睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「建築家の自邸」

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最近、とても気になっていることがある。  

それは、日曜の朝に渡辺篤史に出会えない!ということである。  

以前は、だらーっと起きて、何となくついているテレビに目を向けると、渡辺篤史がヘンテコでおしゃれな家を探訪している姿に出会ったというのに!  

一体どうしちゃったんだ、渡辺篤史!  

もしかして、あの番組、終わっちゃったのかしら?  

そうすると、彼の仕事はゼロになっちゃうんじゃ……!!  

あまりに心配だったので、先日、ネットで調べてみた。  

すると、「渡辺篤史の建もの探訪」は、なんと日曜朝6時からに変更されていたのだ!  

出会えないよ、そんな時間!  

でも、まだ続いていることに安堵もした。よかった~彼の仕事が続いていて。  

この番組に関して、もう一つ疑問がある。  

そもそも、渡辺篤史って何者!?建築家なのか?  

という疑問を両親にぶつけてみたところ「えっ?俳優でしょ?」とごく普通に答えられた。  

ええっ!彼がドラマとか舞台とか出ているの、一度も見たこと無いんですが!  

でも、納得がいった。  

そうか、あの「この光……ありがたい……」という、何だかよく分からん名文句は、建築屋さん的な視線じゃなく、純粋な感想だったんだな~と。  

それにしても、よくもまあ、毎週毎週、探訪する家があるもんだな~と妙に関心もする。  

以前、何かで読んだが、この番組のスタッフは町を歩くときは常に廻りの住宅に注意を払い「おっこれは!」と思う家があると、アタックチャ~ンス!しているらしいのだ。  でも、それだけでは毎週は無理なんじゃなかろうか?  

どうやら、HPを見ると、自薦他薦を大募集しているらしいのだ。  

なるほどね。建築家の皆さんやら、住民の皆さんが「うちの家、取材して下さいよ~」と応募するのね。  

あくまで私の憶測だが、応募するのは建築家の人が多いんじゃないかと思う。  

だって、朝6時からの放送だよ……。確かに長寿人気番組だけど、一般人はそんな時間からテレビ見ないもん。見るのは、その業界の人くらいだろう。  

「これは自信作です!」という設計をした建築家が応募しているような気がする。  

あの番組で紹介されるような家は、オシャレでカッコイイ。「ありがたい」光も差し込んだりして、なんかステキだ。  

だが、壇ふみも著作「父の縁側 私の書斎」で言っているように、カッコイイデザイナー住宅は住みにくいのだ!ついでに、雨漏り問題も深刻だ。  

建もの探訪」では決してそんなことは言わないが、住人の方は本当に満足しているんだろうか……。  

壇ふみはこうも言っている。「「どうやって自分のプランを押し通すか」が、建築家の腕なのだという」  

実際に住む住民の意見に「いや、この方がイイ!」と言う意見を飲み込ませるのだ。その結果、電球一つ取り替えるために100万かかる……なんていう、実用性とかけ離れた家ができてしまう。  

その建築家の勝利の結晶があの番組で紹介されているような気がする。  

 

で、ようやく本題だが、書店をぶらぶらしていると「建築家の自邸」という本が目についた。  

あの見てくれは格好いいけど、住みにくい家をつくって喜んでいる建築家たちは、自分が住む家をどうしているんだろう?という疑問に答える本だ。  

これは興味津々だ。    

買って読んでみたところ、外見は奇をてらって、オシャレ~な感じはもちろんあるのだが、居住スペースは、意外と普通の家っぽいものが多かった。  

……やっぱり!  

自分が住むときは、そういう設計をするのか!  

やればできるじゃないか!  

収納とかも、何を入れるか考えながら作った感じなので、ちょうどいい大きさに作ってあったり。  

家具とかも、こういう家具にベストマッチ!というか、あらかじめこういう家具を置こう、という考えがあるから、しっくりいっている。  

どうして、一般庶民(いや、建築家に家を頼む時点でブルジョワな感じだけど)には、こういう設計をしてくれないのか!  

やはり、これは「住むためにはこの方が便利だ!」という自分と「でも、ここはこうした方がカッコイイよな」という自分が闘って妥協点を見つけているので、上手いこといっているんだろうな。  

一般庶民の設計をする場合は「便利さ」の追求は二の次になっちゃうのが建築家ってものなんだろうな……。住民側もついつい「素人だし……」と負けちゃうし。  

このジレンマを解消するためには、自ら建築家になるしかないのか……?どうかな……?