睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

行道山~花咲く里山~

ついに行道山に行くことが出来た。

行道山はG県東部からほど近い、ストロベリー県にある里山である。その気になれば、ふらっと行ける手近な山なのだが、不思議なほどご縁がなく、何度かの日程変更を経て、ようやく登ることができたのだ。

当初は、友人のでんさんから「足利に葛飾北斎が描いたお寺があるらしい」との情報により、じゃあ行ってみよう、と年明けから計画していた。

しかし、ストロベリー県に緊急事態宣言発令により、しばらく延期。

緊急事態宣言後、日程を調整したら、行道山にほど近い両崖山の山火事でまた延期。

火事収束後、ようやく予定を組んだら、激しい雨により、またまた延長。

四度目の正直で、年度の明けた四月上旬にやっとのことで、行道山に行くことができた。苦労しただけに感無量である

ずいぶん焦らされた。せっかくだから満喫しまくってやろうではないか。気合いは十分である。

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葛飾北斎「くものかけはし」

 

当日の出発地は大岩山西公園駐車場。10:00集合。

麓からの道路はものすごく狭く「今、ここで対向車が来たら、絶対にすれ違えない」と恐怖心を抱く道であった。

途中、「警笛鳴らせ」の標識が設置されていたので、「もちろん、従います!」と、しっかりクラクションを鳴らして通行した。

この標識、日常生活ではもちろん、結構標高の高い山ですらあまり見かけない気がするが、割と身近な山に設置されているのだなあ、と意表を突かれた思いだ。多分、都会で生活する人は、教習所で習って以降、一度も見ないで人生を全うしてしまうかもしれない。

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「警笛鳴らせ」。鳴らさないと罰金らしい。

 

大岩山西公園駐車場はかなりの高所にあるので、見晴らしが良い。足利の街が一望である。

多分、夜景もキレイ。ただし、夜景を見るためには、細い道路を危険と隣り合わせで登り下りしなければならないが…。あの道を夜行くのは私だったら御免被りたい。

夜景デートを楽しみたい若者ならば、血気盛んだからぐいぐい登れるのかもしれないが。

 

さて、今回のメンバー、でんさんとジェイ氏と合流し、景色を堪能してから歩き始める。まずはほど近い大岩山毘沙門堂にお参り。

日本三大毘沙門らしい。ちなみの残りの二つは奈良の信貴山と京都の鞍馬山だとか。

…絶対三つめは他にも沢山ある気がする…。

「三大○○」はいろいろなジャンルであるが、だいたい三つめが怪しい。三大東照宮日光東照宮久能山東照宮、そして世良田東照宮(G県東部にある)だと言われているとか…。

 

私が大岩山毘沙門堂を訪れるのは二度目である。最初は高校生の時に、先輩に連れられてやってきた。当時、先輩と私は歴史が非常に好きだったので(「歴女」などという言葉は当時なかった)「三大毘沙門があるらしいから、行くよ」と言われ「はいっ」と元気よくついて行ったのだった。

何も考えずに男坂を登り男坂って、急な道だったのでは。心臓が破裂しそうなほど苦しいです!」と先輩に訴えた記憶がある。

改めて、大岩山毘沙門堂にあった看板を見てみたら「男坂 全行程急坂」と書かれていて「やっぱり…」と改めて当時の辛さを思い出す。もっとも、今、麓から登るとしても「男坂」を選択すると思うが。

時間のたいしてかからない行程なので、より困難な道を行った方が御利益がありそう。

 

毘沙門堂をふらふらしてから、10:20頃から大岩山に向けて登り出す。

道には椿の花が沢山落ちていて、その赤色が落ち葉の茶の中でひときわ映える。私は椿が好きなので、一気にテンションが上がる。

さらに、道に積もっている落ち葉がどうも見覚えがあるような気がして、何の葉だかわからないもどかしい気持ちでいたところ、でんさんが答えを発見した。

柏餅の葉っぱだ!

そうだ、柏餅の葉っぱだ。つまり、柏の木の葉だ。

「5月に柏餅食べるけど、その頃には木に葉が出ているのかな。今は、多分全部落ち葉になっているけど」とでんさんが疑問を抱く。

「5月上旬に立派な柏の葉が生えている可能性は低いんじゃないですかねー。前の年のを保管しておくんですかね。氷付けとかで」

そんな話をしていると、柏餅が食べたくなってくる。季節的には桜餅だが。

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椿。赤が映える。

10:35 あっという間に大岩山山頂着。417m。

それほど時間はかかっていないが、ずっと登りだったので、息切れがする。

でんさんは「運動不足なので、このまま登ったら、もうリタイヤするしかない、と思った」と、のっけから苦しい発言をしていたので、山頂でゆっくり休憩することにする。

ベンチとテーブルが設置されているので、快適である。

G県ふるさとの山、赤城山の裾野が見える。この日は天気がよかったが、春なので霞んでいて赤城は裾野しか見えなかった。残念。

 

30分ほど近況報告などで休んだ後、本来の目的の山である行道山に向けて出発する。

ここからは道の傾斜はぐっと緩くなり、ぜーぜー荒い息をついていたでんさんも余裕が出てきて、楽しくおしゃべりをしながら歩くことができた。

下り道になると「私は知っているぞ。下るということは、その後、登るということ!もったいない!」と、下り道の真実に気づいてしまったでんさん。そのセリフ、私も良く言っている。登山あるある?

 

11:20 行道山頂 442m

あまりに早く着いたので、最初は行道山頂だと気づかずに、途中の見晴らしのいいピークの一つだろうと勘違いしていた。よく見たら、山頂の表示があった。

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行道山頂から。眺望○。

見晴らしが良く、気持ちが良いので、ここでお昼ご飯にする。

こちらの頂上もベンチとテーブルが設置されているので、ご飯を作るには最高の環境だ。

そう、今日のメンバーは私のキャンプ仲間なので、いつもの登山メインよりは、野外ご飯がメインである。

今回のお題は「サッポ○一番 塩らーめん」である。共通の食材でそれぞれが料理を作成する。ちょっとした料理の鉄○である。

それぞれが、おもむろにザックから「サッポ○一番 塩らーめん」を取り出して見せ合ってから調理を開始する。(見せ合ったところで、みんな同じものなのだが)

私が作成したのは、一度作ってみたいと思っていた、ラーメンご飯(?)である。カップヌードルで作っている人が多いが、インスタントラーメンでもおいしく出来る、という動画を見たので、サッポ○一番でトライしてみることにした。

作り方は簡単。

細かく砕いたサッポ○一番を少量のお湯で戻し、そこにレトルトご飯を加えて炒め、サッポ○一番のスープの素で炒めるだけ。最後に、真ん中に生卵を割り入れ、食べる時にかき混ぜる。

とても美味しいらしいので、やってみたいと思っていたのだが、ラーメン1袋とレトルトご飯(一人前)を使う時点で、どう考えても二人前出来てしまう、という問題点があって、ずっと作らずにいたのだ。

今回はメンバーが多く、分け合って食べる予定だったので、チャレンジしてみた。(ちなみに取り箸は分けている。感染症対策)

 

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サッポ○一番ご飯。見た目はイマイチかもしれない。

出来上がりの見た目を見た時は「あまり美味しくなさそう…」と思ったが、これが美味しい!なるほど、話題になるだけのことはある。

山で一人分作るときは、ラーメンとご飯をあらかじめ半分の量にして持って行ってもいいかもしれない。

今度は、王道のカップヌードルで作ってみるのもいい。

ちなみに、でんさんはカルボナーラ風サッポ○一番、ジェイ氏はイタリアンなサッポ○一番を作成していた。

どっちも美味。特にカルボナーラ風、美味しかった。

サッポ○一番は無限の可能性を秘めている。

 

ゆっくりとご飯を堪能して、今日のメインの目的地である浄因寺に向かう。

ここからはだいたい下りだが、それほど急な下りではないので、ゆっくり景色も見つつ下っていく。

下界の桜はほとんど葉桜になっている時期だが、山桜はちょうど花盛りの時期。

時々、目を引くピンクの花はヤシオツツジだ。(でんさんに教えてもらった)

まわりの葉が落ちた木々には、小さな黄緑の葉がちらほら出始めている。きっとすぐに新緑が美しい時期になるだろう。

山もしっかり春になってる。

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ヤシオツツジ。ピンクが鮮やか。

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寝釈迦。花が似合う。

途中、寝釈迦を経て、13:10行道山浄因寺に到着。

お寺に至る直前は、かなりの急な階段下り。ガツガツ下って、回り込んだ先には、花盛りのお寺の建物が目に入る。

立派なしだれ桜が鐘撞き堂にかかっている。

お寺と桜はベストカップリングである。とにかくキレイである。多分、浄土にもこんな桜があるに違いない。

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桜咲く浄因寺。

お寺を進むと、葛飾北斎が描いたという清心亭が空に飛んでいきそうに浮かんでいる。向かいの岩場から太鼓橋がかかっていて、この「くものかけはし」を渡って、清心亭でお茶を楽しむのだろう。

入れるものなら入ってみたいが、清心亭に至る階段は登れないようになっていた。

しかし、近くの建物(掘立小屋?)には「料金200円」と書かれた古い紙が貼られていたので、もしかすると特別な日だけ入れるのかもしれない。

だったら、是非とも入ってみたい。そして、そこでお茶を飲んでみたい。

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浮かぶ清心亭。くものかけはしで渡る。

13:30 浄因寺を堪能して、帰路を行くことにする。

帰りは短い距離でさくっ帰れると思われる「巻き道」を選択することにするが、「巻き道」の分岐が非常にわかりにくい。

うろうろ歩き回り、「多分、こっちだよねー」と向かった先にあった四阿でちょっと休憩していたら、山菜採り(多分)をしている地元の人達がやってきた。

「これから、どっちに行くの?」とフレンドリーに話しかけていただいたので「こっちかな?大岩山毘沙門天の方です」と曖昧に答えたところ「大岩山は反対方向だよ。戻ったところに、巻き道の分岐があるから」と教えてくれた。

さらに「大丈夫かい?帰れる?」と笑われながら、心配される。

なんてこった!一応、YAMAPの地図を確認しながら歩いていたのに、反対方向に向かっていたとは。

ここで地元の人に会えなかったら、多分、かなり迷走を続けたと思う。ありがとう、地元の方々。

教えてもらった道を戻ったら、確かに分岐があった。しかも、小さいけれど、案内板もあった。ちゃんと見ながらあるこうと、深く反省する。

 

巻き道はその名のとおり、トラバース道で、斜面の横を通る道であった。かなり道幅は狭く、うっかり崖側に落ちたら大事故になってしまいそうで、ちょっと怖い道だ。

しかし、アップダウンはほぼなく、淡々と歩くことができる。眺望はない。

「この道はつまらないかもしれないけど、歩くのは楽でいいやー」とジェイ氏。

確かに、帰り道にはよいと思う。

どんどん進んで、あっという間に出発地の大岩山西公園駐車場に到着した。14:30。

 

西公園駐車場で、今日の目的その2を行うことにする。

それは野点ある。

清心亭はお茶室なので、じゃあ、山で野点をしてみようよ、という話になったのだ。

浄因寺でやろうかとも思ったのだが、ベンチなどがなかったので、駐車場のベンチとテーブルを借りて行うことにした。

見晴らし良好のベンチで、シェラカップに入れたお抹茶をいただく。(お抹茶はでんさんが持ってきてくれた)

良い気分である。

お抹茶って、つかれた体に染みこむなあ。

お茶菓子の豆大福(ジェイ氏提供)を食べながら、本日も楽しい登山が出来たことに感謝である。

行道山には縁がないのか、と諦めかけたこともあったが、晴れの日に登れて大変楽しかった。 

清心亭、いつか入ってみたいものだが、そのチャンスはあるのだろうか。

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浄因寺にあった。さすがお茶の寺(?)

<コースタイム>

10:10大岩山西公園駐車場…10:15大岩毘沙門天…10:35大岩山(約30分休憩)…11:20行道山(約1時間昼食)…13:00寝釈迦…13:10浄因寺(40分ほど滞在。道迷いあり)…13:50巻道分岐…14:30大岩山西公園駐車場