「月魚」三浦しをん
先日、蔵書の整理を行った。
床積みになっていた本を、どうにか収納せねばならん、という決死の覚悟の元、丸2日間かけての大掃除を敢行したのだ。
ものすごく疲れた……。
極度の疲弊のため、食事すら喉を通らなくなったよ。晩ご飯1回分だけどさ。
私は基本的には一度手にした本は、手放さない主義である。どんな本でも一応は取っておく。
しかし、今回の整理で「これはいらん。が、古本屋にはうれるかもしれない」という本が紙袋2袋分くらいできてしまったので、久しぶりに古本屋に足を運ぶことにした。
訪れた古本屋は「ほ●だらけ 太●店」(注意:間違っても伏せ字部分に「も」を入れないでください。大変なことになります)
いきなり、紙袋を下げての来店の私に向かって「今、計算できる者が出ていますので、しばらくお待ちください」と来た。
うぬう……。平日月曜の昼間に行ってしまった私が悪いのか?待つこと30分強。
ようやく、計算終了とのことでカウンターに行ってみると
「●●関係の本は在庫の関係で買い取れません」と、紙袋1袋分くらいは返され、「こんな金額出ましたけど」と提示された金額は「650円」
がーん……。
うっかりダブり買いしてしまった「名探偵コナン」「クロスゲーム」「ツバサ」各150円がその値のほとんどを占めている。
なんだと~!?
売れる本だけ抜き取って、後は返すのか!?返された本だけで、他の古書店に行けと言うのか!?
そういうのは、古書店の風上にもおけないんだよ~!
三浦しをんさんの「月魚」にそう書いてあったもん!
「私たち古本屋は一人のお客様の本を分け合うということはしないのです。(中略)私たちは同業者が見た後の書棚を査定するのは控えます。価値のある本はすでに持って行かれてしまっている。残り物を査定するのは損ですから」(月魚より)
そうだ!そうだよ!私の気持ちを代弁してくれているぞ!
売る側としては全部引き取って欲しい。
だけど、中には雑本が含まれている。それはいらないけど、売れそうな価値がある本だけは引き取りましょう、というんじゃ、ずるいじゃないか!
よし、わかった。あんたには、私の蔵書は分けてやらん!後で泣いてもしらないもんね。
と息巻いて「全部持って帰ります」と宣言する私。
これも「月魚」によると、売り手としてあまりよくないみたいなんだけど……。
「話になりませんね。それで高く査定した方に売るというわけですか?もし、町の古本屋が私たちより高く付けたら、手ぶらで帰れというわけですか」(月魚より)
でも、私が自ら持ち込んでるんだし、手間はたいしてかかってないはずだ。
これは、所謂、見積書を提示されて「これじゃ、ちょっとお話になりませんなあ」と商談決裂するケースだ。交渉決裂してから他店に持ち込むんだもん。仁義にはもとらないわよね。
しかし、私は待たされている間に、店内をぶらぶらしてしまったために、欲しいマンガを数冊見つけてしまった……。
「全部持って帰ります」と宣言したその直後に「これ、買います」とレジに出す私。
1600円も買ってしまった……。
一冊も売ってないので、マイナスだよ、私。ばかばかばか、私のばか!
そのまま、紙袋2つ+買った本を抱えて、次なる古本屋へ行く。
次に行ったのは「ほ●だらけ 伊●崎店」(くどいようですが「も」を入れないで下さい)
そう、さっき行って、惨敗した古本屋のチェーン店(またはフランチャイズ?)である。
こりない私。昔、本を売って、良いお値段で買ってくれた記憶があったのよね。
ここでも半分くらい返されるようなら、伝家の宝刀「Bo●k Off」に行くしかない!
買い取り計算をお願いすると、今度はすぐに結果が出た。
よかった……。あまり待たされると、また店内隈無く見ちゃうので、また欲しい本が出てきてしまうところだった。
そして、買い取り提示額は、2060円。ばばーん!(効果音)
「売りましょう!」即決。
なんなんだ、この違いは!?
本当に同じチェーンなのか!?
しかも、買い取れない、と言われた本は3冊のみ。
(その中に「百鬼夜行抄」の今市子自薦名作集みたいな、雑誌の特集号があって、一体どうしてこれが買い取れないのか理解に苦しんだので、これは持って帰ることにした)
その買い取れない本は、一応引き取って処分してくれるという。
そう、その心意気が古書店ってものだよ!もしかすると、ここの人たちは「月魚」を読んでいるのかもしれん。
毎日の朝礼で「月魚の引用をみんなで復唱しましょう」
「なるべくすべての本をお引き取りいたしましょう。そのかわり、査定は私どもだけにお任せいただきたい。これが買い付けの鉄則です」
「はい、みんな続けて!」
というのが行われているのかもしれん。
……ちょっと嫌だな……。
以後、私が本を売るときは、伊●崎店だ。決して太●店には売らないぜ! サンキュー!伊●崎店!