気象神社で晴れ祈願
登山に行く日は晴れていて欲しい。
京都の大文字山に登った際の実感である。
雨登山もまた別の楽しみがあるとは思う。現に超絶雨女キキちゃんと、お互いを雨女とののしりつつ、楽しい登山ができた。下山後の湯豆腐、最高だったし。
でもやっぱり、晴れがいい。頂上で汗をぬぐいながら、真っ青な空にくっきり映える周囲の山を見渡して、「ヤッホー」と叫びたい。
「なんも見えねえ(北●康介風に)」などど、白いガスを見渡して言いたくないのだ。
天気ばかりは人の力ではどうすることもできない。できることといえば、神頼みしかない。
私は最終手段として、登山前日に何度かてるてる坊主をぶら下げた。遠足前日の小学生の行動より良い手段がまったく浮かばないのだ。他に何か良い方法があれば教えて欲しい。
「あきらめる」とか「別の日にする」が大人の答えのような気もする…。
しかし、私は諦めない。いや、諦められない。
神様へ晴れをお願いするために、ついに日本でただ1つ、という「気象神社」に行ってきた。
なんでも、気象神社は旧陸軍気象部の構内に造営されたもので、戦後、高円寺氷川神社に移設されたそうだ。神社としては非常に新しい神社だが、日本唯一の天気の神様だという。
日本はずっとお米を作って暮らしてきたので、天気のお祈りといえば「雨乞い」。
空梅雨は米の不作に直結するし、水が無いと生きていけないので、馬を生け贄にして捧げたり(発掘すると、畦から馬の歯が見つかることがあるそうです)、火を焚きあげて上昇気流を作るとともに祈りを捧げたりと、雨への祈りの手法は様々に工夫されてきた。全国各地に水の神である竜神を祀った神社もたくさんある。
岡野玲子「陰陽師」には、安倍晴明が雨乞いのため旅をする話があったり、最近読んだ本では榎田ユウリ「宮廷神官物語」でも主人公の一人、鶏冠が雨呼びの儀を強要されていたりする。(もっとも、宮廷神官者物語は朝鮮風の国が舞台だが)
なかなか晴れを祈願する方の神社は見当たらないのだ。長雨は稲に病害虫が発生する恐れもあるはずだけど…。そこは意外と暢気なのか、日本人。
椎名誠「雨がやんだら」は雨がずっとずっと降り続く不気味な話だったが、別に晴祈願はしていなかったはずだ。
そんな中で見つけた、日本唯一だという「気象神社」。
行かねばならぬ。そして、私とキキちゃんの晴れ登山への切実な希望をお伝えしてこなくてはならなぬ。
真剣に真心を込めてお祈りする。心なしか、柏手を打つ音も大きい。
私の本気度を神様にお伝えするため、お賽銭も100円玉を投入した。大奮発だ。
お賽銭の相場については人それぞれだと思うけど、私にとっては「心意気を見せる額」なのだ。100円は。
お天気の神様、ワタクシ、はるばるG県から、やって参りました。
住所氏名も心の中でお伝えし、晴れの山に登りたい旨をお願いする。よろしくお願いいたします。
神様におしりを向けたら失礼にあたるらしいので、そろりそろりと後ずさりして社殿を離れ、参拝完了。
よし。しっかり参拝できた。
由緒の書かれた看板を眺めたり、絵馬を覗いたりする。
絵馬は「あーしたてんきになーれ」と下駄を飛ばして翌日の天気を占う日本伝統の風習(?)から、下駄の形をしている。かわいい。
勝手に見て回るのはあまり良くないんだろうけど「寒暖差が大きくなって スープがたくさん売れますように」との願いが書かれた絵馬を発見し、思わず「ううむ」とうなってしまった。
天気は様々な業界に影響を及ぼすものだなあ。冷夏だと農作物はもちろん、ビール業界やらアイス業界やらが大冷えになるらしいし。
でも、天候は人間にはどうしようもないので、神様にお願いするしかないのだ。
自然崇拝って原始的で当然な気持ちだと実感する。だって、努力すればどうにかなるものじゃないもの。
さて、参拝をすませた後は、社務所へ向かい、今回のお目当てでもある「晴守」を授けていただく。
さらに念を入れ、「てるてる守り」も頂戴する。こっちはスーパー雨女キキちゃんに渡すつもりだ。二人で持っていれば、きっとお天気の神様も味方してくれるはず。頼むで!
ついでに御朱印もいただく。
7~8名並んでいたのだが、神社の人のよると「今日は空いていてラッキーですよ」とのことだった。通常の土日だと1時間とか待つこともあるとか。うへぇ。
なんでも、こちらの御朱印は毎月変わる手彫りの木版で、また一部、天気に応じて押してくれるハンコが違うらしい。ちなみにすべてハンコで、神社名もハンコ。墨で書いてくれるわけでは無い。
最近、神社は御朱印に工夫を凝らしているところが大変多い。期間限定とか。
何か踊らされているような気もするが、私の中のコレクター魂は「通うしかないやろー」と叫んでいる。毎月は無理だけど、雨の日御朱印とか欲しい。
でも実を言うと、私はお寺の御朱印の方が好きだ。特に大日如来の御朱印をいただけると心がときめく。密かに大日如来だけで染めた御朱印帳が欲しいと思っている。道は険しいけど…。
さて、この「晴守」をザックに装着して、宝登山に登ってみた。
晴れた!
御利益あらたかなり!
これできっと大丈夫だ。多分。
今年の夏あたりに、またキキちゃんと山に行くと思うが、この晴守とてるてる守りで、快晴と最高の景色にヤッホーと叫んでみせようではないか。
そして、気象神社にお礼参りに行って、御朱印をいただきたい。できれば、雨のハンコが欲しいので、雨の日に!
…なんて欲深いのかしら、私は…。
一緒につけているのは、上賀茂神社の「雷除御守」。神様が喧嘩しないか、ちょっと心配…。