「ゆうびんサクタ山へいく」いぬいとみこ
理論社 1,155円(私がもっているのは880円)フォア文庫530円版もあったようですが、現在は絶版。
私が小学生だったころ、近所の子どもの中で流行ったことがある。
それは、ク●ネコヤ●トの宅急便の配達車に登下校中に出会ったら「家まで乗せていって下さい」とお願いすることだ。
ヒッチハイクの一種と言っていいかもしれない。
私のうちは小学校の学区ギリギリの位置にあったため、学校と家がけっこう遠かったせいだろうか?現在、大人の足で30分近くかかるので、子どもの足だと40分以上はかかる距離だった。遠くて辛かったのさ。
しかし……なんて、迷惑なことをしていたんだろう……。自分でもびっくりだ。
ク●ネコさん、その節はご迷惑をおかけしました。
ク●ネコさんは、当時はおおらかだったせいなのか、かなりの確率で「しょうがないな~後ろに乗りなさい」と乗せてくれたものだった。
ありがとう、ク●ネコさん!いい人たちです!
「方向違うから駄目」と言われることもあったが、その場合は「じゃ、ク●ネコシールちょうだい」と交渉し、しっかりシールを貰っていた。(今でも残っている)
ただでは起きません!「受領は倒るるところに土をつかめ」
よく考えると、無防備な子どもだったなあ、私たち。
まあ、相手はク●ネコさんなので、身分はしっかりしてるんだろうけど。
そのまま誘拐されちゃったらどうすんだ?
子どもの安全確保に神経質な現在だったら、親や教師にこっぴどく叱られるんじゃないかな?
「知らない人の車に乗っちゃいけません!」
そんな私が子どもの頃読んでいた本に「ゆうびんサクタ山へいく」がある。
サクタ少年(5才)が山のおばあちゃんに手紙を出そうとする。ポストに投函しようとしたところ、郵便局の集配車を発見し、そのまま乗り込んでしまう、という話だ。
無謀な子どもだなあ、サクタ少年。
その乗った集配車が、たまたまおばあちゃんの住む町の本局へと郵便物を届ける車であった、という設定はちょっと出来すぎだけど、子ども向けの童話だからOK。
郵便局(本局)の人は、サクタ少年を発見して驚くが、サクタの持っていた手紙と一緒に、おばあちゃんの家までサクタを配達してくれるのだ。
いい人たちだよ、郵便局員!
かなり困ったことだろうに!
サクタくん!知らない人の車に乗っちゃいけません!
郵便局の人がいい人だったから良かったけど、普通に考えたら警察に連絡されて、大騒動だ!(いや、サクタの家では大騒動になっていたみたいだけど)
のどかな時代のあたたかい対応という気がする。
田舎の郵便局、というとなんだか牧歌的なイメージがついているし。
日本中どこでも、一日一回ちゃんと郵便配達が行われる日本の郵政事業はすごいねえ。 前島密(日本近代郵便の父)、ありがとう!
……郵政民営化により、最近けっこうギスギスしてるけどね……。
郵便局に行くたびに「かもめーる」勧められるんですが、やめてもらえませんか!
今の郵便局だったら、たぶん警察に連絡されて終わりだね……。
ク●ネコさんだって、小学生を乗せてくれないと思う。宅配便業界の仕事ノルマ、キツイらしいからねえ……。子どもが道端で手を振っていたって、止まってもくれないかも。
全然別の話になるが、子どもの頃、ちり紙交換車を止めようと、車に向かって手を振ったら、運転手さんは満面笑顔で手を振り替えしてくれ、そのまま行ってしまった……。 違うんだよ、運転手さん……!!
子ども好きのいい人だったんだろうけどさ……。今、思い返せばのどかな光景と言えなくもないけど、当時は「ちゃいまんがな!」と関西風に激しく突っ込みたかったよ……。
私が小学生の頃って、かなりのどかだったんだなあ……、と思う、昔の記憶でした。 田舎だから、というのもあるんだろうけどね。
ちなみにこの本は、夏休みの課題図書に選ばれました。
課題図書……嫌いだったんだよな~。どれも面白くなくて、説教臭くて。
でも、この本は珍しく大好きで、何度も繰り返して読んだ想い出の本です。
サクタの無謀さと、おばあちゃんの山のお家の描写がすごく楽しかった!
良い本です。岩波書店風に言うなら「良書」です。