睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「ヤマノススメ」しろ

お茶碗が焼き上がった。

あとは、これを持って山に行くだけだ。

 

私は陶芸を趣味にしている。

かなり緩い趣味なので、自分の作りたいモノを適当に作りため、だいたい1年に一度くらい窯で焼く。

今回は、以前から、そのうち作ろう、と思っていたお茶の碗をついに焼いたのだ。

構想(?)1年以上。やっと自作の抹茶碗を手に入れた。感慨深い。

 

と、いうのも「ヤマノススメ」18巻を1年以上前に読んだ時、主人公のあおいちゃんと友達のひなたちゃんが、山の頂上で野点をする話があったのだ。

これは楽しそう。私も是非ともやってみたい。

あおいちゃんは窯元(飯能窯)にお茶碗を買いに行っていたが、私は自分で作れる。

自分で作ったお茶碗を担いで山に登り、頂上で景色を眺めながらお茶をいただく。

いいじゃないか。

陶芸と登山を両方とも趣味にしているからこそできる業だ。やらない選択肢はない。

 

ヤマノススメ」は女子高生が登山をするマンガだ。

ちょっと変わった趣味や部活動を楽しむ女子高生のマンガは、わりと沢山あり、ひとつのジャンルになっているが、アウトドア系だとこの「ヤマノススメ」と「ゆるキャン」が代表格だろう。

作者は登山が趣味だというだけあって、わりと本格的な登山をしていると思うが、ショートパンツで登るなー、とか、髪長すぎるからくくったらどうかなー、など突っ込みどころも満載である。

ちなみに主人公は埼玉県飯能市在住。友達にはG県民もいたりして、身近な感じが私には好感触である。

多分、私が女子高生だったころにこのマンガを読んでも、登山始めよう、とは思わなかったと思う。でも、登山を始めた元女子高生には、登山って楽しいよね、と不思議と共感を持って読める作品である。

この手の女子高生活動マンガのジャンルは、何かノスタルジックな雰囲気を感じる。

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焼き上がったお茶碗。

さて、今回、私が作ったお茶碗はろくろを使わない手びねりで、あえて無骨に作ったつもりだ。

侘び寂びは理解できていないが、利休先生は金ぴか宴会お茶席じゃなくて、小さな茶室で素朴にお茶を楽しむのを良しとしたはずだ。(でも、利休も金ぴかお茶会に荷担していたが…)

形は、井戸茶碗風に底からの立ち上げをなだらかにしたが、底のラインをがっつり作ってもよかったかもしれない。その方が抹茶碗っぽかったかも。無骨だし。

釉薬は「唐津」一色で、素朴な感じにした。釉薬が厚くのりすぎてしまったような気もして、ちょっと残念な出来だ。

これに少しだけ織部とかの緑を垂らしたり、あえて同系色の飴釉とか火色をかけたりしてもよかったかもしれない。黒を吹きかけとかもありだったか。

反省点が次から次へと出てくる。

 

まあ、窯から出して「思ってたとおりに出来た!」と思うことなんて滅多にないので、こんなもんであろう。

それにしても、陶芸家の気持ちがわかる。

窯に入れる前に思い描いていた姿を違う感じで出来てくると「この出来損ないがーー!!」とガシャーンと行きたくなるのだ。

せっかく作ったら、そんなことしないけどね。出来損ないでも、かわいいのだ。

なんだかんだ言っても、このお茶碗も、かわいい出来なので、ちゃんと野点に使うつもりだ。

でも、バリエーションを広げるために、もう2,3個作ろう。シャープなラインに絵付けのお茶碗とか、ごつい形の黒茶碗とかもあってもいいかも。

自分で作れるので、その気になれば沢山出来るのだ。1年に一度くらいしか焼かないけど…。

 

そもそも、登山と野点は妙に相性が良いらしく、天下のモ●ベルからは、野点セットなどという挑戦的な商品が販売されている。

最初に見た時は「これ、誰が買うんだろう…」と思ったが、なんと身近なところで、友人のでんさんが買っていた。

このセットはコンパクトに収まっていてとてもいいのだが、お茶碗がメラミン樹脂製である。

ヤマノススメ」作中でも、ひなたちゃんはメラミン樹脂製を使っていて「適材適所」と言っている。軽くて割れないので、確かにそのとおりなのだろうが、ちょっと情緒に欠ける気がするのだ。

ちなみに、モ●ベルでは陶器製のお茶碗も交換用として売っているらしい。やはり、陶器派はかなりいるとみた。

 

さらに、調べてみたところ、ス●ーピークからも野点セットが発売されているらしいのだが、こちらのお茶碗はチタン製である。

これは惹かれるものがある。アウトドアっぽい。

以前、行道山で野点もどきをやった時には、お茶碗はシェラカップを使った。(でんさんがモ●ベルの野点セットを持っていたので開催されたのだ)

あえて陶器のお茶碗とはかけ離れたアウトドアの道具でのお茶会。これはこれでイイ。

低山は陶器製。高山はチタン(またはアルミ)製と分けたりすれば、どちらも楽しめる。

 

さて、茶碗はできたので、あとは山に持って行くだけである。

今はちょっと登山を控えているのだが、もうちょっとしたら、また山に行ける日々が帰ってくるだろう。

それに備えて、とりあえず、自宅でお茶をたてる練習でもすることにする。

そうだ、山に持って行く茶筅を買わなくては。百均で売っているだろうか…。いや、もっとちゃんとした竹製のものを買おうか。

いろいろ考えて準備をするのは楽しい。

 

作中では千葉の伊予ヶ岳で野点を行っていたが、私はどこの山に行こうかな。

今はとても八ヶ岳に行きたいのだが、荷物に入れるには重いかもしれない。

そうだ、大好きな尾瀬がイイ。

弥四郎小屋前の清水を自分で作ったお茶碗で飲み、その水を湧かしてお茶をいただくのだ。

今年中には必ずこの計画を実践しよう。楽しみだ。

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弥四郎小屋前の清水。昨年撮った写真。

 

 kindle版。背景は赤岳。