「下妻物語」嶽本野ばら
小学館文庫 630円
どうも、私はベルサーチに特別な思い入れがあるような気がする。
それも「ベルサーチ!すっげー!かっけー!」というのではなく「ベルサーチ……?好きなの?うぷぷ」という、なんとも乾いた笑いを浮かべてしまうような……。
はっきり言って、ちょっと小馬鹿にしてしまうところがある。
お値段を考えると小馬鹿にしちゃいかん、というのは分かっているんだけれど……。 申し訳ありません!だけどさあ……。ねえ?
思い返してみると「下妻物語」で主人公の桃子といちごが出会うきっかけがベルサーチ(ただしバッタもの)だったから、というのが大きいような気がする。
桃子は父(コッテコテのダメ関西人。映画では宮迫さん)が作った有り得ないような偽ベルサーチ商品を売りさばいて、自分の好みのロリータファッションを買おうとする。 その買い手がいちごだったのだ。
売るときに桃子は「ただしすべてバッタものです」と正直に書いているのにもかかわらず「バッタものでもベルサーチはベルサーチだろうが」と言う、いちごちゃん……。
違うよ。ベルサーチじゃないんだよ。ニセモノなんだよ!
それでもいいのね……。理屈じゃないのね。
ヤンキーのみなさま(特に関西系)にとっては、ベルサーチは神にも均しい威力を発揮するモノらしい。
そうか。そうだったのか。
いいのかなあ、あれ?私の感覚では「あ、ベルサーチ着てる。ヤンキーかホストみたいだなぁ」という感じなのだが……。
そのものか。だからいいのかなあ?
この本を友人シロさんに貸したとき「ベルサーチってどうよ?」とついでに聞いてみた。
「関西人にはけっこう威力があるみたいなんだよね」とたたみかける私。
「大学時代の友人で、「オレ、卒業式には紫のベルサーチで決める!」と言っていた人がいてさ。正直、引いたよ……。でも、結局彼は普通のスーツだったけどね」(ちなみに彼は神戸っ子)
「何言っているの、藤原!(私のこと)私の大学の友人はね、青よ!青!」
「ええっ!実際に着た人が……!シロさんの学校、関東なのに……」
「そうなのよ。けっしてヤンキーっぽい人でもなかったのに。でね、「すごいスーツだね」って言ったら「でも、ベルサーチだよ!」って答えたのよ。「でも」ってなんだよ~!なんでそこで「でも」がつくんだよ~!」
いたくご立腹のシロさん。
「つまり彼はシロさんの「すごいスーツ」発言に含まれる、ちょっと引いた感じをきちんと理解した、ということではない?」
「にしても、そこで「でも」つけることないじゃん!「でも」の後に来るのが「ベルサーチ」よ!「ベルサーチ」だから引いてるんじゃないか!仮にも日本語学科の学生の発言とは思えん!」
「そうか……「でも、30万円だよ」とか言ってもらえば、文法的に破綻しなかったのか……?」
などという会話を交わしました。
私やシロさんには理解出来ないが、やはり「ベルサーチ!かっけー!」という世界はけっこう身近にも広がっているものらしい。
価値観って多様だからね。
きっとベルサーチ好きの人にとっては「サマンサのバッグ?はぁ?恥ずかしい!」とか思うんだろうなあ。いや、私もサマンサはちょっと恥ずかしいですが。
そうか、そういう意味でやはり「下妻物語」はすごいね。
ヴェルサーチ好きのいちごちゃんとふりふりロリータ(BABY, THE STARS SHINE BRIGHT)好きの桃子ちゃんの友情だもんなあ。
服の好みなんて違っても、友情ってちゃんと築けるんだなあ。
ベルサーチ好きのみなさま&サマンサ好きのみなさま。けっこう失礼な発言をしてしまったことをここにお詫びいたします。悪気は無いです。