立山+黒部ダム(1日目)~極楽のアルペンルート~
今年の梅雨前線はどうしたことか。
確かに毎年、7月頭までは日本では梅雨だ。梅雨なので、当たり前だが雨が降りやすい。
そのことを承知はしていたのだが、「梅雨といったって、毎日雨が降るわけじゃ無い」「7月に入れば明けている可能性もある」「それよりも圧倒的に、みくりが池温泉の予約が取れる日を優先しよう」と、今回の立山行きを決定した。
今回は山の相棒、ノムさんと行く。ノムさんは晴れ女なので、予約の段階では「多分、大丈夫だろう」とかなり楽観的な気持ちだった。
頼みの綱、晴れ守もある。きっと晴れる!
私は2年前にも立山に行っているのだが、その際は悪天候(雨+強風)の真っ白地獄により、途中下山した。
「今度こそは、絶対に晴れの日に、最高の景色の中、頂上に立つ!」という並々ならぬ気合いがあり、だからこそ、今回は晴れるに違いない、という妙な確信があったのだ。同じ事は2度は続かないはずだ。
しかし、6月下旬からとにかく毎日雨、雨、雨。太陽が全然顔を見せない。
恨みを込めて、我がG県の空を眺めるが、灰色の雲がどよーんと重く垂れ込めていて、赤城山の姿すら見えない。
ものすごく梅雨だ。晴れの気配が見当たらない。
どこの天気予報を見ても、雨がずっと続きます、と気象予報士が口を揃えている。
ピンポイント予報でアルペンルートの天気予報も毎日確認していたが、ちょこちょこ変わりはするものの、概ね、曇りと雨。
梅雨前線がちょっと北に行くか、南に行くかで予報がどんどん変わるらしいが、晴れマークがつくことはほとんどなかった…。
もう、これは腹をくくるしか無い。とりあえず、行ってみる。
行ってみて、登れなければ、黒部ダムとみくりが池温泉で満足すればいい、と自分に言い聞かせた。でも、本当にそうなったら、涙が出ちゃう…女の子だもん。(byアタックNO1)
一応、念を入れて、今回の登山に備えて、カッパを新調した。備えよ常に、はガール●カウトモットーなのだ。
1日目の行程は、長野側の扇沢からアルペンルートに入り、黒部ダムを見学して、室堂のみくりが池温泉泊だ。
2日目に立山に登り、そのままアルペンルートを富山側に抜ける予定。
2年前に来た時は、この区間はトロリーバスだったが、今年から電気バスに変わったらしい。購入したアルペンルートの切符に「電気バス元年」と書かれていた。
なるほど、乗り物もどんどん変わっていくのだなあ。でも、ヘッドマークの関電マークは変わらずそのままなのがいい。
バスを降りて、ひんやり寒い隧道を抜けると、そこは大迫力の黒部ダムだ。
なんと、天気は良好!扇沢ではどよーんとしていたが、山を越えたら、ちらちら青空すら見えるではないか!
ダムの向こうに残雪の立山連峰がくっきりその姿を現している。
明日、あの山の上まで登るのだ。すごいな、本当に行けるのかな。
やはり、今回、天気は大丈夫な気がする。
期待に気持ちが盛り上がり、ザックにくくりつけた晴れ守を「頼むで!」という気持ちを込めて、しっかり握りしめた。
黒部ダムはこの時期、観光放流中で、美しいアーチ面の2カ所から、水が勢いよく噴き出している。
大迫力だ。
さすが、観光を意識して作られており、間近で見られるレインボーテラス、堰堤と同じ高さで見られる放水観覧ステージ、上から一望できるダム展望台が設けられていて、放水をいろいろな高さから観覧できるようになっている。
レインボーテラスからダム展望台までは、鉄の階段が設置されていて、だいたい距離にして350m登りっぱなし。
辛い…!!
荷物をすべて背負っているので、かなり重い。
「まさか山を登る前に、こんな試練があるとは…!!」
「なんで、ロッカーに荷物を預けるという選択肢を忘れていたのだ!?」
まわりの観光客の皆さんは、荷物が軽いからだと思うが、それほど辛そうな様子を見せずに登っていたが、私たちだけは、ぜーぜー息を切らしながら登った。
名物、ダムカレーとハサイダーを食し、資料館でダム建設の歴史のビデオに感動し、(昭和調のナレーションがイイ)黒部ダム、大満喫。多分、2時間以上うろうろした。
くろよん(黒部第4ダムの略称)、すごい。
莫大な建設費と多くの殉職者を出した、この事業の是非について、意見はいろいろあるだろうが、とりあえず、近いうちに「黒部の太陽」(石原裕次郎版)を見ようと心に誓った。
ついでに、2年前に学習したので、今回はダムカードもスムーズに入手した。(売店のレジで声を掛けると貰える。案内看板などは一切無いので、少しだけ勇気が必要)
黒部ダムを後にすると、アルペンルートの様々な乗り物が次から次へと登場する。
黒部湖から黒部平まではケーブルカー
黒部平から大観望まではロープウェイ
大観望から室堂まではトロリーバス
どの乗り物もなかなか楽しいが、一番の見所は、間に支柱が一本も無いロープウェイだろう。
空中にぷらんと放り出されるような、やや心細い気持ちにさせるが、まわりは圧倒的なアルプスの山並みの絶景に囲まれている。
開放感というのか、なんとも言えない不思議な気持ちになる。下界では味わえない。
若干雲が出てきたが、まあまあの天候で、絶景を堪能。
行ける。今回は頂上まで登れる。
何か、確信に満ちた気持ちが私の胸にわき上がってきた。単なる願望なのかもしれないが…。
パンタグラフで電気を供給して走るトロリーバス(日本ではここでしか走っていない)を下りると、立山登山のお膝元の室堂に到着だ。
かなりの残雪。さすが北アルプスだ。
かなりガスが出てきていたので、雪と相まって、周りが全体的に白い。
雪を背景にスマホ(アイちゃん)でノムさんと写真を撮ったが、アイちゃんは勝手に、撮影地を「立山山岳スキー場」と判断してくれた。(GPS機能)
スキー場に来たわけでは無い…。アイちゃん、グッジョブ。
残雪地帯の遊歩道をてくてく歩き、本日の宿泊地の「みくりが池温泉」へ向かう。
すると、途中でやたら人が集まっている場所がある。
「なんだろう?団体さんかな?」
と近づいてみると、
雷鳥さんご一家登場!
どっしり構えたおかあさんの周りをヒナ鳥がちょろちょろ動き回っている。
かわいい!!
「雷鳥は人に嫌なことをされたことがないので、全然人を怖がらないんですよ」と自然解説員さんっぽい人が教えてくれた。
ありがとう、先達!雷鳥に嫌なことしないでいてくれて。
ものすごいラッキー!と感動したが、その後、他の場所でも雷鳥さん一家に遭遇する。
意外と、雷鳥さんはふらふら出没するみたい…。(曇りの日が最も出没するらしい)
しかも、全く人を気にしていないので、ずっとその場所に留まっている。長っ尻。
「雷鳥さん、近くまで出没してくれるのは嬉しいけど、そんな警戒心がなくて大丈夫なの!?」
「自分が人気者であることを知った上の行動っぽいな。サービス精神旺盛なアイドルなのか!!」
3000羽くらいしかいない希少な鳥さんらしいが、この日について言えば、あまり希少感がなかった…。意外と気さくな感じ。現代風の会いに行けるアイドルっぽい。雷鳥さんも時代に合わせているのか?
室堂に降り立った時点では、かなりガスっていて、「やはり真っ白地獄なのか…」と肩を落とす天候だったが、みくりが池手前にさしかかると、まるで奇跡のように、みるみる霧が晴れ、立山三山がくっきりと姿を見せてくれた。
池が鏡となって、山を移している。
観光ガイド本などで「行ってみたい!」と私を魅了した、あの景色そのまま。
「魔法のように霧が晴れた!」
「いつ写真撮るの?」「今でしょ!」
「囃子(仮)先生、ありがとう!」(お礼を言う相手が違う、と今気づいた)
大興奮して、写真を撮りまくる。近くにいた登山者(?)の方も「おお!」と歓声を上げて一眼レフを構えていた。
嘘みたいだ。いきなり、晴れるなんて。
ノムさんの晴れ女パワーが遺憾なく発揮されているのか。
その後、みくりが池温泉に荷物を置いて、あたりを散策していると、どんどん天候が良くなり、周りの山々がくっきり。
Beautiful!Amazing!Thank Godness!
感動を思いっきり表すと、西洋人風になってしまう。日本人の私はシャイだから。
エンマ台(地獄谷展望台)のベンチで周りの景色をぼーっと眺めて過ごす。
すごいところに来ちゃったなー。
ノムさんは「くちぶっえはなぜ~♪」とハ●ジの主題歌を口ずさんでいる。ヨーロレイヒー♪
ハ●ジでしか知らないけど、きっと本場のアルプスもこんな感じなんだろう。
空を見上げると、不思議と、私たちの上だけ帯のように青空が広がっている。
「私のパワーでここだけ晴れ!」
「いや、ノムさん、もしや、近くに修●がいるのでは…?」
「ヤツか…!日本一の晴れ男の、ヤツが来ているのか!!」
ヤツのパワーかどうかはわからないが、立山の極楽を全身で感じることができた。ありがとう修●!
みくりが池温泉に戻り、ご飯をいただいていると、外は雲海と真っ赤な夕焼け。
夕焼けの翌日は晴れるというのが定番なはずだ。
行ける!今回は行ける!梅雨ど真ん中だけど、なんか行ける気がする!
受付に張ってあった天気予報によると、午前中の登山指数(?)はAになっていた。
前回の真っ白地獄を返上して、ついに3000超えの雄山神社で青空極楽に包まれる日がやってきた。
確信に近い晴れへの期待を胸に、温泉でほかほかした体を横たえた。
みくりが池温泉、とてもいいお湯だった。山の上でこんな贅沢ができるなんて、まさに極楽だ。
明日は頑張って登るぞ!
(2日目に続く)