「毒笑小説」東野圭吾
「タ●スにゴンゴン タ●スにゴン 匂わないのが 新しい」
最近変わってしまったが、「タ●スにゴン」のCMを沢●靖子がずーっとやっていた。
美人女優が突然の豹変!ためらいのないはじけっぷり!ひな人形からマリリンモンローまで!
「どうした!?何があったんだ!仕事選べよ!」と思ったのは、多分東の人間。
当時、私は関西に住んでいたが、関西人の皆さんは一様に「ま~沢●さん、所詮は関西人やからな~」とちょっと誇らしげに言っていた。(岸和田出身らしい)
(ちなみに藤●紀●が真面目でデキる女役や何とか大使とかに任命されている姿をみて、「なんだかんだ言っても、紀●姉さんは関西人やで」と言っていた)
どれだけ他人を笑わせるために「アホ」なれるか、ということが関西人のアイデンティティらしい。
そりゃそうだろうな~。1日の内に、何十回も自然と「アホ」を連発する人々だ。 (東では「何言ってるんだよ(笑)」が、関西では「アホか」の一言で済んでしまう) そして、「アホ」と言われることを、何とも思っていない、というか、むしろ勲章のように思っている。それが関西人だ。
「関西人」という言葉には、そのニュアンスが込められていて、それが関西では普通なのだ。(いや、全国区かな?)
「秘密」や「白夜行」など泣かせるミステリーを書く東野圭吾だが、彼も所詮は関西人だな、と私は言いたい。
「毒笑小説」は笑わせる小説である。孫と遊びたい一心で壮大な誘拐計画を実行する金持ちじいさんの話とか、AVビデオを見るために奮闘するうちに泥棒を捕まえてしまうじいさんの話とか……。(じいさん以外の話もあります。念のため)
どれもこれも、面白い!あははは。にやりと笑うものから、腹を抱えて笑ってしまうものまで各種取りそろえてある。
しかし、泣かせる作風で人気あるのに、どうして、あえて「お笑い」作品を書きたくなってしまうんだろう……。
やはり、そこには東野氏が関西人であるから、という理由があるような気がする。
「感動系の話なんか書いてるけど、オレ、そんなに気取った感じじゃなくて、アホもできるんやで」
という、東の人間にはあまり理解できない心理が働いているような気がする。
(平井堅も番組のトーク部分ではじけるところをみると、やっぱりこの関西人心理が働いていると思われる。そのうち、同じく関西人のつんく作詞の「ラーメン大好き小池さん」とかをカバーして歌うかもしれない)
「毒笑小説」の文庫版最後には、「お笑い小説」の同士の京極夏彦との対談もついている。
確かに京極夏彦もお笑い小説を書いている。
しかし、彼のお笑い小説はいかんせん長い上に「……?この不条理さを笑えというのだろうな……」という、ちょっとひねくれたお笑いなのだ。(それはそれでいいんだけど)
「どすこい」も「豆腐小僧~」もだらだら長すぎる。短くは出来ない作家なんだろうな……。(ちなみに京極氏は北海道出身)
それに比べて、東野作品は、どれも短編で直接的に笑いを取る。まさに、関西風味である。
どーんとその場で笑ってもらえれば良し!という、ある意味刹那的なお笑い哲学にあふれている、と思う。
「ああ……仕事に行きたくないぜ」と思いながら列車に揺られるサラリーマンが、通勤電車内でこれを読み「あはは」と笑って、ちょっと元気になって仕事に行ける感じだ。
対談でも言っているが、この「お笑い」ジャンルがもっと出てくるといいなあ、と思う。
東野さん、体力使うだろうけど、どんどん書いて欲しいぞ。
ちなみに、巻末対談で「お笑い小説」の草分け的存在として、筒井康隆があげられていたが、彼も大阪出身の関西人だ……。
やはり、この分野では関西人にはかなわないのか!?
ブラボー関西人!