睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

水沢山~小鳥と温泉と~

このままでは山に行かないまま春がやってきてしまう。

まあ、春が来てしまっても何の問題もないのだが、急に心忙しい気持ちになり、G県の名湯伊香保温泉にほど近い水沢山に行くことにした。

「ランドネ」2020年9月号の紹介記事を読み「これは、冬に行くべき山だ」とずっと暖めていたのだ。

何しろ、伊香保温泉の裏山(?)である。登山帰りに、伊香保温泉でゆったり暖まることが出来るのだ。最高だ。

伊香保なら、それほど雪は降らないし、何より近いし、それほど高い山でもないので、しばらく山に行かずになまった体を慣らすにも最適なはずである。

今回も山の相棒ノムさんと行く。ノムさんも久しぶりの山だという。毎度のことだが、ゆっくりマイペースで登ることにする。

 

9:00 登山口である水沢観音到着。

天気は上々である。

まわりを見ると、参拝客より登山スタイルの人の方が多い気がする。思っていたより、人気の山のようである。

本堂の奥の階段を登ることから登山が始まる。のっけから階段が長く苦しい。

「登り始める前からもう苦しい。やっぱり体がなまっている

「階段ってこんなに辛かったっけ」

ノムさんと二人、息を切らしながら登る。神社の急勾配の階段って本当に辛い。神主さんは意外と体力仕事なのだろうなあ。

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水沢観音本堂。十一面千手観音がご本尊だそうです。

水沢山は水沢観音の裏の山で、よくある麓に寺社、頂上に城跡とかがあったりするハイキングコースのような山だと思っていた。標高は1194mと若干高めだが、そもそも水沢観音が標高が高いところにあるので、標高差は実際には少なく、軽い気持ちで登れるはずであった。私の当初のもくろみでは。

どうして、そんな勘違いをしていたのだろう。

がっつり直登の山であった。

そもそも駐車場から行くべき山頂を見上げたときに「しっかり三角の山だな」とは思った。

ノムさんも事前に控えめに「職場の山好きの上司が、武尊登ろうとしたら雪崩で登れなくて、かわりに水沢山登ったらしい」と言っていた。雪の武尊登るクラスの人が、急な予定変更とは言えハイキングクラスの山に行くわけないではないか。(ハイキングだって行く時は行くのだろうが…)

行けども行けども登り。ずっと登り。

「うおぉー疲れるじゃないか

「久しぶりだから、明日、筋肉痛くるかも」

と困難を口に出しながら登り続けるが、実は結構楽しい。

辛い登りの苦しさも「山はこうでなくっちゃ」という、久しぶりの登山の喜びに変換されていたのだろう。息を切らして登るからこそ、頂上に着いたときの達成感が心地良いのだ。登山の麻薬。

 

10:00 お休み石

ひたすら登り続けることおよそ1時間。この山のお楽しみゾーンに到着した。

ヤマガラ餌付けゾーンである。

誰が置いているのかはわからないが、平たい石の上にエサがおかれており、ヤマガラ他小鳥がやってくるのだ。

すっかり人慣れしているので、人の手からもエサを持って行くらしい。

私は事前に登山ルートを調べた時にこの場所を知り、エサを用意していこう、と意気込んでいた。しかし、前日にはすっかり忘れ、手ぶらでこの場所に至ってしまったのだ。

「しまったー。ポン菓子持ってこようと思ってたのにー」と嘆くも、手元にはない。

しかたがなく、石の上のエサ目当てにやってくる小鳥をじっと眺めることにする。

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ちょっとマヌケなヤマガラの正面がお

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黒いベレーのコガラたん。

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黒いアイシャドウのゴジュぴー(ゴジュウカラ

コガラたん、ラブリー」「わあい、ゴジュぴー(ゴジュウカラのこと)こんな近くで見るの初めて!!」

ゴジュぴーって、何…?

ノムさんちょっと引くくらい、私は大興奮である。

最近の私は、You Tubeで鳥の餌付けをしている人の動画を見まくっているのだ。野鳥大好き。

おかげで、コガラ、ヒガラ、ゴジュウカラシジュウカラの見分けもバッチリ出来るようになっている。ついでに、「とりぱん」(とりのなんこ著)での呼び方を踏襲している。(ゴジュぴーとか)

この場所にはコガラたん、ヤマガラさん、ゴジュぴー(ゴジュウカラ)が来ているようだった。歩いている時に「ツツピー ツツピー」という鳴き声が聞こえていたので、多分シジュウカラもいると思う。

周りで手のひら餌付けに挑戦している方も何人かいたが、皆、エサはひまわりの種を用意していた。

カラ類はひまわりの種が好き!私が見ている動画でも、エサはひまわりの種だ。

なぜか私は「エサはポン菓子」と思い込んでいたが、ひまわりの種が最適品だったのだ。(ポン菓子を神社の鳩にあげた幼少期の記憶のせいであろう)

次、来る時はひまわりの種を用意してこよう。忘れないように、心のノートに赤字でしっかり記しておくことにする。

私も手からエサ食べてもらいたい!

 

何時間でもトリを眺めていられる気持ちであったが、そんな訳にはいかない。山頂が待っているのだ。

「コガラたん、またくるからね」と後ろ髪を引かれる思いでお休み石を後にする。

また直登。やっぱり、ずっと直登…。

 

11:10 山頂

最高の見晴らし。

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右:子持山 左:小野子山

最高の快晴に下界の温泉街や、上信越国境の冠雪した白い山が見渡せる。雪山のなんと綺麗なことか。

ヤッホーだ。快晴ヤッホー。心の中で叫んでみる。大人なので、声には出さない。

今年は雪山デビューは逃してしまったが、来年は雪山にも行ってみたいものだ。

 

ここでお昼ご飯、といきたかったところだが、水沢山の山頂はそれほど広くなく、既に何組か食事をしていたので、ここは潔く諦めて、先に進むことにする。

頂上からは伊香保温泉側に下る。上山公園まで下りて、その先は伊香保ロープウエイを使って、一気に石段街まで下りちゃう楽ちんコースで行くのだ。

道を進むと、さっきまで沢山いた登山者の姿がぱったり見えなくなってしまった。どうやら、大半の方がピストンで帰るようなのだ。

「なんでかなー。ランドネの記事では、温泉側に下りているんだけどねー」

「日本の名湯に入りたくないはずないけどねー」

まあいい。私は、ガイド(ランドネの記事)に忠実に行く。

周りに人がいなくなったので、気楽にマイペースで進む。

当たり前だが、今度は下りである。

「今日、初めての下りかもしれない。ずっと登ってたから、下り方忘れた

「そういえば、私、下り苦手だったわー

山を登った分だけ、下りがあるのだ。何度山に行っても、下りのたびに「にがてー」と叫んでいる気がする。進歩という文字は私たちの辞書にないのだろうか…。

 

11:35 お昼ご飯

下りが一段落したところで、お昼を食べるのにちょうどいいスペースを発見したので、ここでお昼にする。

今回は水沢山なので、うどんを持参してみた。(水沢はうどんが名物。マイタケの天ぷらと一緒にいただく)

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うどんにたまごと揚げ(エビ天)をトッピング。

卵を入れたので、ちょっと見た目が悪いが、おいしく仕上がった。

この日はあまり寒くはなかったが、やはり暖かいものはイイ。

ガスバーナーは災害時にも備えて、一家に一つは必要だよね、とノムさんと熱く語り合った。ちなみに、私は山に行くとき以外は非常持ち出し袋に入れている。

 

12:30 電波塔

13:00 つつじヶ丘

つつじヶ丘はナイスビューポイントで、トイレが設置されている。すぐ脇を道路が通っており、車でも来られるみたいだ。

相変わらずの最高の景色。

山の名前が記された案内板があったが、その写真とまったく同じ景色が目の前に広がっている。

「こんなに同じ景色に見える日なんて、滅多にない」とその場にいたドライブ客の方は嬉しそうに言っていた。

確かに、案内板に映っている山が全部見える。いい日に来た。ヤッホー。また、心の中だけで叫んでみる。大人っていろいろ不自由だ。

 

ここからは、勾配が少なくハイキングという感じになる。

周りにまったく人はいないが、登山客向けではなく、ファミリーの方や遠足などに最適だ。スニーカーでも大丈夫。

しかし、不安になるくらい人がいない。

 

13:30 上ノ山公園

立派な見晴台(しかも新しい)があるが、人影はない。

私とノムさんで独り占め(いや、二人占め?)である。

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伊香保の温泉街がよくみえる

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振り返れば榛名の二つ岳

景色を十分堪能して、伊香保温泉に下りるためにロープウェイ乗り場へ向かう。

乗り場は伊香保スケートリンクのすぐ脇にある。

スケートリンクはちらほら滑っている人はいるが、本当にちらほらで「営業、大変そうだなあ」と心配になってしまった。

まあ、いい。私たちはスケートではなく、ロープウェイに乗るのだ。

「何回も伊香保に来てるけど、ロープウェイに乗るの、初めてだよー」などど、楽しく会話をしていた私たちに衝撃の事実。

やってないよ、ロープウェイ!

コロナのせいなのか、冬のせいなのか理由はわからねど、その乗り場にはシャッターが下ろされている。

「このせいで、これまで全然人がいなかったのか!なんで、スケート場はやってるのに、ロープウェイはやってないわけ!?どうやって、ここまでスケートしにきてるのさ!

…車でしょ

よく考えれば、当たり前。車で来れるに決まっているのである。自分が歩いてきたものだから、交通手段が他にないような気がしていた。

「私、昨日、バスの時間(伊香保温泉から水沢観音までバスで帰るので)とかしっかり調べたのに、ロープウェイのこと、まったく調べなかった。もう、やっているものだとばかり…」

深く反省する私。なんか、いつもツメが甘いのだ。ヤマガラさんにあげるポン菓子も買うの忘れたし…。こういう性格は年を取っても改善するものなのだろうか…。

 

仕方がないので、温泉街まで歩くことにする。

「まあ、1時間も歩けば着くでしょう」

登山に来ているので、1時間くらいの歩きはなんということもない。

伊香保温泉こちら、という看板に従って、階段道をひたすら下り続ける。どこに出るのかよくわからないが、とにかく、ずっと階段。途中、手すりがはずれている部分などもあったが、かなりキレイに整備されている。

今回はこの道が非常にありがたかった。ものすごくショートカットして温泉に至る道だったので。

ただし、温泉街からこの階段をひたすら登ってスケートリンク(または上ノ山公園)に行く人はとても少ないと思う。浴衣でそぞろ歩きには多分、辛すぎる…。

 

14:20 伊香保神社

ありがたいしっかりとした道のおかげで予想よりもかなり早い時間に伊香保神社の裏に出ることが出来た。

なるほど、ここに出るのか。

ここまで来れば、もう道は大丈夫である。G県民なので、伊香保には何度もお世話になっている。

河鹿橋奥の露天風呂で温泉にぬくぬくとつかり、温泉まんじゅうやら玉こんにゃくを食したりして石段街を満喫。

登山の後に、温泉と温泉街散策が楽しめるなんて、最高だ。

 

16:00すぎ 石段街のバス停から水沢観音までバスで帰着。

やっぱり登山は楽しい。

水沢山は気軽に行ける山なので、今後も何回も登ることになると思う。

この山を教えてくれた「ランドネ」に感謝しなくては。たまにしか買ってなくてすみません…。

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山頂にて。誰かが置いた小鳥。かわいい。

<コースタイム>

9:00水沢観音駐車場…10:00お休み石…11:15水沢山…11:35昼食…12:30電波塔…13:00つつじヶ丘…13:30上ノ山公園(見晴台)…14:00伊香保ロープウェイ…14:20伊香保神社…14:30伊香保露天風呂…16:00石段前