくさいだけのような気もしてきた…。彼のアイスクライミング(?)を標準として考えてはいけないのかもしれない。
まあ、そうだとしても、邦彦と恭介のコンビのクライミングセンスと二人の信頼感が無双であることは間違いないのだ。
作者である塀内夏子氏は、高校時代にワンダーフォーゲル部に所属していたそうで、クライミングシーンは細部にわたってかなりリアリティのある描写になっていると思う。
大氷柱を登る際の説明で 「ハーケンがきかないため 埋め込みボルトを使用する」とか書かれていると、私はクライミング知識がほぼゼロなので「細かいことはよくわからないけど、なんか本格的!」と妙に気持ちが高ぶる。
「ユマール」「スカイフック」なんて道具が出てきたりすると「何の用途かまったくわからないけど、クライミングの道具なのかー」と素直に感心する。
多分、かなりしっかり下調べをして書かれているマンガなのだろう。
でもその反面、物語展開は「それはドラマチックすぎやしないか!?」と思ってしまうほど、波瀾万丈である。リアリティは遠いが、その怒濤の展開にページをめくる手は止まらない。
次から次へと困難が降りかかり、山に登る度に命の危険にさらされる2人。
こんなに毎回死にそうになっていたら、邦彦君の母じゃないけど「山はやめてよね」と言わずにはいられない。たまには、予定どおり登って帰ってきてー。
しかも極めつきに、2人きりのアルパインスタイルで登ったローツェ南壁では、とんでもない結果となってしまう。(直接は書かないが、以下の文でネタバレ)
「そんなバカなー。健康診断受けたなら、結果見てからヒマラヤ行きなさいよ!」と読書中に叫ぶ私。
学生の頃、同級生の男子に「少女マンガって、なんで登場人物が死ぬの?」と聞かれて「戦いまくっている少年マンガを読んでる人に言われたくないわ。「タッチ」とかも登場人物が死んじゃうじゃないか」と激論(?)を交わしたことを思い出した。
そういえば、少女マンガの登山マンガ「こちら愛、応答せよ」(上原きみこ作)も、確か主人公の兄が山で亡くなっていた。
死の危険と隣り合わせの戦いに挑み制覇する、というドラマチックな展開がマンガに合うのだろう。映画にしてもきっとイイ。(撮影は大変すぎるだろうけれど)
でも、やっぱり、ちょっと死にすぎているような気もする。
作中では、谷川岳一の倉沢での登山者の滑落死シーンやチョゴリ(K2)での雪崩による隊員四名の死亡なども描かれる。
私のように、読んだ作品に影響されやすいタイプは「登山=壁登り=死の危険」というイメージになってしまって、「怖くて山なんて行けない」と思ってしまうのではないだろうか。
現に「こちら愛、応答せよ」を読んだ当時の私は、確かそんなことを思っていた。
今、一般ルートの登山を楽しんでいる私としては、なんとか「壁登りじゃない、道を上って頂上に行く一般ルート登山もありますよ。ザイルとか使わないですよ」と横から言ってあげたい気持ちだ。緩い登山もあるから、山をキライになったり、敬遠したりしないで欲しいのだ。
かなり長いこと、山がキライだった自分がこんなことを言う日がくるなんて、当時はまったく思わなかった。感慨深いものがある。
もっとも、人の感じ方はいろいろで、このマンガを読んで「クライミング、やってみたい。いつかヒマラヤの山を片っ端から登るぞ」と思う人もいるのかもしれない。いや、むしろ、こっちの感想の方が大半なのかも。
このマンガを読んでクライミングを始めた人はかなり多いのではないかと思ったりもする。
しかし、今のところ、「俺たちの頂」を読み終わった私は「クライミングはちょっとハードルが高すぎる」と思っている。多分、手は出さない。
邦彦くんが優しく基礎から教えてくれたら、ひゃっほーと舞い上がって、トライしてみる気持ちになるかもしれないが、今の私がアイスクライミングをやってみたら、某芸人さん以下で、1mも登れない可能性が高い。
壁に取り付くことすら出来ないんじゃないかと思う。
おばちゃんの体の重さを甘く見てはいけない。
とりあえず、いつかくるかもしれない日に備えて、筋トレとかを始めてみようかな、などとは思っている。
まずは、な●やまき●にくんの動画を見てみることにしたい。
千里の道も一歩から!
ついでに、上原きみこ作品も。