「トーマの心臓」萩尾望都
いろいろ出てます。最近出たA5版は1470円 文庫版は710円
ついにここまで来たか……!!
チラシを握りしめる私の手がふるふると震えた。
確かに現状の流れからすると、こういう発想が出てくるのはあり得ないことではない。が、私はまったくこんな事態を予想していなかった。知らず、額には汗がにじんできた。
驚きと興奮にうわずった声で、隣にいた友人シロさんに声をかけた。
「シロさん、シロさん……こ……これを見て」
シロさんは私のただならぬ態度に怪訝な顔をして、チラシを受け取った。
「こ……これは……!!」
そのチラシには「寄宿学校カフェ 2007年9月●日 開校!」の文字が躍っていた。
いやあ、びっくらこいただ。
まさか、そんなモノが登場するとは!
メイドカフェが大はやりで、執事カフェも繁盛していることは聞いていた。でも、次に「寄宿学校カフェ」が出てくるなんて……!
寄宿学校だよ!お姉さん!うひょー!どのへんがターゲットなんだ?私か!?
チラシによると、「このカフェのコンセプトとしている寄宿学校は、大學への進学を目指す優秀な学生や、良家の子息が学ぶ中高一貫の男子校です」とのこと。
ふむふむ。これだけ読むと「グリーンウッド」みたい、と読めなくはない。
説明はさらに続く。
「幻想的で、静謐なミッションスクールの雰囲気や、生徒たちがきらきらと輝いて学校生活を楽しんでいるような様子」
げ……幻想的で静謐……。おまけにミッションスクール!
そしてとどめの一発!カフェの名前は「Edelstein」(エーデルシュタイン)。
ドイツ系ってことはギムナジウムですよねぇ。そうとっていいんですよねえ。
これは、あきらかに萩尾先生の大名作「トーマの心臓」を意識しているとしか思えない!いや、絶対にそうだ!
「トーマの心臓」大好きの私とシロさんの会話は自然と熱を帯びていく。
「やっぱ、カフェの店員さんは、制服着てるんだよねえ。リボンタイよね!絶対!」
「そう!そうよ!リボンタイの色は赤よね、赤!」
「そんでね、夕方すぎると、あの裾の長い寝巻き姿で!みんなおそろいなの!きゃっ」
「おお!ナイスよ!シロさん、冴えてるわ!舎監が点呼するのね!」
「きゃあ~!舎監!!ユーリね!やっぱり舎監部屋は二人部屋よね。誰と誰がそこの部屋、とかの設定もあるのかしら?」
「当然よ~!オスカーよ!そういう設定がなくちゃ始まらないじゃない!そうすると、学生だけじゃなくて校長も必要ね」
すでに、「トーマの心臓」の世界の再現妄想となっているが、お互いに会話に熱中しているので、ずれていることに気づかない。阿呆です。
さらに「学校の催しや季節のイベントによって、趣向を凝らした演出も用意しております」との記述を発見。ますます会話はヒートアップしていく。
「毎週土曜の午後はヤコブ館2階でバッカスのお茶会!これに決まりよ!」←すでにカフェなのだが……。
「いやん、今週は誰が呼ばれるのかしら?「アンテのばか」とかが呼ばれちゃうの?」
「ここで問題なのは、サイフリートをどうするかよ。彼はもう退学になっている設定でいいのかしら?そうしないと、ヤコブ館の部屋が空いてないもんね」←そんなことまったく問題ではないのだが、喋っているときは大問題だったのだ。
「いいんじゃない?彼はたまに現れてユーリにちょっかいを出すって感じで」
「ああ、それが季節のイベント?」(大間違い)
こんなひどい会話を私たちはB●CK'S COFFEEで繰り広げました。
周りが見えない程度には夢中になって……。いい年なんだから、そういうのもうやめようぜ、自分。
それにしても、もしかして、私たち、行ってみたいのか?
ノン!いや、ドイツ語風にナイン!
違うんだよ!決して行きたい訳じゃないんだ!ただ、ちょっと興味があっただけさ。それだけなのさ。「トーマの心臓」を愛するあまりの言動だ。
でも、もし「トーマ~」の世界が完璧に再現されているとしたら、どうだね?ん?
うう……行ってしまうかも……。いや、ここは強い意志でもって、な、ないん……。どうかしら……?
まあ、でも、現実問題として、多分「トーマ~」とは似て非なる世界だと思うんですよ。
で、そのチラシには、ホームページアドレスが書かれていた……。
こ……ここにアクセスした方がいいの?
でも、きっとイメージ壊れる気がするので、見ない方がいいと思う。さらに、もしイメージぴったんこカンカンだったら、行きたくなってしまうので、それはそれで困るのだ!
このアドレスに手を出してはいかん。パンドラの箱ならぬパンドラのクリックになるぞ!
とりあえず、原作を読んで、心を落ち着かせようと思います。すーはー。
今回、やたらエクスクラメーションマーク(!)を多用したことをお詫びします。