睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「大草原の小さな家」シリーズ ローラ・インガルス・ワイルダー

年末だ。寒さも一気に増してきて、街はすっかりクリスマスムード一色だ。

クリスマスと言えば、サンタクロース。良い子の元にプレゼントを届けにやってくる。

私も子どもの頃はプレゼントが楽しみで、今年は何を貰おうか、一生懸命考えたものだった。「こえだちゃんのお家」とかを貰ったような…。

 

そんな風習について、最近気になっていることがある。

本場、キリスト教圏である欧米では、何歳くらいまで子どもの元にサンタクロースがやってくるんだろう?

というのも、欧米の児童書とかで出てくるクリスマスは、朝起きるとツリーの周りに家族や親戚、友達からのプレゼントがたくさん置いてあって、「わあ、おばあちゃんのプレゼント、今年も腹巻きだよ!」なんてぶつくさ言う風景であることが多いからだ。あれ?サンタさんからは貰わないのかしら?

 

ハリー・ポッターと賢者の石」では、ハリーのベッドの足下にプレゼントが置かれていて、その数は5つ。それぞれ、ハグリット、叔父夫婦、ロンのお母さん、ハーマイオニー、謎の人物からのものだ。(どんなに折り合いが悪い(虐待気味?)叔父夫婦でも、一応クリスマスプレゼントは贈る、というところに、欧米社会におけるクリスマスプレゼントの重要性を感じる

サンタクロースからのプレゼントが無い…。この時、ハリーは11歳。

日本では、だいたい小学生くらいまでがサンタさんからプレゼントをもらえる年齢だと思うが、欧米ではもうちょっと早く、サンタさんを卒業するのだろうか?

いや、もしかすると、欧米では大人もプレゼントを贈り合う習慣があるので、物心ついたころから、パパやママからのプレゼントを貰うことはあっても、サンタさんから貰わないものなのかもしれない…。

本場には行ってないのに、日本には来てるのか!?サンタクロース!

 

そんなもやっとした疑問を抱きつつ、ふと思い立って大草原の小さな家」シリーズを本棚から引っ張り出してみた。確か、主人公ローラがクリスマスプレゼントを貰う場面があったはずだ。

大草原の小さな家」シリーズは、アメリカ西部開拓時代に少女時代を過ごした、ローラ・インガルス・ワイルダーの自伝的小説である。古き良きアメリカの家族を描いた作品として、ドラマ化もされ、人気を博した。

ドラマの記憶はかなり薄いが、「父さん」「母さん」と呼ぶのが、当時新鮮で、ちょっとあこがれた。何か、子ども心に知的な感じがしたのだ。実際に、使ってみる勇気はなかったけど。

 

シリーズ第1巻「大きな森の小さな家」はローラが5歳から6歳の頃の話だ。

なんと、ここでローラの元にサンタクロースがやってきていた!

イブの晩、暖炉の前につるした靴下の中にはサンタさんからのプレゼントが入っていた。

 

 朝になって、みんなは、ほとんどいっしょに目をさましました。すぐに靴下に目をやると、たしかに何かはいっています。サンタクロースがきてくれたのです。(中略)

 どの靴下にも、あかるい赤のミトンと、長くてひらたい、紅白のしまになったハッカいりキャンディーがはいっていました。(中略)でも、ローラはだれよりもいちばんうれしいのです。ローラにも、布人形のプレゼントがはいっていたのですから。

 

さすが、本場のサンタはちゃんと靴下にお菓子を入れている。トラディショナルな「サンタさんからのプレゼント」そのものだ。

やっぱり、欧米でも良い子の元へは、ちゃんとサンタさんが来ているのだ、と納得した。5歳は大丈夫らしい。

 

シリーズ第2巻「大草原の小さな家」。ローラ6歳から7歳。

この巻でも、一応、サンタクロースがローラの元にやって来ていた。「一応」というのは、街でサンタクロースに会ったエドワーズさん(父さんの知人)が、プレゼントを預かって来てくれたのだ。(雨で増水した川をエドワーズさんが渡ってこられない、と一度は諦めるが、ちゃんとやってきてくれて、無事、プレゼントを貰うことができた、というエピソードだ)

…なんか、かなり怪しくなってきている気がする…。

エドワーズさんが川を渡れない=サンタクロースも渡れないので、プレゼントはもらえない、とローラは考え、がっかりする。さらに、母さんは、今年はサンタクロースは来られないけれど、来年はきっと来てくれる、とローラに話している。

6歳になると、もう、割とオープンだ!日本では小学1年生なのに。

ちなみに、この時のプレゼントはブリキのカップ棒キャンディとハートのお菓子。そして、1ペニイの硬貨。

 

シリーズ第3巻「プラム・クリークの土手で」ローラ7歳から8歳。

この巻にはクリスマスが2回描かれている。

最初のクリスマスでは、母さんが娘達に大胆な提案をしている。

「もしも、みんなで馬がほしいと思ったら、ほかには何もいらないから、ただ馬だけだということにしたら、もしかすると」

母さんは娘達のクリスマスプレゼントを父さんがほしがっている馬にしようと提案するのだ。

怪訝に思ったローラが「サンタクロースは、ほんとにいるのよ、ね?」と聞くと「もちろん、サンタクロースはいますよ」「もう、おまえたちもそんなに大きくなったのだし、サンタクロースがたったひとりだとはまさか思ってないでしょ?」「ね、じゃ、それがどういうことがわかるでしょ」と返す母さん。

…割と厳しい教育方針だな。

結局、娘達はクリスマスプレゼントに「馬が欲しい」と父さんに伝え、馬がやってくるのだ。でも、ちゃんとクリスマスの朝にはキャンディーがプレゼントされる。そういうところ、父さんは抜かりないのだ。

 

もう1回のクリスマス。ローラ8歳。

この年は何日も続く吹雪のため、街に買い出しに出かけた父さんが帰って来られなくなる。父さんは、吹雪の間、偶然落ちた穴の中で、クリスマスプレゼントのキャンディーを食べて飢えをしのいだのだ。だから、ローラたちへのプレゼントは無し。

もう、サンタクロースどころではない。

 

最後に、シリーズ第4巻「シルバー・レイクの岸辺で」。ここはぐっと間があいて、ローラ13歳。

もうすっかり大人になって、家族とプレゼントを贈り合っている。インガルス一家にはサンタクロースはやって来ない。

ローラのプレゼントは、父さんへはネクタイ。母さんへはエプロンとハンカチ。妹のメアリーには手袋。もちろん、みんな自分で縫って作ったものだ。すごいな。ミシンもないのに。

女性にとって、裁縫は必須だった、ということがよくわかる。…私は当時だったら、失格だ。ボタン付けも満足に…。

 

ということで、調査の結果、西部開拓時代のアメリカでは、サンタクロースがやってくるのは7歳までだということが判明した。

プレゼントの代わりに馬が来た年だ。ここが天下分け目の関ヶ原

7歳か…。早い、と思う。でも、現実的に、そのくらいがサンタクロースという妖精みたいな存在を無条件で信じられる年齢のラインなのかもしれない。でも、7歳はやっぱり早い気持ちがする。本場なのに…なんだか寂しい。

しかし、この調査は100年以上前のアメリカの話なので、現代はどうなのか、やっぱりよくわからないのだった。なんとなく、最近は7歳以下でもサンタクロースが来てない気がする。引き続き調査を続けたい。

 

ついでに、インガルス家のクリスマスプレゼントは毎年キャンディーである事も判明した。

この当時、キャンディーはクリスマスに一度だけ食べられる貴重品だったらしい。確かに、砂糖を大量に使う嗜好品だもんね。

ローラは大喜びで、ちょっとずつ、ちょっとずつ大事に食べていく。

これは、私にも覚えがある。

子どもの頃の私はチーズが大好きだった。(今でも好きだが)

たまにスライスチーズを食べるチャンスがあると、一気に食べてしまうのがもったいなくて、あの四角を折りたたんで、できるだけ小さな細切れにして、1枚ずつ食べていたものだった。できるだけ長い時間、チーズを楽しむために。

時代は違うけど、ローラと同じ!

この話をたまにすると、みんなに引かれるのだが、どうしてだろう…?きっと、ローラなら激しく同意してくれるに違いない! 

大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫 物語)

大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫 物語)

 

 ローラが抱いているのが、クリスマスプレゼントでもらったお人形。

 

 ドラマ版。懐かしいー。