睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

「おさんぽきのこ」石塚倉譆

今年の人間ドッグのお供本に選んだ本は「おさんぽきのこ」である。

区切りがつけやすくて、写真とかが多い本、という人間ドッグお供本の条件にぴったり。

 

私はきのこが好きで、山に行って、きのこを見つけると「らぶりー!」とわーわー騒ぐけれど、実は知識は皆無。山に生えているきのこで名前がわかるものは1つもない。(ベニテングダケならわかるかも。生えているの見たことないけど。)

ここらで少し、きのこの知識を仕入れておこう!と意気込んで、この本を購入した。

 

人間ドッグの検査の合間に読みふける。

本の冒頭に書かれているが、この本は図鑑ではない。山の楽しさと、きのこの世界の多様さ」を伝えることを主眼としているそうな。

ただ、きのこの名前を知りたいだけなら、きのこ図鑑でいい。この本は、そこから一歩踏み込んでいる。(ちなみにヤマケイポケット図鑑「きのこ」も持ってる)

一応、体裁は図鑑のものであり、きのこの種類ごとに写真や解説がある。その解説が面白い!きのこ狩りの世界にどっぷりひたった作者しもじ氏(石塚氏)が、実際に山で発見、採取、料理(中には毒きのこもあり)した体験記になっているのだ。

シャカシメジのところの解説はこんな感じ。

しもじ氏は初心者だった時に、このきのこを発見。しかし、当時はそれが何なのか、食べられるのかわからず、知人の仲介できのこに詳しい大学教授にあずけてみた。「一体、なんていうきのこなんだろう」とわくわくして返事を待っていたところ、ようやく来た返事が「おいしいきのこ ありがとう」だった…

教授、イイね!人間ドックの検査の合間だけど、声に出して笑う私。

表紙にきのこがどーんと大写しの本で笑う私は、さぞ奇妙だったろう…。周りの検査待ちのみなさん、迷惑掛けてすみません。

 

改めて気づいたけど、きのこに詳しい人って、きのこ狩りに行く人なんだね…。

…そりゃ、そうだよね…。

なぜ、きのこに詳しいのか。それは、きのこ狩りをするから。なぜ、きのこ狩りをするのか。それは、きのこを食べたいから

私は山に生えているきのこの名前がわかるようになりたい!という軽い気持ち程度で、その先の「採って食べる」意識がなかったので、「ほー、そういう世界もあったか!」と認識を新たにさせてもらった。

この本の内容は、きのこの世界を紹介する、というよりは、きのこ狩りの世界を紹介する、と言った方が正しいと思う。

 

きのこ狩りの世界、って全く知らない世界だったから、驚くことが多かった。

きのこは毎年同じ場所に生えることが多く、たくさん生える場所(シロと言うらしいです)を探し当てると、絶対に他人には教えないそうな。教えると、先に収穫されちゃうかもしれないから。

クリフンセンタケの解説文には、ショッキングなエピソードが!

作者のしもじ氏がクリフウセンタケの大株を発見。「うわ~これは見事な株だ!」と声をあげて、写真を撮るべく、ザックからカメラを取り出していると、一緒にきのこ狩りをしていた仲間が「おーこれは凄いな~」と言いながら、自分のカゴに放り込んでしまったというのだ。

なんて厳しい世界なんだ!仁義なき戦いみたい。

スキを見せた方が負けなのね…。

「信頼関係…?何それ?」(by カイジ

 

また、しもじ氏は、山で食べられるきのこを見つけると、全部採りたいのだそうだ時にはトラックの荷台埋まるくらい収穫する時もあるとか!すごいな。

…食べる分だけ採る、という考えではないらしい。割と貪欲。

時には、いろんな事情で、全部持ち帰れず、途中で泣く泣く捨てることもあるとか。

うーん…登山のマナー「山で植物は絶対に採取しない」というのが、私の頭をよぎり、どうも、気持ちがついていかない…。

(ちなみに、本にはちゃんと保存方法とかも書かれている)

 

…他にも雪山きのこ狩りエピソードとかもあって、とにかくきのこ狩りにかける情熱に圧倒される。

そこまでして、きのこが採りたいのね!

こういう人たちがたくさんいるって、知らなかったよ!

 

きのこ狩りか…。興味が無くは無いけれど、多分、私は足を踏み入れられないな…。まだ、情熱が足りない。

一番はじめに「私はきのこが好き」と書いたけど、形やその不思議な生態が好きなだけであって、この本を読むまでは、食べる方のことは全然考えていなかった。これで「きのこ好き」を名乗るなんて、片腹痛かった…!反省。

ちなみに、私は子どもの頃、バーベキューでシイタケの串焼きを「お肉だよ、おいしいから食べなさい」と母にだまされて以来、ずっとシイタケが大嫌いだった…。社会人になってから、ようやくなんとか食べられるようになったけど。(乾燥シイタケは今も苦手)

子どもの頃の出来事って、影響大きいよな~。

私がきのこを食べる方に興味が出てきたら、狩りに挑戦してみよう。割と、近い将来かもしれない。

 

ちなみに、本の冒頭に「この本は図鑑ではありません」と明記されているけれど、十分、図鑑としても使える。

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きっと、オニイグチ。渭伊神社内の天白磐座遺跡でみつけた。なんと、食べられるらしい。

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たぶん、ルスラ(ドクベニタケ)。毒。四阿山に生えてた。写真イマイチ…。

 

余談だが、人間ドッグの際に、医者に「体重が年々増えています。ここらで止めましょう」と、言われた…。

そうしたい気持ちは山々なれど、そううまくいかないのが、人の世の常ってやつでねえ…。

きのこ、ダイエットにいいんだよね…。きのこ狩りか…。

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黄色は多分カベンタケ。食べられるらしい。これも四阿山で発見。(「おさんぽきのこ」には掲載なし)

 

おさんぽきのこ.

おさんぽきのこ.