「かなしみ」(「二十億光年の孤独」)谷川俊太郎
集英社文庫 520円など
先日、愛車(貞吉)に給油しようとしてガソリンスタンドに寄った時の事である。
「レギュラー満タンでお願いします」
と私がお願いした直後、スタンドのお兄さんが血相を変えてやってきた。
「お客さん、前回はガソリンをどこでいれました?」
何だよ、それ~!どこで入れようと私の勝手じゃないか!
「さあ……どこだったか……」と私が言葉を濁すと、お兄さんはたたみかけるように言った。
「ガソリンタンクのキャップがありません!」
ええっ!?キャップ……!!そ、そんな大事な物が……!
前回……前回はどこで給油したんだ!?
「うちの店だったら、キャップが残っていたら大騒動になりますよ」
とお兄さんは諭すように、私に言う。
うん……そうよね。ここのお店で入れたんじゃないと思うわ。
必死で記憶をたどる私。
ああっ!そうだ!前回は確か、セルフスタンドで入れたんだ!
犯人は私だよ!自分で給油して、キャップはめるの忘れたんだ!
何て阿呆なんだ、私は~!ばかばか!
運転席でがっくりうなだれる私に、スタンドのお兄さんは「もし、無かったらディーラーに行けば売ってくれますよ」と優しい言葉を掛けてくれた。
お兄さん、ありがとう。親切な人だよ。最初、傲慢な態度とって悪かった。
ここで突然私の頭に
「何かとんでもないおとし物を 僕はしてきてしまったらしい」
という一節が浮かんできた。
こんな時に何だけど、谷川俊太郎の詩じゃないか~!
高校生の時(中学の時かも)、国語の教科書に載っていて、好きだったのよ~!
綺麗で透明感があって、だからこそ余計に悲しさが増す言葉に、当時胸をときめかせのさ。その後、詩集を買って読んだから、よく覚えてる。
その後の「透明な過去の駅で 遺失物係の前に立ったら 僕は余計に悲しくなってしまった」と続く。
状況は全く違うが、本当にとんでもない落とし物というか、忘れ物をしてきてしまったよ、私!
「何かとんでもないおとし物 とんでもないおとし物……」と頭の中でリフレインしながら、セルフのスタンドへ急行。
どうか、残っててくれ……!
透明な過去の駅ならぬ硝子張りのサービスステーションで遺失物係(受付のお兄さん)の前に立ったら
「あ、多いんですよね~。ちょっと待ってください」
と言って、ガサガサとカゴいっぱいのキャップの中から私のキャップを捜してくれた。 あ、多いのか。私だけじゃないのか。こういう阿呆は。ちょっと安心。
「これかな~?」と渡されたキャップは愛車(貞吉)の給油口にジャストフィット! ありがとーございます!感涙にむせぶ私。
よかったよ~。どうしようかと思っちゃったよ。貞吉、今まで口寂しい思いをさせてすまなかった!
とりあえず、「余計に悲しくな」らずにすみました。
ガソリンスタンドのお兄さんたち。いろいろご迷惑をおかけしてすみませんでした。以後、気をつけます。