睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

安達太良山〜風が強く吹いている〜

早いもので、山はもう紅葉シーズンも終盤。

今年は安達太良山を登った。

 

朝、4時半G県東部発。

真っ暗だ…。深夜感がハンパない…。

日が昇るのが遅くなったなぁ、と初っ端から季節の移ろいを感じる。もうすぐ、山に登れない冬が来る実感がわいてきて、少し寂しい。

光がないと、人はやっぱりナーバスなキモチになるものなのであろう。深夜のア●ゾンで自分でもよくわからない衝動買いをしてしまうのは、多分光がないせいだ。もっと光を…!

 

8時過ぎにロープウェイ乗り場である、あだたら高原スキー場に到着。

良い天気で、光をたっぷり浴びた私はすでに上機嫌。

「楽しい、登山になりそうだね~。ロープウェイあるから、楽々登山だぞ~!」と同行のノムさんと話しながら、車を出たところ、強い風が吹き付ける。

「車に乗ってるとわからなかったけど、結構、風強いね~

「ネスミーシー(仮名)なら、アトラクションがとまっちゃうかもね~」

とのんきに話しながら、ローフウェイ乗り場に向かうと…!!

とまってるよ、ロープウェイ!

強風はロープウェイの敵だった!

がーん…。

事実を受け入れられずに、その場に立ち尽くす私たちに追い打ちを掛けるように「運休で~っす。登山計画を変更してくださ~い」と係員の方がのんびりお知らせしている。

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天気晴朗なれど風強し…。動かないロープウェイ…。

 

どうする!?どうする私!?

私の選択は「登ろう。道はある」というものだった。このくらいの風では私は引かん!せっかく福島まで来たんだもん!

…私の性格は、本来、登山に向いていない…。

私と同じ考えの登山者の皆様と一緒に「安達太良山 五葉松平」との標識がある道へ進む。

「…ロープウェイありきで考えていたから、この先のコースタイムとか全然考えられない!

「だって、しょうがな~いじゃない~(by和田アキ子こんな時でも歌は忘れない)30分待てばロープウェイが動くなら待つけど、天気のことは予想がつかないもん!」

ノムさんとぐちぐち言いながら歩く。

人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、まさか…。

登山にも3つの坂がある。熟練されたスピーチの完成度に深く感じ入った次第だ。

 

ロープウェイ山頂駅を目指し、これまた動かないリフト(冬しか動いていないのであろう)をくぐって、しばらく歩くと、いきなり見晴らしのいい道に出る。

道というか…

ゲレンデだよね、ここ…」

「あってんのか!?これが、登山道だというのか!?

前を行く人々がいなかったら引き返していたかもしれないが、途中、標識もあったので、不安を抱えつつ黙々と登る。

ゲレンデは遮るものがないので、吹きっさらし。強風なので、時々あおられる。

なんの罰なんだ、この道は!

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ただのゲレンデ。

 

ゲレンデを登り始めておよそ45分。リフトの終着駅(?)に到達。冬のスキー客はここからゲレンデを滑降するのであろう。

さらに上を目指す登山者はここから通常の山道を行く。よかった~。

道の両脇の木々が風を防いでくれて、格段に登りやすくなる。

が、おそらく昨日降った雨のせいで、道がぬかルンルン…。

四阿山に引き続き、またぐちゃぐちゃ!ああ、靴洗ったばかりなのに…。

もう、矢でも鉄砲でも持って来やがれ!私はなんとしてでも頂上に立つ!

なぜ、山に登るのか?そこに山があるからだ!

妙な闘争心が燃え立ち、汚れることなど意に介さずに、ただひたすら、ロープウェイ山頂駅を目指す。

…しばらくして気づく。

「ねえ、ノムさん。ロープウェイ山頂駅についても、そこは頂上じゃないんだよね…

「そうだよ。そこからが、当初の予定の登山ルートじゃないか!」

そうだった…。少し、落ち着いてのんびり行こうっと。

登るにつれて、大分深まった紅葉の山々が姿を現し、下界もくっきり見渡せて、とってもいい景色。この道、楽しくなってきたな~。気分はかなり上向きに。

 

登り始めてだいたい1時間半後の10:15 ようやくロープウェイ山頂駅そばの薬師岳に到着。1350m。

ロープウェイで10分のところを1時間半かけてたどり着いた!ヤッホー!

なんか、精神的な疲労感の余波で?お腹が空いていたので、一心不乱に魚肉ソーセージを食す。復活。スバラシイ食べ物だ、魚肉ソーセージ。

すると、同じルートでこの場所にたどり着いた登山者のみなさんの会話が漏れ聞こえてくる。

「おいおい、ロープウェイ、動いてるぞ!

…!?なんですと、なんですと!?

「ゆ、ゆるせん!動くなら動くと、なぜ事前に言えんのだ!

ノムさんが、怒ってるよ~!天気のせいだから!天気は気まぐれだから!

でも、そんなに早く動くなら、待ってればよかったかもしんない…。

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薬師岳から目指す山頂を望む

 

薬師岳でしばし休憩し、怒りを静めてから、安達太良山山頂である、その名も「乳首」を目指す。

多分、みんな思っているけど、あえて言わないのであろうことを、私は言う。

「乳首」って…!!

なに、そのネーミングセンス!?

確かに、そうだよ。もう、そう言われれば、そのものにしか見えない。

だけど、なんだか恥ずかしいじゃないの!もっと、包み隠そうよ。日本語の豊かな語彙で!

「いや~スバラシイね!なんか、ジャ●ーズを思い出すね!」とノムさんはご満悦だった…。

そうね…ジャ●ーズの皆さん、よくハダカで踊ってる気がするね…。

 

しばらく道は幅の広い木道や砕石が敷き詰められた平坦な道で、非常に歩きやすい。樹林帯なので、眺望はあまりない。

「乳首」というネーミングセンスについて、ノムさん激論を交わしながら、30分ほど歩くと仙女平に到着。11:00くらい。

眺望、最高!

f:id:suishian:20181103224131j:plain黄色のナナカマド。仙女平付近にて。

 

ここからは登り。

階段やら泥濘みやらを超えて、どんどん進む。だんだん道はガレてくる。

40分ほど登ると、目の前にばーん、と「乳首」がその姿を現す。

そのまんま!近くで見てもそのまんま!

どういう案配でこんな風に突き出た形状が山の天辺にできてしまったんだ!?自然の差配の不思議に驚嘆の思いを禁じ得ない。変人の神様がこんなの作っちゃったんだよね、と言って貰った方が納得できるような気がする。

近くで見て納得した。やっぱり、これは「乳首」という直接的な名前で呼ぶしかないんだな。今風に言うならマストネーム。オブラートに包んでも、乳首は乳首なのだ。

ナイスネーミングセンス!ブラボー!

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近くによっても、やっぱり「乳首」。

 

11:50頃、山頂到着。

ロープウェイ無しでも、お昼に到着できてよかった。深夜(?)に出発した甲斐があったというもの。

今回の秘密兵器今が旬のりんご(シナノスイート)とカップラーメンのお昼ご飯を食べてから、いざ、乳首頂上へ!1700m。

360度の眺望。

山々が周りに連なり、広くて青い空に映える。雄大ってこういう景色のことを言うんじゃないかな。

地球は丸い。今、その円の真ん中に立っているような気持ちがする。

近くにいた人が「あれが磐梯山だよ」と言っていた。きっと福島県民の「ふるさとの山」は磐梯山とこの安達太良山なんだろう。

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左奥が磐梯山らしいです。多分。

 

乳首を堪能して13:10下山開始。

くろがね小屋方面へ下る周回コースを選択。山頂を少し下ったところの分岐から、山肌に沿った道を、てくてく下る。

この道は背の高い樹木がないので、ずっと見晴らしが良く、ごきげんな道♪頂上の乳首もずっと見える。

13:30峰の辻。

少し休憩して、先を急ぐ。このあたりから、乳首とはお別れ。

さよなら、乳首。お名残惜しい。

 

14:15くろがね小屋着。温泉の匂いに胸がときめく。

くろがね小屋は酸性温泉があり、日帰り入浴もできる。

当初の予定では、ここで一風呂浴びる予定だった。が、ノーロープウェイのタイムロスにより、入浴は泣く泣く諦める。

「ロープウェイへの怒りが再燃してきたぞ

「次だ、次こそ、必ず乗ってやろう!

と二人で誓い合い、くろがね小屋てぬぐいを購入して道を進む。

ちなみにトイレは無料で貸してくれた。太っ腹。

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くろがね小屋のくろがね。

 

ここからの道は幅も広く平坦な林道。

紅葉もこの辺はちょうど良い感じで綺麗。

そういえば、紅葉を見に来たはずなのに、他のことに気をとられすぎていた、ということに気づき、このあたりから俄然紅葉見物に貪欲になる。

唐松林がキレイな黄色に染まっている。

もみじも真っ赤だ。

「いいねえ。紅葉いいねえ」と写真を撮ったりして、るんるん歩く。本来の目的を思い出せてよかったな~。

 

 

勢至平を過ぎて、しばらく行くと、「馬車道」と「旧道」の分岐点。どちらの道を選択しても奥岳登山口に着くらしい。

ううむ…。なんだ、この究極の選択は!?ガラスの仮面」の劇団一角獣のお芝居「運命」みたいだな…(わかる人だけ頷いてください)

この時点で時間は15:30近くになっていたので「早いほうの旧道にしよう」と選択。

…結果的には多分大失敗だった。

道がぐちょぐちょぬかルンルン!

せっかく、午前中の靴の汚れが乾いてきていたのに!

もはや、紅葉に思いを馳せることも無く、足下のぐちゃぐちゃ泥濘みに意識は集中

これも、ロープウェイに乗れずに、時間が遅くなったせいに違いない!とロープウェイにすべての責任を押しつける。…が、冷静に考えれば八つ当たりだ。

 

ぐちゃぐちゃのどろどろになった靴とともに、登山口にたどり着いたのは16:30。

ロープウェイ、快調に動いてる…。

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動いてる…。

 

「ばかー!」と小さく叫ぶ私たち。(小心者)

売店百名山バッチを見つけたノムさんは「バッチにロープウェイが入ってる!私は乗ってないから、このバッチは買わない!」と怒りをあらわにする。

せめて一日運休だったら諦めもついたのにねえ…。

 

でも、総合的に考えると、私、安達太良山大好き!

今回は行けなかったけど、鉄山とか沼野平方面も行ってみたいし、くろがね小屋に泊ってもみたい!

何だか、ハートをわしづかみにされてしまったような気がするのは、やっぱり予定外にゲレンデを登ってしまったからだろうか。

麓の「奥岳の湯」に入りながら、やりきった達成感にぐふふ、と忍び笑いをしてしまった。

また来たいな~。いや、来るぞ~!

もしかしらた、またノーロープウェイコースで行っちゃうかもしれない。なんだろう、そんな変な予感がする…。

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お土産は赤べこで決まり!かわいい !ラブ!

 

<コースタイム>

8:10あだたら高原スキー場…8:30奥岳登山口…9:30リフト降り場(?)…10:15薬師岳…11:00仙女平…11:50山頂(昼食)…12:45乳首…13:30峰の辻…14:15くろがね小屋…16:10自然遊歩道入口…16:30奥岳登山口 ※自然遊歩道は通っていません