睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「箱男」安部公房

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 新潮文庫420円。改版は460円。  

先日、職場でシュレッダーを購入した。  

たいして大きいモノを買ったわけでもないのに、2重のでっかいダンボーに入れられて届き、「冷蔵庫か!?」と思ってしまったよ……。  

地球にやさしくするために、これからは簡易包装が大事だと思うの、アタクシ。  

だから、本屋さん、「袋いりません」と言った私に対して「ではテープ貼って良いですか?」と聞くのをやめてくれ……。  

本に直接テープは嫌!そんな暴挙を行うのは天下のB●●K ●FFくらいだよ!  

で、結局「じゃあ、袋に……」と引き下がってしまう……。なんか悔しい。  

 

まあ、それはいいとして、そのでっかい箱の処理に困る私。  

いや、捨てればいいんだけど、もったいない気持ちがして……。  

で、とりあえず入ってみた。  

学生の頃から、「箱男」に憧れていた私としては、入らないわけにはいきませんよ!  

しかも、ダンボールは人間一人はいるのにちょうどぴったんこな感じの大きさだ。  

これは、天が私に「さあ、入ってご覧」と言っているということだ。  

よし!好機を逃すと、二度と再び出会えないかもしんないからね!  

職場の人の「何してんだ、こいつは……」という、何か異物を見るような視線が私に突き刺さる。  

本当は、すっぽりかぶって歩いてみたかったんだけど、その視線に負けて、入っただけでやめてやったよ。ちぇっ。私もヤキがまわったな。  

 

阿部公房の「箱男」は主人公がちょいどいい大きさの箱を見つけて、無性に入ってみたくなり、すっぽりとかぶって、町を徘徊するというストーリーだ。  

箱はちゃんと穴を開けて、外を覗けるようにしてある。  

姿を隠して、箱の中から他人を覗く、というすごく悪趣味だけれど、あらがいがたい魅力にとらわれてしまった人の話、と言えるのか?単なる引きこもりの人の話?  

はっきり言って、訳わかんない。登場人物たち、みんな破綻しているし。  

でも、不思議とその滅茶苦茶な内容にひかれ、ぐいぐい読める。  

私は学生の時に図書館で借りて読んだのだが、その時以来、一度は箱男(ワタクシ女なので「箱女」だわね)になってみたいな~と思っていたのだ。  

実際、入ってみた感想。  

箱の中はけっこう心地よかった。  

まわりを囲まれていると、何か安心する、というのはあるよね~。ハムスターみたいな感じ。  

ここに、さらに箱男度を深め、食糧とか貯め込んだら、さらにハムスターだなあ。狭いながらも楽しい我が家。  

でも、上も閉じちゃうと、ちょっと閉塞感があるかしら?いや、もっと落ち着くのかしら?  

中途半端なところで出てしまったので、箱男の実感も中途半端。  

もっと突き詰めないとダメなのかしら?  

突き詰める……すっぽりかぶって町を徘徊か……。  

いくらなんでも、現代日本でそこまでやってみるつもりも勇気も私にはない。いや、現代日本じゃなくて、中世日本でも、産業革命後のイギリスでも、古代ローマでも出来ないよ!  

昔「進ぬ!電波少年」か何かでこの企画やっていたけどね……。あの時はびっくりした。よくそんな企画考えたな~と。  

そう、そんな企画はテレビの無茶な番組ぐらいしか無理だ。  

でも、密かに箱男の真似をして、こっそりと箱に入ってみた人は、意外とたくさんいる、と思っている。  

だって、あの小説を読むと、入ってみたくなるんだもの!  

うーん、すごい小説だなあ。  

ちなみに、シュレッダーの入っていたでっかい段ボール箱は、現在ゴミ箱として重宝しています。どんどん入れられて便利。