「ハイジ」シュピリ(2回目)
山に行くときなどは、各地の道の駅や高速のサービスエリアに寄ったりするのが楽しみだ。
地元の銘菓や特産の野菜を買ったりするのが好きなのだ。
例えば秋に谷川岳に行ったりすれば、G県が誇る幻のりんご「ぐんま名月」を購入したりする。隣のストロベリー王国に行けば、餃子やかんぴょうを買ったり、長野方面ではそばやみすず飴、山梨方面ではほうとうや信玄餅を購入。
地元感があるものがいろいろ揃っていて、購入欲がそそられるのだ。女は買い物とおしゃべりが好き!
そんな道の駅やサービスエリアには、お土産や野菜直売所に加えて、結構な割合で焼きたてパン店があることが多い。
パンなら地元でも売っているので、わざわざ旅先で買う必要性をあまり感じないので、私はあまり利用しない。たまに朝食として買うことがあるくらい。
しかし、一緒に山に行くことの多いノムさんはパン屋が大好き。「このパンおいしそう」と言って、買って帰ったりしている。
他の友人にも「パン、買って帰っちゃう」という人は割と多い。
そして、ノムさんをはじめとした「焼きたてパンを旅先で買う派」は概ね口を揃えてこういう。
「固いドイツパンが好き」
「しっかりしていて満足する」「かめばかむほど味が出る」などと、するめに対するかのような感想を言い合い、「やっぱそうだよねー」「わたしもー」と共感し合っているのだ。
いやいやいや。
私は共感できない。
パンは白くて柔らかいものが、上等でおいしくて最高なのだ。
だって、ハイジがそう言っていたから!
黒パンは固くてペーターのおばあさんは食べられないんだから!
「ハイジ」のこのエピソードは、「クララが立った!」と共に、私の世代ではみんな知っていると思う。
ハイジの友人、ペーターのおばあさんは固い黒パンをかむことが大変であまり食べられず、いつも「あたしにゃかたすぎて」と言っていた。
それを知っていたハイジはフランクフルト(都会)のクララの家で、おばあさんへのお土産にしようと、毎日せっせと白パンをためていたのだ。
いろいろあって、フランクフルトから山に帰るとき、ハイジはカゴいっぱいの白パンをおばあさんへのお土産に持って帰る。(ハイジがため込んだ白パンはロッテンマイヤーさんに見つかって捨てられてしまったので、持って帰った白パンはクララがくれた新しいもの)
おばあさんは「まあ、おまえ、まあ、おまえってば!こんなありがたいものを持ってきてくれて!」と大喜び。さらに「だけど、何よりありがたいのは、おまえのいることよ!」とハイジの髪やほほをなでるのだ。
ハイジは本当に良い子だ!
ハイジのアニメをみた私は「ハイジのようにお年寄りにはやわらかい白パンをあげるような子どもになろう」と感動の涙をぬぐいつつ、強く決意したのだった。
そして、私の頭の中には、黒パン=固くてまずいもの 白パン=柔らかくて高価なもの という図式が完全にインプットされてしまった。
食卓にヤ●ザキのロールパン(8個くらいが袋に入っているやつ)が登場するたびに、「白パンが食べられる私って幸せだ…」と自らの幸せをかみしめていた。(このパンがアニメの「白パン」のビジュアルに似ていた)
しかし、不思議なことに、自分の身の回りでは「黒パン」を見かけない。食パンも菓子パン(チョココロネとか2色パンとか、当時は甘い系のパンがメインだった)も、みんな中身は白くてやわらかい白パンだった。
多分、ハイジは昔の話なので現代は固くてまずい黒パンは無くなってしまったのだろう、と自分を納得させていたときに、給食の献立に発見してしまったのだ。
黒糖パン
これだ!
これが黒パンなんだ!
今は白パンが主流だが、かつての貧しい時代を子ども達に忘れさせないように、給食という場では、かの黒パンを出しているのだ。
いうなれば、時々、給食に麦飯が出される日があったようなものだ。(大根飯はさすがにやりすぎなので、麦飯くらいなら、と教育的配慮で提供されていると当時は思っていた。正しいかどうかは知らない。ちなみに私は「おしん」も視聴している)
初めて目にした黒パンを、私はおそるおそる手でちぎってみた。
普通にちぎれた。
ちぎった黒パンをそっと口にしてみる。
こころなしか、いつものコッペパンよりも固い気がする。
これが、おばあさんが固くて食べられてないと言っていた黒パン…!!
私は健康で歯も丈夫だから普通に食べられる。健康と若さに感謝しつつ食べる。
周りの同級生たちは「黒糖パンは甘いからおいしい」などと言っている。
君たちは、これが高齢者には固くて食べられないパンだということを知らないから、そんなことを言えるのだ、と心の中だけで猛反発していた。
バカめ…。
当時の自分の胸ぐらをつかんで「それは黒パンじゃない!」とぐらぐらと揺さぶりたい気持ちでいっぱいだ。全然固くなかったではないか!
しかし、子どもの思い込みは強いもので、若干の疑問がよぎりはしたものの、本当にそう信じていたのだ。だって、まわりに黒パンがそれしか無かったから!
この間違いに気づいたのはいつくらいだったか…。
少なくとも自分でお金を稼ぐようになってからだ。
どこだったか記憶は曖昧だが、確か、ちょっとしゃれたレストランとかで、パンを選択した時に「おいしいけど、固いなー」と思い、ふと気づいたのだ。(ちなみに、ご飯かパンを選べるときにはだいたいご飯を選ぶ。あまりお腹が空いていない時に、たまーにパンを選択する)
この固さ!もしやこれが、黒パンなのでは…。
これかー。エウリカー!
明らかに給食の黒糖パンとは違う味と見た目に、長年の間違いを指摘され、非常にもの悲しい気持ちになった。
ちなみに、黒パンはライ麦で作るから黒いらしい。小麦粉で作ると白パン。
長いこと黒パンを間違えていたことは判明したが、私は今でも忠実に「黒パン=固くてまずい」を信じている。
それなので、やはり、パンを買うときは、白くて柔らかいパンを選択する。
私の中では「ヤ●ザキ ダ●ルソフト」が最高級品だ。だって、耳までやわらかいのだ!
私は「食パンの耳が好き」という人種とはわかりあえない。
(ちなみに、私の感触では「ドイツパンが好き」人種=「食パンの耳が好き」人種 だ。統計は取っていないが、多分正しい)
しかし、一度、本場のドイツパンをがっつり食べてみたいな、とも思うのだ。
私の歯が丈夫なうちに、ドイツに行ってみたいものだ。
そして、牛乳(本格的にするならヤギ乳)に浸しながら、やっぱりおばあさんには食べにくいパンだなあ、と実感したい。
あ、本場のチーズもたべてみたいし、本当のアルプスも見てみたいので(登るのは無理?)、やっぱり、スイスに行ってみたいなあ。
ちなみに、小学生時代の私はハイジにあこがれて、家のコンロでチーズをあぶって食パンにのせて食べていた。(ハイジあるある)
アニメみたいにとろけないことが不満だった…。
あれは、チーズの種類が悪かったのか、アニメの演出だからあんな風にとろけるのか、未だにちょっとよくわからない…。
私が持っているのはこの本。
アニメ版。
アマゾンで検索したら、何故かこの回だけ出てきた。
フランクフルトから帰る回だ。