睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「オトナ語の謎。」糸井重里監修

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 つい先日まで、新潮ケータイ文庫で毎日配信される「オトナ語の謎。」を楽しみにしていた。終わってしまって残念である。  

あまりに楽しかったので、文庫本も購入してしまった。  

だったら、始めから本買えば安上がりだったのにねえ……。ばか、私のバカ。まあ、それはいい。  

この「オトナ語の謎。」を読んでいて感じるのは、誰に教わったわけでもないのに、しっかりとオトナ語をマスターしている自分への驚きだ。  

これって、企業戦士のおじさまたちの用語というイメージだったのに……。自分もオトナだったのねえ……。  

以下、先日私が送った「請求書早く出せ!」という催促のFAXで検証してみたい。

 

「 ●●ご担当 様  請求書のご発行について

 1.いつも大変お世話になっております。

 2.先頃、何度かお願いいたしましたが、未だ請求書が届きませんので、今一度ご連絡いたします。3.行き違いになりましたら、申し訳ありません。  

4月●日、5月●●日、6月●日に****を利用4.させていただきました。  

それぞれ、請求書のご発行をお願いいたします。  

5.お忙しいところ大変恐縮ですが6.なるべく早めにご発行いただきますよう、お願いいたします。  

なお、請求書が届きませんと、お支払いできません。あまりに遅くなりますと、7.支払自体が出来なくなることもあります。

 1.どうぞよろしくお願いいたします。

 

 1.「オトナ語の世界」でまず始めに指摘されているとおり、私も「お世話になっております」で始め、「よろしくお願いします」できっちり終わっている。  

これは基本中の基本。  

ちなみに、電話を受けるとき、初めて聞く名前だって「お世話になっております」と反射的にすらすら出てくる。オトナだもん。  

2.ここは先制のジャブである。「オトナ語の謎。」では「実際に何度も連絡してないこともあるけど、遅くなったのは自分のせいじゃないもんね、という言い訳に使われることもある」と書かれていたが、この場合は本当に前に連絡してます!1回だけどね……。  

いや、この請求書に関しては1回だけど、それ以前にもこの会社はとにかく請求書が出てくるのが遅いのだ!(言い訳)  

いい加減にしろよ。何回言わせるんじゃ!という気持ちを込めての私の先制攻撃が、この短い文言に込められているのだ。  

3.といいつつ、もし、もう送ってたらこんな攻撃的なFAX送っちゃってごめんね。という逃げも作っておく。  

先に謝っておけば、怒られないだろう、という姑息な思いが込められた一文なのだ。  

4.「オトナ語の謎。」曰く「オトナとは、へりくだることと見つけたり!」  

そうさ、私もすぐにへりくだってしまうのさ。どんなにへりくだったって恥ずかしくなんか無いさ!  

5.「お忙しいところ」は最重要オトナ語のひとつらしい。これはほぼ定型文と言えよう。  

やはり、へりくだるのがオトナの基本なのだ。    

6.でも、ここで「なるはや」を使わない私は、まだまだオトナ語の世界では上級とは言えないことを表している。  

もっと上級になると「ASAP」とか使うのかもしれないけど、社外の人にこの訳の分からん略語を使う人はいるんだろうか……? (ちなみに「ASAP」とは「As soon as possible」(可能な限り早く)の略です)  

7.4や5の部分でへりくだってはみたのだが、最後はやはり強気で責める。ちょっとしたブラフをかましている。  

これ以上遅くなったら、金払わないよ!」と啖呵を切っているのである。  

でも、「~こともあります」という婉曲表現でそれを柔らかく包む。  

うーん、オトナ語の世界だ。  

これは文面だが、会話となると、もっとオトナだ。  

つい先日も「その件につきましては、上の者と相談いたしまして、後ほどこちらのから折り返します」などど、するっと言ってしまった。  

「当方の会議室ですと、少々キャパが小さいようですので、ご希望に添わせていただけないと存じます。大変申し訳ありませんが、今回は遠慮させてください」なんてのも、朝飯前だ。  

この会話のどこがオトナなのか分からない人は、立派なオトナだ。

何か変なこと言ってるな~と思った人は、「まだまだ子どもね。ふふ、かわいいのね」  とオトナな女の発言で締めます。