那須岳〜温泉横をぐるり満喫〜
紅葉の山といえば、G県民にとっては妙義山であるが、関東に範囲を広げれば、なんと言っても那須岳であろう。
山一面が真っ赤に染まった写真を見れば「行くしかないやろ」と思わせる圧倒的な美しさを誇る。
私は数年前に軽い気持ちで紅葉トップシーズンの3連休に那須岳に向かい、大渋滞に度肝を抜かれた覚えがある。
世の中の人は、こんなにも紅葉を眺めたいものなのか!?しかも、登山もしないのに!!
どうも、登山開始以前の情緒不足な私が出てきてしまい、遅遅として動かない車内から悪態をついてしまった。
景色を見るためだけに高いところ(スカイツリーとか)に登る人の気が知れない、とか言っていたのだ。情緒不足の頃の私は。
今はすっかり心を改めて、山に登る度に「眺望!眺望!」と晴れを祈願している。
過去の経験から、紅葉シーズンの那須岳には二度と行かない、と決めていたのだが、山の相棒ノムさんから「紅葉シーズンより少し前の今なら多分大丈夫」と魅力的なお誘いを受けて「そうかぁ」と二度目の那須岳行きを決定した。
10月初旬で紅葉はもう一息のはず。そして、出発時間も前回より早めに設定。
どうだろう、那須岳!!
果たして、今回は渋滞はほぼ無しで大丸駐車場に到着できた。時間は8:00少し前だ。
渋滞はしていないのだが、大丸駐車場の正規の駐車スペースは満車である。ぐるぐるまわって隙間を探してみたが、無いものはは無い。今回もしぶしぶ路駐を選択する。すみません。
でも、この感じだと、あと1時間早く到着すれば、空きスペースはありそうだ。
次に来るときは(また、紅葉シーズン?)あと1時間早く家を出ることにしよう。…真夜中3時とかになるけど…。こうやって、登山者はどんどん早く家を出るようになるものなのだろうなあ。
大丸駐車場で身支度を調え、ロープウェイ乗り場(山麓駅)までの登りをえっちらおっちら歩く。地味に辛い。
ロープウエイ乗り場で少し待つ。
すると、何やらストロベリー県の職員(?)がやってきて、登山者調査(?)とやらのために、ビーコンを付けて登って欲しいとの依頼をされる。(並んでいる人、みんなに渡していた)
もちろん快諾。
しかし、ビーコンとはなんぞや?
「遭難した時に位置がわかるものじゃないのかしら?」
「なんか電波を発信してるもの?「沈●の艦隊」で潜水艦が打っていたレーダー?(後から、それは「ピンガー」であったことに気づく。古いマンガですみません)」
「…ベーコンは、燻製…」
「いや、ベーコンはフランシス…」
私もノムさんも、そのあたりの知識は薄い。程度の低い大喜利をおずおずと言い合うネタにしかならなかった。
結局、よくわからないが、小型の万歩計のようなものを装着して、ロープウェイに乗り込む。
今回は、窓際をゲットできたので、そこそこの天気のちょっとだけ早い紅葉を眺めながらの幸先の良いスタートである。
8:45 山頂駅到着。
ここから茶臼岳へザレ場をざくざく登る。途中からはガレ。
周りは人で賑わっている。やはり、紅葉ベストシーズンでなくとも、この時期は人出が多いようだ。
多くの人がわいわい登っていく。やはり、ファミリー登山の方も多い。
前回の記憶では、ファミリーの学齢前の小さな子どもやその祖父母とかも登っていたので「山頂までは楽に登れた」と思っていた。
人間の記憶とはなんと曖昧なものなのか。
「けっこう、傾斜キツいじゃないかーー」
「おかしい。前回よりも急になったんじゃないのか!?」
前回も一緒に登ったノムさんも、私と同じ感想である。
なんだろう。前回は、大渋滞のことが強烈な印象すぎて、登山そのものの印象が薄くなってしまっていたのかもしれない。
火山らしい周囲に樹木の無い荒涼とした風景の中を、息を切らして登る。
天気はまずまずなので、眺望良好だ。ヤッホー。
9:45 茶臼岳、登頂。1915m。
前回は茶臼岳頂上でだいだいお昼くらいだったと記憶しているので、今回はかなり早い。
イイね。行けるね、今回は。
少し休憩して、お鉢周りを経て、峠の茶屋方面へ下る。
すると、だんだん風が強くなってきた。私の帽子が飛ばされそうになるくらい。
「あごひもある帽子で良かった!この帽子、今回新調したのよ!」
そう。今まで愛用していた帽子(紺色)を、石けんでごしごし洗ったら、まだらに色落ちしてしまい、ノムさんに「石けんはダメだよ!エ●ールとか使わないと!」とご指摘を受けていたのだ。
「最近、よく行く、○井スポーツで買った!」
「ほー、最近は○井スポーツなの?」
「うん。……あのさ、某芸人のネタで「生まれ変わったらポイントカード作ります」っていうのがあるんだけどさ…心に刺さるよね」
「……早く、作りなよ。ポイントカード」
という、大変どうでも良い会話をしつつ、噴火口周りを歩く。
○井スポーツのポイントカード、やっぱり作ろうかなあ…。
10:40 峠の茶屋
一応、今回の予定は、ここから三斗小屋温泉方面に下り、ぐるっとまわって、朝日岳方面から峠の茶屋に戻り、そのまま下山するルートであった。
三斗小屋温泉方面への道を眺めると、遙かに下ったところに、温泉宿のものと思われる屋根が見える。
「…めっちゃ下ったところだね」
「一応、地図を確認してみよう」
相当下に見える屋根にびびり、地図を開いてみると、三斗小屋温泉から隠居倉までのルートのコースタイムに異変を発見する。
「下り40分、登り80分って書いてあるよ、ノムさん!」
「倍、さらに倍!(byクイズ●ービー)急登じゃないか!予定のルートだと、そこは登りだよね!まずいよ!」
「逆のルートをとろう。回避だ、回避。あぶなかったー」
「あぶなかったねー」
急遽、朝日岳登頂後、熊味曽根で三斗小屋温泉に下るルートに変更する。
多分、この選択は正解だった…と思う。
前回も朝日岳には登っているが、その時は登山者の人数はかなり少なかった。
ファミリー登山の方は、茶臼岳だけ登って下山するからであろうと思っていたのだが、今回はかなりの人数が朝日岳を登っていた。ファミリー登山の方も沢山いる。
前回は、単に時間が遅かったから人がいないだけだった、ということに今更気づく…。
ファミリー登山といっても、両親は山好きで、子どもも小さい頃から(下手したら歩けるようになる前から背負われて)山に行っているエリート達なのだろうから、きっと朝日岳くらいお茶の子さいさいなのである。
11:45 朝日岳 1896m
天気はくもりであるが、所謂高曇りのため、眺望はまずます。紅葉はもう一息といったところ。
ちょうど時間がいいので、朝日岳から少し下ったところの鞍部でお昼ご飯にする。
沢山の登山者が同じようにお昼にしていたが、みんな、なるべく風を避ける場所に陣取っている。
この時点で、かなり風が強く、寒かったのだ。
歩いている時は大丈夫だが、止まっていると寒い。
風速1mごとに体感温度が1℃下がるとか言われているようだが、多分、それは本当だ。この時、気温が何度だったのかはよくわからないが、気分的には3℃~5℃くらいだ。(大げさ?)
暖かい物で内側から暖めよう、とそそくさとバーナーを取り出し、お湯を沸かす。
しかし、私が今回持って行った山フライパン(深型)は口が広いせいか、あたためるそばから冷めていっているようで、なかなか沸騰しないのだ。
途中、気がついて蓋をしたらすぐに沸騰した。すごいな、蓋。
実は山フライパンは蓋が別売りで、買うべきか買わざるべきか、それが問題だ、とかなり迷ったのだが、買って正解だった。よくやった、私。
さて、沸いたお湯で作った今回のお昼ご飯はコーンスープパスタである。
簡単にできそうだし、おいしいのではないか、と思いつき、ネットで検索してみたらレシピもあったので、今回挑戦してみることにしたのだ。
作り方はとにかく簡単。
沸いたお湯でパスタをゆで、そこにツナ缶とコーンスープの素(粉末)を入れるだけ。
以上。
この料理なら、パスタゆで汁問題もまったく心配なし。
肝心のお味もGOODである。ツナ缶がいい仕事をしていて、コーン風味のカルボナーラという仕上がりだ。非常においしい。
これはいい。これからの山ご飯メニューにちょいちょい登場してもらうことにする。
暖かいものを食べたのだが、やっぱり寒い。
歩いていれば暖かくなるので、ご飯終了後、すぐに歩き出すことにする。12:50。
熊見曽根までは三本鎗岳に縦走する人たちがそこそこいたが、分岐を三斗小屋温泉方面に曲がると、ほぼ無人である。
真横には茶臼岳と朝日岳がどーんと姿を見せており、非常に見晴らしがいいご機嫌な道だ。
「こんないい道に人が全然いないなんて、もったいないね」
「私たちで独占だよ。穴場かな、この道は」
一気にテンションがあがり、るんるんで歩く。写真も撮り放題。風もやんできて、ますます楽しくなってくる。
しかも、途中から、紅葉も非常に良い感じに色づいている。この道はアタリだ。
13:40 隠居倉
ここから、峠の茶屋で「下り40分 登り80分」にびびった急坂を下る。
そして、この急坂を下りている時にようやく思い出す。私とノムさんは下りが苦手だったことを。今ごろ…。
「登りも辛いけど、下りも辛いよ」
毎回、どんどこ下る人を尊敬のまなざしで見つめているのに、どうして、肝心な時に忘れるのか。
だからと言って、登りが得意なわけではない。すぐに息切れがしちゃう体力に自信の無いおばちゃんだ。
なので、この坂を登るよりは下る方がよかったと思う。峠の茶屋の選択は間違いではなかった。
慎重にゆっくり下る。自分のペースでいけばいいのである。のたり。
14:40 三斗小屋温泉(やっぱり、下りのコースタイムをかなり超過)
私の中の泊ってみたい温泉ランキングの最上位にある温泉である。
残念ながら、今回は日帰りのため、横目で見るだけ。
ここへ向かう道ですれ違った人(追い抜かれた人)に「温泉泊まりですか」と聞かれて「いえ、帰ります」と答えたら、結構驚かれた。
そりゃそうだ。こんな時間にこんな場所にいる日帰り登山者なんて私たちくらいだろう。
今年は特別に日帰り入浴も可らしいので、あわよくば、などと思っていたが、当然、この時間ではそれは無理であった。
毎度のことながら、どうして下山が遅くなってしまうのか。別に地図を見ていないわけでもないのに。
道道の反省会で(毎回恒例)ノムさんが多分正解の答えを言ってくれた。
「だって、せっかく山にきたら、満喫したいじゃない。時間いっぱい」
エウリカー!そう。そうなのよ。山時間が楽しいから、なるべく長く滞在したいのよ。
愛あればこそ。(byべるバラ(宝塚歌劇団))それが理由だったのだ。
でも、基本は3時までに下山。もう、何度書き留めたかわからないが、再度心のノートに書き留める。
三斗小屋温泉で少し休憩後、峠の茶屋に向かい進路を取る。
行きに峠の茶屋のものすごく下の方に三斗小屋温泉の屋根が見えていたことが、不安感をあおる。
あれだけの高さを登るということか。地図のコースタイムの登りと下りの差はそれほどでもないが、視覚で見たあの感じは、結構、登ると覚悟した方がいい。
時間も押しているので、ちょっと早めに歩く。
15:20 延命水(わき水。冷たくておいしい)
16:10 峠の茶屋
ようやくここまで戻ってきた。
延命水から先は結構登ったが、覚悟を決めていたので、意外と大丈夫であった。
強いて言えば、最後の峠の茶屋の標識が見えてからのザレ場の登りが一番キツかったかもしれない。見えているのに、近づけない…。気持ちが焦るのだ。
さて、たどり着いた、峠の茶屋。もちろん、人影はない。(が、茶臼岳からこちらに向かっている人はいた。強者)
「いやー、毎度だけど、今回は予想外に時間押しちゃってるね」
「暗くなっちゃうかもしれないけど、ヘッドランプ持ってきた?」(もちろん持ってる)
とりあえず、峠の茶屋に戻ってこれた安心感から、再び饒舌になる私たち。
確か、前回の記憶では、ここから駐車場への小一時間の道はそれほど大変ではなかったはずだ。
「おかしい。もっと楽な道だったと思ったけど」
「意外に、ちゃんと山道だね」
私とノムさんの二人ともが同じ記憶を持っているのに、どうして現実は違っているのだろう。
峠の茶屋からの下山道は、記憶よりもしっかりとした山道であった。砂利敷きで平らな道みたいなイメージだったけど。
やっぱり、前回は渋滞の記憶が鮮明すぎたから、登山の記憶が薄いのだろう。辛かったのは渋滞。後は、渋滞に比べれば全然辛くない、と記憶してしまっているのかもしれない。記憶って曖昧。
ぶつぶつ言いながらも下り続け、峠の茶屋駐車場着。無事、下山完了。だいたい17:00。まだ周囲は明るい。
ここで待ち構えていたストロベリー県の職員に、朝預かっていたビーコンを返却する。
登山中、ほとんど忘れていたが、そうだ、預かっていたんだった。
多分、登山者がどこを何時に通過したか、とかがわかるのだろう。
「おいおい、こいつらどこ行くんだよ、とか思われるんじゃないかな」
「そうね。あと、早く帰れよ、とかも思うかもね」
あまり調査には役に立たなかったような気もするが、那須岳観光に是非、活かして欲しい。
なんとか日の明るいうちに下山できて「よかったー」と思っていたのだが、実は、この後、大丸駐車場への道のりが待っているのだった。
結構、辛かった…。(疲労困憊)
大丸駐車場に到着したのは17:30頃であった。お疲れ様でした。
次はもうちょっと早く下山するぞ。本当に。
<コースタイム>
8:00大丸駐車場…9:00ロープウェイ山頂駅…9:45茶臼岳…10:40峠の茶屋…11:45朝日岳…12:00(お昼休憩50分)…13:00熊味曽根…13:40隠居倉…14:40三斗小屋温泉…15:20延命水…16:10峠の茶屋…17:00峠の茶屋駐車場…17:30大丸駐車場
余談ですが、この記事の文章を三斗小屋温泉のあたりまで書いたあと、一回全部消えました。(自分の操作ミス)
心が折れる音がしました。
前回の那須岳。3年前でした。
ビーコンの調査。ニュースになっていた。…ストロベリー県の調査ではなかったらしい。