「日本百名山」深田久弥
かなり前のことになるが、仕事で前箸市(仮名)に出張した時のことである。
その日は上司Hと同僚M氏と一緒に車で出張先に向かっていた。
よく晴れた日で、快調に車を走らせていたところ、目の前にきれいな富士山型の山がどーんと現れた。
それを見て、上司HがS県民であるM氏に「あの山なんだかわかる?」と唐突に質問した。
その時のM氏の回答 「…赤城山ですかね?」
……!?
車内に私の叫びが響き渡った。
「…M!(呼び捨て)その発言を前箸市民(仮名)が聞いたら、袋叩きにあうぞ!今すぐ訂正するんだ~!!」
赤城の形があんな富士山型の訳がなかろう。浅間だ!あれは浅間山だ!
浅間山。夏なので、もや〜んとしていますがなんとか写真撮れました!
G県民にとっては常識中の常識であるが、隣県であるS県ではまったく知られていないらしい。
日本百名山を著した深田久弥(今後、敬愛の念を込めて深Qと呼ばせていただきます)は、「日本人は大ていふるさとの山を持っている。山の大小遠近はあっても、ふるさとの守護神のような山を持っている。そしてその山を眺めながら育ち、成人してふるさとを離れても、その山の姿は心に残っている」と書いている。
G県民である私の「ふるさとの山」は赤城山である。
G県内でも、地域にって榛名や妙義や武尊などの他の山が「ふるさとの山」であるが、G県を代表する山が赤城であることは、まず異論は無いと思う。
G県民のソウルカルチャー(?)上毛かるたで「裾の尾長し 赤城山」とうたわれる赤城の姿は、前箸市民(仮名。もう仮名にする意味が全くないが…)をはじめとした平野部の県民には「ふるさとの守護神」として心に残っているのだ。
(話はそれますが、G県民は上毛かるたが染みついているため、県内の名所をすべてかるたで表現する癖があります。妙義は「紅葉に映え」て、谷川は「スキーと登山」です。染みついております…)
深Qも、我らが赤城山を百名山に加えていて、「見事なのは、のびのびと裾野へ引いた稜線であって、おそらくこれほど大きな根張りは、他に例が少なかろう。しかも、それが少しのわだかまりも渋滞もなく、ゆったりと優美な線で伸びているさまは、胸がすくようである」と絶賛。
えっへん。 「ふるさとの山」をほめられると、とっても嬉しい。
長い裾野。
おそらくM氏は、G県の山=赤城山、と思って、件の回答をしたのだと思う。
そういう意味では、G県民の「ふるさとの山」を知っていてくれた、ということだ。ありがたい。
叱りつけて悪かった!
だけど、今後はG県民の前で赤城を間違うような下手をしでかしてはいけないぜ!
下手をしでかすと、血を見るぜ!
ちなみに、この話を前箸市民にしたところ、絶句…。
浅間と間違えるなど、やはり前箸市民には考えられないらしい。(榛名ならまだしも…とつぶやいていた)
ちなみに、前箸市民は赤城の方向で自分の位置を判断する、という習性が身についているらしく、G県東部出身の私に向かって「東部の方では、どの山で方角を判断するんですか…?」と聞いてきた…。
…山じゃなくても方角分かるから…。
嗚呼、知らないうちに刻み込まれた「ふるさとの山」への依存は深い…。
実はM氏も私の知らない「ふるさとの山」を持っているのかもしれない。
黒檜山(赤城山最高峰)山頂にて。雲、雲、雲!