睡紫庵文庫

身辺雑記をまじえた読書雑記です。

黒斑山~ありがとう、快晴登山~

とにかく晴れの日に黒斑山に登りたい、と夏くらいからずっと思っていた。

黒斑山は浅間山第一外輪山。年中噴火している浅間山の一番外側の縁に当たる山だ。

何で読んだのかは忘れたが、黒斑山からは大迫力の浅間山が見られるという。まさに「どーん!」と目の前に迫ってくるらしい。

秋の紅葉シーズンには、浅間山の裾野をカラマツが黄金色に染めあげる景色を眺めることができるとのことで、それは夢のような光景だなあ、と写真を眺めて気持ちを高ぶらせていた。

しかし、他の山で戯れているうちに、紅葉シーズンはあっという間に過ぎ去った。

来年まわしかな、と少し諦めかけていたが、週末の天気予報で「晴れ」一択の日を発見し、急に「いつ行くの?今でしょ!」と黒斑山に行くことを決定した。混じりっけなしのおひさまマークの日は貴重である。

山の相棒、ノムさんも「よっしゃ、行こうじゃないか」とすぐに乗り気になってくれた。なんだかんだで、今年は「快晴」の日に山に行っていないので、私たちは多分「晴れ」に飢えていたのだろう。

 

我々G県民にとっては浅間山とその外輪山の黒斑山は「G県の山」であるが、登山口はシナノ県にある。県境に位置する山なのだ。

もしかすると、G県民以外は浅間山(と黒斑山)はシナノ県の山、という認識なのではないだろうか、という不安に駆られるが、シナノ県側からの浅間山の姿を眺めて「G県側からの方がキレイだから、やっぱりG県の山だな」と勝手に納得する。

G県平野部から眺める浅間山ほぼ富士山である。綺麗な円錐形のプリン型。私はホンモノの富士山をみて、浅間山と間違えたことがあるくらいだ。

シナノ県は他にも名だたる名峰を沢山持っている大富豪県だから、多分、貴族(?)の余裕でもって、浅間山一つくらい簡単にG県にくれるだろう。(ちなみに、黒斑山、浅間山ともに「ぐんま百名山」である)

 

8:30 登山口である車坂峠に到着。駐車場はほぼ満車である。どうやら、私たちと同じく晴れに誘われた登山者が沢山登っているらしい。

登山口近くの高峰高原ホテルでトイレを借りてから出発する。

高峯高原ホテルは「天空の絶景宿」を売りにしているようだが、この日の景色は言葉に偽りなしの絶景である。遠く、富士山もしっかり見える。

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登山口。火山情報の確認を促す看板あり。

 

登山道は「表コース」と「中コース」の2本があり、表コースは景色はいいが、若干距離が長く、中コースは樹林帯のため眺望はないが、距離は短いコースとなっているとのこと。もちろん、「表コース」を選択する。こんな晴れの日に、眺望のない道を選んではいけない。

登山道には雪は無いが、霜柱がざくざくである。特に日陰はみっしりと氷の柱が地面の下にひしめいていて、軽く踏んだくらいではつぶれない。もちろん、しっかりと踏みこんで、ざっくりと倒してやりましたとも。

荷物を梱包するぷちぷちと同様に、霜柱をみたら踏みつぶさないと気が済まない。きっとこの習性は私だけではないはずだ。相棒のノムさんも嬉々として霜柱を踏みつぶしていた。

 

登山口から車坂山というピークを一つ越え、一度下ったところから、黒斑山に向けて登り返していく。

また、登って下って登るのパターンか…。山登りというものはそういうものなのだろうが、未だに「せっかく登ったのに下るの、もったいない…」と思うのは、私が永遠の初心者だからなのだろう。

登りの傾斜はそこそこであるが、表コースは景色が良く、富士山を右に見ながら登れるのであまり苦にならない。

ところどころ、ナイスビュースポットがあるので、止まって景色を眺めながら休憩し、のんびり登っていく。

やはり、天気が良い日の景色のいい道の登山は最高である。

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スキー場の雪は人工雪?

10:10 槍ヶ鞘

ちらちら見えていた浅間山が一気に目の前にどばーんと登場する。大迫力だ。

「わーお、浅間山、来たよ!」と興奮のあまり大声でノムさんに知らせる。ノムさんも「おおーっ」と慨嘆し、まわりの登山者の皆さんも「あさまー」などと感動を声に出して確認しあっている。

晴れの日にこの山を選んだのは大正解。スバラシイ景色だ。

眼前に広がる浅間山は正に円錐形のプリン型。私がG県平野部で見ている浅間山の形そのままだ。

黒斑山と浅間山の形を、石丸謙二郎著「山は登ってみなけりゃわからない」では「グレープフルーツ絞り器」にたとえているがいるが、正にそんな感じだ。グレープフルーツを搾るところが浅間山で、その周りの搾った汁がたまる部分と同じようにくぼんだ谷が取り囲み、絞り器の縁が外輪山(黒斑山)である。

ここから先は、その縁に沿って浅間山を眺めながらの行程になる。楽しいに決まっている。

よっしゃ、行くぞ、と先への期待で興奮しつつ、この先のトーミの頭への道方面に視線を動かし、その傾斜を目にして「かなりの急登ではないか…」とちょっとびびる。景色はとても良さそうだけれど…。

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槍ヶ鞘からトーミの頭に至る道。急登…。

10:30 トーミの頭

急登を登り切り、トーミの頭到着。見た目ほど大変ではなかった。

ここが一番浅間山がキレイに見える場所だという。トーミは遠見だ。

裾野までばっちりの浅間山全貌が見渡せる。絶景である。

もう紅葉は完全に終わっていたので想像するしかないのだが、この山が黄金色に染まる様はそりゃーキレイだろう。来年は紅葉のシーズンに来たいものである。おそらく、この日とは比べものにならないくらい沢山の人で混雑するのだろうが。

 

ここの景色ではやるしかない、と両手両足を大きく広げたXポーズで写真を撮ったりして大満足だ。

近くにいた登山者の方は「何回来ても、同じような写真を大量に撮っちゃうのよねー」と言っていたが、確かに私も、似たような浅間全景写真を撮りまくってしまった。

絶景の感動がついついシャッターを押させるのだ。目に焼き付けるだけじゃ足りなくて、「いい景色だ」と思うと、写真を撮らずにはいられない。

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浅間山。中心にどーんと鎮座。

10:50 黒斑山 2404m

頂上到着。ここからも浅間がよく見える。というか、ずっと浅間がよく見えるルートである。

ずっと見ているのだが、割と飽きない。歩きながら横を見ると、浅間がどーんとそびえていて「やっぱり、いい景色だー」と再度見とれる。惚れ直すって感じ?

 

時間に少し余裕があるので、外輪山巡りを続けて、もう一つ先の蛇骨岳まで行くことにする。

蛇骨岳、なんだか迫力のある名前だ。蛇の骨のように見えるから付けられたらしい。蛇の骨…。

ここからのルートを眺めると、景色が最高の楽しい稜線歩きが出来そうで期待が高まる。

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トーミの頭から。左のピークが黒斑山。先が蛇骨岳。蛇の骨…?

青空の元、浅間を右に従えての稜線歩きを期待していたのだが、蛇骨岳へのルートは割と樹林帯であった。

道は狭く、ところどころ霜が溶けたぐちゃぐちゃ道。まあ、これは予想していたので何ということもない。汚れた靴は洗えば良い。

「それほど景色、よくないねー」とノムさんと言いながら歩いていると、途中で脇にそれる道が現れ、何となく進路を取ると、急に視界の開けた浅間絶景ルートが現れた。

ボーナスステージだ!スーパーマ●オで言うなら、土管を入った先にある、コインをいっぱいとれるところ!」

「1-2の地下とかにあるヤツか!」

ノムさんと私は同級生なので、こういう会話がスムーズなのが非常に助かる。ありがとう、友よ。

ボーナスステージはすぐに終わり、また樹林帯の道に戻る。うたかたの夢のようなルートであった。

 

11:40 蛇骨岳

眺望最高。また、眼前に浅間がどーん、である。

ちょうど時間がいいので、ここでお昼にする。少し風が出てきていたので、岩陰でインスタントラーメンに半熟卵をトッピングして食す。ウーマです!(byユースケ)

山ごはんはなんだかんだ言って結局はラーメンなのだ。

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卵は映えを意識して、割ってみた。

食事終了後、ここで折り返してピストンで帰路に着くことにする。

この先の仙人岳まで行ってみたいような気持ちもあったが、ご飯を食べて満足したことと、少し風が出てきていたので、今回はここまでとしよう、ということで決した。

次に来る時に仙人岳、さらにその先のJバンドまで行けばいいのである。

 

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蛇骨岳から。浅間の登山道がくっきり。

蛇骨岳から眺める浅間山には、登山道がくっきりと見える。

浅間山は年中噴火しているイメージであるが、活動が落ち着いている隙間をぬって、是非ともあの道を登り、前掛山まで行ってみたい。

道筋を見ると、ためらいのない完全登りなので少々不安を覚えるけれど…。

 

12:40 蛇骨岳発

13:05 黒斑山

13:30 トーミの頭

順調だ。

いつもの遅い下山時には、まわりに登山者がいなくなり「私たちが最後かもね…」などど語り合うのが常であったが、今回はなんと、まわりに沢山人がいるのである。

「私たちもやれば出来るじゃないの」

「蛇骨岳で折り返しの選択をしたのが今回の肝だね」

「成長してるよ」

ノムさんと互いを褒め合う。自画自賛

やればできる子なのだ、本当は。(裏返せば「やらないから出来ない子」なのだが…)

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トーミの頭から浅間を眺める人々。



13:45 槍ヶ鞘

ここで浅間山とはお別れである。名残惜しいが仕方がない。

下山は行きと同じ「表ルート」をとることにする。青空快晴登山が楽しすぎるので、少しでもいい景色を眺められる方を選択したのだ。

しかし、表ルートに入った途端、周囲の人の姿が消えた。なんだ、ミステリーか!?

「さっきまで人が沢山いたのに、全然いなくなっちゃったよ。なんで?」

「わからん…。もしや、「中ルート」をみんな選択しているのではないか?」

「ええっ!「中ルート」は景色イマイチだよ」

…下山は早く帰りたいんじゃないかな…」

「…そうかも…」

確証は持てないが、どうやら他の登山者の皆さんは距離が短い「中ルート」を選択したらしい。そうか、そうだよね。早く下りたいよね。

未練がましく「表ルート」の景色をまだ楽しむぞ、という選択をする人は僅少だったようなのだ。

時々、人の声が聞こえたので「おお、人がいたじゃないか」と人影を探してみるが、姿は全く見えなかった。声はすれども姿はみえず。ほんにおまえは●の様な…。(●は自主規制)

方向的に「中コース」がある方から声が聞こえたので、多分、そっちを選択した人達の声だったのだろう。声だけでも聞こえると「まだ人がいる」と安心できる。

しかし、負け惜しみ(?)を言う訳ではないが、「表コース」は午後になっても富士山も八ヶ岳も見えて、やっぱり良い景色だった。

 

15:00 車坂峠

なんと、この私たちが、登山の基本「15時までに下山」を達成した。

「これが本来の姿なんだね」

「やっぱり、やればできる子よ」

互いに互いを讃え合って、浮かれた良い気分である。

高峯高原ホテルで絶景風呂に入った後、優雅にロビーでヨーグルトを頂く余裕まであった。これが、あるべき登山の時間設定なんだな、と感慨深い。

今後はきっと、この基本をずっと守った登山ができそうな気がする。多分、大丈夫だ。

 

そして、黒斑山はとにかく浅間山の絶景を楽しめる、とても良い山であった。

また是非来よう、晴天の時に。ノムさんと硬く誓い合った。来年はカラマツの紅葉を見るぞ。

 

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この日は一日中快晴。サイコー!

<コースタイム>

8:30車坂峠…10:10槍ヶ鞘…10:30トーミの頭…10:50黒斑山…11:40蛇骨岳(昼食1時間)…12:40蛇骨岳発…13:05黒斑山…13:30トーミの頭…13:45槍ヶ鞘…15:00車坂峠