「問題な日本語 続弾」北原保雄
昨今の「日本語ブーム」の火付け役の一つとして話題になった「問題な日本語」の続編。
確か、NHKの「週間ブックレビュー」(見ると必ず、紹介された本のうち何冊かは読みたくなる魔性の番組)で紹介されていて、何となく購入した。
「こういう使い方は間違っている!改めなさい!」と頭ごなしに言うのではなく、「こういう理由で、現在のあやまった使い方になっているのだろう。それもまたいいじゃん」という感じで、あくまで穏健且つ学術的に分析している。
イラストのキツネくんもかわいい。←これにつられて購入してしまったのかも……。 ふむ。
やっぱり「1000円からお預かりします」はおかしいよな~などと興味深く読んでいて、ある項目でびっくりした。
「すいません」って間違いなのか!!
私は、文章に書くときですら「すいません」と書いてきた。(例:目の前でがんがん怒鳴るおばさんに対して、私は心の中で「すいませんと言ったら、こっちの負けだ」とひたすら唱えていた←車で事故った時の状況)
正しくは「すみません」だったのだ!
漢字で書くと一目瞭然。「済みません」は書けるけど「済いません」は書けない。「吸いません」じゃ、禁煙中だ。
そうだよ!確かにそうだよ!
ああ、長いこと日本語を使って生活してきたけど、気がつかなかった~!
ショック!なんだか、ものすごいショックだ!
あまりのショックに、友人にその話をすると、「ああ、口で言うときは「すいません」って言っちゃうけど、書くときは「すみません」って書くね」とさらっと返され、さらにショックだった……。
ああ、割とこれって一般常識なんだ……。
「問題な~」でも「すみません」が本来の形であることは言うまでもありません、ってごく当然に書いてあったしな……。
あたしゃ、恥ずかしいよ……。
それ以後、本などの文章を読むときは「すみません」に注意してしまうようになった。 そして、分かった。
意外とみんな「すいません」って書いてるぞ!
最近、気づいたものでは、新井理恵「X-ペケ-」(つい先日読み返してしまった……)、清水玲子「WILD CAT」、今市子「美しき獣たち」、京極夏彦「邪魅の雫」。
新井理恵はともかく(と言っては失礼だが)清水玲子や、京極御大まで「すいません」を使用している!
私だけじゃないじゃん!
なんだか、すごく安心。
今の出版社は校閲とかってしないのかな~?
(朝日新聞社はあるらしい。西原理恵子が「ひらがなを直され」さらに「ギャク(くそげろでばっこし)に波線つけられて「意味不明」と書かれた」と言っていたから……(「鳥頭紀行ぜんぶ」後書きより)
というよりも、「すいません」が相当市民権を得ている、ということなのかもしれない。
文章で書くときではなく、口に出して言う場合は、かなりの人が「すいません」と言っていると思う。
「問題な~」でも解説されているが、「すいません」というのは「すみません」の訛りなんだそうだ。口に出して言うときに、「すいません」の方がつるっと言いやすいので、頻繁に使われるようになったのだろう。
先に挙げた4作の「すいません」使用法はやはり登場人物のセリフだ。
京極夏彦の「邪魅の雫」では「青木はつい口を挟んでしまった。すいませんと云うと構わないよと藤村が答えた(231頁より)」と、書かれている。
やっぱり、口で言うときには「すいません」というのが、すでに定着しつつあるんだろうな~。
もしかすると、京極御大なんかは「すみません」が正しいのは百も承知。でも、登場人物のキャラクター設定からすると「すいません」と言わせた方が合っている、という理由で使っているのかも。
セリフなら「旦那、すんません」なんてものあるしな……。(これは関西方面の訛りらしい)
となると、やっぱり「すいません」が本来間違った使い方だと知らなかった私は無知な阿呆なのかも……。
嗚呼……。
この本読んで良かったよ~。
読書って勉強になるな~と改めて思った私なのでした。