睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「東京大学応援部物語」最相葉月

新潮文庫420円 単行本は集英社から出ています。

ここのところ、仕事が忙しくて、ろくろく新聞もテレビも見ていないのだが、これは!という情報だけはきちんとキャッチできている。  

一般常識的なニュースはキャッチし損なっているのに……。(長野の聖火リレーがいつ行われるかとかね。リレーが妨害されている映像を見て「あ、もうやっちゃんたんだ」と思いました)  

不思議だ。私が忙しいときは「今、ニュース見てるね?じゃあ、この情報大事だから送っとくよ!」とテレビ局が便宜を図って入れているのだろうか?(先日の平野啓一郎結婚とかさ……)   

先日、私の耳に飛び込んできたニュースは  

六大学野球史上最高得点差!東大0ー早稲田28」  

である。  

なんじゃその点差は~!  

野球じゃなくてラグビーの試合なんじゃないのか?  

ちなみに、相手方の投手は斉藤祐ちゃんが完封。そっちの方がニュースの見出しになってたよ。  

しかも、東大は目下の所38連敗中らしい。  

38連敗って……!もしかすると年単位で勝ってないんじゃないのか?  

この数字を見て、実感してしまった。  

 

東大の野球部ってそこまで弱いのか~!  

何故、このニュースに私が過剰に反応したかというと、つい先日「東京大学応援部物語」を読了したばかりだったからだ。  

天下の最高学府、東京大学。  

そんな栄えある大学に入学して、ひたすら応援という縁の下の力持ち的な部活に打ち込む人々がいる。  

それが応援部のリーダーと呼ばれる人々だ。  

いわゆる学ランを着て、エール交換とかをしている人々だ。私も学生時代には野球の試合などで見かけたことがある。  

バリバリの硬派。体育会系。  

平日でも常に学ランを着用していなくてはならないし、喋るときの一人称は「わたくし」じゃなちゃいけないらしい。なんで?それが応援部だからだ。  

自分たちが運動をするわけではないのに、合宿では拳立て(ゲンコツでの腕立て伏せ)やらダッシュの走り込みやら……。まあね、夏のさなか、学ラン着てずっと大声出すには体力いるよね……。でも、その体力を本来のスポーツには向けようと思わないのか……?それより応援がいいのか……。  

まあ、それだけなら、どの大学にも応援部はいる。  

東大の応援部に特別なこと、それは「野球部が異様に弱い」ということだ。  

仕方がないよ、東大が弱いのは。推薦だなんだで野球の出来る高校生を獲得する他の私立大に比べて、勉強に邁進しないと入れない東大だ。  

東大に入れる頭があって、且つ野球も甲子園級なんてスーパーな人間はなかなかいない。  

だけど、38連敗もする野球部を応援して意味あんのか!?  

「0-28」とかの試合なのに「絶対に逆転だー!」と本気で叫べるのか……?  

「オレ、何のために応援しているんだ……?」という自らのレーゾンデートル、存在意義を見失いそうになってしまうのだ。  

うーん、さすがは東大生。そういうところを悩むのって、なんかインテリ学生な感じで良いよね。うふ。体育会系だけどさ。  

でも、そんな葛藤を振り切って、試合があれば、必ず全力の笑顔で応援する。  

目の前に試合をしている選手がいるのなら、力の限り、声の限り応援する。  

すごい!なんだ、その一途さは!  

作中、ものすごく久々に立教に勝利し、勝ち点1を得る場面がある。  

もう、東大応援部と一緒に読んでいる私も号泣だ。感動なんてモノじゃない!心がぶるぶる震えた。ありがとう、野球部!  

私は生粋の阪神ファンで、阪神どん底時代に勝利するたびに感動していたが、あれなんか比べものにならないね。何しろ、38連敗でっせ。阪神なんか、せいぜい地獄のロード10連敗くらいだ。(いや、あれはあれで涙が出たけど……)  

きっと今でも試合の度に東大応援部は必死に声援を送っていると思う。  

(後書きによれば2007年現在リーダーは2年生以下しかいないようだが)  

野球部がどんなに惨敗し、連敗記録を伸ばしても、内面の葛藤を隠して笑顔の応援を続けているはずだ。  

六大学野球には今までまったく興味がなかったが、今では東大の勝敗が気になって仕方がない。  

不名誉な記録でニュースになってもいい。でも、そろそろ勝って欲しい!  

応援部員たちに、勝利の味を覚えさせてやってくれ~!  

 

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これが100件目の投稿でした。  

けっこう頑張っているなあ、私。  

これからもマイペースで続けたいと思います。  

よろしくお願いいたします。