「スカーレット」(ドラマ)~趣味の陶芸~
朝ドラを何年かぶりでほぼ全話見た。
「スカーレット」である。
毎回、のほほんとしたり、笑ったり、泣かされたり、時には怒りで震えたり。主人公の人生に寄り添った半年はとても楽しかった。
ラストシーンでは、いろいろあっても続いていく主人公の生活にじんわりと感動し、涙をにじませながら、ドラマ完結の充実感を味わった。これが朝ドラの醍醐味なのだろう。
このままの流れで、次の朝ドラも続けてみてしまうかもしれない。まんまとN●Kの戦略にのせられそうである。
さて、そもそも、ものすごく久しぶりに朝ドラを見ることにした理由は、「スカーレット」の主人公が陶芸家だったからだ。
実は、私はかれこれ10年くらい陶芸を趣味にしている。
自分が作りたいものを自分のペースでだらだらと作っているだけなので、ちっとも上達しない。しかも、講師はYou Tubeだ。私の陶芸仲間達は、親しみを込めて「You先生」と呼んでいる。(陶芸動画を時々参考にしている)
You先生はすごい。あっというまに、お皿とかが出来てしまう動画が沢山ある。
つられて強気になり「よぅし、ああいうお皿を作るぞ!簡単にできてたぞ!」と、ろくろの前に座ってはみるものの、現実は「あかん、全然できひん…」と自分の実力に切歯扼腕する日々だ。
ドラマの中で役者さん達は上手にろくろを回していたが、結構難しいのだ。(ちなみに、八郎さん(主人公の夫)が特に上手だった。陶芸仲間はみな、「八郎さん、ステキすぎる!」とメロメロになってしまった)
陶芸の手順を簡単に紹介すると、こんな感じだ。
①土を練る。
良く練って、土の中の空気を出す。特に電動ろくろを使う場合は「菊練り」という方法が必須だ。←結構難しい。
私はまず始めに、You先生に、この行程を学んだ。
②形を作る。
自分の好きなように形を作る。
「手びねり」は小学生の時、図工の授業でやった粘土細工と全く同じだ。どう作ってもいいので楽しい。
ろくろを使うと、基本的には丸いものしか作れない。
③削る。
自分の好きな形になるまで、削る。
たまに削りすぎて穴があいちゃったりする…。(こういう時、私は往生際が悪いので、粘土で埋める)
それから、削る前に土が乾燥してしまい、ガリガリ音を響かせながら、力で削るときもある…。管理不足。
④素焼き
一度窯で焼く。だいたい800度くらい。
焼いてしまうと、もう土はもとには戻らない。
⑤釉薬掛け
素焼きしたものに、上薬を掛ける。
プロはいろいろなものを独自にブレンドして、オリジナルの釉薬を作るが、素人の私は市販の釉薬をそのまま使用する。
ちなみに、ドラマでは八郎さんがこの釉薬作りの研究をしていた。釉薬の調合方法が書かれたノートが弟子に盗まれる(実際は、盗まれたノートは喜美子との結婚後の夢を書いた夫婦ノートであったが…)というエピソードもあったくらい、ここはプロにとっての勝負所だ。
私は釉薬掛けが苦手で、ここで失敗することが多い…。写真の器も…。
⑥本焼き
ラストの行程。窯で1200度で焼く。
私はもちろん電気釜を使っている。ドラマに出てきた穴窯では当然無い。プロでも薪で焚く窯を使う人はごくわずかだ。(ガス窯が多いと思う)
でも、焼き上がったものを窯から出すときに「チリチリチリ…」と貫入(釉薬に入るひび)が入る音は聞こえる。
いい音だ。ささやきのような澄んだ音だ。
ほんのり暖かい器たちを取り出す時は、わくわくしてとても楽しい。「どんな風に仕上がったかな」とどきどきするのだ。
が、自分の作品の出来を目の当たりにすると「…ダメだったか…」と肩を落とすことが大半なのだが…。
とりあえずできあがり。
よく、ドラマなどでは陶芸家が出来上がったものをバンバン割る光景が描かれるが、私はその気持ちがよくわかる。
「こんな感じに出来上がるはずじゃなかったんだよ~」という落胆してしまう出来であることが多いからだ。
そして、作品が出来上がったはいいけれど、しまっておくのに場所をとるのだ。
気に入らない出来のものを、使うことはまずないし。
だったら割っちゃえ、という発想に至るのは当然の帰結だろう。
でも、やっぱり自分で作ったものなので捨てるに忍びなく、私は大きな段ボールを「駄作箱」と名付け、そこにしまい込んでいる。たまに茶碗が割れた時とかに、がさごそあさる。
ちなみに、本当に時々、自分でも驚くくらい良い感じに出来上がる事がある。(炎マジック?)
そういう時は、一軍選手として、私の食卓にスタメン登場することになるのだ。今使っているお茶碗とかは自作の一軍選手だ。(一軍レベルの薬味入れが出来たこともあるが、すでにスタメン(市販品)が不動の地位を築いていたので、代打程度にしか登場しない…)
ドラマの中には、登場人物たちが作った作品がたくさん登場した。
すぐに影響される私は「ああいう作品を作ろう!」と気持ちを鼓舞されまくりだ。今、創作意欲が最高潮に燃え上がっている。
一番真似したいのは、武志(主人公の息子)が作った水の波紋を描いた大皿だ。青がキレイ。指で緩やかな筋を付ける作風を真似したい。「学ぶは真似ぶ」だ。
八郎さんが最初に新人賞をとった赤い大皿もステキだが、あれは釉薬が難しそうで手が出ない。いつかは真似してみたい憧れの作品だ。
とりあえず、手近なところで、喜美子みたいにコーヒーカップの底にお花の絵でも描いてみようかと考えたりしている。
作る前に出来上がりを想像する時間が一番楽しいかもしれない。
現在、陶芸を行っている場所が使えず、胸に燃えたぎる創作意欲が行き場を失っている。これから作る作品をいろいろ考えて、創作ノートでも作ることにしよう。
余談だが、③削りの行程で出た「削りかす」は水を加えると粘土として再生する。
私は「削り節」じゃなかった、「削りかす」を着古したヒー●テックに包んで、数分水に浸している。水を絞ってしばらくおくと、粘土として再生する。
1年に1度くらいこの作業を行うが、かなりの量が再生するので「このサイクルで再生し続ければ、粘土買わなくてもいいんじゃないかな」という不思議な気持ちになる。
ちなみに「青の花 器の森」(小玉ユキ)という作品も、私の創作意欲をかきたてるマンガだ。