睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「失踪日記」吾妻ひでお

イーストプレス 1140円+税  

大ベストセラーになった吾妻ひでお失踪日記」を読んでいて、思い出したことがある。  

私の友人GOちゃんの学生時代の逸話だ。  

当時、私たちは貧乏だった。  

貧乏だった理由はいろいろあるのだが、あえてここでは言明を避ける。ろくでもないことにばかり使ってました。おとーさん、おかーさん、ごめんなさい。  

当時、GOちゃんは私の下宿から遠く離れた大学の寮に住んでいた。  

はるばる私の下宿に遊びに来たときのことである。  

夜中に二人でビデオを見ているときに、GOちゃんは突如として話しだした。  

「夜中にさ~、お腹が空くことってあるじゃない?そういう時の、いい対処法を教えてあげるわ」  

「おお!何かいい秘策があるの?是非、ティーチミー!」  

私の要望に、GOちゃんは堂々と言い放った。  

「ふふふ。我らの救世主は銅夏氏(仮名)よ!」  

「ど、銅夏氏(仮名)?それが一体何……?あそこの商品、おいしいけど意外と高いよ?」  

「いい?銅夏氏(仮名)はね、その日に作ったものだけを売るのよ」  

「ふむふむ。で?」  

「だからね。閉店直後の銅夏氏(仮名)の店裏のゴミ箱をあけてご覧なさい。「僕たちさっきまで店頭に並んでたよう」という銅夏たちが袋に詰められて、たくさん入っているのよ!」  

「おお!そ…それをいただいちゃうわけ!?GOちゃんすごいよ!」  

「ふっ、たったの数十分で有料が無料へと化けるのよ」  

魔法みたい!すごい、すごいねえ!ちょっと人の目が気になるけど」  

「寮生みんなで行くと、そんな行為もへっちゃらよ。ちなみに「旧流行」が多いわね」  ゴミでも勝手にもらっちゃうと窃盗罪が適用されるが、この際、その辺は無視だ。  

確かに、そう考えると、たとえゴミ箱の中の銅夏でもおいしく頂けるよな~。無問題

「ねえ、今、小腹がちょっとスキンシップよね……?」  

「ええっ!GOちゃん。さすがに今、銅夏氏(仮名)に行くのは嫌だよう!私の秘蔵の食料(ツナ缶)出すよ……」  

ということで、へそくりのツナ缶の供出で、とりあえずその場での銅夏氏(仮名)への襲撃は避けられた。  

その後、私はその行為を一度も決行していないが、GOちゃんはどうなのかな……?何度か行ったのかもしれない。  

 

この逸話を是非、失踪中の吾妻ひでお氏にお教えしたかった!  いや、吾妻さんも「うまげや(仮名)」のゴミ置き場から食料をいただいたり、ハンバーガーショップのゴミ箱を狙ったりしてたけどね。(ゴミ捨て場に鍵がかかっていたため断念していた)  

ホームレス生活の基本と言えなくもない。私がお教えしなくても近くに銅夏氏(仮名)があれば実践してただろうな。  

失踪中の吾妻さんもそうだが、やはりホームレスの皆さんには「このゴミ捨て場にはこういうものがある」ということを学び(?)その辺を定期的に回るらしい。  

そう考えると、G0ちゃんみたいな貧乏学生が突然銅夏氏(仮名)のゴミ箱をあさっちゃったりするのは、ショバ荒らしなんだろうなあ。  

「ああっ今日は銅夏が無い!「旧流行」が食べたかったのに……!」と涙するホームレスの方がいたら、ちょっと申し訳ないな……。いや、別に彼の物じゃないからいいんだけど。というか、店の物だ。  

今のところ、GOちゃんに教えてもらった知識は活かされていないが、将来、もしかしたら、その知識を使うときがやってくるかもしれない。人生なんてどうなるかわかんないもんね。  

それなので、まさかに備えて、銅夏氏(仮名)のある場所のチェックだけは常に怠らない私だ。  

貧乏学生たちがあまりすんでいない場所の方が確実性が高まるので、それもチェック項目として重要だな。  

あ、あと吾妻さんより教えてもらった「うまげや(仮名)」の場所もチェックしなくちゃね。でも、私の家の近くには残念ながら無いのよ……。毎日銅夏は飽きるよなあ……。  

将来に対する不安が強いので、そんなことばかり考えてしまう最近の私なのである。